指揮官には友達がいない   作:狂乱のポテト

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仕事つらい…辞めたい……。
なんて愚痴をこぼす日々を過ごしてたら執筆するやる気とアイデアが無くなりました。さすがにこの状況はまずいので番外編でお茶を濁します。←

……読んでくれてる人…まだいる…?





番外編 ともあれ、人形と結婚するのはどこかおかしい

 

 数ヶ月ほど前のこと……

 

 

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「大変参考になりました。メンバーの選定が完了次第折り返しご連絡します、ペルシカさん」

 

「いいよいいよー。麻薬組織が相手の作戦に参加するなんて、指揮官も大変だねえ」

 

「はは…、仕事なんで……」

 

 我々民間軍事会社グリフィンが戦う相手は鉄血……だけではなく、地元管轄の法執行機関から犯罪組織の検挙を委託されることもある。もちろん非正規な依頼ではあるのだが、戦術人形を一般人に紛れ込ませて潜入捜査をしたり、高い戦闘能力を活かしてテロ組織の制圧に派遣されることが多い。

 

「でも鉄血の殲滅だけでひと苦労なのに、犯罪組織の取り締まりまでさせられるのはブラックすぎない?この会社」

 

「まあ…仕事なんで……」

 

 ペルシカさんと話していたのは、近々行われる麻薬カルテルへの強制捜査の件。うちの支部からは4名の戦術人形が参加することになったのだが、いかんせんカルテルの装備が尋常ではなく、質も数も多いことが問題となっていた。

 

 上層部もそのことを懸念しており、16Labの首席研究員ことペルシカさんにこの問題を打破する新装備を開発するよう指示していた。

 

「ふーん…仕事……」

 

「…指揮官はつまらないね」

 

「え…」

 

 心做しかペルシカさんの目が笑ってないように見える。研究熱心な日々から生まれた目の隈のせいではなさそうだ。

 

「指揮官はさ、人形たちのこと…好き?」

 

「急になんですか……」

 

 先ほどの冷たい視線から打って変わり、いつもの気だるげな彼女から投げかけられたひとつの問い。

 

「そりゃあもちろん好きです。彼女たちが僕をどう思っているかは知りませんけどね」

 

「ひねくれてるなあ、本当はあの子たちの気持ちが分かってるくせに〜」

 

「僕は彼女達の上司ですよ?変なことをしようものならセクハラ行為としてクビになります」

 

「知ってる?合意ならセクハラにはならないんだよ」

 

「…あなたって人は……」

 

 まったく…この人の相手をするのは疲れる。だいたい俺が隷下の人形たちに真剣に恋をしていたところでなんだって話だ。

 

「バカなこと言ってる暇があるなら、カルテルとの戦力差を解決する装備を考えてください」

 

「ひどいなあ、ちゃんと考えてるよ。ていうか、もうできてる」

 

「……は?」

 

「ふふっ、首席研究員をなめてもらっちゃあ困るなあ?」

 

「……さて指揮官くん、もう一度質問です」

 

「君は人形たちは好き?」

 

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「これが人形の能力を上げる装備…」

 

「そ。とてもそんなものにはみえないでしょ」

 

 机に置かれたのはひとつの指輪。とくに希少な宝石があしらわれているわけではなく、なんの変哲もないただのリングだった。

 

「……ついに変な宗教に手を出したんですか…?」

 

「違うわよ、そんな目で見ないで」

 

 とはいえ指輪を嵌めただけで能力が上がるなんてどういう原理なのかさっぱり分からない。もっとこう…中身を変えなきゃスペックなんて上がらないんじゃないのか……?

 

「まーその辺の説明をしたって指揮官には分からないだろうから省くよ」

 

「はあ…。で、どれくらい強くなるんですか?」

 

「まだ試作品だからね、明確な効果は未知数だけど理論上は1割増ってとこかな」

 

「……なんかショボいですね…」

 

「ちょっと、人が一生懸命作ったものにケチつけないでよ。いらないなら別にいいんだよ?」

 

 思わず口が滑って本音を漏らしてしまった。作戦遂行のためにも、ペルシカさんの機嫌を損ねるのは賢明ではないのでとりあえず謝っておく。

 

「第二世代の戦術人形だし、やろうと思えば能力を5割ほど引き上げることはできるんだけどね。ただ、あくまでもここのは民間向けの戦術人形だから…」

 

「ああ…そういう……」

 

 グリフィンが運用しているのは第二世代戦術人形。規格は正規軍所有のT-Dollと同じではあるものの、いちPMCが正規軍以上の戦力を保持することは許されない。武装レベルや保有できる人形の数量制限など、越えてはならない規制の壁があるのだ。

 

 だがここでひとつの疑問が生まれる。

 

「でもこれ指輪にする必要ありました?」

 

「そこ。そこだよ指揮官くん」

 

「この指輪は通称『誓約の証』」

 

「誓約?」

 

「ようするに結婚みたいなもんだね」

 

「……えぇ…」

 

 結婚って…。戦術人形と結ばれるってことか…?女子と手を繋いだことすらない俺が…。

 

「簡単に説明すると、人形の性能と権限を部分解除するのがこの指輪。本来ならグリフィン所有の人形を指揮官個人のものにできるわけ」

 

「そんなことができるんですか……」

 

「っていっても火器管制コアを抜いたらI.O.Pに返却しなきゃいけないことに変わりないけどね」

 

「まあでも人形とそういう関係になるなんて、このご時世珍しい話でもないでしょ」

 

 荒廃し人口が減りつつあるこの世界では、まともに人間同士で交際する方が珍しい。その辺の人間よりも自律人形の方が見た目もいいし、人間に対して好意的という点が大きい。

 

 聞くところによると、なかには部下の戦術人形を毎晩とっかえひっかえ抱いている指揮官もいるらしい。セクサロイドかなにかと勘違いしてないか……。

 

「そのせいでヘリアンさんみたいな人があふれかえってるんですけどね…」

 

「ここの子に聞いたけど、あなたは人形たちとそういう関係にはなってないらしいわね。珍しい」

 

「あくまで上司と部下ですからね、彼女たちの信頼を失いたくないし」

 

「…本音は?」

 

「これが本音です。第一、俺よりもいい男なんてここの職員に腐るほどいますから」

 

「ひねくれてるねぇ〜。確かに他の支部と比べるとここの雰囲気はかなりいいとは思うよ」

 

「……この指輪…使わないとダメですか?」

 

「その判断は指揮官に任せるよ。作戦成功の可能性を少しでも上げたいなら使うに越したことはないけど」

 

「ちなみに誓約したら後戻りはできないからね、誓約する人形は慎重に選びなさいよ?」

 

「……」

 

 作戦成功率を上げるため、藁にもすがる思いではあるものの、どうにもメリットとデメリットが割に合わない。部下の人形と一線越えた関係になるというのがネックだ。

 

「心配しなくてもここの子たちなら快く受け入れてくれるよ。みんな指揮官のことが好きだし」

 

「そういう問題では……」

 

「…考え方が特殊な指揮官くんには扱いづらいかもね」

 

「でも大丈夫、私にいい考えがあるわ」

 

「?」

 

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「はーい、これでみんな集まったかな?」

 

「ねえM4、なんでペルシカは私たちを集めたの?」

 

「さあ…?私もなにも知らされてないから……」

 

「寝てたのに呼び出さないでよぉ…416……」

 

「あなたまた模擬作戦中にだらけてたのね…!真面目にやりなさい!」

 

 場所は変わって4階の第3会議室。100人ほど入り込めるこの部屋に、ペルシカの一声で集まったのは俺の隷下にある戦術人形たち。ざっと数えて40余名ほどだ。まあそんなことはさておき、まずは416を落ち着かせよう。

 

 しかしペルシカさんは話を始めず、未だに私語をして騒いでる人形たちを見つめるばかり。やがて彼女の雰囲気を察した人形が一人、また一人と口を閉ざしていく。

 

「はい、皆さんが静かになるまで7分もかかりました」

 

 学校の先生かよ。

 

「コホン、えー皆に集まってもらったのはとある新装備の説明をするためよ」

 

「……!?まさか…!!」

 

 この人…人形たち全員に俺と誓約できる指輪の話をする気だ!!まずい…そんな話をされたら混乱どころの騒ぎじゃない!

 

「ペルシカさんちょっと……んぐっ!?」

 

「まあまあしきかん♪とりあえず話を聞こうよ♪」

 

「くっ…45……」

 

 まったくこいつは…面倒ごとを察知するのが早すぎる…。しかも45は火に油を注ぐだけ注いで消火活動をしない奴だからな。余計にタチが悪い。

 

「ここに出したるは誓約の指輪!説明すると……」

 

「け…結婚!?」

 

「指揮官と…!?」

 

「これで家族が増えるよ!やったね指揮官!!」

 

「おいばかやめろ」

 

「へえ…けっこう面白そうじゃない、しきかん?」

 

「……」

 

 ああ…面倒なことになった……。人形たち全員から不気味な視線を感じ取った俺はとりあえず会議室を出て自室に戻る……つもりだったのだが、ここでペルシカさんが追加の油をまき散らす。

 

「あ、この指輪は全部で4つしかないからね。早い者勝ちだよ」

 

「「「!?」」」

 

「あー…」

 

 なぜここで闘争心を煽るんだ…。アーマー〇・コアの新作が出るのか?

 

 身体が闘争を求めた結果、より騒がしくなってしまった第3会議室。やがてここで1人の人形が動き出した。

 

「指揮官!指揮官は私のこと好き?」

 

「ぐっ…Five-seven……」

 

「指揮官の好きにしていいのよ〜?だから…ね?」

 

「ちょっ…近い近い!」

 

 その姿を見た他の人形たちも我先にと俺に抱きついてきた。

 

「指揮官…その…また一緒に映画観に行かない?」

 

「Vector…お前まで……」

 

「指揮官わたしも!!」

 

「指揮官さま〜♪」

 

「うっ…お前らちょっと離れろ…!!」

 

「…なんか新手の宗教みたいね……」

 

 少し距離を置いて引き気味につぶやいたのはわーちゃんことWA2000。傍から見たらそう見えるのも無理はない。

 

「わーちゃん助けて……」

 

「ふ…ふん!あんたなんか知らないわよ!他の子たちに言い寄られて鼻の下を伸ばすなんて…この変態!!」

 

「ええ……」

 

「あらあら。指揮官にそんなことを言ってはダメですよ、わーちゃん」

 

「スプリングフィールド…」

 

「指揮官、よかったらご一緒にマフィンでも食べませんか?わーちゃんもどうです?」

 

「ふぇっ!?わたし…私は……指揮官がどうしてもっていうなら仕方ないわね。付き合ってあげる!」

 

「ちょっと?勝手に話を進めないで?」

 

 駄目だこいつら…早くなんとかしないと……。

 

 どいつもこいつも食事に誘ったり直接言い寄ってきたりと冷静じゃない…なぜそこまでして……。

 

「お前ら騒がしいぞ!なんの騒ぎだ!?」

 

「…ヘリアンさん」

 

「む、指揮官。なぜ人形たちに抱きつかれて……業務中に不純異性交遊とはいい度胸じゃないか…!」

 

「ち…違うんです!これは…!」

 

 助け舟を求めようと近くの人形たちを見るもみんな目を逸らしやがる。この裏切りもんがぁぁぁっ!!

 

 仕方ないので捨てられた仔犬のような目でペルシカさんを見つめる。「うわあ…」と若干引いているがこの際気にしない。

 

「はあ…あのねヘリアン、実は……」

 

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 その後、ペルシカさんによる事情説明のおかげで特に罰を受けることもなく、ひとまず今日のところは解散するよう告げられた我が部隊。ゾロゾロと退出する人形たちを尻目に、ヘリアンさんが俺に話しかける。

 

「指揮官は次の会議までに作戦に参加する人形4体、そしてその指輪を使うかどうかを決めるように」

 

「はあ…。ヘリアンさんはどう思われます?この指輪」

 

「私は上級代行官だ。直接人形を指揮する立場ではない」

 

「よって、この件に関しては指揮官の好きにしていい。常識の範囲内でな」

 

「……おかしいと思いませんか?指揮官と人形が愛し合うだなんて…」

 

 人形たちの退出が完了し、ヘリアンさんと二人きりとなった第3会議室で俺は思いの丈を述べる。

 

「…続けたまえ」

 

「僕も人形は好きですし、差別をしたりしません。しかし、指揮官という立場や人間に忠実であることを利用して逸脱した行為をするのは容認できません」

 

 ここはハーレムもののラノベの世界じゃない。俺はE.L.I.D.や鉄血を殲滅し、殺された家族のために戦術指揮官になったんだ。恋愛ごっこをしにきたんじゃない。

 

 これ以上、俺のような人を増やさないためにも……。

 

「我々はPMCです。上司と部下、指揮官と兵士の立場を一貫するべきです」

 

「たしかに、権限を利用して部下の人形にそういう扱いをする指揮官はいる。それに関しては上も対策を考えているところだ」

 

 当然だ。一般人と民間の自律人形による恋愛は知ったこっちゃないが、少なくとも戦場に生きる俺達は考えを改めるべきだ。

 

「……つまり、貴官は戦術人形が人を愛するのはおかしい。そう言いたいんだな?」

 

「なにもそういうわけでは…」

 

「同じだよ」

 

「…!」

 

「人が人形を愛するだけでなく、人形が人を愛することだってあるんだよ」

 

「まあ…そういうこともあるでしょうけど……」

 

「私も人形を差別したりしない。こんな世の中じゃなければ戦術人形だろうが自由に生きてほしいとは思っている。貴官はどう思う?」

 

「……同意見です」

 

「なら…、戦い以外の生き方を見出してもよかろう。貴官が言っていたそうじゃないか。『それが戦術人形のなり損ないではない』と」

 

「その戦い以外の生き方が、誰かを好きになり愛し合う…というだけの話だ」

 

「…とはいえ僕は人間です。仮に人形と愛し合ったとして、人形を取り残して死んでいくのは避けられません」

 

 そんな辛い思いをさせるくらいなら……

 

「どうせ傷つくくらいなら、いっそ誰とも関わらない方がいい…と。相変わらずの捻くれ者だな…貴官は……」

 

 ヘリアンさんは微笑みながら俺の頭をポンと撫でた。

 

「傷つくことを恐れていたら、人間関係なんてものは築けない。誰も愛せないし、誰からも愛されないんだよ」

 

「貴官は優しい。だからこそ、もっと報われるべきだ」

 

「……」

 

「お説教は終わりだ。作戦の件、任せたぞ」

 

 そう告げたヘリアンさんは部屋を出て、会議室に残ったのは俺だけとなった。

 

「……」

 

『傷つくことを恐れていたら、人間関係なんてものは築けない。誰も愛せないし、誰からも愛されないんだよ』

 

 先ほどの彼女の言葉が重くのしかかる。

 

「…はあ…」

 

「これ…どうするかなあ……」

 

 先ほどの騒がしさが嘘のように静まり返った会議室。空調設備の音を除けば、室内はしばらくの間静寂を貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 番外編 ともあれ、人形と結婚するのはどこかおかしい

 

 

 

 




ヘリアンさんってこんなキャラだっけ?(致命的ミス)

グリフィンvs犯罪組織って設定は面白そうだからいつか書きたいけど、シリアスな話を書くのは絶望的に向いてないから他の人に書いてもらいたい←


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