指揮官には友達がいない   作:狂乱のポテト

12 / 25



Q.この話、この作品でする必要あった?

A.ないです

というわけで今までの話とは雰囲気や書き方が少し違います。もしかしたらお気に召さないかもしれませんが、ご了承ください…。シリアス難しい…。

お気に入り200件を超えました!ありがとうございます!!





番外編 それぞれの思いが錯綜するなか

 

 

 

【戦術人形と愛し合った指揮官は不慮の事故に遭い、愛する人形を置き去りにしてこの世を去った。】

 

【戦術人形にプロポーズをした指揮官は、その後人間の女性と結婚し、家庭を持って退職した。】

 

【数々の戦術人形をはべらかして肉体関係を持った指揮官は、夜の寝室にて背後から謎の負傷で死亡した。】

 

 どれもすべて実話だ。その指揮官たちと関わったことは数える程しかないが、戦術人形と一線を越えた結果がこれである。

 

 この話の共通点はただひとつ。最終的に傷ついているのが指揮官ではなく、戦術人形ということだ。これが俺が恐れている最大の理由、家族同然の人形を裏切る行為だ。

 

 だがヘリアンさんの言うように、彼女たちの新しい生き方として誰かを愛することを肯定するべきだと言うのならば…。たとえ最終的に彼女たちが傷つこうと“今”を楽しく生きるのが正解なのだろうか。

 

 

 

 

 俺には分からない、だからこそ…。

 

 

 

 

 

 

 俺は彼女らの“指揮官”をやる。

 

 

 

 

 ━━━

 ━━━━━━━

 ━━━━━━━━━━━━━

 

 

《ノーマッドよりHQへ、LZ(ランディングゾーン)に到着。プレッジ0-1と0-2の降下を確認》

 

「了解だノーマッド、LZから南へ1キロ先の商業ビル屋上でフェンサーチームが待機中だ。回収を頼む」

 

「予定通りプレッジ0-1と0-2が作戦エリアへ進行中。2名のバイタル、メンタルともに正常です」

 

 時刻はPM 23:00

 麻薬カルテルと過ごすパーティの幕開けだ。

 

 場所は司令室。ここでは作戦地域に展開している全部隊の映像がモニターに映し出され、リアルタイムに指示を出すことが可能だ。的確な指揮を執るため、司令室内には後方幕僚のカリーナをはじめ、3名のオペレーターがサポートについている。

 

 今回の作戦に参加しているのは法執行機関直属の特殊部隊15名、グリフィンからは3つの支部から戦術人形が4体ずつ。計27名の隊員が参加している。

 

「指揮官、プレッジ0-1と回線を繋げます。3、2、1……」

 

《オーバーロード、こちらプレッジ-01。目標のホテルを確認したわ。ここからは徒歩で向かうわよ》

 

 あえて説明するとこの司令部自体が『HQ』、俺のコードネームが『オーバーロード』だ。本作戦においてグリフィン側の全面的な指揮権を託されたのだが、なぜ上はひよっこの俺を選んだのか理解に苦しむ。別の支部のベテラン指揮官の方が適任だろうに…。

 

「了解だ。フェンサーチームの報告では複数のターゲットが会合場所のホテルへ向かっている。今夜取引が行われるのは確かなようだ」

 

《りょうかい♪バックアップは任せたからね、しきか〜ん?》

 

「……作戦中だ。コールサインを使え」

 

《はいはい。もう、こういう時だけ真面目なんだから…》

 

「こういう時だからこそだ…、頼んだぞ。オーバーロード、アウト」

 

 プレッジ0-1と通信を終え、隊員達のライブ映像を映し出すモニターへ視線を向ける。おい、カメラに向かって手を振るんじゃない。ちゃんと真面目にしなさい。

 

「相変わらず彼女たちに好かれてますねー、指揮官は」

 

「好かれてるんじゃなくていいおもちゃにされてるんだよ…。特に45からはな」

 

「…思えばあなたが仲良くしているのは人形くらいでは……」

 

 グサッ

 

「たしかに指揮官が会話しているのはペルシカさんやカリーナくらいな気が……」

 

 グサグサッ

 

 ふっ…言ってくれるじゃないか…。よかろう、俺がなぜぼっちなのかを教えてやろう!

 

 仕事柄、俺は人形と関わることが多い。だからまあ人間よりも人形の方が仲が良いのは当然であり、必然であり、逃れられぬカルマなのである。したがってこれは俺の対人コミュニケーション能力が低いというわけではなく、指揮官ならば誰しもがなりえ「はいはい指揮官さま、その辺にして作戦が始まりますわよ!」

 

「な…なんだよ……」

 

「指揮官さまは指揮官になる前から元々その性格です!仕事は関係ありません!」

 

 パンパンと手を叩くカリーナになにも言い返せず、俺は不貞腐れながらコーヒーを一気に飲み干した。淡い苦味とカフェインが頭を嫌でも仕事モードに切り替えてくれる。

 

「……苦い…」

 

 ━━━

 ━━━━━━━

 ━━━━━━━━━━━━━

 

「……ふふっ♪」

 

「なにニヤけてるのよ、気持ち悪い」

 

 つい最近まで第三次世界大戦が行われていたとは思えないほど賑わっている繁華街。今なお鉄血人形の脅威があるとはいえ、ここまでの復旧ぶりをみると人類はひとまず安寧を取り戻したといえるだろう。

 

 その人混みに紛れ込む2体の戦術人形。

 

「…なんでもないわ、それより情報は?」

 

 1体は思わず緩んでしまった顔を引き締め、もう1体はやや呆れ気味に得た情報を伝える。

 

「地元警察によってホテルに繋がるすべての道路の封鎖が完了。あとはグリフィンの狙撃チームが配置に着くのを待つだけよ」

 

 大通りから離れ、狭い路地で作戦の打ち合わせをしているのは”UMP45(プレッジ0-1)”と”HK416(プレッジ0-2)”の2体。本作戦に参加するグリフィンの部隊でも、特に優秀なプレッジチームのメンバーである。

 

「了解、DEA(麻薬取締局)の部隊と合流するわよ」

 

「特殊部隊ってなにが特殊なのかしら…。大丈夫なの?」

 

「腐っているのは地元警察だけよ。人間だけの部隊とはいえかなり優秀なんだから。同じ人間だけの犯罪組織の相手くらいなんともないわ」

 

 現状、犯罪組織が戦術人形を使うことはできない。人形のAIは法を犯すことができないようプログラムされているからだ。自律人形のAIプログラムを変更できるのはその人形のメーカーのみ、例えば戦術人形ならI.O.P社のみである。

 

 つまり、犯罪組織とは違い警察には「戦術人形」という強力なアドバンテージがあるのだ。

 

「……そうじゃないわ」

 

「私が心配しているのは”人間だけの特殊部隊が信頼できるか”よ」

 

 どれだけ人間と瓜二つの姿であろうと、戦術人形はあくまで”道具”である。人間の盾や囮になることはもちろん、最悪見捨てられたり放棄されることが普通だ。いくらでも替えがきくからである。

 

 HK416は、自分たちがDEA(麻薬取締局)に捨て駒扱いされるのではないか危惧しているのだ。もちろん、自らが戦術人形であることを自覚しているし、それが宿命であることも分かっている。

 

 だが自分は変わってしまった。1人の人間に出会ったことによって、生きることに希望を見出し、死ぬことを恐れるようになった。

 

「そうね…もし私たちがDEA直属の人形なら、そんな扱いをされると思うわ」

 

「でも…」

 

 UMP45は語りかける。

 

「でも、私たちには”私たちの指揮官”がいる。そうでしょ?」

 

 そうだ。私たちには正しく導いてくれる指揮官がいる。

 

 死ぬことを恐れるのが戦術人形のなり損ないではないと、それでもお前は完璧だといってくれた人が。

 

「ふふっ…そうね、私としたことがらしくなかったわ」

 

「なにニヤけてるのよ、気持ち悪い」

 

「……ちっ」

 

《HQよりプレッジ0-2へ、スカウトからの報告によると取引は17階のパーティー会場で行われている。すでに複数の武装した見張りや警備を確認》

 

「敵の数は?」

 

《正確な数は不明。今スカウトが敵の配置を割り出しているところだ。情報が入り次第知らせる》

 

「了解。0-2アウt…」

 

《オーバーロードの声を聞かなくていいのか?(笑)》

 

「…余計なお世話よ、私は完璧だもの」

 

《ははっ!さすがだな!この作戦が終わったら皆で一杯どうだ?》

 

「そうね…オーバーロードも参加するなら考えるわ」

 

 HK416とオペレーターの通信にUMP45が割って入る。

 

「その声はグリンチね?416に酒を飲ませちゃ駄目って知ってるでしょ?ろくなことにならないわ」

 

「え?どういうことよ?」

 

《あー…そうだったな…。忘れてた》

 

「ちょっと!なんで私は飲んだら駄目なのよ!?」

 

「ほら、行くわよ。DEAが待ってるわ」

 

 ━━━

 ━━━━━━━

 ━━━━━━━━━━━━━

 

「皆さん落ち着いて!警官の指示に従ってすみやかに避難してください!」

 

 ホテルの正面入口ではすでにDEAと地元警察が展開しており、スタッフや一般客の避難誘導をしていた。もちろん麻薬カルテルたちに気づかれることなく。

 

 そこへUMP45とHK416が合流。作戦では地上と屋上からの挟み撃ちを仕掛ける流れになっており、UMP45達は入口を確保して1階から取引現場まで向かう。

 

 戦術人形はプレートキャリアやヘルメットなど、戦闘に必要な装備は身につけていない。銃を除けば可憐な服装をしている2体の少女に、DEA隊員たちの視線はくぎ付けだ。

 

「お前たちがプレッジチームだな?たしかUMP45と…HK416だったか」

 

「よろしくね、DEAの隊長さん♪」

 

「……軍が使ってる戦術人形と全然違うな…、本当に戦えるのか?」

 

 DEA隊員が何気なく発した言葉。彼にそのつもりはなくとも、挑発として受け取ったHK416が口を開く。

 

「これでも私達はPMCの戦術人形よ、たとえあなた達5人がかりでも私には勝てないわ」

 

 ギラギラとした眼差しでDEA隊員を睨みつけた。ほんの数秒間、場の空気が固まる。

 

「すまないな、こいつも悪気があって言ったわけじゃないんだ。許してくれ」

 

 最初に口を開いたのはDEAの部隊長。どうやら彼は人形を差別するような人間ではなさそうだ。すかさずUMP45がフォローに入る。これから行動を共にするチーム間でトラブルを起こすのは避けるべきだろう。

 

「こちらこそ、彼女は完璧主義でプライドが高いの、ごめんなさい」

 

 すると、1人の警官が駆け寄り、一般人の避難誘導が完了したことを知らせた。

 

「では最後の確認だ、まずは北側と南側の二手に分かれて行動する」

 

「エレベーターで移動するのは14階まで。その後はエレベーターを停止させ、目標の17階までは徒歩で移動する」

 

《こちらスカウト、敵の配置をすべて把握。情報は端末に送るわ》

 

「了解だ、感謝する」

 

「……多いわね」

 

 17階を中心に上下2階ずつ、15階〜19階に武装した敵がいる。カルテルはこの階をすべて貸し切っているらしく、幸いなことに一般人が巻き込まれる心配はない。

 

《こちらアーチャー(狙撃チーム)、配置に着いたわ。いつでも支援可能よ》

 

 グリフィンの狙撃チームによる準備完了の知らせ。作戦開始の合図である。

 

「HQ、こちらプレッジ0-2。これよりホテル内部への侵入を開始するわ」

 

《了解だ、君たちの侵入と同時にプレッジ0-3と0-4を屋上より侵入させる。以降の通信はオーバーロードの回線を使用するように》

 

「了解、0-2アウト」

 

「……あいつらもこの作戦に参加するなんて…ほんと気に入らないわ…」

 

 ━━━

 ━━━━━━━

 ━━━━━━━━━━━━━

 

 同時刻、ホテル付近の上空にて

 

「了解しました、こちらも行動を開始します」

 

 ヘリの機内で同じく作戦開始の時を待っていた2体の人形。垂れ下がったロープを掴み、颯爽とラペリングしていく。

 

《グラニットよりHQへ、プレッジ0-3と0-4の降下を確認。スカウトチームの回収に向かう》

 

「プレッジチーム、こっちだ」

 

 先行して屋上で待機していたのはDEAの隊員たち。カルテルの死体が横たわっていることから、屋上にいた見張りたちはすでに無力化したようだ。

 

M4A1(プレッジ0-3)です。よろしくお願いします」

 

AR-15(プレッジ0-4)よ、よろしく」

 

「ああ、よろしくな。すでに見張りは始末したが、他のカルテルが巡回している可能性もある。アーチャーたちの支援を受けられない死角では注意しろ」

 

「この階段を降りたら二手に分かれる。M4A1は南側の班と、AR-15は俺たち北側の班と一緒に行動する。オフェンス重視で行くぞ」

 

「了解。オーバーロード、指揮は頼んだわよ」

 

《任せろ。DEAも含めて必ず全員生きて帰らせるさ》

 

「ふふっ、頼もしいわね…」

 

 AR-15は微笑むと、ネックレスとして首に吊り下げた指輪を握りしめた。

 

プレッジ(誓約)のメンバー4人に渡された、星の光に煌めく誓約の指輪を───────

 

 

 






俺には正しい書き方が分からない……。

それはそうと年始のイベントに引き続き、今回もKSGは出ませんでした(真顔)
あれだな、低体温症でFive-sevenを周回2回目で手に入れたから運を使い果たしたんだな……。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。