メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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32話

 

――拝啓 リムル様。それにテンペストの皆。お元気でしょうか? トレイニーさんたち樹妖精族(ドライアド)の集落に向かって3日。 つまりテンペストを少し留守にして3日くらいですかね? 何だか凄く昔のような気がします。ヨウムさん達が頑張ってくれたことも。ついこの間の筈なのに遠い過去の様な……。あぁ……、あの平和な国の暮らしがとても恋しいです。え? それは どうしてか? ですか? ……ええっとですね。何故なら、ボクは元気ですって言える様な状況じゃ無くなってしまったので。ええ。目の前に物凄いのがいるからなんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アティスは今、全力で現実逃避をしたいと強く想える程の光景が目の前に今、広がっていた。

 

 何故なら、空が真っ黒に染まっているから。

 黒くなっている原因は判り切っている。

 物凄い数のお魚さんが空を泳いでいる事にあった。身体も凄く大きくて隙間が殆どなく泳いでるので、光を遮ってしまっているのである。雲が光を遮る様に……。物凄く薄気味の悪い光景だ。

 

 最早魔物の世界で驚く事など もう殆ど無いだろう、と心の中では思っていた。何せ最強最古の魔王の1人であるミリムとの付き合いもあって、耐性が出来たと言っても過言じゃなかったのに。

 

 

「あれが、暴風大妖渦(カリュブディス)……」

「……はい。そして その周囲に集っているのが 異界より召喚した魔物――空泳巨大鮫(メガロドン)

「わーー、すごーい。メガロドンが絶滅したのって、この子がこっちに取り寄せちゃったからなんだー。凄い発見だねー! 謎は解けた! なのかな?? かな??(棒)」

 

 現実世界――ではなく、別世界と言うべき地球では、メガロドンは 太古の鮫であり 絶滅したとされている。その巨大さは現存する鮫の中で一番大きい鮫、ジンベエザメよりも遥かに大きく、ホホジロザメが巨大化したようなものだ、と言われていた。(うろ覚えだが)

 でも、その真相はこの世界に召喚されちゃったからだという事が今判った。時間軸に色々と矛盾がありそうな気もするが、目の前の光景を見たら、そう推測される。

 

 そんな歴史的発見を目の当たりにしたアティスは妙なテンションになってしまっている。さっきまでは現実逃避していたのに。

 

 そんなアティスを見て、トレイニーは頭を下げつつ進言した。

 

「……やはり、アティス様はリムル様の元へ退散してください。ここは私共が対処致します。アティス様はリムル様たちと迎撃の準備を整えてくだされば」

 

 トレイニーがそういった直後、妙なテンションだったアティスはすぐさま復活した。

 あの、巨大なモンスター カリュブディスが復活した場面に出くわした時、トレイニーにもう何度もいわれた事だった。でも、アティスは首を横に振る事は無かった。危険な目に遭わせる訳にはいかない。自分達の領土内であるなら尚更ったトレイニーは、何度も何度も避難を進めて、強引な手段にもっていこうともしていたが、アティスは折れなかった。

 

『トレイニーさんは大恩人だからね。そんなひとを見捨てて逃げる様な事はしたくないんだ。……光お爺ちゃんにまた笑われちゃうよ。ヘタレがー! って』

 

 そう言ってアティスは笑っていた。そこには、いつもの逃げ逃げ一極なアティスはいなく、ジュラの森の全てを守護する神の風格を垣間見た。

 

 でも、やっぱり性格と言うものは直ぐに変わる事は無い様なので、トレイニーに心配されちゃったのだ。その辺りもアティスらしいと言えばそうだ。

 

「だいじょーぶ! 圧倒されちゃったけどさ。……何とかなりそうだよ。マザーにも確認取れてるし。それに倒す(・・)んじゃないんだ。……俺が出来るのは、護る事。だから、アイツを止めて(・・・)見せるよ。だから、トレイニーさんはリムルさんたちに伝えて欲しい。脅威が迫ってる事と、ここで俺が頑張ってますよー! って。たまには男らしい所も見せないとですから!」

 

 

 アティスはそういうと高く高く跳躍した。

 カリュブディスと同じ視線の位置まで。

 

 

「魔力妨害はとても厄介みたいだけど、どうやら 俺には関係ないみたいなんで、……ね! いくよ! マザー」

――了。発動補佐実行。……個体名:アティス・レイの深淵に存在する光魔素確認。使用開始。……臨界点到達。―――更なる高みへの試み、挑戦実施。……成功しました。使用開始致します。

 

 

 聖母(マリア)が補佐してくれたことによって、アティスの内に存在する未だ解析不能の力である光の神G.O.Dの魔素の効率的運用と放出を行う。

 理由は不明だが、この魔素は スキルによる妨害等は受け付けない様だった。故にあのカリュブディスが取得している《魔力妨害》にも影響を及ぼさない。大妖の力をも受け付けない反則すれすれの力なのである。

 

 

 後はアティスが聖母(マザー)の指示の通りに発動するだけだ。

 詠唱による効果を発動させる。心と身体が一致した時、如何なる力もよる強力になるのは、以前のアティスの御業、剣の世界(ソードアート・オンライン)で経験済み。

 子供か!? って思われるかもしれないが、思い入れのある言葉を必殺技や魔法として発動するとより安定し、強固になる。何度も何度も練習したので、最早今更何叫んでも恥ずかしがったりしない。……と言うか、そんな風に想ってる場合でもない。

 

 アティスは、精神を集中させ、身体の周囲に光の粒子を集中させて両手を前面に構えた。

 

 

「この力で皆を――守る。来れ、光の守護神(エクスペクト・パトローナム)

 

 

 それは嘗ての世界で好きだった映画から拝借した名。

 技に名を与えるコトで、その光の粒子は更に輝きを増して、カリュブディスを、そしてメガロドンたちを包み込んだ。

 

「ぐおおっ!?」

 

 カリュブディスからすれば、アティスは視認できていなかったのだろう。突然の光に包まれて、混乱をしている様だ。

 

「少なくとも皆が来るまでは絶対に逃がさないからね! 皆で作った街やこの森を傷つけさせない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、同刻。テンペストにて。

 

 

 ミリムが遊びたい! と言うので、折角だから 人間の冒険者たちに同行させていて帰ってきていた。勿論、冒険者とはあの3人組である

 魔王だから、と萎縮するかな? と思っていたが、神経が図太いというか、いつもいつも厄介極まりない魔物の巣を突いて回る度胸? も持ち合わせている為か、はたまた 激運(スキル)でも持ち合わせているのか……、難なくミリムとは合わせていた。

 

『ミリムちゃんはすごいんですよぅ! すぐに魔物を発見するので狩りがらくらくでした!』

 

 との事。

 魔王様をちゃん付けとは失礼な! って思ったりもしたが、ミリムは全然気にしてなく、寧ろリムルに成果を見ろ視ろ! とせっついていた。

 

「うむうむ。そう言えばリムル! アティスはまだ帰らぬのか??」

「ん? ああ。トレイニーさんの所に用事があるって言ってたからな。それにトレント族との打ち合わせもあるし、……打ち合わせみたいな所にミリム行っても面白く無いだろ?」

「勿論なのだ! でも、アティスは別なのだぞ??」

「わかってるわかってる。もうちょっとの辛抱だから(一緒に言ってたら余計な負荷かけて、時間も伸びちゃいそうだし。何より、向こう側がすげーーー大変な目に遭いそうだからな。その辺はしっかり管理しないと……)」

 

 リムルはアティスがいなくてミリムが暴走? しない様に頑張っていた。光の神様直伝の堅さはやっぱり凄いもので、真っ向からまともにミリムに付き合えるのはこの街でもアティスくらいなのだ。そんなアティスがいてくれるからミリムも思いっきり出来たりするのだ。……アティスにとっては悲惨極まりない事なんだけれど、人?には役割と言うものがあるので、今後とも頑張ってもらおう! とリムルは常々思っていたりする。……勿論、また前みたいに天に昇天されるのは御免なので適度な休息は設けているが。……手伝ったりも当然しているし。

 

 

 そうこうしている間に、ミリムの成果がはっきりとわかる外へ、ギドやカバルの元へと到着。……そして、異変に気が付いた。

 

 

 そこには2人だけでなく、樹妖精(ドライアド)のトライアが来ていたから。

 

 当然突然の事で、ミリムやシオンが警戒したが、リムルが牽制した。

 

「その人は敵じゃない。確かトレイニーさんと一緒にいた人だ」

「……はい。突然の訪問相すみません。私は樹妖精(ドライアド)のトライア」

「ああ。覚えているよ。ガゼル王が来た時、トレイニーさんと一緒にいたし。アティスが世話になってる事も知ってる」

 

 全員の警戒が解かれたのを確認しつつ、シオンから降りてトライアの元へと向かうリムル。

 

「お久しぶりでございます。盟主様」

「……ああ。だが、懐かしむ前に説明してくれないか? その殺気………、一体何と戦っている? アティスは来てないのか?」

「っ―――。ご報告を申し上げます。暴風大妖渦(カリュブディス)が復活いたしました。そして……、アティス様が……」

 

 アティスの名を出した時、弾かれた様に動いたのはシオン。トライアに詰め寄る勢いで迫った。

 

「カリュブディス!? アティス様はどうしたのですか!!」

「っ……っっ……」

 

 トライアも凄く辛そうなのは見てわかる。

 それに、アティスの事は樹妖精(ドライアド)たちはある意味 盟主(リムル)よりも上、最重要人物として見受けている事も知っている。

 光の神との接触は、それほどまでに希少で、有難い事なのだという事だ。

 

 リムルは、興奮しているシオンを抑えた。

 そんな彼女たちが、アティスに何かをするとは到底思えなかった。だから、十中八九……。

 

「その何か凄そうなヤツ相手に……、アイツは向かっていったのか?」

「……その、通りです。姉のトレイニーが、私達が止めましたが……。その、リムル様に言伝があります」

「……ああ。教えてくれ」

 

 トライアは大きく息を吸い、そしてゆっくりはいて呼吸を整えて、伝えた。

 

 

「『テンペストを狙ってるみたいだから、俺が頑張って足止めするからね? だから、皆の事宜しく』」

「っ……。なんなんだよアイツ。自分のこと、過小評価しまくってた癖に、なんでこういう時に……」

 

 アティスの性格は判っていた。

 一緒にいる時は、……結構甘えるというよりヘタレる所が多い。それはリムルの事を頼っているから、と言うのもあるが、共にいるからこそ安心できるからこその行動だ。そして、ここぞという時は何だかんだ言いつつも しっかりと対応してくれる。

 

 それが、皆の危機的な状況なのであれば、尚更顕著に現れる。豚頭魔王(オーク・ディザスター)の時が良い例だ。

 その上、自分しかいない場面で、テンペストの皆に危険が迫っているのであれば、1人で向かって言っても不思議とは思わない。その場に甘える相手も、ヘタレれる相手もいないのだから。腹を括って力のある限り頑張ってくれる。……そして、無茶もする。

 

 

 そういうアティスの事は此処にいる誰もがもう判っているのだ。だからこそ、皆もアティスを守ろうとするのだから。

 

 

 リムルは即座に人に変化した。

 

 

 

「今すぐ対策を練る! この場所へ皆を集めてくれ!」

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