The Second Hunter
運命とは数奇なものだ。
いくら自分がそうあるように動こうが運命が決めたのならば物事はその方向へと流されていく。それは濁流のように捉えたものを離さない。
私とて何度も運命というような事態に遭遇したが、いずれも愛用の鉈で斬り殺してきた。
だがこれは遭遇した物が汚物であり、獣であり、人を食い物にする神であるが故の行為だ。血を浴び、血に溺れることなく殺す狩人故の行動。
であるならば、少女に相対した時の行動とは如何様か。
☆
薄汚れた醜き月の魔物を殺して幾日か、やるべき事もなく狩人の夢にて微睡んでいる頃。外から声が聞こえた。人形は喋らない、基本的には自分との会話以外では沈黙を貫く為、人形ではない。
では誰なのか、疑問が尽きないが見ればわかる事。重い腰を上げ数日ぶりに外に出た。見ればブロンドの髪の少女が立っていた。それにアレからは青ざめた血と似た匂いを感じた。恐らく中にいるのであろう。少女は状況が把握できていないのか此方を見ては視線が泳いでいる。
とはいえ私にまともな会話など出来ないしする気もない、故に
「何用だ」
言葉少なく銃を突きつける。ここで生き抜くコツなど一つだ。動く物を殺す事、そうすれば少なくとも死ぬことはない。死んでも終わりを迎えるわけではないが。少女であろうと情けなど無いし油断など無い。外敵か路傍の石か、どちらかだ。
「ま、待って!わたしは」
「名など知らぬ、敵なら殺す」
「敵じゃないです、で、でもここ、どこかわからなくて」
動きは愚図な素人だが、獣狩りの群衆ですら時には狩人を殺すのだ。少女とて油断などして寝首をかかれるとも分からない。
油断なく少女に眼を向けるが一向に動く気配はない。これは、無害か。勘でしかないが、長年信じた勘がこれは無害と判断した。あくまで表面は。
「ならお前の中のそれは何だ」
「こ、これはその……」
埒があかない。普段なら面倒に感じた瞬間に銃を放つが、アレの中身が厄介だ。月の魔物とは別次元なのだろう。私とて骨が折れる相手やもしれない。
しかしこの場に足を運ぶことが出来るのは狩人のみ。この少女に狩人としての素質があるのだろうか。それは鍛え上げれば自分の代わりに終わらぬ悪夢を終わらせることができのだろうか。
ゲールマンの心情を欠片ほど理解した。なるほど、これが助言者、たしかに口を挟みたくもなる。
「お前はどこからきた」
「セイレムから、でもここは分からないわ」
「ここは狩人の夢、狩人達の帰る場所だ」
「夢、ここは夢の中なの?」
「そうだ、そしてお前は狩人の素質があるのかもしれない。獣を狩り、神を狩り、血を得る素質」
だがアレの中には狩るべき者がいる。果たしてそれを青ざめた血が許容するのか、それとも自分を殺しに来るのか。どちらにせよ見ものだ。
「来るならば適当に助言を授ける。去るなら早急に去れ。殺すというならこちらが殺す」
それだけ言い、後は元の椅子に戻る。微睡みの中、聞こえるのは暖炉の薪が燃える音。時折微かに響く人形の音。そして……ぎこちなく戸を開ける音だった。
☆
「お師匠さん、今日はメンシスに行ってきたわ!」
「そうか」
「ミコラーシュさんは相変わらず私の事をゴース、ゴスムって呼ぶのよ。いい加減名前を覚えてほしいものだわ」
「そうか」
「パッチさんは今日こそは綺麗な景色を見せてくれるっていうからついて行ったのに、出てきたのはおっきなアメンドース!私びっくりして思わずパッチさんをアメンドースにぶつけちゃったわ」
「……そうか」
「次はマリアさんからかたなっていうのかしら?とっても綺麗な技を教えてもらうの!お師匠さんも一緒にどうかしら」
「……考えておこう」
以前よりも騒がしさが増した。あの日拾った少女が気付けば悪夢の中を駆け回っている。ここに来る狩人も増えた。
結果的に拾ったのが正解だったのかは分からないが、まあ、多少は、色のある日々になったのかもしれない。