「ノーマッド、聞こえるか?屋上にいるから早く迎えにきてくれ」
ヘリパイロットへ帰りの足、もとい翼になってもらう連絡を済ませた俺は、グリフィンのほぼ全ての指揮官・職員が参加する新年会を終えたところだった。グリフィン本部が佇む都市部の会場で開催されたため、古参指揮官や幹部職員はタクシーや自前の高級車で帰路についているが、ほど遠い最前線の支部所属の俺は移動手段がヘリという大掛かりな乗り物である。
「しきか〜ん、もう帰るんですかぁ〜?二次会行きましょうよ〜」
隣で酔っ払ってるのは、この新年会にバーターとして同伴してくれた副官のUMP45だ。本来こういうのには向いてないタイプだと思っていたのだが、『指揮官の人間関係を知りたい』という興味本位で付いてきたらしい。
二次会?行くわけないだろ、と口直しのガムを噛みながら自嘲気味に応えると
「だよね〜、だって指揮官は友達どころか私以外の話し相手もいないもんね〜www」
と、小馬鹿にされてケラケラ笑われる始末。悔しいがその通りだった。上司や先輩方とは形式的な挨拶こそすれど、世間話や雑談、愚痴を言い合うほど仲の良い同期や後輩は皆無だった。今思えばほとんど45と話してた気がする。
私と一緒でよかったね〜、とニヤけながら煽る45を余所に、汚染と枯渇で塗れる地上とは似つかない煌びやかな夜空を見上げると、メインローターで空を斬る音を響かせながら近づく黒い鳥が見える。
「こちらノーマッド62、まもなく到着する」
ようやくこの寒さと酔っ払いたちの喧騒から解放されると安堵しながら、傭兵としての日常を思い出させるUH-60に乗りこむ。
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「新年会はどうでした?楽しめましたか?」
「愚問よ、ノーマッド。だってこの指揮官よ?」
それもそうだと笑いながら俺を見るパイロットを睨むが、それが逆効果だと気づいた俺は不貞腐れて座席に寝転んだ。ガムを噛む歯に自然と強い力が入る
「指揮官が私以外の人と話したのって、スタッフに飲み物を頼んでお礼を言ったくらい?」
「えっ、なにそれ…あんたよく生きていけるな…」
「今度余計なことを言うと口を縫い合わすぞ」
とはいえ45がいなければマジでヤバかった。もしも俺一人だったら多分ずっとトイレの個室でほとぼりが冷めるまでゲームしてた。そもそもの話、俺はこの手の集まりに参加することはまずない。ぼっちの俺はこうなることが分かっているからだ。
しかし悲しいかな、世の中には『強制参加』という四文字熟語がある。この世で最も忌まわしい四文字だ。周りが友達同士でくっつく中、よく先生とペアを組んだ学生時代の思い出が甦る。やめろ、思い出したくねえよ。
と、一人でトラウマに苛まれていると、一人の操縦士と一体の人形が件の話に花を咲かせていた。
「それでね、私がお手洗いに行きたくて席を外そうとしたら」
『えっ…ああ…うん、分かった……』
「って、捨てられる仔犬みたいな目で見てくるのよ?」
「ンフッwwwwなんか想像できるwwww45がいない間オドオドと挙動不審だったんだろなwww」
おいノーマッド、ちゃんと操縦しろ。ちょっとヘリが傾いたぞ。
なにも一人が嫌なんじゃない。むしろ一人の方が好きだ。問題なのは“周りがそれぞれ固まっているなか、自分だけ一人”ということだ。電車などの公共交通機関やファーストフードなど比較的軽めの飲食店ならともかく、こういう職場の集まりや娯楽施設。いわゆる『仲間と集って楽しく語らうのが大前提の場』だとキツい。自分が場違いすぎて居た堪れない気分になる。
「でも指揮官からはともかく、指揮官に話しかけてきた同期の人たちってそこそこいたよね?なんでその人たちと一緒に過ごさなかったの?」
「愛するかわいい45と一緒にいたかったんじゃないか?ヒュ〜♪お熱いねぇ〜!」
俺は噛んでたガムを吐き出し、ノーマッドに気づかれぬように彼のヘルメットに貼りつけた。
けれども45の言う通り、話し相手や友達が皆無だったというわけではない。話しかけてくる同期はいた。
だが待ってほしい、彼らには俺よりももっと仲のいい人間がいる。つまるところ彼らについていっても、時が経つにつれ俺の知らない他の人達が寄ってきて談笑する。俺を放っておいてだ。
「ああ〜…要するに指揮官の優先順位がかなり低いってことだね…」
「そういうことだ。たまに気を使ってるのかずっと俺と一緒にいてくれる優しいヤツもいるが、俺ごときに付き合わせて楽しい時間を無碍にするのは申し訳ないから、俺から席を外すか気を使うなと声をかける」
「捻くれてんなー…こりゃ結婚どころか彼女すら無理だな」
余計なお世話だ、と年齢=彼女いない歴の俺は、交際2年目の彼女がいるノーマッドのヘルメットにコンビニで受け取ったレシートを気づかれぬよう貼り付けた。
俺が所属する支部までまだ距離はある。仲良く会話をするノーマッドと45を尻目に、無駄に疲れた俺は機内で浅い眠りに入った。
#1 しかし、飲み会には参加する
ほぼ僕の体験談です(隙あらば自分語り)
こういうSSや小説は初めてなんですけど(2回目)、どうなんですかね…。閲覧して頂いた方が少しでも楽しんで貰えたら嬉しいことこの上ないんですが…。
誤字脱字の指摘や、こうすればもっといい等のアドバイス 随時お待ちしております!