「リムルさま~ 次はこちらを! 次はこちらをお召しに~!」
「いえいえ、こっちの方が可愛らしいでございますよー! きっととても似合います!」
「「「きゃーーーっ、リムルさま~!」」」
今揉みくちゃにされてるのは、この最強スライム軍のトップで領主で盟主で……兎も角本当に凄い人、じゃなくスライム。
でも、今はそんな気配が正直霞んでいってる気がする。
だって、凄く可愛らしい女の子たちに今オモチャにされちゃってるから。
でも、それが良い。とても楽しそうだと思うし、見ていて仄々とするから。とても和む。殺伐したスタートだったから嬉しささえ出る。
「いやぁ……ほんと色々と大変ですねー? リムルさん。でも、とても楽しそうで何よりです!」
「スライムスマイルで他人事の様に言うな。楽しそうっていうなら、代わってやるぞ? 次お前な」
「えっ!?」
後ろで静観してたら、まさかのリムルからのバトンパスだった。
他人事の様に言うな、とリムルから言われたが、間違いなく他人事なのだけれど。
「同族の性」
「いやいや。オレ、メタルスライムですから! それに、リムルさんのよーな素敵な身体持ってませんし? お色直し~の様には出来ないかと!」
「その辺は気にするな。シュナがしっかりと見繕ってくれてるぞ。スライムぼでぃでも安心、可愛らしい羽織だ」
「そうですっ♪ アティス様のも沢山ありますよっ、気にしないでくださいね?」
「ええっ!?」
綺麗な可愛い笑顔で迫ってくるのは鬼人の
勿論、私も可愛らしい女の子たちに囲まれるのは嬉しいですよ? いや、本当に嬉しいですし、とても照れます。直ぐ銀色な身体が赤く染まって、チェリースライム化しそうな勢いです。
でも、やっぱり慣れてないからなのか、とてもドキドキし過ぎて心労がすごいんです。
転生前プレイボーイだったら……せめて、夜のお店誘われた時、頑張ってスルーせずに、乗っていれば…… ここでどんなに良い想いが出来た事か。
その点、同郷のリムルさんは本当に凄い。やいのやいの言いつつ、ちゃんと楽しんでて、女の子たちも満足してて…… いやぁ、無性生物になった自分ですが、元男として見習いたい所存です。
ですが、現在ハードルが高いのは紛れもない事実。揉みくちゃにされるイメージは湧いても、嬉々と参加する度胸は無いので(まぁ、ヘタレなので)……。
「……これにて ドロンしますっ!」
「うわっ! こら、はぐれ化して逃げるなアティス!」
しゅるんっ、と持ち前の素早さを利用して、ぴょんぴょんと頑張って逃げる。
因みに、そんな逃げるのを追いかけるのも彼女たちにとっては楽しいイベントの様です。
「シオンっ、そちらに行きましたよー」
「お任せください姫様! でも、最初にアティス様を捕まえた人からですからねっ? 負けても文句なしですからねー」
「ふふ。負けるつもりはありませんよー」
この様に、しっかりとこの街に受け入れられたアティス。
最初の頃がウソの様だ。
しかし、
時間を遡って、トレイニーを含めた会合時の事。
トレイニーの物凄い無茶ぶり。否、光の神経由のキラーパスを受け取った(取らされた?)アティスは 皆から注目を一気に集めていた。
リムルと同族と紹介された時から、威圧される様な気配。怖い気配は和らいだのだが、やはり上位種のオーラと言うものはやっぱり凄まじい。ただ見られてるだけなのに、特に鬼の皆さんからは 燃える様なオーラを感じた。でも もう気にしない。
衣服のままでの会話はどうかと思うので、意を決して。頑張って覚悟を決めた。
もう何度目になるだろうか判らないが、いつものネタで勝負。ネタが少ないけれど、これしか思いつかなかった。
擬態を解いて スライム形態……つまりメタルスライムになって自己紹介。
『ぷるぷるぷる。ボクわるいメタルスライムじゃないよー』
『ぶふっっ!!!』
『ん? えっ?』
渾身のスライムネタに気付いてくれたのはリムル本人だけだった。他の皆は 何だか腹を抱えて笑いをこらえてるリムルが心配みたいで、側近にいた女性シオンは気遣っていた程だった。
それだけのやり取りでよく理解できた。
『(悪くないスライムネタ知ってるって事は、……彼女もオレと同じ転生者なのかな?)』
いつからこの世界に来たのかは判らないが、それでも トレイニーが言っていた同族、と言う意味が本当の意味での事だと分かって更に安心できた。
『うんうん、そーかそーか。そうだよな。ぜんぜん悪くない! キミは悪くないスライム…… メタルスライムだ! オレ達は間違いなく同族だなっ! 皆も良くしてやってくれ! ほれ、こうやって並んでみれば、間違いないだろう?』
ぷるんっ、と女の子な姿だったリムルは、瞬く間に水色の柔らかく、触り心地良さそうなスライムへと変化した。
2人並んで 水色と銀色のスライム。まさに瓜二つ。……まぁ、デザイン的にも簡単だから。
その後、ここにいる皆も徐々に友好的に接してくれた。リムルと一緒、同族であるという事、そして何よりもリムルが笑顔、スライムスマイルで接してくれたから。
『では、アティス様の事 宜しくお願いいたしますね? リムル=テンペスト様』
『了解だ。トレイニーさん。と言うかさ、引き合わせてくれてありがとう、と言いたいよ』
ひゅるん、と人型に戻るリルム。そしてアティスの頭をそっと撫でた。
『まさかオレ以外にも スライム族? がいるなんて思ってなかったし』
『ふふ。それはよかったです。では、アティス様も、宜しいですよね?』
『……はい。勿論ですよー』
もう、トレイニーに確認されるまでもなかった。
大歓迎ムードが出てる所で断る様な事はしないから。
それに何よりリムルに理由はあった。初対面であるのにここまで友好的に接してくれるのだから。
リムルには最初は物凄く怖いイメージがあった。何せ竜を取り込み、鬼を降し、最強の座にいる最強生物! と思って勝手に盛り上がってしまっていたんだ。
勿論、それは大いに反省。
よく考えたらトレイニーの時もそうだ。なのでしっかりしよう、と思う。
そして、この世界は剣と魔法の世界。1人で怖がって、1人でずっと逃げ回っていても、絶望的な未来しかない。なら、こうやって迎えてくれるひとたちの元で頑張るしかない。
『腹くくるのが遅いわい。自分をもっと信じるんじゃ。……この儂が言うのじゃぞ?』
とまた激が飛んだ気がする。
うん。この場所で頑張っていくしかない。生きる為に。そして孤独にならない為に。
アティスは、メタルなボディを変形。変体化の応用で、手を二つ作ってぱちんっ、と叩いた。
『トレイニーさんからの紹介でもありましたが、改めてアティスです。役に立てる事は正直 少ないと思います。でも、精いっぱい頑張りますのでよろしくお願いしますっ』
ぷるんっ、と今回初めて メタルなボディを普通のスライムの様に動かせる事が出来た。
なぜだろう? ちょっと試した事はあったけれど、メタルボディはやっぱり堅くて、はぐれメタル状態じゃないと出来なかったのに。
何だか、リムルを見てたら……出来る気がしたんだ。
『どうしてだろ?』
って唸ってたら、賢者さんが教えてくれた。
――告。ユニークスキル《
何でも光の神G.O.Dに頂いたスキルの中の1つらしい。全然覚えてなかったアティス。賢者さんに呆れられたのは言うまでもなかった。
そしてその後、何だかリムルより口調が愛くるしい、という理由で シオンに抱きかかえられてた。『堅いし、持ちにくいでしょ?』 と言ったら笑顔で否定されて、更に頬擦りまで。……また メタルな身体が、若干チェリースライム化 したのは言うまでもない話。
そして時間はまたもとに戻る。
「アティスさま? もう逃げちゃダメですよー?」
「……はい。もう 逃げないです。降参です。シュナさん」
結局シュナに捕まってしまった。抱きかかえられて、頭をナデナデされて、言い聞かされて。観念しない訳はない。シオンやゴブリナ達が悔しそうにしてたけど。
その後は綺麗にはぐれメタルぼでぃにデコレーションしてくれた。ピンク色のリボンが決め手との事。
因みに、リムルはずーっとにやにやしてた。
『リムル様、今よろしいですか?』
「おっ、ソウエイか。うーん、名残惜しい気もするけど、良いよ。はい、皆今日は終わり。また今度なー」
号令で 皆 リムルが言う様に名残惜しそうにしつつ、アティスを解放した。
「ふぅ……。慣れないです。すんごく役得だと判ってるんです。皆、いろいろと柔らかくって、温かくって、……ほんと、判ってるんです。けど……、もーちょっと楽しめる胆力が欲しいです……。肉食系スライムになっちゃいたいです!」
「はは。オレは捕食者もってるし ある意味肉食系かもなー。……んでも、アティスが突然キャラ変したら、心配されるかもしれないぞ?」
「ぅ……。それは確かに」
するする~っと、はぐれメタル状態のアティスはリムルの隣に座って メタルスライム化した。
「リザードマンの所に行ってるソウエイさんからですか?」
「おう。もう終わったよ。話。内容はちゃんと側近の1人であるアティスにも説明しとかないと、だからな」
「(側近とは、何だか恐れ多い……)あ、そうでしたね。声に出さなくても出来るんでしたね」
「そう。念話な。アティスも出来るだろ? っというか、そろそろオレに対しての敬語は取ってくれよ」
「いえいえ。ここの主はリムルさんですから。余計に取れませんって」
同族、と言う事は生まれと育ち、そして前世は違うかもしれないが、兄弟の様なものだとリムルは思っていた。だからこそ、アティスに普通に話せ~と、何度か言っているけれど、アティス本人が中々頷かない。
日も浅いし、何より、先ほど言った通り主はリムルだから、と言って。
「ったく。まぁ それはそれとしてだ。会談の段取りが決まった。7日後だ」
「1週間後ですか……。つまり、準備期間って事ですね」
「そう。準備以外にも移動時間とか色々と考慮した結論だな。さてさて、そこでだ。アティス君」
「………わぁー、とっても良い笑みですねー(棒)」
顔をぐいっ、と近づけて笑うリムル。そしてその笑顔は あまり良いものではない事。よくない事の前触れである事を、こんな短い期間ででも理解しだしたアティス。
そして予想通りだった。
「時間は多いとは言えないし、早速 稽古だ。ハクロウには話を通してる」
「うへぇ……、やっぱり。でも、ほんとにするんですか?」
「トレイニーさんからも言われてるし。ほれ、性根叩き直してやってくれ! と」
「そ、そこまで言ってないでしょ、絶対! それにオレ、人型になれないんですから、剣術指南とか無理あるでしょ!」
「それもそっか。修行や師匠、って言えばハクロウのイメージが強くてな」
「たしかに、ハクロウさんのイメージって そんな感じですけど………」
ハクロウとは、鬼人のまだまだ若さが残ってるお爺ちゃん、と言った印象。落ち着いていて優しそうな表情をしてるんだけれど、身のこなしとか隙が全く見えない、と言うのか、所謂達人! な感じがする。だから、そんな人に稽古つけて貰ったら強くなれそうだけど、地獄の特訓なイメージバリバリだ。
でも、驚くことなかれ。色々と愚痴愚痴言ってるけれど、そう言う系でのきついのには慣れてる! ヘタレでも出来るって所を、社畜根性ってヤツを見せてやる! って事で。
「じゃあ、最初はやっぱりオレとだな。色々とスキル持ってるって話だし、見てやるよ」
「わ、ほんとですか? リムルさん直々?」
「おう! ……って、あれ? 何だかやる気あるっぽい? 何だかんだと最初は拒否すると思ったんだけど」
「いえいえ、下っ端ですし。精いっぱい頑張らせてもらいますよー。それに、最初に皆の前で宣誓しましたから」