「ミリムに魔王カリオンについて話を聞いておこうと思う」
「………他の魔王、ですか。やっぱり関わっちゃいますよね?」
「そりゃあな。使者がここに来た時点でもう確定だろ。それに、
「うぇ……」
普通に考えてみればリムルの方が正しいってアティスだって判る。
ただ、わかりたくなかっただけ。
ミリムが襲来したその時から、もうわかりきっていた事だった。限られた数の魔王の中の1人が、それも最強の魔王が拠点にした、ともなれば 他の魔王だって黙ってみてるとは到底思えない。何らかのアクションを取ってくるのは目に見えている。
更に言うなら、アティスは 光の神G.O.Dとの絡みもあって不安が募っていた。
ミリムみたいに友好的な関係なら良いんだけれど、他の魔王がどんな絡み方をしたのかが判らないから、希望的観測に過ぎず 不確定要素が大き過ぎて困る。
『嘗て、光の神に封印されて以来、ずっと機会を狙っていたのだ! さぁ、我が腕の中で悶え苦しむがよい!』
と言った口上で襲い掛かってくる可能性だって0じゃない。
「と言うワケでだ。ミリム。魔王カリオンの話が聞きたいんだが。あ、それ食べ終わってからで良いから」
げんなり、としてるアティスを置き去りに リムルはミリムの方を見た。
それを聞いたミリムは サンドイッチを口の中いっぱいに放り込んで飲み込み……首を左右に振った。
「それはお前たちにも教える事は出来ないぞ! お互い邪魔をしない、と言う約束なのだ」
「……(何か約束がある、って言ってる様なものじゃない?)」
「(単純で助かるな。秘密あり、と自白貰いっと)」
その後―――あの手この手でミリムを篭絡。
そんな難しい事では無かった。
ミリムとは友達であり親友であり……大切な存在である事を強調しつつ、今度ミリム専用の武器を作るという約束をした。友情の証として。それで篭絡完了。
「ふぅ……、
「そりゃあな。俺自身そういう経験だってあるし。やりやすい事この上ない」
「ですね~~~。後はミリムさんたちの秘密が特に問題ないものだったら更に良かったんですけどぉ……」
「―――……それは諦めろ。俺たちが邪魔したも同然なんだから」
リムルの一言で、人型に戻っていたアティスは肩を落とす。
ミリムから判明したのは、魔王4人の企み、傀儡の魔王を誕生させるという計画。
その魔王と言うのが、他の誰でもない。
自分達が討伐した魔王なのだから。折角育てた魔王を他のモンがやっつけたともなれば……怒っても不思議じゃない。ミリムは大丈夫だったんだが……。
ベニマルも苦々しい顔をしていた。
「想定していた状況とは違いますが、他の魔王もここへ干渉してくるでしょうね。ミリム様の言う邪魔をしない、と言う盟約はあるようですが……」
ミリム自身がここへやってきてる時点で、他の魔王が行動しないという理由はどこにも無い。現に魔王カリオンの部下がやってきているんだから、他の2名が指をくわえてみていてくれるとは思えない。
「これは大変な事です。トレイニー様にも相談せねばなりませんな」
「う~~…… あ、リグルドさん。今度、俺 トレイニーさんの所に行く予定ですから、その時に伝えておきますよ」
「感謝致します、アティス様」
魔王ミリムの来襲と共に巻き起こった暴風は、より勢いを増しつつ……この魔物の国も飲み込んでいく事になる様だ。
非常に頭が痛い案件。
「大丈夫ですよ! アティス様っ!!」
しょぼん、としていたのがバレたのだろう。シオンがアティスを抱きかかえた。
因みに、リムルはお眠のミリムの枕をしてる。
「リムル様にアティス様、お2人ならば他の魔王など畏れるに足りません! 大丈夫です!!」
「わーーありがとうございますーー(棒)」
根拠のない自信は嫌いではないんだけれど、魔王とか物凄い存在を改めて考えてみると……どうしても怖い。ゲルドの時は頑張って立ち回れたアティスだが……。
「(……うぅん、今更なんだけど、皆の事守る守るって言ってて……、こんな魔王魔王ってばっかり来てる状況で そんなの出来るのかなぁ……)」
――解。魔王ミリムとの訓練成果は着実に出ております。全体能力向上も確認。守護出来る可能性は限りなく高いです。
「………精神のほう、持つかなぁ、マザー……?」
――………。頑張りましょう。
「やっぱ精神面ダメなのっ!?」
ダメだしを貰ったわけではないが、最後は頑張ろう! と言う精神論で
時は少しだけ流れ―――。
魔物の国 テンペストにて、魔王ミリムの餌付けが更に進行真っ最中の頃。
とある理由から、テンペストの首都 リムルを目指す一行が窮地に陥っていた。
このジュラの森は広大だ。様々な魔物が生息している。
そんな中でテンペストは人間とも良好な関係を築こうとしているんだけれど……、生息する全ての魔物がそうか? と問われればそうはいかない。知性的な魔物の方が少ない方だ。
「うおおおおおおお!!! なんでこんな目にいいいいいぃぃ!!!」
「お前が
とある一行は、大きな大きな蜘蛛に追われていた。
その名の通り、槍の様な脚を8本も持つ人間よりも遥かに巨大な蜘蛛。動きも俊敏で、今まさに食らいつこうとしていた。
「死んだらカバルの枕元に出てやるんだからね~~~~!!!」
「わははは! そりゃ無理ってもんだ!! 俺だって一緒に死ぬからな~~!! ってこのやり取りも前に此処でしたよな!!? いやぁぁ懐かしい!」
「思い出に浸ってる場合じゃないよぉぉ!」
「思い出っつーか、走馬灯だーー!!!」
その後も追われつつもどうにか魔法で応戦していたんだけれど、効きはいまいち。
その名の中に鎧とある様に、物理的な攻撃も通りが非常に悪い。簡単な太刀筋では弾かれてしまう。
「姐さん魔法全然きいてやせんぜ!?」
「そんなの見ればわかるわよぅ!! とっておきだったのにぃ!」
「ちっ、頑丈な上に魔法まで効かんとは進退極まったか? このままじゃ魔物の町の主とやらに会う前に全滅だ……!」
会話の流れには緊張感が欠けている様に見えるがかなり危ない状況である。
簡単に言えば、このパーティは 魔法使いに剣士が2人とシーフの4人パーティ。
魔法が効かないので 魔法使いは攻撃に参加するのはリスクが高い。更にシーフの持つ武器は短剣なので、大きな大きな槍上の脚を持つ蜘蛛には太刀打ち出来ない。
つまり、支えるのは2人の剣士のみ。
「うおおおおっっ!! 無理、無理無理!! 向こう脚8本もあるなんてズルいだろっっ! ギド! てめぇも手伝いやがれ!!」
「無茶言わんで。短剣で捌けるような攻撃じゃねーでしょーが!!」
「おいカバル! 目の前の敵に集中しないか。お前か、俺がしくじれば4人とも全滅なんだぞ!」
「うわぁぁぁんっ! シズさーーーーんっ!!」
「亡き英雄に頼るな!!」
精いっぱい抗っているものの、状況は極めて悪いと言えるだろう。防御ばかりで攻撃に転じる事が殆ど出来ないうえに、攻撃が通らないのだから。
だが、そんな絶望的な状況ででも、光明は突如訪れた。
カバルに迫る槍の脚。今度は避けれない、と目を瞑った所に割り込む影があった。
「んなっ……誰だ? あんた……」
「ヨウムだ。厄介なのに絡まれてんな? あんた等」
剣士がもう一人助太刀に入ってくれたからだ。長剣を携え、攻撃を捌く。そして、攻撃にも転じる。
「無理しない方が良いわよぅ! コイツ、魔法も効かないんだからぁ」
「あん? 堅い上に魔法まで効かねぇのかよ。ほんと厄介だ。どうしてあんなのに追われているのか、後で問い詰めてやるから……なッ!!」
ヨウムは、剣を振るって攻撃を捌く。
元凶であるカバルは遠い目をしていたが、直ぐに攻撃に参戦。
前衛職が1人増えた事は大きい。……が、状況が悪いのには変わらない。少しだけ光が見えただけだ。
そんな時――だった。
突如森の中が、きらきらと光りで満ちていっていた。
「姐さんですかい? これ??」
「私知らないわよぉ~」
光がどんどん集まってくる。そして、それが異常な光景である事は、この場の誰もが悟った。超常現象? とでも言えば良いのだろうか。発生源が不明であり正体も不明。そんな何かが軈てあの巨大蜘蛛に纏わりつく。
そしてまるで、蜘蛛の巣に引っかかったかの様にジタバタと身動きが取れなくなっていってた……。
「えぇ~蜘蛛の癖にぃ?」
「知らんでやんす。そんなの」
呆気に取られている間にも光は集まり続けている。
「こりゃ一体どういう事だ?」
「ヨウムさん、無事ですか?」
「おう。ちと危なかったが、な。……っていうか、今も危ない状況じゃねぇだろうな? なんだこりゃ」
「ボクにも……何が何やら」
「おいカバル。腰抜かしてる場合じゃないぞ。今の内に体勢を立て直す」
「う、うぃっす……」
「さっさと立て!!!」
げしっ、とカバルに蹴りを入れつつ立たせた。
この現象の正体は判らない。そして、、今でこそ巨大蜘蛛が拘束されている状態だが、これがいつまでも続く保証は何処にもない。そして、今こうなってる意図も判らない。
「神様っていたのよぅっ! いい子にしてたからねぇ、きっとっ!」
「一体何歳っすか。姐さん。それに それで助けてくれるなら、これまでの苦労は何だったんスか……」
助かった事に大喜びしている時だ。
「神様、っていうのは強ち間違いじゃないっすよ」
後ろからぞろぞろとホブゴブリン、嵐牙狼族の群れがやって来た。
その先頭に立っているのがゴブタだ。
「アティスさま~~~。俺たちも到着したっす~!」
その声に反応する様に、光は瞬きを繰り返しながら、微小な光の粒子で蜘蛛を攻撃。 あっという間に絶命させたのだった。
そして、蜘蛛に集まってた光は死骸になった事で分散。
光の粒子が集まって1つの形になった。
……ぽよんっ、と現れたのは銀色のスライム。
「あっ、リムルさんですかぁ!?」
「あ、違います違います。俺はリムルさんの弟分でアティスって言います。襲われてたのには気付けましたけど、到着遅れちゃって……。皆さんほんとご無事で何よりです」
スライムスマイルで会話を進めようとするんだけれど、あからさまに警戒されて、目の前の女の人以外は話してくれないのをアティスは残念がっていた。愛らしいスライムを演じたら大丈夫、とリムルに言われていたのは何だったのか、と。
「アティスさま~。蜘蛛の解体終わったっす」
「お疲れ様~、ゴブタ」
「むっふふ。どうっすか?? 二刀流! っすよ!!」
「あ、クロベエさんに作ってもらえたヤツ? 似合ってるよ」
「ほんとっすかっ! アティス様の剣もすんごいっすよ! いつか、比べないで~~って言ってたっすケド、全然大丈夫だと思うっす!!」
「あ、あはははは。なら良かった」
剣を持ってはしゃぐゴブタを見て苦笑いをしつつ。
「じゃあ、皆は食材を町まで宜しくね? 俺はこの人たちと一緒に帰るから」
「!!? そ、それはどういう」
「あ、すみません……。ここに来た理由を勝手に想像してました(
「それは……」
「この森はさっきの見たいなの結構いますし、まだちょっと掛かりますから、俺が案内しますよ」
リーダー格の男がちらっ、と他のメンバーの顔を見てみると、激しく首を振っていた。
もう追われるのは懲り懲りなのだろう。怖いことにも。
「………どうか 宜しく頼めないだろうか」
「勿論です! ウチは人間とも仲良く~がモットーなので。悪いスライムじゃないんですよ~」