名乗りの口上は悪くないって?当たり前だろ。アイツが考えたわけじゃないんだから。
月間ヒーロータイムズ 某仲の良かったプロヒーローが語るより抜粋
「怖いか?」「怖くない、といえば嘘になる」
そうだ、怖いさ。いつだって怖い、怖くない筈がないんだ。だって仕方ないだろ、どんなに辛いことか、寂しことかを知ってるんだから。
「俺が逃げないように、しっかり捕まえててくれ」
「俺の方こそ頼んだぜ」
俺/私にも横で手を掴んでいてくれる仲間が……。
◾️
「想いと心の力、マジカルハート!」
今私に出来るとっておきの魔法だよ!
「心操くん、ガンバレ!」
◼️
あの後心操くんと少々問答があったけれど、お互いの健闘を祈りながら別れた。決して逃げた訳ではない、ないったらない。心操くんと別れた後、私はそのままの勢いでロボットを倒しながら駆け回っていた。個性を全力で発動した今なら正直ロボット程度なら一撃で倒せているのだけれど……。
「髪が赤くなって長くなってる!?しかもなんだか前よりも個性の出力が高くなってる……!?」
何故か個性で出せる出力が以前よりも数段階高くなっている。師匠との修業の成果なのかな……?それともお母さんに
だとしてもなんで髪が茶髪から赤く染まった上に腰辺りまで伸びているの!?前までは服装が勝手に赤いミニスカート、白と赤のパフスリーブのブラウスになる程度だったのに!いや、それも男からしたらかなり恥ずかしいけれど。スパッツと短めのパレオが無ければ恥ずかしくて変身できないところだった。
「相変わらずよくわからない個性だね!さぁがんばるぞぉ!」
ロボット相手の修業は済ませてあるし、時間も残り少ない。このままスパートをかけて行くよ!まさか師匠と見たSF映画が役に立つとは思わなかったけど!
◼️
順調にロボットを倒して行き自己採点でそろそろ40点になろうとした時に
「で、でかあぁぁ!?」
「勝てるかあんなもぉん!!」
「に、逃げろ!」
ビル数フロア程の大きさで、その巨体に恥じない怪力で市街地を想定されていた試験会場の車や建物を受験生を狙った攻撃のついでに壊して行く。なんかあの巨大ロボットだけ他のロボットとスケール違い過ぎるよ!?言うなれば今までは仮面◯イダーの世界だと思ってたら実は戦隊モノの世界でした、だから巨大化するよ?みたいな!?
「いやいやバカな事考えてる時じゃないよ私!?」
あんまりにも突然現れたソイツのインパクトに頭が混乱したのは私だけではなく、周りの受験生もパニックになりながら逃げはじめた。
みんなパニックになっていた。あんなロボットに勝てるわけがない、逃げなきゃと、だから私以外はその声に気付いていなかった。
「いっつぅぁ……」
ショートボブの耳たぶが特徴的な女の子が頭を押さえて蹲っていた。出血はしてなさそうだけれど意識が飛びかけてる!?
そして無慈悲にもその子に腕を振り下ろそうとする
「お、重いっ!ぅ、くぅ!長くは持たない!早く逃げて!」
「誰か!彼女を安全な場所に!」
その声に応じて一人、私の元に駆けつけてくれた。
「大丈夫か!?」
心操くんだった。あれから彼も必死に駆け回っていたのか息は上がり、肩で呼吸をしていたけどこの場に来てくれたんだ。
「私は大丈夫!だけど彼女が意識が朦朧としていて動けない!心操くん!避難誘導お願いしてもいいかな!?」
彼なら私の言いたい事の意味がわかってくれるはず。何せ私がアドバイスした事なんだから。
「わかった!俺が連れて避難させる!その間あいつを引きつけておいてくれ」
時間稼ぎ、ね。あぁ、そうだ。こんな時にぴったりな名言があるじゃないか。
「おい、大丈夫か!?意識があるならなんでもいい、返事をしろ!」
「ぁれ?ウチ……?」
「よし、掛かった!ここは危険だ、俺のあとをついて来い。避難するぞ」
心操くんの個性なら意識が朦朧としていても操る事で問題なく避難をさせる事が出来る。あとは彼に任せておけば大丈夫かな。心操くんと彼に操られている女の子が避難を始めたのを確認した私は受け止めていた腕を横に流し、巨大ロボットのバランスを崩す。
「心操くん。時間を稼ぐのはいいんだけど、別に倒しちゃってもいいんだよね?」
心操くんは私の言葉を聞いて目を見開いて驚いていた。そして笑った。
「ハハッ。知ってるぞ、そのセリフ。それ死亡フラグだろ?」
あら〜。この名言の元ネタを知ってたか〜。
「死亡フラグなんて殴って壊して押し通る!
体勢を立て直した巨大ロボットに向き直り、想いを高ぶらせて身体に力を廻す。
「じゃあ任せたぞ、ヒーロー」
「その子をお願いね、ヒーロー」
一気に飛び出して近づき、巨大ロボットが殴りつけて来た腕を跳ぶ事で避け、そのまま腕を駆け上り頭部を勢いをそのままに殴りつける。重量比率の悪い体型をしており、腕を横に流した程度でバランスを崩していた。そんな相手を思い切り、強化された状態で頭部を殴れば後ろに倒れるのは当たり前だった。
「すげぇ、アイツ0Pのロボットを倒しちまいやがった!」
「アイツも、避難させてる奴も漢じゃねぇか!」
「でもまだ壊れてないぞ!転ばせただけだ!」
こういう頭の大きいロボットってのは大抵はそのデカイ頭が弱点なんだ。私は映画を見たから知っているぞぉ!
「ふぅ」
一瞬、息を整える。だけど心は落ち着かせない。むしろ逆にさらに高ぶらせる。
「稲妻を喰らい、雷を握り潰すように……!」
狙うはさっき一撃を当てて既に装甲が壊れかけている部分!
「熱い
その一撃は装甲を貫き、衝撃を内部まで与えた。頭部は内部から爆発が起き、破壊された事で巨大ロボットは完全に機能が停止した。そしてそれとほぼ同じタイミングで試験終了の放送がプレゼントマイクからされた。
「必殺、マジカルパンチ……!」
「いや、後で言うのかよ」
試験が終わったので心操くんが避難させていた女の子と一緒に戻ってきた。
「あ!君さっきの!大丈夫だった?頭をぶつけたの?」
「ありがとう、ウチを助けてくれたんだって?助かったよ」
なんでもその女の子、耳郎響香ちゃんはそのプラグの様な耳たぶで直接音を聞いたり、流したりできる個性らしい。あの時は地面にプラグを差して近くにいるロボットを探していたらしいのだけれど、そのタイミングであの巨大ロボットが轟音を上げて出て来たから、音の衝撃が大きすぎて意識が朦朧としていたらしい。
「貴女の名前はなんて言うの?」
「あぁ、それ俺も知りたかった。あとお前男?女?」
あー、そういえばまだ変身したままだった。
「俺は
俺が男に戻ったのを見た耳郎さんは驚きのあまり
「性別が変わる増強系なんて変な個性だな。お前の技のネーミングセンスのが変だけど」
「なんですとー!?」
「マジカルライダーキックとかマジカルパンチとか普通あり得ない」
「うわぁ、ないわ〜」
耳郎さんにまで否定された!?
そして試験会場から退出し、着替えて解散するように再度プレゼントマイクから放送があり、俺たちは最後に連絡先を交換し、合否が判れば報告し合おうと約束をして別れた。
◾️
「実技総合成績でました」
受験生達は実技試験を終えれば試験は終わりだが、学校側はそうではない。むしろこれからが本番なのだ。
「
そう、採点である。
「対照的に
「アレに立ち向かったのは過去にも居たけど……。ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」
「ああ、しかも今年は二人もだ!」
今年の試験は例年に比べ、非常に採点が難しく実技総合成績が出た後に校長から試験に関わった教師全員に召集がかかっていた。
「わいわいとしてるが、なんで召集がかかったんですか?校長」
周りの雰囲気を叩き割ったのはボサボサの髪に無精髭の不衛生な教師。
「おっと!子供達の活躍に思わず忘れてしまう所だったよ!」
それにおどけながら答えたのは……ネズミ?の校長。
「みんなに集まってもらったのは他でもない!今回の実技試験の採点について、一部会場で判断に困る事があってね!私のところに回ってきたのだけれどみんなの意見を聞きたくて集まってもらったのさ!」
そして教師達の前にあるモニターに心操の試験中の映像が音声付きで映る。映像の心操は他の受験生が仮想敵を倒す時に同時に殴っていたり、他の受験生にここは危ないからと避難を促していた。
一見不自然なところはない。ただ他のヒーローと共同で敵を倒し、一般市民を避難誘導するのはヒーローが現場でする事として当たり前の事だ。
「おいおい、なんで入学試験なのに他の受験生に避難誘導してるんだ?」
「それよりなんで他の受験生達はその避難誘導に従っているんだ?」
「ナニカ、コセイヲツカッテイルノカ?」
試験で仮想敵としてのロボットを倒すライバル達に避難誘導をしたとして、された側は素直に避難するか?まずする者は居ないだろう。だと言うのに避難誘導をする受験生が居て、しかも従って避難をしている受験生までもが居るというあり得ない状況だった。
「そう、みんなに聞きたいのは彼にレスキューポイントを入れるかどうかさ!まずみんなには個性を考えずに救助Pを入れるかどうかを判断してほしいのさ!」
個性を考えない場合、プロヒーローとして現場をよく知っている教師達はほぼ全員が避難誘導という救助活動をしたと判断した。
「次に彼の個性を教えるよ。彼の個性は洗脳、話しかけ答えれば相手は命令通りに動くそうだよ!向こうに歩いて避難しろ、といえばその方向に歩いて行くようにね!」
だが個性が洗脳だと知った場合、判断に迷いが出ていた。
「つまり、これは避難誘導に見せかけた妨害行為って訳か」
「これは判断が難しいぞ。他のヒーローを妨害する行為は褒められたことではない。むしろ非難される行為だ」
「避難誘導なのか?非難される行為なのか?果たしてその実態は!?校長である私でも迷ってしまってね!思わず校長ジョークが出てしまうほどさ!」
校長ジョークはともかく、この問題は意見が分かれた。ヒーローとして市民を危険な場所から個性を使って避難させるのは立派な救助活動と判断する意見。反対に他のヒーローの行動を個性を使って妨害し、事件解決を邪魔していると判断する意見。つまり他の受験生をヒーローとしてみなすのか、それとも一般市民としてみなすのかで意見が分かれてしまったのだ。
「だからこの試験は合理性に欠けるんですよ。俺はポイントを入れて良いと思いますよ。見込みのないヒーローなんて現場に居ても邪魔なだけだ」
「それに校長?校長は迷っているとは言えどうするかはもう決めているんでしょう?」
不衛生な教師に続き、一見露出度が高く見える女性教師が校長に発言をした。
「試験については少々見直す必要があるね!確かに決まっているよ!その映像を見てほしい」
校長が操作して映像が切り替わり、心が0P敵の腕を受け止めているシーンが映し出された。
『誰か!彼女を安全な場所に!』
『大丈夫か!?』
「この時彼は間違いなく、ヒーローとして市民を守る為に行動していた。意識が朦朧として自力で避難出来ない市民を個性を使って避難誘導を行ったのさ!」
ブラフとしての避難誘導だけでなく、実際に必要な避難誘導も行える、それならば彼はヒーローとしての見込みがある。それが校長の判断だった。ただ他の教師達の判断がどちらかに偏った場合はその判断に従おうとも思っていた。判断がつかなかったからこそ最後に校長としての意見を述べたに過ぎない。
そしてそもそもこの論議はある条件を満たした場合のみ、意味を成す。
「この同率一位の子が時間を稼いでる間にこの子だけが救助に駆けつけた。彼を弾いちまうヒーロー科なんてあるわけないだろ?」
救助Pとして加算しても合格ラインに入らないようであれば意味がないのだ。
「ギリギリだけど……」
つまり
「心操人使、同率三十六位とし合格とする!」
前話で入れ忘れてた変身後の外見に関してですが、上手く表現できなかったのでわかりやすく言うとFGOのブーティカの第3再臨の服装を現代風にしてからマントと童貞を殺す力を無くした格好をイメージしてください。キュアヴィクトリーことブーティカマッマ。
何故ブーティカかって?好きだからさ。マントがない理由?マントはパワーアップしてから着くのがプリキュアだろう?
それとクラスの人数に関してアンケートを実施させて貰いましたが結果欠員無し、となりました。なので数合わせで心操くんもオマケで合格しちゃいました。なのでA組、B組両方とも21名です。原作面子に欠員は出さないとは言ったけど増員をしないとは言ってないので。
ちなみに欠員が出た場合は増強系として被るので佐藤が居なくなって、心操は普通科行きでした。
化蛇様、誤字報告ありがとうございました。
誤字報告、感想、評価お待ちしております。