メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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33話

 

 アティスが 災厄級(カラミティモンスター)相手にたった1人で戦っている、と言う事実は瞬く間にテンペスト中に広まった。 そして、勿論 誰もが手に武器を取り、アティスを助けに! と我先に行動開始しようとしていたのだ。

 統率が乱れてしまっている。これは非常に珍しい事で、ここテンペストの軍部はベニマルをトップに統率はしっかりとれている筈なのだが。

 

 特にリムルとアティスの秘書を名乗り出てるシオンが一番暴走していて、大剣片手に猛ダッシュ! で向かおうとしていたが、リムルがどうにか捕まえて引き戻した。

 

 まずはすべき事、全て片付けてからだ。

 

 リムルもアティスの事は心配している。仲間であり、テンペストNo.2であり、弟分であり……家族だ。

 別の仕事があって、長期間離れたりする事はあるにはあったが、この様な事態は初めての事。リムルとて、真っ先に行きたい所だが、国を背負っている。更に他国の者達もここテンペストに集まっている。諸外国にこの災害についての迅速な周知が必要だ。すべき事、纏めるべき所はあるのだ。

 

 直ぐにでも行きたい。と言う強い気持ちは、当然仲間達全員に伝わっており、リムルは 慌てる皆を見て冷静さを保つことが出来、そして慌てた全員は リムルの様子を見て、冷静さを取り戻す事が出来たのだった。

 

 

 

 

 そして――街外れにて。

 

 

 

 

「……既にもう皆判ってると思うが、巨大な敵が直ぐ傍にいる。……そこでアティスが頑張って止めてくれている。アティスが無事だっていう事はトライアさんが常にトレイニーさんと交信しているから、そこは安心してくれ。何かあったら、ふん縛ってでも連れてくる様に伝えてるから」

 

 リムルの言葉を聞いてより落ち着く事が出来た。非戦闘員は特にだ。アティスが慕われているのがよく判る。心優しきアティスだからこそ、その想いが伝わっていったのであろう、とその場にいたフューズは思っていたが……、今回の相手の強大さを鑑みたら、そう落ち着いてなどいられない。

 

 

「――アティスの事は心配するな。アイツはオレの兄弟だ。アイツの実力は、皆も知っているだろう? それに、ベニマルが迎撃態勢もしっかりと整えてくれた。なので、非戦闘員はリグルの指示に従い、戦況を見たうえで、森の奥へ避難する様に。以上! 来るべき時が来ても、慌てず騒がず行動を心掛けてくれ!」

 

 

 集った全員が 一糸乱れぬ動きで頷いた。

 それを見たリムルは安心して次の指示を出す。

 

「べスター。ガゼル王へ連絡を頼む。……そちらにも被害が及ばないとは言えないからな」

「……はっ。お任せください」

「うむ。頼んだ。……ああ、フューズ君。悪いな、折角の休暇を楽しんでいたってのに。良ければ一緒に皆と避難をしてくれ。ここが爆心地になるかもしれないからな」

 

 リムルがそう言うと、フューズは再び険しい顔になる。

 カリュブディスの事を知っている人間の内の1人だからだ。

 

「なぜ――逃げないのですか?」

「うん? 決まってるだろ? ……仲間が1人頑張ってるんだ。俺たちが逃げる訳にはいかないさ」

「………カリュブディスは災厄級魔物(カラミティモンスター)ですが、その脅威は災禍級(ディザスター)以上とも考えられています。……つまり魔王クラス。認定されない理由は【知恵ある行動をとらない】その一点のみなんのです。……あなた方は、魔王を相手にしようとしているんですよ? 言い方は悪いですが、見捨「それ以上は言わない方が良いぞ」……っ!」

 

 

 フューズは、『見捨てた方がまだ賢明である』最後まで言えることは無かった。その場にいる全ての者達の殺気が充満し、集中していくのを感じ取れたからだ。普通の人間であれば即座に昏倒してもおかしくない程の圧力だった。

 

「フューズ君の言う事も最もだ。でも、此処は俺たちの国で、今、その魔王クラスの相手をしているのは、俺たちの大切な仲間。此処に揃ってるのは みーんな仲間想いな奴らばっかだからな。……怒られても知らないぞ」

 

 まだ平静っぽいリムルが一番のソレ(・・)を纏っているのが判る。最後まで言った時には、何をするか判らなかったからだ。

 

「一蓮托生なんだ。アイツとは。だから、俺も負けたなら、皆には逃げるように言っている。だけど、負けて諦めるつもりは無いよ。――でもまぁ、万が一の場合はブルムンドでの住民の受け入れを検討してみてくれよ」

「っ!? 万が一って……… いえ。すみません。あなたはこの国の王……皆の主でしたね。私も言葉が過ぎました。申し訳ない」

「―――いや、構わないさ。フューズ君が俺たちの事を想って言ってくれてる事くらい、ここの皆判ってるからな。……それに、魔王に匹敵すると聞いたら、尚更引くわけにはいかないし、やる気も増してくるってものだぞ」

 

 リムルは、ゆっくりとスライムの姿から、人型へと変化していく。……その姿は、フューズにも見覚えがあった。

 

「俺はシズさんとは同郷なんだ。彼女の意思と姿を継いだ。魔王レオンをぶん殴るためにはカリュブディスなんぞにビビってるわけにはいかんのだよ」

「っ!! そ、その姿は……。あいつらから話には聞いていたが、本当にあの人の……!?」

「……あとすまないが、ひとつだけ、頼みがあるんだが」

「……わかりました。聞きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、戦闘員を厳選し――行動を開始する。大規模転生魔法陣を設置して、トレント族の集落付近に転送場所を調整。

 

 その間に、トライアからカリュブディスの話を聞いていた。

 そして、意外な事実が判明する。

 

「え? ヴェルドラの申し子??」

「はい」

 

 何と、馴染み深い存在が絡んでいるのだ。暴風竜の名が。

 

暴風大妖禍(カリュブディス)は、ヴェルドラ様から漏れ出た魔素溜まりから発生した魔物です」

「……そうか。えーっと、って事はまさか……」

 

 リムルの中である可能性が浮かびあがった。何でも突然、復活を果たしたこと。勇者に封じられていた存在がそう簡単に復活出来るとは思えないのだ。あの暴風竜ですら 身動きが取れないのだから。今はリムルの胃袋に入る、と言う形で何とか消滅をさせないようにしつつ、解析を進めている。

 

 もしも、原因が暴風竜ヴェルドラにあるのなら、今まさにリムルの中にいるヴェルドラに反応し、何等かの現象、いわば災害でも災禍でも、何かが起きて復活を果たしたのであれば……? 可能性はゼロじゃない。寧ろ高いとも思える。

 

「……ヴェルドラ様の因子を持つ、ということでその危険性は伝わったかと思います。――はじめに、申し上げておきます。かの大妖には魔法は殆ど通用しない、と思ってください。あの者の持つエクストラスキル《魔力妨害》の影響で魔素の動きが乱されるのです」

「って、ちょっと待て! 物理攻撃で削るしかないって事?」

「はい。……ですが、傷を負わせても直ぐに回復してしまうのです。あの凄まじさは間違いなく《超速再生》を保有しているものと思われます…… その上」

「まだあるのかよ!!」

「はい……。かの者の周囲には無数の魔物――空泳巨大鮫(メガロドン)が存在し、従わせています。厄介な事に配下の為、それらにも魔力妨害を持っているのです」

「聞けば聞くほどメッチャ心配になってきたぞ! アティスのヤツ大丈夫なのか!!? 直接接近戦とかになったら!」

 

 やる時はやる男! だとはわかっているのだが、転生してきた天性のヘタレ。……洒落ではなく、この世界の神様でさえ、そう呼んでるのだから、尚更心配なのである。

 

 そんな心配は余所に、トライアは 表情が少し朗らかになりながら答えた。

 

「アティス様が身に纏う光の魔素は、それらに影響されません。唯一の例外があるとすれば、光の神G.O.D様の魔素でございます」

「……おおっ! 改めて聞いてみたら なんか反則っぽいな! つーか、色々と黙ってないんじゃないか? そんな力があるっていうのなら、ほら、他の魔王とかも反応したり、その力を手に入れようとしたり、とか」

 

 その話をしてる所でやって来たのはミリムだ。

 

「それは無いぞリムル! ヒカジイの力は絶対。不可侵なのだ。仮にヒカジイがここにやってきたとして、わたしたち魔王を含め、世界中皆で遊んだ所で、力を得るコトは出来ないだろう!」

「うえぇ、唯一絶対神ってヤツ?? ま、その方が公平っぽくて良いんだけど……んじゃ、アティスは何で仕えたりするの??」

「うーむ……、全てな訳はないと思うが。わたしもこんなの初めてだったからな。細かい所は判らんのだが、ヒカジイの意思で、魔素を分け与えた、と言うのなら、可能なのではないか? 色々小難しそうだがな!」

 

 ミリムの説明を聞き、色々と納得しつつ…… その凄い力をやっぱりアティスは持ってる事から安心出来たりもした。

 

 そして カリュブディスの件。厄介さを皆が目の当たりにし、表情を顰めていた。そんなのを1人で相手しているアティスの事も同時にやっぱり皆心配、なのである。

 

「だがな! リムルよ! わたしが誰だか覚えてないのか? そんなことは言わせぬのだ!! アティスと遊んでも良いのはわたしだけなのだ!! 魚なんぞにくれてやるつもりはないぞ!」

「ミリム!!」

 

 ヴェルドラの申し子――、それを相手にするのはヴェルドラに匹敵する天災級(カタストロフ)の魔王ミリム。

 

 その手があったか! とリムルは思わず歓声を上げそうになった。……でも、それは出来なかった。

 

「……そのような訳にはまいりません。ミリム様。これは私達の街の問題……そして、私達の守り神であるアティス様をお救いする為、私達がしなければならない事なのです」

「そうですよ。お友達だからと、なんでも頼ろうとするのは間違いです」 

 

 リムルの表情が一気に青くなっていく(元々青いが)。

 秘書や側近の皆さんが勝手に仕事を断ってくれている。仕事を取ってきてくれる事があるのも有難い事だが、これは非常に痛いだけだ。

 

「リムル様がどうしても困ったとき、その時は是非ともお力添えをお願い申し上げます」

「(おれ、今めちゃくちゃ困ってるのに……)」

「ぅぅ……、そっかぁ……。アティスを取り返してくれるか?」

「勿論です!! アティス様は私たちの、リムル様の大切なお方なのですから!」

「(ええーーーーーー!! そのとーりですけれども―――――!?)」

 

 皆の視線がリムルへと集まる。

 ここで、頼む! ミリム!! なんて言った日には、アティスにヘタレ! と言えないくらいヘタレで格好悪い。

 相手は魔王なんだから、そんなこと言ってられない気もしたが。

 

「そうだぞ! ミリム。まぁ俺を信じろ! ほれ、俺とアティスが揃ったらさいきょーだ! その証拠にミリムとも一緒に結構遊べたりするだろ!? なー??」

「ぅぅ……わかったのだ………」

 

 しゅんっ……と目に涙を浮かべながら とぼとぼと立ち去っていくミリム。なんだか可哀想だ。

 

「(―――すまんな、ミリム。俺も泣きそうなんだ)」

 

 

 と、そんなこんなと色々とあった所で 準備が完璧に整った。

 

 

 

「よし。皆―――行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして丁度その頃のアティス。

 

 

「ぐるおおおお!!!」

「わあああああ!!!」

 

「ぐおおおおおお!!!」

「ひゃあああああ!!!」

 

「ぎょおおおおお!!!」

「ぴゃあああああ!!!」

 

「ぐるおおおおお!!!」

「ひぎゃああああ!!!」

 

 

 大大々絶叫真っ最中なのである。

 

 見事、初手でカリュブディスとその側近のメガロドンを全員、光の粒子体 《光の守護神(パトローナム)》に封じるコトは出来た。

 行動を削ぎつつ、それでいて森に被害を及ばさぬ様に宙にゆっくりと持ち上げて……大空大決戦な舞台に出来た。

 

 ――そこまでは良かった。

 

 でも、忘れてはならないのが、この粒子のひとつひとつが アティスと感覚が繋がっている、と言う事。

 つまり、極小の粒子の1つ1つがアティスであり、それらを操作して色々と攻撃したり、防御の厚みを変えたり、軌道を変えたり……と、色んな事が出来る。

 

 でも、その感覚が繋がってる(・・・・・・・・)のが一番の問題だった。

 

 アティスの中で暴れているのは、カリュブディス……メガロドン……、つまりサメだ。

 

 サメとくれば、過去の記憶を遡ってみて、覚えがあるのは当然ながら超有名なサメ映画。サメ映画の金字塔 『ジョ〇ズ』である。

 あの映画を見てしまったおかげで、海へ行くのが怖くなった。風呂場でさえ恐怖を感じる、とまで言われ、社会現象となってしまった事は覚えがある。

 

 それは、アティス君も当事者だったりした。あれを見たせいで、当分海に行っても泳がなくなったから……。

 

 そんな恐怖が 自身の中でたっくさん存在している。あの大きな口で、牙で襲い掛かってくる恐怖。……魔王とかも当然ながら恐怖の塊なんだけれど、言わばガゼル王に感じたトラウマと同種のものだから、理屈ではないのだ。

 

「アティス様……。大丈夫ですか??」

「あ、あい……。だいじょーぶです。ええ、とってもだいじょーぶです! がんばりますよっ!!」

「いえ。一度下がられた方が良いかと思います。我々が精霊召喚にて援護致しますので」

 

 トレイニーの提言を聞いて、怖がって大絶叫だったアティスだったが、何とか保たせた。

 

「……いや、それはダメだよ。マザーに聞いたから。……申し訳ないけど、トレイニーさんの上位精霊じゃ あれを止めるには足りないって」

「っ……」

「俺なら大丈夫だから! ……ちょっと子供の時のトラウマを思い出させてくれちゃっただけだから!! ていうか、こっちの世界のひと、いじめっ子みたいなのが多くない!?」

 

 別にそんなつもりは毛頭ない筈だけれど、色々といじめられることが多いので、そう叫んでしまってるアティス。

 

 勿論 何だか情けないので、直ぐにそんな事を言うのは止めたが。

 

 

「大丈夫。絶対負けない戦いをするから! 勝ち! もなかなか見えないけど、負け! も無い。光粒子弾(シャイニングバレット)でちくちく攻め続けたらきっといつかは樹っと勝てる」

 

 光に閉じ込められたカリュブディスとメガロドン。その眼下には、メガロドンが数体転がっていた。それは、アティスの光の弾丸を浴び、絶命したものたちだ。質量・数共にあまりにも多いし大きいので、まだまだ焼石に水だが、点数性で言うなら まだまだ無失点である。

 

「絶対に 街の皆は傷つけさせない。トレイニーさん達の事も、絶対に護るから。この森の皆を護るって、決めてるから」

「……アティス、さま。微力ながら私もお手伝いさせてください。私の魔素(エネルギー)を貴方様に」

「えへへ。ありがとね。トレイニーさん! じゃあ、頑張る!!」

 

 アティスは両手に込める力を更に上げた。

 攻撃の出力を上げる為に。

 

 手に伝わってくる抵抗感、そしてそろそろ襲ってきた倦怠感。凄い力を持っていても、使い切るだけの上手さ、精神力、その他もろもろがやっぱりまだまだ足りてないのが悩ましい所だが、アティスにもイジってものがある。

 

 だから、限界のギリギリまでやってやる! と力を入れ直した時だった。背後より、声が聞こえてきたのは。

 

 

「お前、今回は格好つけすぎだぞ? 急にキャラ変わっちゃったら皆ビックリするだろ?」

 

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