メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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30話

 

 それは、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)を狩る少し前の事。

 

 アティスは日課にしていた訓練を町から少し離れた場所で行っていた。

 以前、ガゼル王率いる部隊が空からやって来た時みたいに、事前に察知できる様にする訓練。それを聖母(マリア)と共に勤しんでいた。

 

『う~ん……、気取られたら相手に変に警戒されるかもしれないし、相手には全く気付かれないで、それでいて広範囲、魔力探知や熱源探知みたいなスキルにも負けない距離の索敵って出来ないかな?』

――解。光粒子化(シャイニング)による広範囲の索敵は可能。粒子をより極小にする事により、魔力感知をも潜り抜ける事は可能。

『え!? ほんとなの? マザー』

――本当です。……光の神により授けられた魔素を使用する事で可能となってます。

『うぅ~ん……。成程。何かズルい気がするけど、光おじいちゃんの力ってすごいんだーー、ってミリムさんに聞いてたけど、ほんと凄いんだね』

 

 アティスは、まるで他人事の様な事を言っているが、もう自分の力でもある。

 なので、自信を持って頑張ればよりもっともっと出来る幅が広がる~~と聖母(マリア)も伝えてるんだけれど、なかなか上手くいかないのは、慎重すぎるからだろう。

 

 だが、いざとなれば相応の行動をするという事も聖母(マリア)は知っているので、そこまで危機感は与えてない様子。……お尻を引っぱたくような事はしてるけれど。

 

『んじゃ、練習練習!』

 

 

 こんな感じで、アティスの索敵能力向上の為の訓練を開始してて―――あの巨大蜘蛛の事を知る事が出来た。

 

そのおかげで迅速に対応できる結果となったのだ。特訓の成果も出て万々歳。

 

 

――告。点数 80点の出来でした。

 

因みにアティスは、訓練の時にマザーに頼んで採点をしてもらうことにしていた。今回のも勿論しっかり採点。無駄なく、一人の重傷者もなく迅速に対応できたのだが、まだまだ満点ではないとのことだ。

でも、アティスがしっかりと攻勢に出れたことは大いに評価する、とのこと。

 

『えっと、いやまあ……、だって今までを考えたら流石にあのくらいの相手なら、ねえ?』

 

 

新米魔王に最強魔王、その他もろもろ。そう言われれば確かに、としか言えないだろう。まだまだ過小評価する癖は抜けないものの、しっかりと成長しているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時は元に戻り、場所は首都リムルにある建物。

 

「お客さんですよ」

「お客さんっす!」

 

 

 ゴブタとアティスに知らせを受けて、リムル達もやって来た。

 

「アティスから『でっかい蜘蛛が暴れてるみたいだから行ってみる』って思念伝達されたかと思ったらお客さん連れてきたよ、この子……。っと、それは兎も角 皆さんは一体何の用なんだ?」

「知らないっす!!」

「おいコラ! ゴブタ!」

「あ、俺はちゃんと聞いてるんで。後は任せてゴブタ」

 

 アティスが前に出ると、『了解っす!』と敬礼を一つしてゴブタは離れた。

 

「こちらがブルムンド王国のフューズさん。こちらの3人の方々はリムルさんとは顔見知りだそうで」

「おう。そっちで飯食ってる奴らなら十分すぎるくらい知ってるよ」

 

 アティスに紹介されて、フューズだけが頭を下げて改めてアイサツをしていた。

 

 

「個人的な理由の1つがリムルさんに会う事で、後は豚頭帝(オークロード)の一件ですね。ソウエイさんに頼んでた件で来られたとの事です」

「あー、そういえばソウエイに頼んでたっけ?」

「はい」

 

 ソウエイは後ろに備えてて、肯定する様に静かに頷いた。

 リムルは色々と考えを張り巡らせつつ、フューズに聞いた。

 

「つまり、アレだろ? 豚頭帝(オークロード)の脅威は無くなっちゃったけど、やっつけたのが俺達魔物だから、それはそれで心配って感じか。ドワーフ王の様に」

「その通りです……。ッ。ドワーフ王? この地へと来たのですか?」

「あぁ。ガゼル王が俺を見極める、って言ってな。その結果ウチとドワルゴンで盟約を結んだんだ」

「は……?? 盟約……!?」

 

 

 その後、固まるフューズに色々と掻い摘んでではあるが説明をした。

 

 ドワルゴンとの盟約は本当である事。信じられないなら、カイジン・べスター等の元ドワルゴンの大臣と伝説と称される鍛冶屋に証明に来てもらうと告げて嫌でも信じる結果になった。

 

 

 そして、たまたま予定があってべスターが入ってきてくれたので、より早く信じてもらえたのだ。

 

 

 

「それで、個人的に俺に会いにっていうのは?」

「え、ええ。……今から十月程前になりますか。森の調査を依頼したこの3人から報告を受けまして、……ギルドの英雄を手厚く、丁重に弔ってくれた事への感謝、そのお礼が遅くなってしまった事への謝罪をしたいと思いました」

「………(シズさんか) それはご丁寧にどうも。フューズたちの目的は判ったんだけど、そっちの兄ちゃんたちは? 何しに来たんだ?? ギルドの所属のひとたち??」

「あー、えっとこの人達はー」

 

 アティスが割って説明に入ろうとしたその時だ。

 

「ちょっと待ってくれねぇか? さっきからずっと思ってた事なんだが、なかなか言い出せなくてよ」

『??』

 

 

 ややガラの悪い男――ヨウムが更に割って入ってきた。

 

「なんでスライムがしゃべってんだ? こっちの光ってるヤツもスライムだし、この町のスライムは皆しゃべんのか?」

『そこかよ』

 

 

 

 一番のガルムの疑念がそこだった様だ。

 どうでも良い事……と思いがちではあるが、スライム族と言えば数多くいる種族の中でも最弱に分類されているからだ。

 

「あのでけぇ蜘蛛を殺ったコイツはマジで底知れねぇ。光ってる所も異常だ。んでも、んなスライムが何匹もいてたまるかってこった。後ろのヤツなんかもっと強そうだし、なんで此処じゃスライム全面に出してくるんだよって話だ!」

「あ、あのぉ…… スライムに何か恨みでもあったりするんですか……? 身内の仇! とか? ボク悪いスライムじゃないんですが……」

 

 渾身のアティスのネタに、リムルが思わず吹き出しそうになったがどうにか堪えた。

 

「んな訳ねーわ! スライムだぞ!! そもそもお前の存在も今の俺をメチャクチャ混乱させてる内の1人、っつーか1匹だ! 突然あんなでっけぇ蜘蛛釣りあげてぼこぼこにして仕留めたトコもよ! むちゃくちゃだろ!? 聞いたことないぞ、んなスライム!」

「え、えっとボクはメタリックなスライムでして……、固さが売りなんです。だから、固い身体を活かした攻撃をしてみたら、意外にもああなって……」

「お試しの攻撃であの蜘蛛全部やっちまった、ってのか!? バケモンか、お前!!」

「あぅ……(もう人間じゃないとはいえ、やっぱりそれなりに傷つくかも……)」

 

 ヨウムは脚を乱暴に組み替えながら、リムルを指さした。

 

「つまりだ! わけもわからんスライムは、こっちの光ってるヤツだけで十分だ! これ以上混乱させんなってことだ。つーか、誰か突っ込んでくれ!」

「知らんがな。イキナリやって来た身で随分偉そうだな。因みにそいつはウチのNo.2。強さに関して言えば 君の言う通りのもの。折り紙付きだ。えっと、槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)だっけ? そのくらいだったら、眠っててもやれるんじゃないか?」

「んなスライムいてたまるかぁ!」

 

 混乱が覚めやまないのは仕方のない事なのかもしれない。

 事前に事情をそれとなく聴いていたフェーズ、そして実際に会った事のある3人の冒険者たちを除けば他の2人は初対面。

 突然変異なスライムを続けざまに見たら、輪にかけて混乱してしまうのだろう。

 

 そのやり取りを聞いていたシオンは少し怒りながら前に出た。

 

「リムル様とアティス様に無礼ですよ!」

 

 秘書・護衛役でもあるシオン。主を軽んじられたら怒るのも無理はなく……更にこの後、地雷を踏む。

 

「うるさい! 黙ってろおっぱい!! っぶっっ!!」

 

 

 セクハラ発言をされた瞬間、シオンはその手に持つ自身の身体程ある長身を持つ剣(鞘付き)で頭をどついた。

 相応の威力があるので、一発で昏倒。

 

「あ、つい……」

「つい、じゃねーよ!」

「か、回復しますね」

 

 完璧に気絶したヨウムをせっせと回復するアティス。

 そして、シオンは粗相をしてしまったと、沈んでしまった。

 

 

 そして数秒後。

 

 

 頭にいい具合に一撃貰ったヨウムだったが、アティスの回復魔法? で無事回復。しっかり目を覚ました。でも、アティスの回復があったとしても鬼人であるシオンの一撃を受けてここまでで済んでいる所を見ると人間の部類ではそれなりに強者に位置するんだろうな、とリムルは考えつつ、一先ず詫び。

 

「ウチの秘書がスマンな。ちょっと我慢が足りない所があるんだ。……んでも、セクハラはいかんよ」

「………………」

 

 そこに関してはヨウムは口出しをするのをやめた。

 やはり、痛みを持ってしたら人は学ぶというのがよく判ると言ったものだ。

 

 そして、横ではミリムが大笑いしていた。

 

「わははは! シオンは短気すぎるのだ! ワタシの様に大人になるのだな!」

「うぅ………」

 

「「(流石にミリム《さん》には云われたくないだろうな……)」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を取り直して自己紹介に戻る。

 

「えっと……、私たちはファルムス王国の調査団です。こっちは団長のヨウムで、私がお目付け役のロンメルと言います。こちらにお邪魔したのは成り行きですが、調査対象である豚頭帝(オークロード)が既に居ないと知れたのはラッキーでした。目に見えて危険な調査ですのに、領主は強欲で寄せ集め集団にまともな装備などそろえてくれるはずも無く……」

 

 

 ロンメルの説明で大体把握出来た。

 とんでもないブラックな所に居たのだという事が。更に寄せ集めと言った部分にも納得だ。ヨウムが率いている部隊のメンバーはかなりガラが悪いから。酒飲みばかりで、控えの部屋があっという間に酒場みたいになってしまったんだから。

 

「うぇ……、ブラックですね……」

「だな。そんなんでよく逃げ出さなかったな? 豚頭帝(オークロード)はメチャヤバイヤツだったんだぞ? あんな装備じゃあっという間に返り討ち……喰われて全滅だ」

「あ、あははは……、そのために私が同行を命じられたんです。契約魔法と言う強制的に従わせる術がありますので、それで縛るのです」

「うへぇ…… 超ブラック」

 

 ブラック、と言う単語を理解している者はリムルとアティスだけで、他のひとたちは皆わかってくれてなくて『ぶらっくって何ですか?』とアティスに聞いたりしていた。

 話がそれるので、その辺は軽く省いたが。

 

「あはは、ま、その魔法はもう解いちゃったんですけどね? 何で、ヨウム達を縛る魔法なんて存在しませんよ」

「へ? えーと、ロンメル君はお目付け役じゃなかったっけ?」

「そうでしたよ。ですが、今はこのヨウムについていくと決めたのです」

 

 ヨウムを見るロンメルの目は憧れの選手を見る少年の目だ。

 ガラが悪そうだが、人を惹きつける何かを持っているのだろう。

 

「まぁ、ヨウムさんが逃げ出したりしないだろーな、って言うのは俺も判る気がしますけどね」

「んあ? なんでアティスが判るんだ??」

「ああ、いえ。フューズさんたちがあの蜘蛛に襲われてる時、ヨウムさんが助けに入ったんです。結構離れた位置にヨウムさんたちが居たんですが、わざわざ助けに向かってまして、そんな人が途中で逃げたりしないでしょ?」

「………けっ」

 

 アティスは 笑いながらそういうが、やはりリムルにはまだ解せない。

 

「それとこれとはまた状況が違うだろ? 危険度を置いても、あの豚頭帝(オークロード)の調査に安い装備だぞ。……それに強欲な領主なんだったら、成功報酬を奮発する、なんて絶対しなさそうだと思うし」

 

 リムルの疑問に答えるのはヨウムよりも早く……なぜかアティスだった。

 

「見ず知らずの他人を助けようと、危険を顧みず駆けつけるんなら……、きっと ファルムス王国って所の顔見知りな人たちを見捨てる様な事はしないだろうなー、って思いましたんで」

「も、お前ちょっと黙っててくれ!!」

「凄いですね!? アティスさんは心も読めちゃったりするんですか?? 光ってますし!」

「あ、いや ただの洞察と言うか推理と言うか……、光ってるのって関係なくないですか??」

「ロンメル! おめーも黙ってろ!」

 

 ズバズバ、と心の内を明かされたかの様だったヨウムは、やや顔を赤くさせながらも、否定はしなかった。なのでアティスの推測が正しいんだとリムルも理解。アティスは そういう人の心を読む力には随分長けているんだと改めて思った。

 

「ったく、何にせよだ。んなヤバイヤツの情報を教えねぇとあぶねぇって思っただけだよ! それ以上でもそれ以下でもねぇ! 勘違いすんじゃねぇぞ! 慈善家って訳じゃねぇ! ただ国の奴らが死んだら目覚めが悪いってだけだ! あのタヌキ伯爵はどうでも良いがな。聞いた話じゃ防衛強化に充てるべき国の援助金も着服してたクズだ」

「あははは。そこは僕が証人です。そんな所へ災害でもある豚頭帝(オークロード)が出現した、なんて話が出まして慌てて我々が編成されましたから」

 

 とんでもなくダメダメなトップの元でガラや口が悪くとも真っ直ぐで、何よりもイイ男といっていい者が居るのもある意味では凄い事だ。上が腐ってたらその部下も~と言うのが定番な気がするんだけれど。

 

「それによく考えてみろよ。んな危険きわまりない調査にこんな若造たった1人だけにしとくと思うか? もっと熟練の魔法使いの1人や2人抱えてんだろうによ。んでも、しねぇって事は結果だけわかれば良いって魂胆が丸見えなんだよ。だからケチって経費云々殆ど払わなかったんだろうよ」

「………それは、確かにな(間違いなく捨て駒だなそれは。ロンメルがヨウムに従う理由がよくわかったよ)ああ、それとアティスにも聞いたが、カバル達を助けてくれたんだったな。友人として礼を言うよ」

 

横でウンウンと頷いてるのはアティス。

大分気に入ったのだろうか、或いは生き様に憧れてるのか、ロンメルの様な表情になってる気がした。

何処かの王様に向けていた表情とは全くの別物だ。

 

「いや、あれは……って、さっきもいっただろ? 俺は殆どやってない。そこの光ってたスライムがやったんだ。なんかよくわからんが、その辺ははっきり言っとくからな。俺はあの蜘蛛の脚一本捌くので精一杯。礼なら俺じゃなく、そのナンバー2ってやつにしっかりしてやれって」

照れたのか、アティスをぐいっと持ち上げると机の上に出した。

アティスに不敬な!と感じたシュナとシオンだったが、アティスとリムルがどうにか静めた。

 

その後は改めてヨウムを見る。

腕は悪くないが決して調子にのったりせず、仲間に慕われてカリスマ性もあり、人見知り癖のあるっぽいアティスも気に入ってて、顔も悪くない。決定的なのは良いヤツであるということ。

 

「よし…」

 

リムルは小さく声を出すと、完全に決めた。

回りの皆ももう付き合いが長いことから、何かを企んでいるであろうことは分かり、ただ笑っていた。

 

そして、リムルの企み。

 

 

その名は『ヨウム英雄化計画』

 

 

丁度ギルドマスターのフューズも居ることから周知させるのにも都合がよく現状では最短でいける。

 

この計画は何より、魔物である自分たちは、決して悪ではなく人間たちとも友好的になれるアピールをする絶好の機会なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、粗方説明すると当然ながら何いってんのコイツ? みたいな顔をされたのでちゃんと説明。

 

 

「俺たちは勇敢な若者を支援した、と言うことにしたい。大体あの騒ぎは俺たちにとっても災害そのものだったし、人間たちと手を取り合って、という形にしたとしても全然自然だ」

「それ良いですね♪ トレイニーさんたちからの森の情報、それに武器防具、食料も提供して全面バックアップ! まさに仲間! じゃないですか!」

「おう。仲良くしたいウチとしては対等~よりも協力を惜しまないそんなポジションがいいからな。悪いスライムじゃないし、俺たち」

「あははは! そーですよね! 平和が一番! サイコーです!」

 

 

 

 

 

 

 

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