例によって、あとがきもあります。見たい人は見てね……?
■【リュウ】■
「さて……車もバイクも調子良し。設備の確認良し、となると……」
あれから、俺は色々このコテージと持ってきた移動手段の確認を漸く終えたところだった。持ってきた荷物は少ないし、案外楽に整理を終えたからには、やることは一つ。見に行くしかないだろう。
「……どんなコースでゴルフやるのか、把握しとかないとな」
確か先程、アリンからガイドブックを貰ったな。なんて思い出しながら、本を取り出す。文字に関しては、何故か日本語で書いてあったために把握出来た。他にも韓国語とか、様々な言語があるらしいから驚きだ。そんなに俺達の世界から、人間が来てるなんて想像もできない。
「とりあえずこっから近いのは……Blue Lagoon及びBlue water 。Blue Moonか。Blue Moonは夜限定コースらしいから、それは後でかな」
そんなことを考えながら、ゴルフクラブを持ってコテージから出ると、アリンが待機していた。いや、なんで? なんて答えを聞く前に、彼女から話してくれそうだ。
「リュウさん、パンヤ島は初めてでしょうから、案内しますよ。驚きのコースとかも、多いはずですから!」
「良いのか? こちらとしては有難いけどさ」
「大丈夫ですよ。お仕事にもなるし、勉強になる。そんな気がしましたから」
「ん、そっか。頼むよ」
とりあえず好意は受けとる事にして、コテージのガレージの扉をあける。とりあえず、車で移動した方が早いだろう。そんな訳だから、車のドアをあけて、キーを回す。エンジンがすぐかかったし、これでいい。
「それじゃ、隣乗ってよ」
「はい、わかりましたっ」
アリンを隣に乗せて、車は動き出す。こっちの世界もちゃんと道は舗装されていて、わりと走りやすいものだ。そんなわけで、コースの下見をするために車を走らせた。スポーツカーだから見た目も走りもいいし、新しめのだから燃費もそこまで酷くない。
そうして車を走らせていると、ようやく目的の場所は見えてきた。Blue Lagoonや、その派生コースの元となる場所だ。窓を開ける。潮風が、とても気持ちいい。
「このコースやこの付近海辺は、人気があるんですよね。海では泳ぐ人もいます」
「だろうなぁ、こんだけ海が綺麗だと気持ちよさそうだよ」
確かに、泳いでみたい気持ちになる。こういう海で泳げたのなら、とても楽しいだろう。後で泳いでみるのも、良いのかもしれない。
そんな事を考えていると、駐車場を見つけたために車をそのまま駐車する。そして、車から降りるとアリンが指をさした。
「あそこにあるのが、Blue Lagoon等のコースですよっ」
「おー、あれが……本当に海沿いだな」
ここでゴルフをするのは、気持ちいいだろうな。なんて思い、ゆっくりとコースの方に歩く。今は誰かがホールを回ってる訳でもないし、とりあえず見学しても良さそうだ。とりあえず、フェアウェイなどの起伏を調べる。なるほど、初心者用のコースだ。これならわりと、上手くやれそうだ。グリーンの難度は……少し難しいと言ったところか。
「分かるんですか? 見るだけで」
不意に、アリンが声をかけてきた。どういう意図か、なんて返事はしない。分かってる。見るだけで、そんなにコースを把握できるのか。という意味だろう。まあ、普通はそんなことできないのかもしれないが。
「まあな。昔は色々なコースを回って、様々な難易度を攻略したさ。その時の経験が生きてるんじゃないかな」
まあ、このパンヤ島のコースはどれも規格外らしいし、自分の経験があてになるのかは分からない。ただ、やってみるしかないのは確かだし、それならそのまま行くしかないだろう。
「そんなに、パン……ゴルフを楽しんでいたんですね。私も好きですよ」
「……まあ、な。それと言い直さなくていい」
「あ、す、すいません」
痛い部分ではある。ゴルフに関しては、色々とあった。……別に、今思い出すべき事でもないから、深く考えなくても良い気はするけど。
「……あ、そういえば。今回のパンヤで、私、憧れの選手がいるんですよ」
「ん、そうなのか?」
それが男か女か、そのどちらかによって話は変わってくる。まあ、多分男なのだろう。こんな美人な子が憧れるなら、一目惚れするようなとてもかっこいいやつだ。俺としては、アリンに一目惚れしてそう、なんだけどな。ま、それは置いておくことにしよう。
「はい、マックスさんって人で、テニスプレーヤーをしてたとか!」
「……そりゃまたテニス界の大物だ。知ってるよ、こっちでも有名だった」
「そうなんですか? 凄いなぁ」
確かにあいつはイケメンだ。俺の知る限り、トップアスリートというのは間違いない。とあるテレビ番組の企画で、会ったこともある。空軍のパイロットを目指してることは、その時聞いて覚えていた。実際、あいつならなれるだろう。まあ、ただ彼奴には欠点もある。ファッションセンスに欠陥がある。まあ、知らぬが花という事だから、そこは言わずにいてあげよう。
「……マックスのやつがこっちに居るのか。おまけに、パンヤをねぇ 」
実は、その企画の時からマックスとは友人になったのだが、あいつそもそもゴルフ経験あったか? という所を考えると、そこら辺を確認したくもなる。こっちで携帯は通じる……訳はないし、連絡できる方法があれば、連絡したいものだ。
「もしかして……リュウさんはマックスさんと知り合いなんですか?」
「まあ、昔な。俺も一応少しは名が売れてたんだ。きっかけがあってな」
遠い昔の話だけどな? とは付け足しながらも「凄い……」と呟きながら、俺を見るこの子に、なんとなく申し訳ない気持ちになった。
__だって俺は。
「……大丈夫ですか? リュウさん」
「……! ああ、平気さ」
アリンの声を受けて、俺は思考の波から抜け出すことができた。そうだ、俺はこの島にはもう一度ゴルフをするために来たんだろう? なら、あの時の夢は、叶えられる可能性はまだあるんじゃないか? ……そう思うと、俺はまだまだやれる。なんて考えられるはずだ。家に代々伝わる、このゴルフクラブと共に、俺はもう一度。
「……それにしても、だいぶ使い込まれたゴルフクラブですね」
「まあな、代々家の家系が使ってる。時代が変わろうと、こいつだけで戦ってきた」
「そうなんですか? それって凄いですねっ」
アリンは俺の気持ちを察したのか、話題を変えてくれた。まあ、俺のこのゴルフクラブは、かけがえのないものだし紹介くらいしてもいいだろう。
「俺の家がずっと愛用してる、このセットの名前は……”エアーナイト”。俺の相棒さ」
「……え?」
「はは、かっこいい名前だろ? ……こいつだけだよ、俺のプレーについて来れたのは」
ぽかんと呆然とするアリンを見ながら、こいつと回ったコースを思い出す。これ以外のゴルフクラブを使っても、うまくはいかなかった。だから、こいつしか俺は使わない。さて、この後はどうするか。アズテックの入手でもするかな?
「それじゃあアリン。アズテック、買いに行くから案内してくれ」
「は、はいっ!」
なんとなく力の篭もった返事に、俺は首をかしげながらも、コース近くのショップを歩く。アリンは、アズテックの売ってるであろう店の方向を指さして、「あそこで入手できますよ」と丁寧に教えてくれた。さて、どんなアズテックにしようか。柄付きはいくつもあるが、そうだな。
「……使うとしたら、このボールのセットかね?」
その中で、ブルースターアズテックというものが気になった。見た目的にも、転がすと星の模様が出るのも、なんとなく好ましい。
「そんじゃ、こいつ頂いていいかい?」
「ああ、安くしとくよ。おにーさん」
その店を切り盛りしているかのような少女は、安めに売ってくれた。なんだか少し、得した気分だ。いや実際得してるのだが。そんな買い物をしてると、知っている顔を見た気がする。というか。
「マックス?」
「ん? その声……リュウか?」
「はわわ、マックスさん。お知り合いですか?」
「わ、マックス様……!」
アリンのテンションが上がるのが、目に見えて分かる。俺としても、こんなに早く再開できるとは思わなかった。というわけで、だ。拳をお互い合わせて、いつもの挨拶をする。
「よう、ダチ公。元気してたか?」
「ああ、してたさ。お前こそ、元気だったのか?」
「おう、もちろんだ」
こいつはいつものライダージャケット姿で、このショップを歩いている。相変わらず服には無頓着なんだろうと思えば、ツッコミはやめておいた。
「アリンから聞いてたとはいえ、まさかこんなに早く再開できるとは思ってなかったぜ」
「俺としては、お前がここにいる事が不思議なんだが。……あの時言ってなかったか? 夢は諦めたって」
マックスは、俺が抱えている事情をずっと前から知っている。だから、自分を奮い立たせるためにも、もう一度。今度は言葉にする。
「まあな。けど、来ちまったんだ。ここならできる気がするんだ」
「……なるほどな。有り得るよ、それは。俺たちの居た世界とは違う」
「お前がそう言うのなら、希望は見えるな。なら良かった」
そんな話をしていると、アリンはハテナを浮かべて、マックスの隣の少女はちらちらと俺を見る。なんだろうか、俺の何か気になる……ああ、そうか。
「そっちの子は、はじめましてだな。俺はリュウ。マックスとは、こっちに来る前からダチをやってる」
「あ、ご丁寧にどうも。ティッキーですぅ……えっと、よろしくお願いします。マックスさんのキャディをしてますぅ!」
なんとなく、ドジっ子系統の女の子だな。そんな雰囲気がしつつも、ゴルフ経験の薄いであろうマックスを支えてるんだな。と理解した。
「しかしどうした、マックスも買い物か?」
「ああ、そうさ。アズテックを仕入れにきたんだ」
「なるほど、俺と同じ目的だな。それなら一緒にショッピングでもするか?」
「!」
アリンをちらりと見たあとの提案で、マックスはふむと考え込んでから、ゆっくりと頷いた。どうやら、okを出してくれるようだ。
「リュウさん。その、有難うございます!」
「おう、いいってこった」
全く、自分が可愛いと思う子をほかの男に紹介するのは、案外疲れるもんだねぇ。なんて思いつつも、笑みは出したままにする。それが一番の正解ってのは、俺が一番よく分かってるからな。ま、それはいい。どうってことないし、それより今マックスに聞かなきゃいけないことがある。
「……なぁマックス」
「ん、どうした?」
ものすごく今更で、コテージに居る時に確認すればよかったのだが、すっかり忘れていた。というものだ。
「キャディってどこで雇えばいいんだ?」
「……お前、それ、知らないのか?」
「……あっ」
アリンの忘れていた。という声を聞いたまま、場は少し固まる。そして、やれやれとマックスは苦笑いした。どうやら、教えてくれるようだ。だが、その先の答えを俺は予想していなかった。
「いいか? この島でキャディを雇うには……」
__キャディにしたいやつに、実力を示せ。
続きを書くきっかけ、というのも。最近になって、感想をくださった方が、追記をくれていたことに気づきまして。つい書いてしまいました。やっぱり、パンヤ好きな仲間が残っていると思うと、なんとなく嬉しかったんです。
これを機に、ほかのパンヤ好きな仲間も戻ってきてくれたら。この小説を見てくれたら。と思ったりしてます。こんな私でよければ、物語を紡ぎますので、どうか皆様、再びパンヤ島でパンヤを楽しみませんか? 私はお待ちしております。