アビゲイルinヤーナム   作:粉プリン

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「ガスコインさんはとっても優しい人だわ。いつもはぶっきらぼうだけど教えてくれる時は分かりやすく教えてくれるの。お師匠さんとは大違い。でもたまに私のこと子供扱いしてくるの、私だってもう少しすれば立派な女性になれるわ!」


The Pig Kills

アビゲイルに狩りを教えてから数週間ほどだった。筋はいいのか新しく新調した爆発金槌を振り回している。獣狩りの群衆程度であれば苦戦はしないだろう。今だにあの害悪生物(犬っころ)には慣れないようだが。

 

「狩人様、誰かがいらっしゃったようです」

 

人形がそう呟く。ここ最近はアビゲイルがいろんなところに出かけているせいか、今までよりも、と言うよりはあり得ないくらいに狩人がここに集まる。目の前の大男もその一人だ。

 

「何用だ、ガスコイン」

 

「……アビゲイルを出せ」

 

「私ならここにいるわ」

 

呼び声に反応したのか屋敷の中からアビゲイルが飛び出してきた。いつもの格好に最近与えた砲、そしてゴテゴテに血晶石をつけた(・・・・・・・・・・・・)新しい爆発金槌を携えて。

 

「ガスコインさんこんにちは。私に何か御用かしら?」

 

「……ついて来い」

 

そう言い残してガスコインは石碑からヤーナムへと飛んで行った。相変わらず考えていることは分からない。が、害をなすわけではないだろう。あの男であればここに来た瞬間に斬りかかってくるだろう。アビゲイルも気になっているようだし別にガスコインについていくのを引き止める理由もない。

 

行くも行かないも自由にしろと伝えると即飛んで行った辺り、あれも相当懐かれている。そのまま向こうについていくことも考えたが、あれには娘がいたはずだ。恐らくあいつは単に似ているから気にかけているだけなのだろう。

 

そう言えば、今回はあの娘はどうなったのだろうか。

 

 

 

 

「……ここに来たかったの?」

 

「あぁ」

 

初めてこの金髪のガキを見た時は目を疑った。身なりは違えど娘と同じ年頃の子供が歩いているのだから。それも獣からの夜に。片手には憎たらしい小僧が持っている仕掛け武器を携えていた、しかしそばにいる気配もない。

 

何故か、無防備に一人でほっつき歩いているそのガキに腹が立った。だから近づいていって注意してやったのだ。

 

「ガキが一人でこんなところほっつき歩いてんじゃねえ」

 

と、柄にもなく怒りながら。当然そんなことをすればガキは怯える。だが逃げることはしなかった。律儀にも返事をして来た道を戻っていったのだ。その様子が気にならなかったといえば嘘になる。だからこそ会いたくもない奴の近くまで送った。それだけだ、他意はない、はずだ。

 

「ガスコインさん?」

 

「……あれが見えるか?」

 

獣に塗れた町の底、下水道までやってきたのはアレを見せるためだ。下水に巣食う汚れた獣。見ているだけで殺意が湧いてくる。

 

「……いいか、あれを見たらまず殺せ。一も二もなくだ」

 

「あれって……猪かしら?」

 

「豚だ」

 

「……お、おっきい豚さんもいるのね」

 

と、その時こちらに気がついたのか豚がこちらに突進をしてきた。後ろにも道はあるが幅が狭く何より狩人とは言え向こうの方が足は早い。

 

「構えろ」

 

「え、ええわかったわ」

 

聞き分けがいい方なのか、一言で直ぐに大砲を構えられる位には肝が座っているのか。どちらにしろこれなら食い殺されることはないだろう。

 

「撃て」

 

瞬間、下水道に爆音が響き渡った。突進の速度と発射された大砲の弾が勢いよくぶつかり豚の脳天で汚い肉をぶちまけた。それでも勢いの止まらない豚は転げるようにこちらに接近し、振りかぶった獣狩りの斧を顔面で食らった。断末魔の叫びを上げることなく、一瞬で死んでいった。

 

「……終わったのかしら?」

 

「……ああ」

 

終わりだ。少なくともこのガキが豚に食い殺されることはないとわかった。それだけ分かればいい、こいつがまた現れた時にこいつを殺す手間が省ける。それだけが知りたかった。

 

「……戻るぞ」

 

元来た道を帰っていく。これ以上ここに長居する気は無い。

 

「あのっ、教えてくれてありがとう!ガスコインさんって優しいのね!」

 

「……俺が優しい?脳が溶けてんのか?」

 

「だってお師匠さんはまともに教えてくれないのだもの。感覚で敵を探せとか、このタイミングでやればいいとか、曖昧で分からないわ。でもガスコインさんは実際にこうして教えてくれたんですもの」

 

「……俺が確認したかっただけだ」

 

「それでもありがとう。教えてくれて嬉しかったわ」

 

「……勝手にしろ」

 

これ以上会話する理由もない。とっとと帰るとしよう。

 

「もっと色々なことを教えてもらいたいわ!いいかしら?」

 

「今日は終わりだ、さっさと帰れ」

 

「そう、じゃあまた今度来るわ!」

 

……来られても教えることなぞ何もない。狩りの作法などあの小僧がどうせ吹き込むのだから。であるならば、娘の相手でもさせておけばいいだろう。少しは退屈も紛れるだろうか。

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