メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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超遅くなりましたm(__)m


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「……………」

「あぁぁ、アティス様お気を確かに」

 

 

シュナが賢明にアティスを介護してくれているが、何だか廃人ならぬ廃スライムになったかの様に動かない。

擬態した人間の姿も解除されており、更に言えばメタルスライム状ではなく、溶けてしまったかの様な姿、はぐれメタル化してしまっていた。

 

 

「オレの【暴食者(グラトニー)】も物真似(コピー)した上に、マジな神サマオーラ持ってるアティスこそが、最強じゃね? って思ってるんだが。だから おーい、そろそろ起きろ~~、アティス~~! ミリムの話じゃ、心配ないんだろー? 大丈夫なんだろー?」

「わっはっはっはっは! ヒカジイの加護を持つお前が、あの程度でやられる筈がないのだ! ほれほれ、ワタシと遊ぶのだっ! 魚が終わった後、遊ぶ約束だった筈なのだっ!」

「……………そんな、かんたんに………、あれ? やくそく、してたっけ……?」

「お? やっぱ話聞けるじゃん? ほらほら、皆心配してるぞ。安心させてやれよ」

「………あい」

 

 

シュナは勿論、テンペストの皆アティスの事は心配で心配でたまらない。

 

それも当然だ。たった1人で、厄災(カラミティ)、否災禍(ディザスター)級以上とも言われる大妖、カリュブディスを相手にしていたと聞かされたから。

 

本来ならば、街総出で迎え撃つ体勢で臨まないといけない相手だと言うのに、タイミングが悪かった、と言う理由もあるかもしれないが、アティスはたった1人でトレイニーを護っていた。

 

確かにアティスは頑張った!

ヘタレなりに、返上する勢いで頑張った!

元々、超が何個もつくハイスペック能力保持者なので、相応のメンタルを持ち合わせれば、この世界ででも屈指の実力になれる事間違いなし(災禍(ディザスター)級以上の階級、天災(カタストロフ)級の魔王ミリムの遊び相手に務まる時点で御察し)

カリュブディス相手でも、そう易々とやられる訳がない、精神破壊? などされる訳もない……のだが。

 

それでも、今回は仕方ない。

何だかんだ苦言をいっているリムルも、心底同情する構え、である。

 

 

 

結論から言うと、カリュブディスを討ったのは、アティスでもリムルでもなく、皆でやっつけた! と言う訳でもなく―――……討伐したのはミリムだった。

 

 

 

最初はテンペストの問題であり、安易に手を借りるのを良しとしない街の意向もあって、リムルも渋々それに応じて、ミリムは控えて置く様に……と言う形となったのだが、戦いの渦中、カリュブディスが口をきいたのだ。

知能の無い大妖である筈なのに、はっきりと【ミリムめぇ……】と恨み節を只管呟いていた。

 

 

それを聞いてから戦いの流れが変わる。

 

 

カリュブディスの正体が判明。

万物を見通すと言って良いミリムの眼、竜眼(ミリム・アイ)で確認した所、カリュブディスの核となった存在は、以前ミリムにぶっ飛ばされた、魔王カリオンの配下が1人フォビオだったのだ。

 

カリュブディスになった時点で、自我は消し飛んでいた筈なのだが、その魂にまで刻まれた恨みの念がカリュブディスに乗っ取られて尚残っており、あらビックリ。言葉を発するカリュブディス、となったのである。

 

 

元々、ミリムが目的である相手だと言う事もあって、ミリムが相手をする事になった。

当然、フォビオを殺す事なくカリュブディスだけを吹き飛ばす様に提案し、ミリムはそれを受け入れて、最近覚えたらしい手加減攻撃を披露。

 

 

その名も【竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)】。

 

 

光を纏った隕石流星群?

隕石が世界に降り注いだのか? 

 

と思える様なこの世のモノとは思えない光の奔流。

その後に訪れる破滅の爆炎。

 

リムルの優秀なユニークスキルの1つであり、頼りになる相棒でもある大賢者の解析能力をもってしても、解析不能、情報収集に失敗。

それは勿論ながら、同系統の力を持つアティスの聖母(マリア)も言わずもがな。

 

 

そんな果てしなく、底が見えないエネルギー波を受けた大妖カリュブディスがどうなったのか。

 

 

無論、五体満足で居られるワケも無く、一撃で粉々になった。

実は、カリュブディスの中に以前テンペストへとやってきて一騒動起こしたフォビオが居た。フォビオを核として、カリュブディスは復活を果たしたのである。

 

魔王カリオンの使いでもあるフォビオに死なれては正直困るから出来れば救出を~~と考えてはいたのだが、あまりにも凄過ぎるミリムの攻撃。

 

もしかしたら、中のフォビオも死んだのでは? と思ったリムルだったが、そこは大丈夫だったらしい。ミリムが手加減、と称した様にしっかりと依り代にさせられていたフォビオは死ぬ事なく助かった。

 

だが、それだけでは安心出来ない。

 

カリュブディスは、依り代に寄生する事で生き永らえる大妖だ。

フォビオの身体がある限り、幾らでも再生できるし、仮に切り離したとしても、精神生命体だから、逃げる事も可能。フォビオの身体を放棄して、また別の誰かを依り代にして復活する。そんな悪夢のような連鎖を持つ大妖だった。

 

だが、そこは我らがリムル様。

リムルの持つユニークスキル、【変質者】と【暴食者】を駆使して、カリュブディスとフォビオを分離させ、カリュブディスがフォビオから離れた時点で喰らいつくした。

ミリムが、極限までカリュブディスを削いでくれたからこそ出来た芸当とも言えるが、非常に難しい手術の様なモノ。流石はリムル&大賢者の一言である。

 

 

 

そして、実に10時間にも及ぶ死闘の幕が下りた―――のだが、敵をやっつけてはい終わり、という訳にはいかない。

一体誰がこんなマネをしたのか、と言う疑問は残る。最も重要な点だ。

 

カリュブディスは、危険な大妖だ。だからこそ、勇者の力を以て封じていた―――筈なのに……。

 

 

 

 

 

 

――――いや、まだ他にも問題がある。

その問題に最初に気付いたのは、シオンだった。

 

 

問題とは、アティスの様子がおかしい事。

 

 

たった1人でカリュブディスを止めていて、更に皆が合流した後の戦いでも、ずっと皆の援護に回っていた。

空中で戦う者、地で迎え撃つ者、全員に超広範囲にて、光の守護(パトローナム)を発動させており、延々と守り通した。

 

皆の為ならば、頑張る! と気合を入れて、頑張りに頑張って―――10を超える時間、光で守り続けた。

 

最終的には力を使い果たしてしまって、スリープモードになったのか……? と思われがちだが、実は違う。今のアティスの状態の原因は他にある。

 

 

アティスの精神をすっ飛ばした真の原因は、ミリムだ。

 

 

アティスの光の粒子の1つ1つが、感覚で繋がっている。

その無類の硬度故に、大抵の攻撃は弾いてしまうし、問題ないのだが……、如何せん精神面ばかりはどうしようもない。

 

当初、カリュブディスの周囲を泳いでいたお付きの妖怪メガロドンの噛みつく攻撃を1度受けたら悲鳴を上げ、2度受けたら2度悲鳴を上げ……と大絶叫だった。

 

サメに襲われる場面。それがアティスにとっての、幼少期のトラウマを掘り起こした様で、ドワーフ王のガゼルと相対した時以上の大絶叫だった。

 

それでも何とか踏ん張って頑張ったのだが―――、問題はここから。遅くなってしまったが、一番の原因はここから。

 

 

アティスは、ミリムの一撃 竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)をその身で体感してしまった。

直に感じ取ったのだ。国の崩壊……いやいや、まさに世界の崩壊と言って良い程の力の奔流をその身で体感した。

 

 

結果どうなったか。

……たったまま気絶をしていたのである。(その後、擬態が解けて はぐれメタル化した)

 

 

 

そして今に至る。

 

何とかリムルにも発破をかけられ、ミリムにも無理矢理起こされ、どうにか精神を安定させた丁度その後、フォビオが目を覚ました。

 

 

「スマン! ……いや、スミマセンでした!」

 

 

目を覚まして直ぐに土下座。

どうやら、彼は、何が起きたのか、カリュブディスに依り代にされて尚、ハッキリ覚えている様だった。

 

 

「今回の件は、オレの一存でした事なんだ。カリオン様は関係ない。なんとかオレの命1つで許して欲しい………!!」

「―――むぅ……、カリュブディスやっつけて、大団円……、なんだから、いのち差し出す、とか言わないでよ……。頑張ったんだし……」

 

 

ミリムの腕の中に居るアティスが苦言を呈する。

この戦い、一番の苦労人は誰がどう考えてもアティスだろう。

バトル時間が長いのもアティス。

 

 

「んじゃ、アティス(お前)も許すよな? 問題ないよな?」

「許すも許さないもないよ! やっと訪れた平和。……なのに、そんな事言わないで。平和が一番! 平和ラヴ!」

「――――……あー、今回が一番だよなぁ。これまでで一番。新しいトラウマ植え付けられちゃったか」

 

 

プルプル、と震えてるアティスを見て、リムルは苦笑いをした。

平和が一番なのはリムルとて解る。

その為に、共存が難しい魔物たちを纏め、多種共生国家、魔国連邦(テンペスト)を造ろうと言う発想に至った訳だ。

 

アティスは、いつも通りの大袈裟~と言いたいがだが、地獄巡りをしたも同然。

いや、地獄と言う言葉で片付けるのすら生易しい体験をした身。

今回に関しては、同情の余地あり。

過剰反応したって良い、とリムルだって思ってる。

 

 

「ってな訳だ。お前さんの命なんか要らないよ。と言うか、ここで殺したら何のために助けたかわからんだろ。そんな事より質問に答えてくれ」

「ッ―――。………ああ。何でも答える。聞いてくれ」

 

 

命を持って謝罪としようとしていたフォビオは、何でも話すと言った。ここから嘘偽りを口にする事はあり得ないだろう。

 

リムルは、そう判断し、次にトレイニーの方を見た。

 

 

「じゃあ、事の顛末をよく知るトレイニーさんお願い。アティスはこんな感じだし」

「心得ておりますよ。リムル様。……では」

 

 

笑顔で受け答えしたトレイニーだったが、フォビオを見る時の彼女の目は真剣そのもの。憎悪こそはもう無い様だが、カリュブディス復活に関しては思う所が幾つもある。

だからこそ聞かなければならない、とその決意が表情に表れたのだろう。

 

 

「貴方は、何故カリュブディス(彼の大妖)の封印場所を知っていたのですか? あれは勇者から託された我ら樹妖精(ドライアド)しか知らぬ場所。……偶然見つけたとは言わせません」

 

 

勇者が封じる程の大妖だ。

そう易々と封印解除―――が出来る訳もなく、そもそも封印場所も秘匿とされている。

だからこそ、森の管理者である樹妖精(ドライアド)に、勇者は封印場所を託したのだろう。

 

それが知られるとはあってはならない。

トレイニーが迂闊な事をしでかすとは思えない面々も、気になる重要な点の1つだ。

 

 

「………教えられた。仮面を被った、道化……二人組の道化に」

「仮面の道化? それはもしや、こんな仮面でしたか?」

 

 

トレイニーは、仮面と聞いて覚えがあるのか、地面に仮面の絵を描いた。

簡易的ではあるが、特徴をとらえている仮面。片目を閉じ、口を開け、笑っている様な面。

 

だが、フォビオは首を横に振る。

 

 

「……いや、オレの前に表れたのは涙目の仮面の少女と怒った仮面の太った男だった」

「! まて、怒りの仮面と太った男……だと?」

 

 

「ッ………それって」

「ああ、ベニマルの反応から見ても解る。……集落を襲ったオーク。それを率いていたヤツなんだろ。仮面の魔人、か。複数いるっぽいが、一体何人居るんだ?」

 

 

今の所判明しているのは、既に死んでいるゲルミュッドに加えて、怒った仮面と泣き顔の仮面、更にトレイニーが地面に描いた仮面。……少なくとも3人以上は居る。

 

 

 

「怒りの面の太った男……私は覚えがあります」

 

 

 

ここで声を上げるのはゲルト。

彼もまた、仮面の魔人に踊らされた種族の1人。後が無い状態だったとはいえ、敬愛する偉大なる王を失う切っ掛けとなってしまった相手だ。忘れる筈も無い。

 

 

「ゲルミュッドの使者を名乗る上位魔人がその様な仮面をつけていました。名を【フットマン】。中庸なんとかという組織の者だとか」

「……中庸道化連だ。奴らはなんでも屋と言っていた」

「ああ、それだ。……なんでも屋、か」

 

 

アコギな商売ではないのだろう。

間違いない。直に接し、齎した災いを鑑みれば。弱肉強食の理とはまた違う裏で蠢く存在。

不快感しかない。

 

 

そして、次に声を上げるのはガビル。

 

 

 

「そのトレイニー様の図柄……見覚えがありますぞ。ゲルミュッドからの使者で、ラプラスと名乗った道化が……」

「ラプラス? ……そうですか、ラプラスと言うのですね。あの魔人」

 

 

トレイニーもよく覚えている。

森を知り尽くし、何が起きているか、何を起こそうとしているのかを察知し、森を侵すその不届き者に罰を与える為に、相まみえたのがこの仮面の魔人だった。

至近距離からの風の上位精霊の攻撃を躱して見せた手練れでもあるから。

 

 

「フットマンね。その名、覚えておくとしよう」

 

 

ベニマルも静かで、穏やかとさえ思える装いだが、その内には静かだが、確かに燃えるものがあった。故郷を踏み躙った元凶。それは、オークではない。……かの魔人なのだから。

 

 

「むむ、んーー」

「? どうしました? ミリムさん。あ、そろそろ、大丈夫なので離してくれても……」

「む? 話ならいつでもしてやるぞ! 何せ、アティスとワタシの仲だからな! 親友(マブダチ)に加えてヒカジイだ! だから、とってもお気に入りなのだっ!」

「い、いや、()じゃなくて、離し(・・)……」

 

 

と、解放を願うアティスはさて置き。

考え込んでいたミリムは、どうやら結論が出た様で、ぽんっ! とアティスの身体をひと叩きすると。(結構な衝撃)

 

 

「むむむ、やっぱり知らないのだ。そもそも豚頭帝(オークロード)計画を指揮ッていたのは、ゲルミュッドだが、中庸道化連などと言う連中……覚えが無いのだ!」

 

 

忘れっぽいミリムではある、が。面白そうな話題に関してはその都度ではない。都合が良い事、面白い事は基本覚えているのがミリムだから。

 

そして、その面白い……面白そうな中庸道化連の話を聞いて、ちょっぴり憤慨する。

ぼでっ、と倒れ込み、アティスをぽんぽんお手玉しながらぼやいた。

 

 

「そんな面白そうなヤツ等が居るなら、会ってみたかったのだ! まったく、ゲルミュッドのヤツめ……」

「まーまー、アティスが居る時点で、大分面白いんだろ? ミリムにとって」

「む? それはそうなのだが、別腹! と言うヤツなのだ! アティスも道化の奴らも、皆纏めて遊びたいのだ! 勿論、リムルもだぞ!」

「―――リムルさ~ん、ご指名なので、交代致しますよ~~?」

「いや、まだまだ話がまとまってないから、そのままで」

「……ずるいっ」

 

 

されるがままに、アティスはそのままお手玉遊びに付き合う事になった。

精神面のダメージが回復しきってない事もあるので……、何とかこの間に回復を。

 

ミリムの相手は大変だが、あの超必殺爆撃魔法? の直撃に比べたら、何のその。世界の真理が見えるも同義なのである(現実逃避)。

 

 

ぽーん、ぽーん、と2度3度と真上に上げた後に。

 

 

「そうだ! クレイマンのヤツだ! アイツが何か企んでいたのかもしれないぞ!」

「クレイマン? 誰だそれ」

「…………ひょっとして、ミリムさん以外の魔王~……だったりします?」

「おおお! よくわかったな。そうだ。魔王の1人なのだ!」

 

 

リムルよりも早くに気付いたアティス。

当然ながら嫌な予感がビンビンに感じられたからだ。名前~と言うより、中庸道化連とかいう、ジュラの森全体を騒動の渦中に巻き込み、魔王級でもあるカリュブディスを操り……、ここまでしでかした黒幕っぽい雰囲気。

 

魔王しかいない。

それがアティスの解答。外れて欲しかったんだけど……残念ながら正解、である。

 

 

「(マザー……、クレイマンって魔王の事調べたり出来る?)」

【解。隠蔽魔法等で厳重に情報統制をしており、現在、この場所での情報収集は不可】

「……だよね。なんせ、まおーだもんね」

 

 

色々対策をマザーと一緒に立てておきたかったんだが……、それも無理と悟って、出たとこ勝負と言ういつも通りな綱渡りとなるだろう事を覚悟した。

 

 

「……皆護る、って言っちゃってるもん。頑張らないと……」

【解。カリュブディスとの戦闘、加えて天災(カタストロフ)魔王ミリム・ナーヴァの一撃を受けた事による、経験。それらを力に変え、糧とする事に成功しております。とりわけ、ミリム・ナーヴァの一撃が膨大な魔素(エネルギー)だった為、全て、と言う訳にはいきませんが】

「おお……、経験値up! ってヤツかな。……うん。後はオレ次第かぁ」

 

 

能力アップしたとしても、魔素量の上限が解放、絶対値を押し上げる事が出来たとしても、最終的にはそれらを操る自分次第、となってくる。

 

 

「頑張らないと……っ!」

「ほい、頑張るのは大いに結構! ミリムから漸く離れる事が出来たの忘れるくらい、集中してんのは解るし、期待もしたいが、取り合えず今日はもうお開きだぞ。身体休めとけよ、アティス」

 

 

いつの間にか、リムルが人型になり、アティスの傍に来て肩に抱えた。

褒められたものじゃないが、皆の為に、皆を守る為に、孤軍奮闘していた男を労う為にも、今回はシオンの持ち運び? を辞退して、アティスをリムルが抱える事になったのだ。

ミリムは渋っていたが、少し話があるから~~と説明して、何とか納得してくれた。

勿論、オヤツで釣ったのは言うまでもない。

 

 

「んじゃ、皆も同じだ。お疲れさん。しっかり身体を休めてくれ」

 

 

そういうと、皆が空に向かって己の武器を放り投げて歓声を上げる。

まだまだ、終わってないのは解るが、一先ずカリュブディスの脅威を退ける事が出来たのだ。

勝鬨を盛大に上げた。

 

 

「じゃ、フォビオ。お前も気を付けて帰れよ?」

 

 

終わり、と言わんばかりにフォビオに元いた国、獣王国(ユーラザニア)に戻る様に促した―――が、ぎょっと目を丸めて驚いた。

 

 

「っは!?? ちょっとまて、オレは許されないだろう!!」

「駄目です。自分自身を許せないのかもしれませんが、それこそ許しません! オレは許しません! 許されないとか、許しません! 罰とか求めないで下さい! 折角の平和なんですっ!」

 

 

リムルに抱かれたアティスが、フォビオの眼前にまでメタルスライムボディを伸ばして、目の前で×! をする。

 

どうにも血生臭い感じがする。

獣の王国は血気盛んな激情家が多そうだ。指一本、腕一本堕とせ! とか言いそう。

そんなのは嫌だ。

 

 

「無罪だとはオレも思ってないがミリムを除けば、今回の戦で一番の功労者で、テンペスト(ウチ)のNo.2がこんな調子なんだ。素直に受け取ってくれ。そもそも、フォビオは真犯人に利用されてただけみたいだし、コイツが頑張ってくれて、人的被害は殆ど無い。ミリムのスゲー一撃貰って、精神ゴリゴリ削られて、メチャクチャにされただけだ。だいじょびだいじょび」

「………思い出させないでくださいよっ!」

「わっはっはっは! 手加減攻撃とは言え、流石はアティスなのだっ! 次は全力で放ってみたいぞ!」

「ヤメテクダサイ! タスケテクダサイ!!」

 

 

ニカッ! とVサインを送ってくれるミリム。

彼女も彼女である程度のパワー放出した事もあってか、大分スッキリした様子だ。

だから、裁かせろ! なんて事言いそうに無いだろう。

 

 

 

「あーもう……。……ん? アレ??」

 

 

アティスは、ミリムの全力発言で、思わず光粒子を周囲にばら撒いてしまった。

そのおかげ? もあって、今の今まで気付けなかった者が近づいてきている事に気付く事が出来たのである。

 

 

「ほぉ。オレを察知したのか。やるじゃねーか」

「当然なのだ! アティスはワタシの親友(マブダチ)なのだぞ。当然、カリオンの事も気付いていたに決まっているぞ!」

「ふはははは。やはり、ミリムも気付いていたのだな」

 

「「え? え?」」

 

 

凄い認定してくれたが、生憎偶然。

完全に置いてけぼりにされた瞬間だった……が、直ぐに状況は察した。

 

 

「よう。そいつを殺さず、助けてくれた上に、許してくれた事、礼を言うぜ」

 

 

いつの間にか、接近されていた。

十大魔王の一柱。

 

 

「カリオン……様」

 

 

獣王国(ユーラザニア)を統べる魔王カリオン。

 

 

「……あんたが魔王カリオンか。わざわざ出向いてくれるとはな」

 

 

リムルも気付く事は出来なかった。

大賢者に索敵をやらせていた訳では無かったとはいえ、ここまで接近されて、アティスは気付いて自分は気付けなかった事に対して、不満が残るが今は置いておこう。

 

人型になった状態で、両腕でガッチリ抱えていたアティスを片腕、脇に移動。

アティスも、リムルが身体を移動させたタイミングを狙って、人型へと戻った。

 

するり、と腕から解放されて、2人はカリオンに向き直す。

 

 

「オレはリムル=テンペスト。この森の魔物たちで作った魔国連邦(テンペスト)の盟主だ。それで、コイツはオレの兄弟分」

「アティス=テンペストです」

 

 

アティスはぺこりっ、と頭を下げた。

魔王と聞いて、身体が固まってしまっていたが、どうやら物騒な事にはならないだろう、と判断して、出来る限り丁重な姿勢で応じた。

王たる風格は、リムルだけで十分だから。

 

 

「2匹のスライム……か。方やG.O.D()の力を継いでるとくれば、もう国の1つや2つ、興した所で疑いの余地は無い。………おまけに豚頭帝(オークロード)をも喰らった。中々に愉快なスライムたちが生まれたもんだ」

「GODに関しては、ハッキリ言って又聞きつーか、専門外つーか。兎も角、豚頭帝(オークロード)に関してはオレが喰った。……お前達の企みを潰してしまった事にも繋がるんだろうな。だけど、アレが悪かったとは思ってない」

 

 

リムルは、ハッキリとカリオンを見据えて答えた。

アティスも同じくだ。

あの豚頭帝(オークロード)……いや、魔王ゲルドを放っておけば、被害は甚大だった。森の全てが喰らいつくされたと言っても不思議じゃない未曽有の事態だ。

仮に、それが何かの企みの1つだったのだとしても……、後悔の類は一遍たりとも無い。

 

 

「ふっ―――」

 

 

そんな2人の姿勢を見たカリオンは、堪えきれなくなった、と言わんばかりに大口開けて笑い始めた。

 

 

「ふははははははは! 面白いな! オレも気になってたっちゃ、そーなんだが、ミリムが気に入る理由も解るってもんだ!」

 

 

 

豪快に一頻り笑った後、フォビオの方を見た。

 

 

「改めて謝罪しよう。……悪かったな。オレの部下が暴走しちまったようだ。部下の失態だ。オレの監督不行届でもある。お前らは許すと言っているが、こっちの気が納まらない」

 

 

カリオンはそういうと、親指を自身に向けながら、告げる。

 

 

「今回の件、借り1つにしておく。もし、何かあればオレ様を頼ってくれて良い」

「!! ほ、ほんとですかっ!?」

「おいコラ。前のめりになんな。嬉しいのは解ったから、ちっとは落ち着け」

 

 

カリオンの提案に目を輝かせるアティス。

魔王1人、また1人……と、このまま友好の懸け橋を―――と考えてしまったからだ。

 

ただ、No2としての、箔と言うものは必要だろうから、ちょっとくらい自重して貰いたい。

 

 

リムルはアティスの頭を抑えると、改めてカリオンを見た。

 

 

「それなら、オレ達との不可侵協定を結んでくれると嬉しいんだが……」

「えっ!? 友好条約、とかじゃないんですかっ!?」

「いきなり国同士仲良くしよう♪ なんて綺麗事そう簡単に出来る訳ないだろっ! 千里の道も一歩って事で、ちょい落ち着いて待ってろっての」

「………あい」

 

 

リムルに一喝されてアティスは下がった。

 

 

「ぷはっ! お前さん、そんな形であのカリュブディスと戦ったってのか? つかみどころがねぇヤツだな。……益々気に入ったぜ」

「ぅ……」

 

 

カリオンの値踏みをする様な目は、何処となくドワーフ王(トラウマその①)に似てる感じがして、アティスは更に一歩下がった。

 

 

「ふっ。まぁ、最初の不可侵に関しては全く問題ない。獅子王(ビーストマスター)カリオンの名にかけて誓ってやる。獣王国(ユーラザニア)魔国連邦(テンペスト)に牙を剥かん、とな」

「(流石魔王だな。器のデカさが半端ない。……この分じゃ、そう遠くない内に、友好条約ってのも出来そ――――)」

 

 

とリムルが思っていたその時だ。

まるで爆発? でも起きたかの様な轟音と衝撃波、立ち込める砂埃と襤褸雑巾の様になった―――フォビオ?

 

 

「殴った……。体育会系?」

「容赦、なしですよ……全く……」

 

 

痙攣して血塗れになってるフォビオを見て……、彼も罰を望んでいたから、ある意味有難かったのかもしれないが、素直にそうは思えない。

 

 

「ったく、しょうがねぇな。おら、帰んぞ。……そんでもって、アティス。いらん気遣いは寄せ。コイツにとっちゃ、苦痛よりもっと痛ぇ」

「!」

 

 

あまりにも痛ましい姿だったので、それとなく回復を~~と思っていたアティスだったが、カリオンに察知されて、事前に制された。

部下だからこそ、想っているからこそ、わかるのだろう。

 

アティスは、直ぐに回復魔法を引っ込めた。

 

 

 

「じゃあ後日、使者を送る。なに、今度は礼を守らせるさ。―――また会おう、リムル。アティス」

 

 

 

 

こうして、一大決戦の幕をとじる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テンペスト側の勝利。カリュブディスの消滅―――それは新たな火種を生む結果にも繋がる。

 

 

 

 

 

 

「――――守備はどうだったのかしら」

「ええ。上手くいったようですよ。カリュブディスはミリムによって倒されました。……これで、貴女の心配事も消えたでしょう? 天空女王(スカイクイーン)フレイ」

「………そうね」

 

 

魔王同士の密談。

ミリムが抜け、カリオンが抜け……、それでもまだこの2人が残っている。

 

 

「それで、私は貴方に何を支払えば良いのかしら」

「特には」

「……そう」

 

 

魔王フレイの事よりも、最重要で、要注意な人物がこの男―――クレイマン。

何等かの企みがある事は解っているが、フレイは此度のカリュブディスの件、世話になったのは事実。

天空を統べる女王とは言え、あのカリュブディスは天敵と言って良い相手だからだ。

 

 

「何が目的?」

 

 

だが、だからと言って隙を見せ続ける訳にはいかない。

クレイマンもその辺りは解っている様だ。

 

 

「そんなに警戒しないで下さい。何も企んではいませんよ」

「企んでるひとは皆、そう言うものよ」

 

 

腹の探り合い、化かし合い。

そう言った裏工作はクレイマンの十八番。真っ向からでも、牽制しておくに越したことは無い。

 

フレイの言葉を聞くと、クレイマンは朗らかに笑っていった。

 

 

「そうですね。……では、今度何かひとつだけお願いを聞いてください」

「今度? 今ではなくて?」

「ええ。……例えば、魔王会議(ワルプルギス)の時にでも」

「――――いいわよ。私に出来る範囲ならね」

 

 

これ以上探りを入れても無駄。

お願いとやらを聞くその時に、判明するのだろう。

 

フレイはゆっくりと立ち上がり、離れていく。

 

 

「今回の件、助かったわ。さようならクレイマン」

 

 

最低限の感謝の意を伝えると同時に、この部屋から消え去った。

 

 

「……お気になさらず。貸しは必ず返してもらいますから」

 

 

ワインを口に運び、その味を堪能する。

堪能しながら―――脳裏に思い描くのは、今後のシナリオ。

 

 

「光……、成る程成る程。まさか、かの様な存在が。……それを手中に収める事が出来るなら、一泡どころか、直ぐにでも消滅させる事も可能でしょう」

 

 

ワインを掲げ、血の様に赤いそのワインの色を楽しむ。

この色で、染まって貰わなければならない相手が居るのだ。

 

 

 

 

「く、くく、くくくくく………」

 

 

 

 

必ず、必ずやり遂げる。

 

 

 

 

「――――待っているがいい。……魔王レオン」

 

 

 

 

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