メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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31話

 

「この俺に英雄になれ……? 何言ってんだアンタら」

 

 

 何だか満場一致みたいな感じで決まりそうだったんだが、それはあくまでテンペスト側の意向だ。当然ながらヨウムは何言ってるのかさえ分からなくもあった。

 

「別に強制じゃない。これはお願いだからな」

「是非、よろしくお願いします!!」

「いや お願いっつっとって、横のヤツの中ではなんか決定事項みたいになってんだが!?」

 

 

 アティスはアティスで、喜びながら周囲にきらきらと光る粒子を舞わせていた。宛ら勇者様誕生、もしくは勇者様凱旋! で演出されるような感じの光景である。

 

 

 とりあえず、その大仰な演出は 今は(・・)早い、と言う事でリムルに止められたので、一時停止。

 

「ほら、そこのフューズさんが言ってたろ? 豚頭帝(オークロード)倒したのが魔物じゃ、脅威が去ったとは言えないって。そりゃ、俺達が取って代わっただけ、ってなっちゃったら同じ事だろうし。んだから、ヨウムとその仲間たちが豚頭帝(オークロード)を倒したって事にしてもらいたいんだ」

「………はぁ?」

「ほれ、さっき俺達側だけで盛り上がってたけど、筋書きは、言った通り お前たちの全面的な支援。協力を惜しまない体勢を強調したい」

「みんな友達大作戦です!」

 

 

 脅威が去っても新たな脅威……と言うのは正直定番の展開。

 それを黙って容認するくらいなら、やはり協力ポジションが現状ではベストである、とリムルは判断していた。ゆくゆくは対等の関係でいたいものだが、いきなり魔物と対等! ともなれば、人間側がどう出てくるか……と。

 なので、最初は無償の提供から信頼を勝ち取るのが狙いだ。がめつくされたら勿論対処するが、それも追々に。

 

 そんな中で、ほわほわ~ と何処か気持ちよさそうな表情(に見える)アティス。

 普段より更に倍増しで、幼く感じられる言動の裏腹には、やっぱり色んな打算もアティスの中にはあるのだろう。

 

『人間と友達な魔物って、最後は一緒に手を取り合って~が定番ですよねっ! いつの間にか、周辺諸国が危険視して討伐対象! とかなっちゃったら嫌ですし! ね、マザー。ヨウムさんたちが討伐って事になるんだけど、人の身で合っても、豚頭帝(オークロード)を倒せたりするよね?? 不自然にはならないよね??』

――解。夫々の力量に合わせた成果であれば、問題ありません。……現状での、人間:ヨウム、その他人間たちの総合的な力量では不可能。

『う~~ん……、説得力ある様にヨウムさんたちにもある程度頑張ってもらわないとなんだね……』

 

 

 と色々とやり取りしてるアティス。

 会話からわかる通り、ヨウムが言ってる通り、……もうアティスの中では決定事項になっちゃっていた。否定してみたら騒ぎそうなのでそのままリムルは放置。……決定事項を目指すのだから、小さな光の神(アティス)にゲン担ぎと言う事にした。

 

 

 そして、追い風は吹く。

 その切っ掛けは 黙って聞いていたフューズだ。

 

「……その計画ですが、ブルムンド王国も協力出来るかもしれません」

 

 なんと、別国からも協力要請が可能であると示唆してくれたからだ。

 

「えっ、ほんとか?」

「是非是非!! 人間皆協力し合いましょう! 今日はお祭りです! 人と魔が手を取り合ったら絶対平和な世界です!!」

「ちょっとアティスはステイ」

 

 ずいっ、とアティスが前のめりになるので、流石に勢いがつきすぎ、と言う事で リムルは大きな手に身体を変形させて、アティスの身体をつかむと、横でカバル達と一緒におやつを頬張ってるミリムの元へと押し付けた。

興奮しすぎた事をアティスは自覚した様で、大人しくなった。……少し しゅんっ、となっていた。

 

「こほん。……知り合いの大臣に掛け合えば周辺諸国へ噂を流す事くらいは出来るでしょう。悪い話ではない。幾ら別国の人間であったとしても豚頭帝(オークロード)を討伐したのが魔物に比べたら、断然良い」

「っ……、ちょいまてよ。アンタまで何その気になってんだ! こいつら魔物なんだぞ!? イキナリ協力とか無理あるだろ!」

「……君に困惑も理解できる。だが、彼らとの友誼を得る事は人心の混乱を避ける以上の意味があるんだ」

「は? どういうことだよ」

「……ひとつ、いや ふたつだな。情報を教えよう」

 

 フューズは、一呼吸を置いてヨウムの知らない情報を言った。現状の価値観を揺るがすような驚愕な事実を。

 

「……我々が知りえた情報では、1つは この国の国民1万余は一人残らず全て名前持ちの魔物(ネームドモンスター)である事。そしてもう1つはこの地に () が降臨した、との噂までたっているという事だ。……1万のネームドがいる、と言うのは実際目にしてみたはっきりと判った。そして噂の方だ。噂は噂なのだが、こちらの方が真実だとするならば、1万余の新たな魔物が生まれたとしても、幾らでも説明が出来るからな。……つまり全てが繋がる」

 

 神の定義が人間の世界ではどんな感じなのかはわからない。

 だが、最強の魔王の一角であるミリムが、物凄く友好的になったのを考えてみると、人間の世界じゃ宗教のトップ、みたいな感じだろうか。アティスは一縷の不安が頭をよぎる。

 

 1万余の名のある魔物誕生 ⇒ 神がもたらした ⇒ 悪しき神だ!! 討伐!!!

 

 

 みたいな感じにならないかな? と。

 ……魔王なら兎も角、人間が神に挑むなんて早々あるものじゃない。ゲームの世界だったら、挑む展開があるとしたら裏ボスなポジション。……まだまだ早計。万が一、億が一、兆が一あったとするなら、それは遠い未来の話だろう。仲良くなって、力自慢が腕を見てくれ~~って感じで挑んでくる。みたいな? 希望的観測である。

 

 フューズは、色々と思案しているアティスを他所に、続けた。

 

「……彼らがその気になれば、この場にいる我々はおろか、国が一つ滅んでもおかしいとは思わない」

「っ………」

 

 

 そこまで言われた所で、ヨウムは押し黙った。

とんでもない相手に無礼を叩いてしまった、と言う事を今更ながら少しは理解したのだろう。

 

 リムル側とすれば、脅すようなつもりは毛頭ない。だからこそのこの提案なんだから。友好的にいこう! と色々と模索してるのに、破綻する様な事をするわけがない。

 

「……こんなに愛らしいのになぁ」

「デスヨネ……」

 

 プルプルしてる2人が揃ったら和むような気がするんだけれど、そのプルプルボディの向こう側には強大な力があるのであれば…………、暫くはしようがないのかな、とあきらめるしかなかった。

 

 でも、フューズはこの提案には前向きに検討してくれているので良しとした。

 

「先ほどの計画、私としては賛同いたしたい。もちろん、あなた方が本当に人間の敵ではない、と言う事が大前提ですがね。ここばかりは口上だけでは納得はし難く」

「それは当然だな。―――なんなら、暫くこの国に滞在すると良い。この国の事をもっともっと知ってもらいたいし、悪意があるか無いかは、各々の目で見て、そして感じてもらいたい」

「ああ、それは助かります」

 

 ミリムに抱きかかえられてたアティスは、上手く はぐれメタル状になってすり抜けて、机の上に戻る。

 

「町の案内なら任せてくださいね? ヨウムさん」

「いらねーよ」

「ぅー……。悪いメタルスライムじゃないんですよ……」

「その辺はもう疑っちゃいねぇって。……なんのかんので俺らを助けてくれた事実には変わりねぇんだ」

 

 ヨウムはそう告げる。

 口では色々と言っていたが、感謝すべき所はしているのだ。命の恩人と言っても差し支えないのだから。それ程までに、あの巨大蜘蛛は人間にとっては脅威なのだから。

 

「ふむ。ヨウム君にも是非、前向きに検討してもらいたいんだがな。この計画の要なんだし。……でも、無理強いはするつもりは無いからそのつもりで」

「……ったく、俺はそんなガラじゃねぇよ。勇者にでもなれってか? 俺の出生とか聞いたら呆れられるぜ。そんなヤツが勇者の真似事なんて」

 

 と、否定気味の言葉を発した時だ。

 アティスをぐいっ、と元の定位置に戻したミリムが言った。

 

「勇者はダメだぞ。あれは魔王と同じで特別な存在なのだ。勇者を自称すれば因果が廻る。……つまり、長生きしたければせいぜい英雄を名乗る事だな」

「なるほど、そんなのがあるんですね……。あ、でも勇者より英雄の方が親しみが沸く感じがしますね。勇者だったら、その……、魔物と戦うのが定番な気がしますし?」

「それ、お前ん中でドラ〇エがずっと根付いてるからだろ? 絶対」

「……仕方ないですよぉ」

 

 リムルは色々と認識を改めていた。

 ミリムが言う以上、勇者、魔王 と言う名は それを使うだけでも世界に影響を与えるんだと。名前を付けるだけで、進化・強化される所を鑑みても……嘘であるとは到底思えない。ミリムが嘘を言う理由も同じく無い。 うっかり魔王を名乗る!なんて思わなくて良かったと実感。アティスに関しては、魔王怖い 状態だったから尚更良かった。

 

 そう一息ついてた時だ。

 

 ドゴッ!! と大きな音がしたのは……。

 

「わーーー、ヨウムさん!!」

 

 頭から湯気を放出しながら白目向いて気絶したヨウムがそこにはいた。

 そして、リムルとアティスの隣では、思いっきり拳を突き出してるミリムの姿が。

 

「ミリム様……」

「お前なぁ……、このタイミングで暴力とかアウトだろ……??」

「い、いや 違うのだ!! さっきアイツがわたしの事をガキとか言ったから、つい、なのだ!」

 

 頑張って言い訳を言ってるミリム。

 如何せん魔王相手に暴言は確かに不味い……。何とか収まってくれているんだけれど、ミリムはとんでもない存在なんだ、と直ぐに他の人間たちにも周知する必要がある、と認識するのだった。

 

 そして、アティスはせっせと回復(2回目)。

 

 

「(二度も殴ったせいで)なかなか信用できないかもしれないが、本当に無理強いするつもりはないんだ。……ゆっくりと考えてみてほしい。この国にも拘束するつもりもない。直ぐに出ていくのも自由だ」

「…………直ぐに出てくつもりはない。……ただ、俺もこの国を見てみたい。構わないか?」

「勿論だ」

「ちょっと待ってくださいね。もうちょっとで全快しますから」

「……大丈夫だ」

 

 

 綺麗に頭のタンコブが無くなった所で、ヨウムは席を立った。

 自分の目で、この魔物の国を見て回る為に。

 

 

 

 

 

 

 その後、残ったロンメルからヨウムについて更に聞いた。

 曰く『豚頭帝(オークロード)の軍勢に見つかって全員死亡……と伯爵に伝えろ』と

 

 死亡した事にすれば、国から追手もかからないだろう。そして、何よりも 命の危険がかなり大きい大仕事。拒否した所で、強欲な伯爵であれば そんな無様は許さない。 戻れば処罰か強制労働しかない。

 だからこそ、ヨウムは仲間たちに言ったのだ。

 

『嫌なら俺についてきな』

 

 と。

 そして、全員がヨウムについてきた。説得力の無い言葉であればついてくる訳がない。行くも地獄、戻るも地獄な状態でヨウムを選んだ。それがどれ程のものなのか、容易に想像できるものだ。

 

「ほんっと男前だねー」

「ちょっと恥ずかしいですけど、言いたいセリフランキングに入りそうですね……」

「あははは。それだけヨウムには皆が信頼しているんです。彼が仲間を大事にする男であると言う事はもう皆が知ってる事ですから」

 

 ふんふん、と頷いてる時だ。

 

「ちょっと良いですかぁ??」

 

 はいはい! と手を上げるのは、さっきまで オヤツのポテチモドキを頬張っていた 冒険者のエレン。

 

 何事? と振り向くアティスとリムル。

 

「アティスさん、って言うんですよね?? 前にリムルさんと会った時は居なかったと思うんだけど」

「えーっと、ちょっと色々あって前は別行動してて……」

 

 ふんふん、と頷いてる。

 兄弟分である事は前に伝えていたから、それとなく気になってたんだろう。……オヤツの次に。ヨウムからも貰ってたポテチが完全に無くなっていた。

 

「私、アティスさんともお話してみたいですよぅ!」

「そーだよなー。何だかんだ色々とあってちゃんと話せてなかったし」

「そうでやんすね。リムルの旦那に兄弟ってのも驚いたやんすが、恩人って共通点もありやすし。それに あっしらは 思っちゃいないっすからね。悪いスライムなんて」

「おぉ……ボク悪くないスライム のセリフに返答があるとは! 嬉しいですね! 悪くないって信じてもらえるっていうのも! リムルさんのおかげです!!」

 

 今回のはネタ発言ではないのだが、それでもツボに入ったリムルは思わずまた笑いそうになるのを必死に堪えていた。

 

 アティスは何だか嬉しくなって、身体を粒子化させると 追加のポテチを取り出した。

 きらきらと舞うポテチに皆が凝視する。

 

神々しいポテチここに有り、である。

 

 

「ワタシの分は何処なのだ!?」

「わぁっ、も、もちろんミリムさんのもありますから、落ち着いて! しゅ、シュナさん。在庫はまだ大丈夫でしたっけ??」

 

 

 ポテチをエレン達に渡してる最中、ミリムの目が光ったかと思えば、腕を回された。

 ミリムもすでにたくさん食べてるんだけど、と思いつつも お預けするのは可哀想なので、シュナに在庫状況を確認。

幸いにも笑顔で問題ありませんよ、と還ってきたので、ミリムに改めて追加を渡すのだった。

 

 

 

 カバル達が黙々とオヤツのポテチを堪能しているのを呆れながら見てたフューズは、ヨウムと同じく席を立った。この町を見る為にだ。3人を連れていくかな? と思ってたリムルだったが、1人で出て行っていた。

 

「もぐもぐっ、んっ! あーー、おいしいぃ……! あっリムルさん聞いてくださいよぅ? 私良い子にしてたから、神様みたいにアティスさんに助けてもらえたんですよぅ!」

「食べるか喋るかどっちかにするでやんす」

「ギドも人の事言えねぇだろー? 食ってばっかの癖に」

「これ止まらないでやんすから しかたねーです」

 

『こいつら全員食ってばっかだな』

とリムルは呆れ。

 止められない、止まらない~♪ って古い歌が頭の中を流れた気がしたのがアティス。

一先は肯定する。

 

「神様にかー、確かに。何れはテンペストを守る神様だな。アティスは」

「……いやいや、神ってなんですかソレ。俺 崇められるのとか、絶対嫌ですからね?? 皆友達、皆仲間、皆家族で楽しくです!」

 

 ふよふよ、と光の粒子がポテチ運びと言う任務を終えて戻ってくる。

 光が集まってきて、集約する様は 何とも神々しくて 神と言ってもおかしくないだろう。……まぁ、スライムである事がちょっとしたハードルになっているが。

 

「でも、私たちを守ってくれた時、ほんとに神様だーーって思いましたよぅ! 嬉しかったですよぅ!」

 

 がばっ、とアティスに抱き着くエレン。

 うわわっ、とビックリしたのがアティス。

 

 

 本当に賑やかな人達だとアティスは感じていた。リムルから聞いていた通り。

 

 

「私たちと一緒に冒険しませんかぁ! アティスさんっ!!」

「ええっ?? ……リムルさん これって、ホイ〇ンになるって事かな?」

「違うだろ。そもそも向こうはホイ〇スライムだし。つーか、色々やんなきゃダメな事てんこ盛りだから、アティスはやらんぞ」

「少しくらいなら貰っても……」

「やらんっつーのに」

「………わぁ、また物扱いされてるー」

 

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