メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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28話

 

 

 テンペストの町の空に燃え上がった炎。

 

 あんなのが突然町の上空に現れるなんてあり得ない。普通の炎ではなく、相応の力を持った炎でアレ程の炎を操るとなれば、ベニマルくらいだと思うが、町を守護する侍大将であるベニマルがそんなことをするわけがない。つまり身内での聊かいではないという事だ。

 

 

「何事ですか!? ソウエイさん!」

「アティス様」

 

 光粒子となり、移動するアティスの速度は 羽根を使い空を飛ぶリムルのそれを遥かに上回っている。なので、一足飛び足で問題の場所についていた。

 

 炎が発生したであろう地点には、かなりの人だかりが出来ていたが、どうにかソウエイを見つけて、状況を確認、すべて把握した。

 

 

 

 

 

――魔人がソウエイの警戒網を抜け、この町に入ってきたとの事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その後にリムルも到着。

 アティスが今は離れてるので ソウエイが しっかりと事後報告をしてくれた。

 

 

「へぇ…… それで、リグルドは大丈夫だったんだな?」

「はっ。アティス様の力にて、全快致しております」

「う~ん、ワンパーティに必須なヒーラーって感じだな。アティスのヤツ」

 

 感心感心、としてるリムルだったが、ここからが大変な所だ。

 町にいらっしゃった魔人は、もう既に無力化されていた。

 それはアティスが来るよりも前になっていたとの事。

 

 そして、頭が痛い事にその魔人を無力化したのがミリムであるという事―――。

 

「わっはっは。リムルも来たんだな! 遅いのだ。あやつが舐めた真似をしおったからワタシがお仕置きしてやったのだ! だが、アティスが回復させ中の様だから、起きたら もう一発殴ってきて良いか?」

「…………」

 

 リムルは頭を抱える。

 ソウエイから聞いた話では、ミリムがノックアウトした魔人は、魔王カリオンの部下との事だった。先に攻撃を仕掛けてきたのは、向こう側とはいえ、腹いせに カリオンに この町の者から攻撃されたとでも報告されたら、心証が悪くなる事も視野に入れなければならない。

 下っ端とかなら多少安心かもしれないが、他の国へ派遣される者がそんな地位の低い者とは考えにくい。あの舞い上がった炎の勢いを見ても判る所だ。

 

 

「ふぅ……、リムルさん。とりあえず、このひとは、マザーに見てもらったけど、大丈夫みたいだよ。ミリムさんも手加減した、って言ってたし」

 

 ちらっ、とアティスの方を見たリムル。丁度回復魔法をかけ終えた所の様だった。まだ、頭にアザが残ってるようだが、アティスと聖母(マリア)が言うのなら間違いないだろう、と一先ず部下の死、と言うある、こちら側の死傷者が出たよりは断然いいものの、ある意味では最悪な展開は回避する事が出来た。

 

「ふぅ、わかった。サンキュ、アティス。……んで、ミリムは俺の許可なく暴れたのか? 暴れないって約束してなかったか??」

「うぇっ!? こ、これは違うのだ! そ、そう この町の者ではないから、セーフ、そうセーフなのだ!!」

「ダメだろ、アウト。一発アウトだ。……だがまぁ、今回は昼飯抜きで許してやるか」

 

 ミリムは、知らない事、色んな新しい事を見たりやってみたり、と楽しい事が多いテンペストの中でも、特に料理を楽しみにしていた。その大好きなごはんをお預けともなったってしまったら、大変だ。

 

「ヒドイ! ヒドイのだ!!」

 

 わあわあ、と泣き出すその姿はどう見ても魔王には見えない。親に怒られた娘っといった感じだろうか。わぁ、わぁ、と泣き出すミリムだが、リムルは罰を変えようとはしなかった。なので、ツカツカツカ、とアティスの方へと向かい。

 

「そこのけ! アティス!! どれもこれもこいつが全て悪いのだ! マブダチの子分に手を出したコイツが全部!! 一発では飽き足らぬ……っっ」

 

 拳に凄まじい魔素を込めるミリム。

 回復したとはいえ、あんな一撃を食らったら、そんな回復意味をなさないくらいに成ってしまう。

 

 せっかくHP全快まで上がって、あとは状態異常の回復だけだったのに、またHP0になってしまう。

 

「わぁぁぁ、待って待って!!」

「ストップストップ!! 待て待て待て!!」

 

 大慌てで アティスとリムルが止めた。

 

「り、リムルさん! アウトでも復活はありますよねっ!? ほ、ほら、アウト一回とっても退場はまだですよねっっ、ラストわんちゃんす、ありますよねっっ!?」

「そうだそうだ。今回だけは良い事にするっ、それに リグルドをやられて怒ってくれたんだったしな!!」

 

 

 と言うわけで、どうにかミリムの追撃だけは回避する事が出来た。

 

 ついでに、ノびてた魔人の男も目を覚ましたので、場所を移す事にした。

 

 

 話を聞いてみると、あの炎はミリムが使った技! と言うわけではなく、リグルドを攻撃し、激昂したミリムに気付いて、慌てて男が繰り出したらしい。――が、ミリム相手に通用するような技ではなく、ミリムの魔王覇気で上空に巻き上げられ、そこをアティスやリムルが見ていたのだ。

 

 ミリムにノックアウトされて、ノビてる所も見ている為、大したことなさそうに見えていたのだが、そうではなかった。 リムルの大賢者、アティスの聖母もそろって男の正体を告げてくれたからわかったのだ。

 

 

――警告。個体名 フォビオ。魔素量は個体名ベニマルを上回ります。

 

 

 と。

 

 

 ベニマルは、このテンペストでも屈指の実力者。鬼人の若頭でNo.1。リムルの名付けによって、更に進化に磨きがかかった彼は、侍大将の座を承っている。つまり軍部のトップ。単純な魔素量で強さは推し量る事は出来ないとは思うが、それでも、上回ってくるとなると、驚きだ。

 

 そして、目を覚ましたフォビオは当然敵対心剥き出しで威嚇してくる。まともに話を聞いてくれる様子もない、だからこそ、リムルの傍にいる皆も苛立ちを隠せれず、敵意も増してきていた。

 

 

「はぁ、ヨカったですね? ミリムさん」

「うむうむ♪ さんどいっち、美味しいのだっ♪」

 

 

 場面が修羅場になりそうだと言うのに、ミリムはおいしそうに お昼ご飯を頬張っていた。

 確かに、ミリムが傍にいるとなると、仮に戦闘になった所で負ける事はないから、安心と言えば安心。……でも、友達だと、親友(マブダチ)だと言ったミリムに おんぶにだっこ状態では、示しがつかないし、この町のトップはあくまでリムル。全てを頼り切る訳にはいかない、と言う事と 友達同士で対等である事を組んでる。だから、リムルやアティスの接し方は変わらないのだ。

 魔王ミリム相手に、引き分けに持ち込んだスライムたちだからこそ、出来る芸当かもしれない。

 

 そんな、凄いスライムの一角でもあるアティスは、魔王ミリムの付き人役を買って出てくれている。……決して押し付けられてる訳じゃない。

 

 

 

 

 ミリムの事も大変だが、フォビオの応対もそれなりに大変だ。完全に敵意剥き出しで来てるので、面倒なのと更に鬼人達も自分達の主を貶されてるとして殺気立っている。

 

「お前たちは良いから下がってろ」

 

 そこはリムルの一喝でどうにかなるが、それを見たフォビオはその様子を見ていて、更に付け上がらせてしまった。

 

「はッ! こんな下等な魔物に従うのか。雑魚ばかりだと大変だな!」

「そう言うからにはお前の主はさぞ大物なんだろうな」

「ああ? 当たり前だろ。お前、カリオン様を知らねぇってんのか?」

 

 ただただ、フォビオと言う男が交渉事に関しては得ているとは到底言い難いのは解った。

 まだ、この魔物の町、テンペストと言う国の未知数さを理解していないらしい。……ミリムがこの町を大層気に入っているという時点で、ある程度は把握しないと弱肉強食のこの世界で生きられるとは到底思えない。

 

 もしも、リムルが理知的・友好的でなく ミリムを利用している者なのであれば、その時点で自分は死んでいてもおかしくないという現実が見れていない。

 

 そして、それ以上に抜けている部分がある。カリオンの意思として捉えられるという可能性を失念している所がだ。

 

「では、言葉に気をつけろ。そもそも先に手を出したのはそっちだ。お前の態度次第では、今すぐオレ達は敵対関係になる。……つまり、このジュラの大森林全てを敵に回す判断を、カリオンではなくお前が下すのか?」

「……ちっ、スライム風情が吹かしやがって」

 

 

 去勢を張っている様だが、フォビオもそこまでのつもりでは考えてないらしい。

 そして、リムルの大賢者の見立てによるとフォビオと戦闘になったとしても、問題なくリムルが勝つ。現状、リムル側にはミリムがいる時点で負けは無いが、身内で処理をするとしても、アティスが加わり 更に死角は無くなる。―――最強の魔王の一撃でも受けきる鉄壁の防御を誇るアティス。フォビオの攻撃等かすり傷も負わす事は出来ないだろう。

 

 

「ミリムさん? ほら、このジュースも美味しいですよー。ハチミツの味がするジュースです」

「なにっ!? そんな美味いジュースもあるのか!! 寄こすのだ!!」

「はい、どうそ!」

「にゅふふふ~」

 

 

 ミリムがフォビオを威圧しようとした瞬間を狙ってアティスが間に入る様にミリムのストッパー役に徹する。今のところ美味しいもの系を出せばミリムのコントロールは可能なので、アティスも頑張ってる。

 

 因みに、アティスとリムルは時折思念で会話をしていた。

 

『昼飯抜きをまた条件に付ければいう事聞くんじゃね??』

『いえ、ストレスが逆にかかり過ぎて、別な所で爆発しない為にも適度にアメは必要ですよ……。ミリムさん最強の魔王なんですよ?? 『どーでもよくなったのだーーー!』ってなっちゃったらどーするんですか……』

『あー、それもそうか……。ま、兎も角そっちは任せた。フォビオってヤツらの事はオレに任せてくれ』

『了解です』

 

 等等だ。

 

 

 

「こほんっ、ああ、信じられないって言うなら、樹妖精(ドライアド)を呼んでオレの支配域を証明しようか? お前の中ではスライム風情なオレでは説得力がないんだろ?」

 

 リムルが牽制をするが、そこまでする必要性は無かった様だ。

 フォビオの忠誠心は本物で、カリオンの名を汚そうとする者になら容赦はしないだろうが、カリオンに不利益になる様な事は決してしないだろう。……ただ、あまりに直情過ぎて交渉事に向いていないのは一発で分かる。

 

「……ここへはカリオン様の命令できた。豚頭帝(オークロード)と戦争した奴らがこの森にいる。その魔人たちを確保しろってな」

「ふむ。……成る程な。あの戦いで勝った方をスカウトしに来たって事か。なら、オレから言うのは1つだけだ。魔王カリオンに伝えてくれ。日を改めて連絡をくれれば交渉には幾らでも応じる、とな」

 

 全て下手に出る必要は無い。不利益なままで言われるがままにするのはリムルとて納得はしない。相手が魔王であったとしてもだ。勿論、ミリムと言う友達の力もちょっぴり頼りたいという下心はあるが、ミリムとは友達であり、ギブアンドテイク的な感じで上手くやれそうだから大丈夫だろう、とも思っていた。

 しっかりと美味しいものを貢物としているし。アティスと言うお気に入り? もいるから。 これからもしっかりと世話をして貰いたい、とリムルはちらりとアティスの方を見た。

 

 何やら、悪寒が走ったのか アティスは身震いしていたようだが、気のせいだろう。きっと。

 

 

 

 

 その後――フォビオは去っていった。『きっと後悔させてやる』と言い残して。

 

 

 

 

「はぁ……、何で平和的に行けないんですかね……?」

「魔物の世界だからな。全部が全部友好的に~なんて行きっこないだろ」

「う~ん……」

「わははは! 気に入らんヤツがいれば、ぶんなぐってやれば良いのだ!」

「……ミリムさん? それ、リムルさんに了解をもらう前にしちゃったら もう美味しいもの食べれなくなりますよ??」

「今のは無かった事にするのだ!」

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