「お待ちしておりましたリムル様。アティス様。出撃用の武具の準備、整っております」
鬼人クロベエと伝説の鍛冶師と名高いカイジン、ガルムの合作。そして最高傑作。
格好良い……といつの間にか ウットリと見つめていたアティス。
リムルもにやっ、と笑っていた。
「……へぇ。いいじゃないか」
「ああ。これが旦那の分、そして、あいつがアティス殿の分だ」
カイジンがそっと差し出した。中でも格好良い! と思ってた、
柄に部分に銀の装飾が施されている刀。日本刀のような形状の武器。
「わぁ……。格好良いです。ありがとうございますっ!」
ひょこっ、とメタルスライム状態で器用に受け取った。
剣など使える訳ないでしょ? とハクロウとの修行を拒んでた筈だったのに、剣をすっかり気に入っていた様だ。
勿論、理由がある。剣が格好いい、と言う理由以外にも。――使える
「さてさて、出発前にお披露目式だ。ほーれ、アティス」
リムルは ぷるんっ、っと身体を震わせた後、人型へと変化。そして、指示を送ったのだが、反応は一切なし。
なので リムルは ちらっ、とアティスを見る。どうやら 話しを聞いてなかったのだろう。いつまでもいつまでも、ただただウットリと刀を掲げていた。
まるで伝説の聖剣? でも掲げているかの様に。
「ふふっ、わー格好良いなー……。大剣豪に、オレはなるっ! って感じかな? かな? 3本使ってみようかな?」
ひょい、ひょい、と本当に器用に剣を持ちなおしたり、鞘から抜いてみたり。スライムボディの扱い方は限りなく満点だ、と評価したいが今は違う。ので、リムルはアティスの元へ。
「コラコラ。無視すんな」
「あたっ!」
リムルは、ぱかんっ! とアティスの頭を引っぱたく。……掌がじーんっ、と痺れた。
「痛いとか気のせいだろ? オレの手が痺れたぞ」
「でも、いきなりは酷いです……。ビックリするんですから。それでどうしました? リムルさん」
「お披露目式。さっさとする。師匠命令」
「おひろ……、あっ、そうでしたね。判りました」
場にいる全員がきょとんっ、としていた。いったい何が行われるのか? と。
でも、その疑問は直ぐに解消される。リムルの隣にいたアティスの身体が変化した。堅い身体がグネグネと動き、体積が明らかに増えて……そして、見覚えのある姿へと変化。
「え……っ?」
「あれ? リムル、さま?」
そう、アティスの身体はリムルの姿へと変化したのだ。
でも、やや違いがある。まず、髪の色がリムルが水色に対して、アティスはそのスライムのボディを象徴する様に鮮やかな銀色。そして、身長がリムルよりやや小さい。ぱっと見は判りづらいけど、横で並んでみたら一目瞭然だった。
「アティスのは、オレのと違って喰って解析、擬態をする必要は無いみたいでな。便利なもんだ」
リムルが簡単に皆に説明した。
一緒にと見てあげた、つまり修行した過程で、アティスのスキルが色々と判明した。
アティスのユニークスキルの1つ《
だが、使い方次第で応用が利きまくる極めて便利な能力だと、リムルは勿論、リムルのスキル大賢者まで太鼓判だった。
勿論、アティスの中の賢者も同じく。
「リムルさんは、オレの事を同族で、……兄弟だと呼んでくれました。それと姿を継承する事も許してくださいました。なので、オレが真似るのはリムルさんの姿で固定しましたので。暫くは混乱しちゃうかもですが、髪の色で判断してくれれば。……あっ、勿論 いたずらなんかしませんよ? リムルさんに提案されましたが」
「よけーな事言わない」
「いたっ!」
ニコっと笑うアティスとリムル。
そして、中々理解が追いついていないのか、ちょっと固まってる面々。
「ほら、やっぱりビックリさせちゃったみたいですよ。リムルさん。出来た当初に言った方がやっぱり良かったんじゃないですかね?」
「いやいや。あの時にお披露目なんかしてたら……」
リムルが お披露目式を早めたらどうなっていたか、の予測説明をしようとしてたその時。
「きゃーー! かわいらしいですっ!」
「ほんとですっ、アティス様。すっごく可愛いですっ!!」
「わぷっ!??」
シュナとシオンに抱きつかれた。
揉みくちゃにされて、アティスは、2人のスライムにも負けない柔らかなボディに埋もれていった。
「こうなるだろ? そんでもって、折角の修行期間がぜーんぶおじゃんになる可能性大だ」
「成る程……。だから、この出発ギリギリに、と?」
「ああ。もう出発しないと 時間が延びる一方だし、それに、アレは出発道中でも出来るだろ?」
「ほほほ。確かに。……ですが、少なからず妬くのではありませんか? アティス様を見ていると。お2人を取られてしまった、と」
身体いっぱいでアティスを愛でる2人を見て、ハクロウがリムルに告げる。
でも、リムルは涼しい顔を、そして笑顔だった。図星、とかはなさそうだった。そもそも、リムルはシュナやシオンに名を与え、鬼人にしたその日から、殆ど毎日行われているから、ちょっぴり代わってくれる? アティスがありがたいのかもしれない。そして、それ以上に兄弟が出来た事に嬉しいのかもしれない。
「いいや、全然。だって オレ達は兄弟だからな。兄弟には平等、ってヤツかな?」
その後――ぐったりしていてもなかなか解放してくれないので(2人に埋もれてしまって声も出せなかった)、アティスは はぐれ化してつるんっ、と脱出。
シュナもシオンもある程度、満足出来た様で 逃げられた後 残念そうにはしていたものの、ちゃんと出発出来たのだった。
「洞窟でリムル様とアティス様が戦闘訓練をしていたとは。オレも参加したかったですね」
「あはは……。ベニマルさんとも一緒にーとなると 封印の洞窟内が壊れちゃってましたよ、きっと。……何でも、あの洞窟の入り口付近が、黒焦げになってたのがリムルさんの仕業だーって知りましたし」
道中。話題はリムル師匠による、アティス改造計画(笑)とアティス自身の話題で持ち切りだった。そして、トレイニーとの出会いについても。
何でもトレイニー曰く、本当に光の神がこの世界に降臨する事は 極々稀。
『トレイニーさん、
とリムルが聞いてみたら、そんなの比べ物にならない、との事。存在は把握出来ていても、気配は感じる事があっても、姿を現すなど前代未聞。そして 身に余る程の光栄だとの事。信仰の類が具現化した結果みたいなものだと解釈。
以前いた世界のキリ〇ト教信者の前に、本当にキ〇スト様がいらした~ の様な感じだろう、と。リムルもアティスも解釈。
そして、熱弁しているトレイニーの姿を見て、リムルはアティスにトレイニーが入れ込む理由もよーく理解出来た。そんなレア。……超がいくつも付きそうなレアな存在が気にかけ、世話をやいたともなれば、全身全霊でー、と言う事なのだろう。
でも、怖がってるアティスを見るのも何だか楽しかった、と小さくぼそっ、と言って笑ってたのをリムルは聞き逃さなかった。
まだ知り合って間もないのだが、十二分に判る気がした。
「そこまで手荒にはするつもりはありませんよアティス様。次は是非、呼んでいただければ」
「はーい。って……う~ん。あのぉー ベニマルさん。やっぱり、〇〇様って止めません? 普通に接してくれて良いんですが……」
「いえ。我々はリムル様に名を頂き、あの方の元に集っておりますので。その同族、親族であるアティス様にも首を垂れる所存です」
「えーっと。うん。確かにリムルさんは 色んな意味で凄い人だから、判るんだよ? 勿論、オレもさ。んでもさ、どーしてオレまでって思うんだ……。何だか恐れ多いって感じが……。ほら、知り合ってまだ10日くらいだし。それに ちょっと恥ずかしいけど 正直自分は皆さんの足を引っ張りそうな気もします……」
リムルとは訓練の最中、お互いの身の内話もした。どのような経緯でこちら世界に来たのか、と。
逃げ回ろうと思ってた自分と違って、リムルは竜と友達、親友になり、ゴブリンたちを、
単純にスケールが違い過ぎるよ、とリムルに言うと笑っていた。ただの成り行きで偶然と幸運が重なって出来た事だと。
でも、幸運だろうと偶然だろうと、従えてきた事実は変わらない。アティス自身そんな事が出来るとは思えないし、自分の事が強いとも思えなかった。
同じ様な種族だからと言って、自分まで畏まられると……嫌と言う訳じゃないが、何だか悪い気もするのだ。
「足を引っ張る……? ……ふふ。はははは。ご謙遜をアティス様。リムル様。そろそろ宜しいのではないでしょうか?」
「んー、ほっておいても面白いと思ったんだけどな」
「ん? ……んん? どゆこと?」
「アティス。お前にも大賢者……、賢者のスキルがあっただろ? 魔力感知の視点を自分自身に切り替えて見てみればわかる」
「そう? えーっと 賢者さん賢者さん。リムルさんの言う通りにしてみて」
――了。
「………………」
自分視点では判らなかった。でも、なんで判らなかったのかも判らなかった。
第三者視点で自分自身の身体を見てみると……。
あらヤダ。なんか纏ってる。
光って表現した方が良いかも。なんで気付かなったの? って自分に言いたい程、纏ってるじゃありませんか。神々しいというか、お体が輝いています! と言うか、何にせよ スライムと言う魔物が放って良いオーラ? じゃない気がする。
幾ら光を反射しやすいメタルチックなボディとは言え。
「それ、
「って、判ってたのなら、どーして教えてくれないんですかー! なんか、すっごい恥ずかしい! こんなの自分を大主張してるみたいで!」
「おー、気持ちは判るよ。オレも最初は、社会の窓を全開にしたまま、大通りを闊歩してたかの様な気分だったし」
「ぅぅ……、なんか実に的確な表現と言うか……。って、だからどーして教えてくれないんですかー!」
「そりゃ、舐められないよーにってヤツだ」
リムル曰く、ただのスライムは正直舐められる事が多いらしい。
オーラを抑えている状態だったら特に。現にリザードマンのガビルには散々言われたらしい。
最初が肝心、と言う事であえて伝えなかった、と。
因みにトレイニーの羽衣になってた時は、トレイニーが纏う事で何かオーラの漏れを抑えてたらしい。
「う~……。つまり結論するとアレですよね? 社会の窓全開にしてて歩いてる所に気付いてたけどあえて教えず、遠目で、ニヤニヤと見てた、と?」
「いやいや~。オレの話ちゃんと聞いてましたか? アティス君!」
「その何だか いやらしい笑顔がぜーーんぶ物語ってんですっ!」
人型になって、リムルをぽかぽか~! っと叩くアティス。
リムルも頭を押さえながら ぴゅ~! っと逃げる。
何だか愛らしい2人を見てて、シュナやシオンは混ざり、ベニマル達はただただ笑っているのだった。
色々と疲れちゃったので、ランガの背にのせてもらうアティス。リムルは ベニマルと何やら話をしていた。
「うー……。ランガも気付いてたの? オレだだ洩れだって」
「はい。主の命により明かせませんでしたが」
「……ふーん。ランガも楽しんでた?」
「??」
流石に狼であるランガは、この人間としての感性みたいなのは判らない様だった。
それにしても、ランガの乗り心地は素敵だ。モフモフとした毛はぎゅっ、と抱きついてみると本当に気持ちが良い。
「……あ、言うの忘れてたけど、乗せてくれてありがとう」
「いいえ。アティス様であればこのくらい喜んでお引き受けます」
ランガはリムルの事を主と呼び、本当によく慕っている。
魔素切れを起こしたら、リムルの影の中に入り、常々、とまではいかないが、よくリムルにくっついている。
なので リムルに似てるから(殆ど一緒)しているのかな? と一瞬思ってしまったが、ランガはそれに気づいたのか、或いはただの偶然なのか、アティスであれば問題ない、とまで言ってくれた事が嬉しかった。
そんな感じで、極上のベッド内で転がってる感覚を楽しんでいると、リムルがやってきた。ん~ と目を細めてるアティスを見て笑う。
「どうだ? ランガの背は気持ち良いだろ?」
「はい~…… とってもぉ……」
「後走るのも凄いぞ。ジェットコースターみたいで」
「そ、それはまた今度、と言う事で……。今は 心労回復中ですから」
「ほほぅ……わかったわかった。
「変な事、考えてません?」
「いーえ、なんにも」