メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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38話 つよいおとこのこ

 

 

「どう! どう! さっきの見た!? ぼく、カッコよかったでしょ!? ひな姉!」

「……………はいはい」

 

 

これは夢———泡沫無限。

今とは違う嘗て過ごした世界の……記憶()

 

それはそれは随分と懐かしい記憶()だった。

 

あまりにも心地良い。

ただ何故、なぜ今見るのか、それだけが気がかりではあったが、そう言った感情も、この心地良い夢の前では直ぐに霧散する。

泡の様に消えて、嘗ての世界の………儚くも温かい夢に身も心も委ねる。

 

 

駆け出す姿が見える、満面の笑みで駆け出す。

 

 

「はぁ……、確かに前は3位だったのに徒競走でトップになったじゃない。素直に凄いと思うわ。それに皆も褒めてくれてたでしょ?」

「うんっ! でもやっぱり皆より、ひな姉に一番見てもらいたかった! すごいね、って最初にほめてほしかったから! だからうれしいよ! ねぇねぇぼく、かわれたよね! カッコよくなった! よねっ!?」

「なんでそこまで私に拘るのよ……。私なんかじゃなく、自分の為に頑張れば良いじゃない」

 

 

口に出さなくても解っていた。解り切っていた。

何をそんなにこだわっているのか、その理由は――――よく、解る。よく……知ってる。

 

 

 

「ひな姉のこと、なんか、なんて言わないでよ! だってひな姉だから、なんだから。だって、だってぼくは―――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ひな姉を守れるつよいおとこに、なりたいから】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獣王国(ユーラザニア)からの使節団、アルビスとスフィアたちは、思う存分テンペストを満悦した後無事に帰国。ただ、彼女達の配下は数名テンペストの首都(リムル)に滞在して色々と技術を学ぶとの事。

リムルが快く了承。これで獣王国との不可侵条約~から友好条約へと変わって、みんなみんな仲良し大作戦! は完遂する訳で――――。

 

 

「おいコラ、いい加減起きろーー」

「ぷげらっ!」

 

 

リムルは、ヒトの姿で深い眠りに入っていたアティスを容赦なくスライム・平手打ち往復で叩き起こした。

変化させた大きな大きなスライムの手は、結構な圧力で顔面に一撃。気付けとしてはこれ以上無いだろう。

 

 

「ててて……、もーヒドイじゃないですかぁ……。もっと優しく起こしてくれたって……」

「わざとらしく痛そうにすんな、それになーにがヒドイ、だ。ドワルゴンに行く日だってのに、幸せそうにグ~スカ寝やがって。あわよくば、このまま寝過ごす気満々だったろ?」

「~~~~~~♪」

「だーかーらーテンプレみたいに口笛拭いて誤魔化すな!」

「あたっ」

 

 

かの王が治める武装国家ドワルゴンへの訪問は以前から決まっていた事だ。

細かな日程も当然決まった。

 

勿論、アティスは日が近づく度にメタルスライムではなく、普通のスライムの様に顔が青に変わりつつあったが、そんなものはお構いなく。

それに、シュナやらシオンやらが日々アティスを代わる代わる構い倒して、余計な事を考えられなくした、と言う面もあったりする。(リムルの指示)

 

 

アティスは異様に疲れてしまったのは言うまでもない。

ドワルゴンに行きたくない、ガゼル王に会いたくない、とか考えるのも面倒だと思える程に。

 

 

「そりゃ、アティスのが悪いだろーよ。だって、あの時、お前アルビスさんにメロメロになっちゃっただろ? そんな場面をシュナとシオン(あの2人)が見てたんだから。俺の指示聞かなくても、あいつらは行動するよ」

「めろめろって何ですか……、ってか、それもう死語じゃないです? リムルさん向こう(・・・)じゃいくつだったんです?」

「喧しいわ! どーせ俺は古い人間だよ!! そもそもこの世界に死語とかねーよ!」

 

 

ヒト型に戻ったリムルは、今度は背をバシバシ叩く。

基本、スキル関係で痛覚とかは殆ど無効、そもそも防御力最強クラスな存在だから、痛いとかは無いんだけれど……何処かで聞いた愛ある攻撃? は成す術なし! が本当だったのか、………アティスは悲鳴を上げる事が多い。その度にリムルが痛いとか無いだろ! とツッコミが入るのが基本パターンとなってる。

 

「いたっ、いたたっっ! すみません、って! ……でも、あの件はちゃんと弁解したのに……」

「確か、【格好良かった】って言われたのが嬉しかっただけだった、ってか? ………いやいや、シュナやシオンに言われて喜んでたのもある程度緩和に繋がったと思うが、幾らなんでも、幼過ぎるだろ。お前こそいくつだったんだよ?」

「ぅぅ…………、や、まぁそうなんですけどぉ……。いえいえ、こっちの世界で生まれてまだ殆ど経ってませんし? 年齢的に言えばまだ一桁前半。ね? 全然おかしくないじゃないですよね?」

「そりゃまぁそこん所は俺だってそう変わらない訳で……、つーか、互いに向こうでの細かな年齢も聞いてなかったか。……今更別に聞くつもりは無いけど」

 

 

プライバシーを侵害するつもりも無いし、最早前世の事を細かく追及するつもりも毛頭ない。同郷が要ると言うだけで十分だったから。

 

 

「兎にも角にも、シオンやシュナに、散々【格好良い】連発されたって訳だ。今現在でも。良かったじゃないか。よっ二枚目」

「ぅ~~~、だ、だからってそんな連呼して欲しかった訳じゃないですから、凄く恥ずかしかったですよ……」

 

 

リムル達と出会って結構時間はたった。その間に凄い! やら、可愛い! やらを連呼される事が多く、アルビスの様に格好良い! と言われる事は無かった。

だからこそ新鮮だった、と言うのも少なからずあるだろう。

アティスの深層意識、人間だった頃の記憶を呼び覚ました結果とも言える。

 

ただ、先ほどにもあった通り、連呼されると有難みが薄れる? と言うもので、少々ゲンナリとしてしまった。

だから、流石にヤメテ~~とシュナ&シオンに頼み込み、アルビスに対して鼻の下を伸ばした(様に見られた)事を強く謝罪する事で受け入れられたのであった。……それがつい先日の事。

 

 

 

「さぁて、いざドワルゴンだ! 皆もう準備整ってるぞ」

「………………ガンバリマス!」

「よっしゃ。行こうか」

 

 

 

アティスも本気で引きこもりになるつもり―――は多分無かったのだろう。目算(大賢者推察)8割程。

なので、気合を1つ入れて移動を開始した。

 

正直、一番最後になってしまった申し訳なさも有ったりする。

もう皆が集っていて、お見送りをしたい面々も揃っていたから。

 

 

 

 

 

「出してくれ。ランガ」

「はッ!!」

 

 

 

 

いざ出陣!

武装国家ドワルゴンへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの~……今更ですが、ドワーフ王の条件に俺が入るのって絶対引き抜きと言うか、王様直々実行犯、拉致監禁目的もあるかもですよね? 全力で守ってくださいよ、リムルさん。ボク、無力デス」

「ほっほ~ぅ。そりゃ、シュナがしっかり守ってくれるんじゃないかな?」

「はい。勿論ですよ。アティス様をドワルゴンへ亡命させる訳には参りません」

「……………えと、自分でガンバリマス…………」

 

 

シュナに、女の子に守ってもらう訳にはいかない。

と言うより、守るべき人達な筈。

 

 

『解———』

「(………言わなくて良いからマザー!!)」

『……………』

 

 

いつも通り、辛辣なコメントを残しそうだった聖母(マザー)を牽制しつつ、アティスは前を向く。

脳裏にあの顔を思い浮かべる。

ドワルゴンの王———ガゼル王の姿を。

 

トラウマを克服する為に………。

 

 

「うん。無理っ!」

「っておい! 情けない事極まれりだぞ!?」

『解。リムル=テンペストと同感です。ユニークスキル大賢者(えいちあるもの)も以下同文とのこと』

「つーん。しらないもーんっ!」

 

 

散々な言われようだ。

でも、リムル達の言い分も尤も。これまでも何度もこの手のやり取りはあった。

 

テンペストNo.2であるアティスの人間側から見た脅威度は厄災級(カラミティ)……否、災禍級(ディザスター)とも言われるモンスターに分類されている。

※本人は超否定。

 

ある意味暴風竜(ヴェルドラ)の子と言って良い大妖《暴風大妖渦(カリュブディス)》の侵攻をたった1人で長時間に渡って防衛し負傷者0をキープ。

更に更に、一発で精神に多大な負荷がかかり、放心してしまったとはいえ、この世界の頂点に分類する天災級(カタストロフ)の魔王ミリムの特大の一撃を喰らって生き延びていると言う事もあり………なのにも関わらずこのザマだ。

 

 

大なり小なり抱えている過去のトラウマ(笑)は、きっとあのミリム級だと言う事なのだろうか。

だからと言って、それを口には絶対にしない。

 

 

……どこで、竜耳(ミリム・イヤー)発動しているか解らないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後少々荒れた道、あの暴風大妖渦(カリュブディス)戦でボロボロになった道を迅速に、丁寧に路面工事をしてくれてるゲルド達に、出発の連絡と慰労を兼ねた寄り道をしつつドワルゴンを目指し、つづがなく進んで出発から4日目。

 

 

 

「………凄い。ずっと見えてたけど、近づいてみたら一段と――――」

 

 

ドワルゴンへは初めて訪れたアティスは、眼前に聳える大山脈に目を見開き、目を輝かせていた。

ここに、あのガゼル王がいると言うのに、それもすっかり忘れている様で冒険を楽しむ少年の様な目をしているのが解る。

リムルも似たような心境だったから猶更。

 

 

 

 

 

「ふはははは! 外交などは、ハッタリが全てなのだぞ。アレでは他国に甘く見られても文句は言えぬなぁ。観光にでも来たつもりか?」

「ぁぅぅ………」

 

 

 

 

ドワルゴンの入り口、関所が開門されて、使者が道すがら案内してくれた。

その間は、シュナがしっかりキッチリ、リムルを、アティスを紹介してくれて…………街並みに目を輝かせていたら、いつの間にかもう王宮内へと来ていたのである。

眼前に、あのトラウマが大笑いをしているんだけれど、アティスはアティスで、今まではしゃぎ過ぎてた事を自覚した様で、違う意味で小さくなってしまっていた。

 

 

 

「どうだ? リムルよ。今後を考え、アティスをウチで修業させる兼大使として暫く滞在させる、と言うのは」

「へぁっ!??」

 

 

バシッ! とアティスの背を叩くガゼル王。

攫うでもなく、拉致監禁でもなく、違う意味で堂々と正面突破をしてくるガゼル王。

酒に酔った訳でもないのに。

 

そんなアティスの前にシュナとシオンが……入れる訳もなく、静かだが確かに威圧をする勢いでガゼル王を見据えていた。

 

 

「はっはっはっは。そりゃ魅力的な提案だが遠慮させてくれ。アティス(こいつ)はこんなんでも、魔国連邦(ウチ)のNo.2だ。いなくなられてしまったら色々と大変でね。下手したら暴動が起きかねない」

「ふはっ。それはそうだろうな。案ずるな言ってみただけだ。……それに、周りの身の固さはよく伺えると言うものでもある」

 

 

ガゼル王は当然シュナとシオンの圧には気付いている。と言うより、それを含めてどことなく楽しんでる様にしか見えない。

一頻り笑った後、ガゼル王は真剣な面持ちで2人を見た。

 

 

「さて、ここからが本題だ。大臣らもおらず、腹の探り合いや迂遠な言い回しは無しといこう。――――単刀直入に聞く。貴様らの国では高出力の魔法兵器を所有している、と言うのは事実か?」

「あ――――――……」

「………プルプル、……プルプルプルプル」

 

 

リムルは納得し、アティスはプルプルと言いながらプルプルと震え出した。

 

 

「何故アティスが震えておる?」

「ぷるぷるぷるぷる……ぷるぷるぷるぷる………」

「いや電話か」

 

 

リムルは取り合えず、アティスの頭をぱしんっ! と叩いた後に説明を始めた。

あの戦———— 一体何があったのか、包み隠さず。ガゼル王が言う様に、腹の探り合いは無しにして。

 

 

「……なにぃ? 魔王ミリムだと?」

「うん。暴風大妖渦(カリュブディス)を葬ったのはアイツの一撃だよ。そんでもって、アティス(こいつ)は、その余波に巻き込まれて、心に多大なダメージを負っただけだ。安心してくれ。ドルフさんは魔法兵器を疑ってたみたいだけど」

「…………………」

 

 

ミリムの一撃の方が、ガゼル王と言うかつての世界でのトラウマを超える様な気がしてならないのは、リムルである。

やっぱり、天災級魔王の一撃をその身で受けた衝撃の程は―――……想定以上なのだろう。

何せ、あの大賢者ですら正確に把握出来ず、最後は光の神GODの御力~だけで乗り切ったくらいだから。……因みに、アティスの聖母(マザー)にもリンクしてみて確認をしてみた所、似たような返事しか帰ってきてなかったりする。

 

 

「確かに、あの日もそう言っておられましたが……、申し訳ないが信じられません。あの場に居たというのですか? 天災級(カタストロフ)の魔王が……」

「いましたよ。……ほら俺の事、抱きかかえてたじゃないですか。ピンク色の髪、ツインテールの」

「おう、漸くお目覚めかアティス。まぁ、ピンとこないのは仕方ないか。あの時ははぐれメタル化(液体みたいに溶けた状態)だったし―――ほれ、アティス変身」

「あいあい」

 

 

どろんっ! っとアティスは変身した。

あの時、心身ともに多大なるダメージを負って、力の芯まで抜けきった状態……。

変身能力を使うのは随分と久しぶりだった。ユニークスキル《物真似》では限界こそはあるものの、外見的な容姿そのものだけに重点を置けば特に問題ない。

ただ、ミリムに見られたら色々と厄介極まる可能性が極めて高いのとリムルの姿で固定する、と言う宣言もあるので、アティスは姿かたちを変えるのはなるべく控えているのだ。

 

 

「ああ! そういえば!!!?」

 

 

あの日、テンペストに来た面々は口々に声を上げる。どうやら、思い出した様だ。

今のアティスのその姿を、魔王ミリムの姿を。

確かに、あの時あの場で、こんな感じの生物? はいた筈だ。そして、それを抱えて笑っていた少女がいた――――と。

 

 

「ある日突然やってきたんだよ。挨拶にきた、とか何とか。そのままの流れで友達になったんだ」

「トモダチです。トモダチ。皆仲良し大作戦です!! ……トモダチの筈、です。筈、なんです……」

「ほれほれ、そんないじけるな。あん時ミリムも謝ってたろ?」

「謝って済む様なもんじゃなかったでしょーが! 規模も考えてくださいってば!!」

「いや、それはミリムに言ってくれ」

「ぅぅぅ……」

 

 

 

アティスは、ミリムの必殺技を受けた時の事を思い返しては震える。ごめん、で済んだら警察は要らない。……警察なんてモノがある訳がないし、それが抑止になるとも思えないが、てへぺろっ! で許せる範囲を軽く凌駕している事くらいは伝えたい。

まぁ、だからと言ってアティスがミリムをどうこう出来る訳はないのだが……。

 

 

「ふっ。ふはははは! まさに荒唐無稽が過ぎるとはこの事、と言いたい所ではあるが、結果と相まっていっそ真実味があると言うものだ! 良かろう。貴様らを信じるぞ」

「どーも」

「………あぃ」

 

 

側近の皆さまは、まだ正直現実感ない感じではあったが、己の王が認めている以上は仕様が無い、と諦めに似た境地で頷いた。

アティスは色々と諦めの境地+ミリムの一撃を受けた事をまた思い出してしまったのか、力なく項垂れた。

項垂れながら、リムルの傍へ。変身も元に戻した状態で。

 

 

「して、アティスよ」

「……あぃ?」

 

 

そんな時、ガゼル王は酒を片手にアティスの方を見た。咄嗟に目を逸らせてしまうだけで、またはぐれメタルに戻らなかった自分を褒めてあげたい。

 

 

「貴様は、かの天災(カタストロフ)———最古の魔王が一柱、その攻撃を受け切った、と言う事で相違ないな?」

「…………オモイダシタクナイです」

「くっくっく。そうかそうか。つまりはそう言う事か」

 

 

グイっ、と酒を煽るとガゼル王はニヤリと笑った。

 

 

「やはり、アティスは我が国が最も欲する人材よな。改めてそう感じたわ。……のう? 弟弟子(リムル)よ」

「アティス様は渡しませんよ!!」

「ガゼル王よ。お戯れが過ぎます」

 

 

兄弟子権限でも使うつもり? な様子だったので、アティスやリムルよりも早く、シオン&シュナがアティスを庇う様に声を上げた。流石に、2人の前に出る~と言うのは出来なかったが、それでも気持ちは同等だ。

 

 

「くくくっ、何、戯れだ。言ってみただけに過ぎん」

 

 

まさに想像通りの光景に、ニヤリと笑うガゼル王は、もう一度酒を煽る。

二度目で漸く気付いたと言うのか、目を丸くさせながらその酒の入ったグラスを手に取った。

 

 

「それにしても、この土産にもらった酒は美味いな?」

「おっ、キョーミがアティスから酒に移った?」

「そう言う訳ではないが、気づくのが少々遅れたのは迂闊だった。……非常に美味なる酒を無意識に飲み干そうとしていたのだからな」

 

 

舌先で味を、酒精を確認し……やはり美味いっ! と評価するガゼル王。

 

 

「流石、ガゼル王ですね! お目が高いっ!」

 

 

良い具合に話題が逸れた! と思ったアティスがPRに入る。そして、そのアティスを完璧に補佐しようと、シュナが追加の酒を注いだ。

 

 

「りんごで作った蒸留酒(ブランデー)です! 果実類を輸入できる目途が立ったので、上手く増産にこぎつけました」

「ほほう?」

 

 

シュナはガゼル王だけでなく、他の側近にも酒をふるまう。ドワーフは基本的に酒好きな種族。大いに喜んでくれる! 掴みはOKと最初から思って土産に酒を選んだのは文句なし、大成功だった。

 

 

「輸入と言う事は、このドワルゴン以外にも貴様らと国交を結ぼうとする者が現れた、と言う事か?」

「うん。獣王国で―――――」

 

 

国交の話は現トップであるリムルがすべきだろう、と言う訳で盟主のリムルが説明をしようとしたその時だ。

酒が美味い! と味わっていたのも忘れてガゼル王らは身体を乗り出して聞いてきた。

 

 

『ユーラザニアか!??』

 

 

知らない訳がないのだろう。

何せ魔王の1人———カリオンが治めている国なのだから。

 

 

「カリオンさんもやっぱり有名人? なんですねぇ……」

「そりゃ魔王だしな? 10人いる魔王の内の1柱。その国ともなれば四方八方にその名は轟いてるだろうよ」

「称号だけじゃないわ。その誇り高き勇猛な獣王として、カリオンの名は、魔王と言う肩書が無くとも知れ渡っておる。王として以前の1人の武人として、尊敬の念を持っておるからな」

 

 

魔王は恐怖の象徴———と言う印象だけど、魔王である前に獣王であるカリオンに対してはまた少々違った様だ、とアティスは思った。器が大きく、色々と融通を利かせてくれているところを見ても解る印象だが、強大な国であるドワルゴンのトップ、ガゼル王がそう言うのなら俄然説得力が増すと言うものだ。

 

 

「それにしても、獣王にも懐かれたか。このたらしどもめ。……ううむ、これは困る。先に盗られる訳にはいかぬな……」

「べ、別に俺カリオンさんには狙われてませんから!! だから王様は何もしなくて良いですっ! ってか、何もしないでください!!」

「たらし、て……。違う違う。魔王カリオンの部下を助けただけだ。たらし呼ばわりはヤメテくれ! 偶然恩を売れたから、交易申し込めて、了承してくれたんだよ」

「皆トモダチ大作戦! 進行中です!! そして、俺の家は魔国連邦(テンペスト)ですから!」

 

 

何処にもいきません! とアティスは大きく×を作って首を振る。

そんなアティスを見て、笑顔のシュナとシオン。誰に何を言われても、アティスを渡すつもりは無いが、本人の意志———と言うモノもあるから……。100%とは言えないから、アティスの発言はちょっぴり安心できるのだ。

 

ガゼル王は、まだ色々と言いたそうだったが、少々話が長くなりそうなので、側近の男が口を挟んだ。

 

 

「だとしたら、魔国連邦(テンペスト)の重要性は一気に跳ね上がる。いずれはファルムス王国に代わる貿易の中心になるやもしれん」

「……む。うむ。それは確かにな」

 

 

アティスばかりに目を向けてられない。

王ならば当然———。

それくらい、ガゼルは一応は解っているので、話を貿易関連に移行。

もう一度、あの酒を味わう。

 

 

「―—うむ。少なくとも(これ)は我が国がファルムスから輸入するどの酒よりも美味い。市政でも直ぐに流行るであろうな」

「…………」

 

 

酒の評価は上々……所ではなく、直ぐに取って代われるくらいの評価を得た。十分過ぎる成果の1つだが、それ以上にリムルには気になる所があった。

 

 

「ファルムス、って聞いた事あるだけでよく知りませんよね? ヨウムさんの出身地、ってくらいで……」

「ああ、そうだな」

 

 

アティスもどうやら自分と同じ考え、気になる点があった様だ。それに表情も何処か険しい。

ファルムス王国に良い印象は持ってない、と言う事がその顔からでも解る。アティスは腹芸には向いてないのもよく解る、と言うものだ。

 

 

「それで、ファルムス王国って、どんな国なんだ?」

 

 

だからこそ、ガゼル王にその印象を訪ねる事にした。

ヨウム関連で、リムルも良い印象を持ってないのも事実。でも、ヨウムはあくまで傭兵だ。兵士は道具、消耗品扱い~なんて、容易に想像が出来る為政者の姿だし、何なら地球であってもその手の話は聞く。だから、その扱いが雑になってしまうのも少なからず仕方ない、と思っている節もあるし、他国の意向にとやかく言うつもりも無い。

アティスは認めないかもしれないが……。

 

 

「まぁ、かの国は西方諸国の中でも一、二を争う大国と言って良いだろうな。……が、ここだけの発言だが、俺はあの国王は好かん」

「…………」

 

 

オフレコの場では、ガゼル王はその気持ちを包み隠したり、誤魔化したりせずストレートに告げてくる節がある。アティスの勧誘に然り、だ。

だからこそ、好まないと言う発言は真実であり、個人ではなく国としては是非も無し……と言う訳で付き合いがあるのだと言う事は理解できた。

 

 

「……なんか、嫌な感じがする。虫の知らせ、ってヤツかなぁ」

ファルムス王国(向こう)亡命する(行く)気なら、今この場で捕縛するぞ」

「そんな気さらさらありませんっっ! 何処にもいかないですっ!」

 

 

何を好き好んで嫌な感じがする場所に行かなければならないのか。

外交関係ならいざ知らず……。そもそも、魔物の国を認めている様な場所じゃないといけない。その時点で色々とハードルが高いと言うのに、色々と飛び越えまくって亡命は絶対にない。

 

 

「ならば良し。……だからこそだ。是が非でも獣王国(ユーラザニア)との貿易を成功させろ。そして、兄弟子である俺にも酒を融通するのだ」

「いや、兄弟子関係ねーだろ」

「そっちが本音ですか……」

 

 

色々と抜け目ないのは今更だが……と、アティスが辛辣な目をしていたその時だ。

 

 

「アティス様はリムル様が離しませんよ! それに私もですっっ」

「わぁっ!??」

「ぶっっ!」

 

 

背後からアティスを抱きしめる。

その衝撃で、リムルは飲んでた酒を盛大に吹き出してしまった。勿体ない。

 

 

「お二方が居てこその魔国連邦(テンペスト)! 絶対に素敵に、ぱぱーーーっとまとめてくださいますっ!!」

「オイコラ、シオン」

「むぎゅっ、むぐっっ」

 

 

後頭部にはシオンの豊満な二つの巨峰が……顔を抱きかかえられてるので、口が塞がって息が出来ないアティス。

勿論、その後聖母(マザー)が『解:呼吸は必要としておりません』と冷静なツッコミを入れるのが通例だが。

 

 

「この蒸留酒(ブランデー)も、お2人の成果の1つ! 我らの食卓に当たり前の様に並ぶ様になりました! お酒に限らず料理も。素敵です!」

「待ちなさい、シオン!? あなたまさか飲んで……っ! もう、控えなさいってば!」

 

 

シオンをシュナが諫める……いや、止めようとするがもう収まらない。

元来、鬼とは酒好きと言うモノ。中でもシオンは珍しく好きなのは好きなのだが、あまり強くなく、直ぐに酩酊状態となってしまう節があり、今回もアティスを抱きかかえたままそのまま仰向けに倒れ————。

 

 

光粒子(ひゃいひんふっっ)!!」

「「「!??」」」

 

 

そうになったシオンを、アティスの光でどうにか受け止めた。

ここは1つ叱って上げないと~と思うのが普通だけど、物凄く幸せそうに眠っているシオンにはそんな言葉すらかけるのを躊躇ってしまう。

 

 

アティスはシオンの拘束? をはぐれメタル化ですり抜けるとそのまま光を操作しつつ、人型に戻り、その背にシオンをおぶった。

 

 

「ナーイス。……んでも、醜態みせちゃった、よなぁ?」

 

 

ちらり、とガゼル王らを見て見ると確かに呆気に取られているが———直ぐに【ぶわっはっはっはっはっは!!】と、爆笑の渦が湧き起こる。王と側近、その場にいた誰もが、だ。

 

 

「悪いな。ウチの秘書が」

「ふふ。よいよい。早く部屋に連れて行ってやれ」

 

 

笑って許してくれるのもまた、器量が大きく、懐が深い、と言う事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り道。

 

 

「もう……恥ずかしい」

「ははっ。本当にな」

「でも、嬉しいですよ。凄く凄く嬉しい。信じてくれてるって言ってくれて」

「それもそうだな。応えてやろう、って思うよ」

「私たちの中で、リムル様とアティス様を信じていない者などおりませんよ?」

「それは勿論解ってるよ? でも、やっぱり嬉しいからさ」

 

 

その後、シオンは寝室へ。流石にその辺りの世話はシュナに任せた。

リムルは明日の演説の原稿の読み直し。アティスは何もする事ないな~と余裕ブッこいでいたのだが、リムルから叱咤されて役割を与えられる。

神々しさ(笑)を出す為に、リムルを纏って必要であれば空中浮遊やら更に光らせたりやらの演出担当となった。

 

二国間の友好宣言の式典だ。ある程度のインパクトを残しつつ、ガゼル王とも仲良しアピールもきっちりしなければならない。

つまり、魔国連邦(テンペスト)のイメージは、2人の双肩にかかってると言う訳だ。

 

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