それでは、閲覧なさってくださると幸いです!
「で、マックス。本当に此処にキャディはいるのか?」
「ああ、もちろんだ。だろう、ティッキー」
「はいですぅ。妹がいると思うけど……」
現在。マックスに言われた通りキャディに実力を示すため、俺はマガ谷と呼ばれるところに来ていた。ここにあるコース名はWest WizとWiz Wizと呼ばれる、初級と最上級のコースがあるからだ。そしてここにマックスのキャディ。ティッキーの姉がいると聞いて、探しに来ていた。
「で、ティッキーさん。その妹さんは何処にいるんだ? 名前は?」
「えっとぉ、今魔法学校から帰ってるとおもうですぅ。ミンティって名前ですぅ」
「あ、ミンティさんですか! よく覚えてます。物静かな子でしたね」
ちなみにアリンはしっかり同行している。マックスと一緒な事が嬉しいのか、テンションは高めだ。まあ、それはそれでいいのだが、それにしても。
「谷の中の霧が深いコースだな。それによってかなり幻想的に見えるから、このコースでゴルフをやるのは楽しそうだ」
実際ここでラウンドしてみたい。という気分になるくらいには、この辺りを気に入った。アリン曰く魔法学校のパンヤの授業でも、ここのコースを使うらしい。
「それにしても、マックス。悪いな、付き合わせちまって」
「いや、平気さ。俺はお前のゴルフを見るのが好きだったからな。久しぶりに見られるなら、それはとても嬉しいもんだ」
「ったく、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。そんじゃ、久しぶりに暴れるとすっかねぇ」
そんな軽口を叩きながらも、ティッキーさんの案内でマガ谷を歩いていく。すると、白い髪に紅い瞳。ティッキーさんによくにた女の子が、箒に乗って浮いていた。
「君、少しいいか?」
「ひぅ? ……なんでしょう」
可愛い声が聞こえたのは役得かねぇ。なんて思いつつ、ティッキーさんと見比べる。やっぱり似ている。
「ミンティ。ちょっとお話があるですぅ」
「……ティッキーも居た。何?」
この少女がミンティさんらしい。ミンティさんはこてんと首を傾げて、ティッキーさんに何があったのか聞こうとしている。まあ、俺から話すべきだと思うが、まずはティッキーさんに任せよう。
「えっとぉ、今お姉ちゃんに声をかけたこの人が、パンヤのキャディを探してるですぅ。それでお姉ちゃんにって。カディエお姉ちゃんは、既に決まってるし」
「……キャディを?」
カディエという人物名が出た時に、ティッキーさんはアリンをちらっと見た。なるほど。その姉もキャディなのかもしれない。さらに、アリンが雇い主なのだろう。なんて推測はしてみる。なんでも、ティッキーさんはアリンの後輩らしい。
「そういう事なんだ。だから、俺は君に頼みたいんだが」
「……理解。なら、腕を見せて」
「……まぁそうなるよな」
キャディの話が出た途端、ミンティさんの目線は俺をかなり探るように見ていた。まるで品定めするように、なのだろう。最初に声掛けた時に見せた、人見知りな印象はまだ消えていない。
「……一応聞くけど、West WizとWiz Wizのどっちがいい」
まあ、この質問は来るとは思ってた。だから予め決めていたコースの方にしようか。このコースはあらかた読めてきているからな。
「それじゃあWiz Wizで」
「……!」
「えっ!?」
「ほう……」
「はわわ!?」
ミンティさんもアリンもマックスもティッキーさんも、みんな驚いている。まぁ、難しい難易度の方から攻めるからこそ、かもしれないが。俺としては難しい方が燃えるんだ。
「ま、腕を示すには難しい方が良いきがしてな。ミンティさんが良ければ、それで頼む」
「……分かった。それじゃあ、行く」
そうしてコースの方に歩いていく。どんな課題が出されるか楽しみだな。なんて考える俺は、昔の感覚に戻ってきているのだろう。
「今回の課題は4Hでやる」
「了解」
念の為ここに来るまでに買っておいた本で、コースの内容を把握する。Par3で、ワンショットでグリーンに乗せるタイプのホールということだけが分かれば、あとはなんとかなる。
「でも、ミンティの課題。大丈夫でしょうかぁ……」
「ティッキー。そんなに難しいのか?」
「リュウさんは自信がありそうですが……」
「それでも、ですぅ……お姉ちゃんはとても人見知りで、あまりキャディをしたくなくて難題を出すんですぅ」
「それは……まあ、だとするとリュウはブランクがあるか平気か?」
「ちょっと心配ですね……」
後ろからの会話は聞こえているが、そんなことは関係ない。その課題が難しい事すら、今の俺を燃え上がらせる燃料になっている。だから、久しぶりに本気を出せるためにワクワクする。
「……着いた。ここが4H」
「お、ここがか。なるほど、そういう形になってるんだな」
ティーに立つと、目の前で大きな風車が回っていて、その奥にグリーンが存在する。ビームの出てる穴があるから、あれがきっとカップなんだろう。
「私の課題。それは、ホールインワンを出すこと」
「へぇ、いいね。単純明快だ」
「や、やっぱり無理難題押し付けたですぅ……」
「ホールインワンか。熟練のゴルファーでもきついな」
「チップインですら難しいのに……」
ティッキーさんとマックス。アリンの反応は渋いが、これでも俺は楽しむつもりだ。いつもの”エアーナイト”のウッドをゴルフバックから取り出すと、草をつまんで風に流して風の強さを見る。
「……9m。フォローか」
「!」
「的確な読みは変わってないな……」
「凄いですぅ……!」
「風が読めるんですね……」
キャディに任せることもあったが、自分でも測れるようにはしている。だからこそ実力をしっかり見せたい。そう考えれば3番ウッドを軽く振った。
「で、ホールインワンを取ればいいんだろ?」
「……え、あ。うん」
ミンティは俺の問いかけに、しどろもどろになりつつも答える。これだけギャラリーも居たら楽しむしかない。
「ま、確かにホールインワンは難しいな。けどさ……」
ミンティが首を傾げて俺を見る。だから、微笑みつつも俺は告げる。
「できてしまったら、カッコイイし面白いだろ?」
「!」
「リュウさん……」
ミンティさんとアリンの反応がいい。ま、決め台詞吐いた甲斐はあるな。ティッキーさんも「すごいですぅ」と呟いてくれてるし。さて、それじゃあやりますか。
「……」
風を感じろ。見た感じのグリーンの傾斜を思い出せ。風車の回るスピードも、ゆるやかだ。この中での最適解はきっと……だから、緩やかにテイクバックする。そしてタイミングをはかって。
「……三。二。一。……ここだぁ!」
「……!」
「上手いです! カップまで一直線!」
「だがこれだと飛び越えるぞ……!」
パンヤ! と音がなり、打球はまっすぐ飛んでいく。そしてビームに当たって軽く越える。だが、それを読まない俺じゃない。
「ボールが回転してます……まさか!」
「バックスピン!」
マックスの言う通り、俺の打ったボールはカップの少し奥で止まった後、バックスピンでカップの中に入る。上手くいったな。
「よし、ホールインワンだ!」
「……まさか、本当にやるなんてな」
「す、すごいですぅ!」
「これがリュウさんの腕前……」
マックスもティッキーさんもアリンも、自分の事のように喜んでいる。俺がやりたかったのはそうだ。こういうゴルフだ。……案外、嬉しくなるもんだな、俺も。
「……まさか、本当にホールインワンするなんて」
「はは、どうだ? 有言実行ってな」
そこではじめて、ミンティさんが笑みを見せる。楽しそうな表情をしてくれるから、俺としてもそれは本望だと感じている。
「……ここまでされたら、仕方ない。……キャディ、なる」
「お、いいのか? ミンティさん」
俺が聞くと、ミンティさんはふふっと笑う。そして箒から降りて俺の手を取って握手した。
「ミンティ。で良い。……カッコよかった。私、これからキャディとして頑張る。……宜しく」
「おう、宜しくさん」
かくして、俺はこうしてキャディを雇う事に成功した。そこからどうなるかは、まだまだ分からない__
久しぶりのパンヤ投稿。自分としてはかなり触れたくても触れられなかったので、たまにでいいからこいつも更新しようとか考えていたり。
……それにしてももっとパンヤを知っている人が感想くれたらなぁ。とか思ってたり。パンヤを知ってる人がコメントくれたら、また頑張ると思います←
次回も閲覧なさってくださると幸いです!