指揮官には友達がいない   作:狂乱のポテト

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どれだけ感動するいい話にしようが即バレて指揮官が黒ネイトにしばかれる度に笑ってしまったので初投稿です。





#14 その時、彼は本音に気づく

 

 

 

 

 

 今……なんて言った…?

 

 

 

 

 

 

 

「君はこの人物を知っているかね?」

 

 小太りの代行官は1枚の写真を俺に見せた。

 

 写っているのは連邦議会参議院議員、イヴァン・トロストイ氏だ。

 

「2ヶ月前に彼を狙った爆破テロ事件が起きたことは覚えているだろう」

 

 もちろん覚えている。

 

 いつもと変わらない日々を迎えるはずだったあの日。白昼堂々のなか悲劇は起き、50名を越える死傷者が発生した。しかしトロストイ氏は事件が起きる直前に予定を変更していたため、彼に被害が及ぶことはなかった。

 

 その後テロ組織は犯行声明を発表。近く第二次計画を行うと宣言した。当局はグリフィンへ協力を要請し、俺の部隊はテロリストからトロストイ氏を護衛するチームとして参加した。

 

「事件からちょうど1週間後の朝、君の部隊とトロストイ議員を乗せた車列が襲撃を受けた。君のチームはテロリストの殲滅に成功したが、トロストイ議員は流れ弾にあたってしまった。幸い大事には至らなかったがな」

 

「その件に関してはすべて報告済みです。あの場にいた私の部下にも話を聴き、処分を下しています」

 

「ああそうだな。だが君の処分がまだなんだよ」

 

「……その結果が解雇ですか」

 

「話は最後まで聞きたまえ」

 

 すると代行官はまた1枚の写真を差し出した。

 

「…これは?」

 

「トロストイ議員の身体から摘出された銃弾だ。調査の結果これは5.7mm弾ということが分かった。我々は当初、テロリストが放った銃弾が偶然トロストイ議員を貫いたと考えていたんだがね」

 

「あの場で5.7口径の銃を使っていたのは君の人形しかいない。それを知ったトロストイ議員は君の管理責任に落ち度があると主張している」

 

「グリフィンはそれに応える義務はないと思いますが」

 

「もちろんだ、君はAnti-Rain小隊を指揮する優秀な人材だからな。我々もその要求は拒否したよ」

 

「だがトロストイ議員はグリフィンに莫大な融資をしている大手の顧客だ。要求を無下にはできない」

 

「これも会社のためだ、分かってくれ」

 

「……」

 

 なにが”会社のため”だ、昨今では稀に見る不当解雇だぞ。その話が本当ならI.O.Pよりも関係がズブズブだし、なんだか大人の闇を垣間見た気がする。

 

 と、思ったが恐らく”トロストイ氏の希望”というのは建前だろう。目的は分からないがこいつらは俺の存在を消そうとしている。直接命を狙われていないだけマシだが。

 

「お待ちください。それはまだ検討段階のはずでしょう」

 

 完全アウェイのなか、ヘリアンさんだけは彼らに食い下がった。

 

「クルーガーさんと人事部の承認が得られていない以上、彼の処遇を我々だけで決めるのは…」

 

 だが代行官たちの表情が揺らぐことはなく、ただ勝ち誇った顔をしていた。

 

「ヘリアン殿、事態は急を要するのです。マニュアル通りの手順で進めていたのでは手遅れなんですよ」

 

「あいにくクルーガー社長は正規軍との諮問会議に出席しており、帰社を待っている余裕もない」

 

「ひいては人理規則第6章プロトコル13-5及び上級契約のガイドラインに従い、今この場にいる我々の権限のみで彼を解雇とする」

 

「っ…!」

 

 ……どうやらここまでのようだ。ヘリアンさんが反論できない以上俺に抗う術は残されていない。クルーガーさんが不在の間を狙うとは随分と用意周到である。やはり裏でなにか大きな力が動いているに違いない。

 

「では指揮官、この書類に署名を。ああ安心してくれ、次の日働き口の候補はいくつか用意してある。好きな仕事を選ぶといい」

 

 俺は用意された席へつき、提示された書類に目を通していた。

 

 あいつらともお別れかぁ…。久々にぼっちの生活の始まりだ。とはいえ俺は一人が好きである。一人でいれば誰にも裏切られず、なにも失わず、心を傷つけられることはない。

 

 つまり一人になることになんの不安もないのだが。

 

 ふと先日行った戦術人形たちとの面談が頭をよぎった。

 

 

 

 ──もしも俺がお前らの指揮官じゃなくなったらどうする?──────

 

 

 

『私の指揮官は指揮官だけです』

 

『もしそうなったとしても、私はできる限りそうならないように尽くします』

 

『たぶん他の人形もみんなそうすると思います。自分たちでできる限りの努力をして…それで……』

 

 

 あの時のM4A1は流しそうな涙をぐっとこらえていた。

 

 

『でも…指揮官のことなんて忘れたくない』

 

『無かったことになんてしたくない』

 

『だから……お願いだから…嘘でもそんなこと言わないで……』

 

 

 あの時のUMP45は不安で身体が震えていた。

 

 

 

 

 ……。

 

 

 

 …………。

 

 

 

 こんな状況だからだろうか。俺はあることに気づいた。

 

 俺は彼女たちに特別な感情を抱いている。他人からは相手にされず、ずっと一人だった俺に、彼女たち人形はなんの偏見や否定もせず接してくれた。初めて感じる優しさに俺は溺れてしまっていた。

 

 その安らぎは偽物だと分かっていたのに。

 

 人間という脆く儚い命と、人形という書き換え可能な記憶。

 

 不都合な真実から目を背けながら、俺は彼女たちと楽しい毎日を過ごしていた。こんな日々がずっと続くと信じていたのだ。

 

 そんなはずがあるわけがないことに気付かないふりをしながら。

 

 本来なら他の指揮官のように人形は消耗品と割り切って扱うのが正しいのだ。彼らから見れば俺がしていることはただの”おままごと”にすぎない。

 

 そんな家族ごっこにハマりすぎた結果、たかだか人形相手に強い愛着が湧いてしまった。

 

「この1枚で最後だ。フルネームで記入してくれ」

 

 最後の同意書。これに署名をすれば俺は指揮官としての役目を終える。そう言われた俺は彼が示す空欄にペンを近づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その必要はない」

 

 

 

 

 

 

 

 背後から聞こえたのは重く太く、威厳があるがどこか優しさを感じる声。

 

 振り向くとそこには誰も予想をしていない人物がいた。

 

「ク…クルーガー社長…!?」

 

「なぜここに…今は正規軍との諮問会議中のはずでは……」

 

 突然の登場に驚いたが、最も狼狽えているのは代行官と幹部たちだった。

 

「会議の途中、大量のE.L.I.D.が居住区域付近で目撃されてな。軍はその対応に追われ、会議は中断して後日また行うことになったのだ」

 

「そんなことよりも……君たちはここで何をしている?」

 

 クルーガーさんは幹部たちの前に立ち厳しい声で問いただした。幹部たちは恐怖のせいかなにも喋られず、ただ目を泳がせていた。第三次世界大戦を生き延びた退役軍人に睨みつけられては無理もない。

 

 最初に口を開いたのは小太りの代行官だった。

 

「それが……トロストイ議員の件でちょっと問題が発生しまして……」

 

 代行官はこれまでの経緯を説明した。

 

「事情は分かった。トロストイ氏には私から話をしておこう。いくら大手の顧客とはいえ、社員のクビを切ってまで彼の機嫌をとる必要はない」

 

「この件について今後なにかあれば必ず私を通すように。私が不在であればヘリアンに引き継げ」

 

「……承知しました…」

 

 するとクルーガーさんはこちらへ振り返り、俺が先ほど記入していた書類を手にとってクシャクシャに丸めた。

 

「君たちは下がってくれ、私は指揮官と話がある」

 

「はっ…!では失礼します」

 

「ヘリアン、君は残れ」

 

「?…はい」

 

 ヘリアンさん以外の幹部と代行官たちは部屋から退出した。

 

 めちゃめちゃ緊張する……。しかも近くで見ると威圧感がすごい…。ていうかなんだこの状況は……。ひとつの部屋に上司と社長と俺って…。

 

 単純にクルーガーさんは大柄な体格をしているのもあるが、元軍人としてのオーラが只者ではないことを感じさせる。

 

「指揮官」

 

「は…はい」

 

「君はとても魅力のある人間だ。AR小隊や404小隊を任せられるのは君しかいない」

 

「それに我々が望んでいるのはただ能力が優れているだけでなく、君のように人形と深い絆で繋がっている指揮官だ」

 

「絆…ですか…」

 

「といっても人形との絆は人間同士のものとは似て非なる概念だ。戦術人形には戦術人形なりのアイデンティティがある。ただ人と同じように接すればいいというものではない」

 

 クルーガーさんは窓に歩み寄り、外の景色を眺めながら問いかけた。

 

「君はクビを宣告された時、部下の人形たちについてどう思った?」

 

「正直に言うと少し後悔しました。…分かっていたことですが。こんな思いをするくらいなら、やはり最初から彼女たちと必要以上の馴れ合いは避けるべきだったなと」

 

 そう答えるとクルーガーさんはハッハッハと笑った。

 

「ヘリアンから聞いたとおりだ、君はかなりひねくれているな」

 

「クルーガー社長は人形を人間のように扱う指揮官をどう思われますか?」

 

「私は人形に対して偏見は抱いてないし、重要な役割や責任を人間の代わりに背負ってくれることに感謝している」

 

「君のように人形としてではなく、人間と等しく接する者がいるのも理解できる」

 

「だが君は”指揮官”で、彼女たちは”兵士”だ。この関係を忘れてはいけない」

 

「戦場で生きていればいつかは非情な決断をしなければならないし、その結果なにかを失う日が必ずやってくる」

 

 第三次大戦を経験した人間の言う言葉は重みがあった。

 

「……僕には分かりません。間違った判断をしないか、正しいものを選べるか…」

 

「正解なんてものはない。どちらを選んでもそれが最良の選択だったのか誰にも分からない」

 

「大事なのはどれが正しいものなのかを見極めるのではなく、周りに流されず自分が後悔しない決断をすることだ」

 

「だから最後までよく考えろ、そして悔いのない方を選べ」

 

 

 

 

 

「彼女たちを頼んだぞ。若者よ」

 

 

 

 

 

 クルーガーさんは俺の肩を叩き、期待の眼差しで想いを託した。俺はクルーガーさんに敬礼をし、部屋を立ち去った。

 

「……」

 

「………」

 

「…ヘリアン、あいつらから目を離すな。さもなければ近いうちに面倒なことになる」

 

「はい、監視を続けます」

 

「……あの指揮官を失うわけにはいかない」

 

 

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「まさかクルーガーさんがやってくるとは…命拾いしたな」

 

「はは…そうですね…」

 

 本部のヘリポートには迎えのヘリが待機しており、ヘリアンさんは屋上まで俺を送ってくれることになった。

 

「すまない指揮官、私はなにも手助けができなかった……」

 

「いやあ…気にしないでください。なんとかクビは免れたんですから」

 

 エレベーターを待っていた時、ヘリアンさんは先ほどの己の無力さを謝罪した。

 

「でもなんか黒い闇の力というか、身の危険を感じましたけどね」

 

「あの幹部や代行官たちは以前から汚職の疑いがある。決定的な証拠を掴むまで私たちが目を光らせていたんだがな。まさかあんな行動に出るとは…」

 

 金持ちの政治家と大企業幹部の癒着か…。社会って怖いな……。

 

「それにしても僕を辞めさせてなにが目的だったんでしょうか」

 

「分からん、もしかしたら辞めさせるのが目的じゃなく、その後になにかしでかす計画だったのかもしれん」

 

「…というと?」

 

「貴官はAR小隊の管理権を持っているし、404小隊が指揮下に入った時の秘匿先でもある。彼女たちが参加する作戦は特殊なものが多い。さまざまな情報を持っているだろう」

 

「貴官から見たらどうでもいいことでも、幹部たちにとってはなにか知られたらまずいことがあり、それを貴官に知られてしまった……」

 

「それで僕は口封じの対象となり、まずはグリフィンから除籍させてその後殺g……いや怖すぎませんか」

 

「ふふふ、分からんぞ?もしかしたら仲間に誘うつもりだったのかもしれん」

 

「断ったらあの人らに口封じで殺されそうだし、話に乗ったら裏切り者としてグリフィンに処分されそう……。結局死ぬじゃないですか…」

 

「冗談だ。とはいえ絶対にないとは言いきれない。最悪直接命を狙われる可能性もある。こちらでも極秘に捜査をすすめるが身の回りには気をつけるように」

 

「はあ…分かりました…」

 

 おっかない話をしているうちに屋上にたどり着いた。ヘリはいつでも離陸できる状態になっており、吹き荒れる風に抗いながら乗り込んだ。

 

「指揮官、もしも身の危険を感じた場合はすぐに報告してくれ。こちらが対応するまでは人形たちに守ってもらうといい」

 

「はい、ありがとうございます。ヘリアンさんもお気をつけて」

 

「レイスト4-2より管制局、指揮官が搭乗。これより帰投する」

 

 ローターの出力が上がり重い機体が宙に浮いた。俺はヘリアンさんに敬礼し、見送られながら本部を後にした。

 

 

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「──ってことがあったんだよ。…ねえ?聞いてる?」

 

 隣を歩いているRO635は俺に目を合わせず、周囲を見回しながら答えた。

 

「聞いてますよ。それより指揮官も仕事に集中してください」

 

 前を歩いているAR-15も同意見だった。

 

「気を抜いているとその汚職幹部たちよりも先にここでナイフで刺されて死ぬわよ」

 

「すいません……」

 

 例の日から5日ほど経ったが特になにごともなくいつも通りの日々を過ごしている。

 

 もしもあの時クルーガーさんがいなければ、こいつらとは二度と会うことはなかっただろう。一度失いかけた日常だが、こうして無事に送れていることに感謝極まりない。

 

 するとなにかを見つけたのか、AR-15は足を止めた

 

「赤い建物の駐車場、男3人組。私たちを見た途端に慌ててなにか片付けてる」

 

「クスリの売買ね、間違いないわ」

 

 そして今はなにをしているかというと治安維持のためのパトロール中だ。基本的に警察の仕事なのだが彼らも人手不足に陥っており、区によっては一部地域の業務をPMCに委託している。ここS04地区もそれに該当しており、指揮官は人形を連れて定期的に街を見回りするようになっている。

 

 ROとAR-15が強く警戒をしている理由は、今いる場所がS04地区でも特に治安の悪いエリアだからだ。

 

 怪しい男たちは車に乗り込み平静を装っている。

 

「…声をかけよう、行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 この出来事が原因であんなことになるとは、当時は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 #14 その時、彼は本音に気づく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






Amazonプライムビデオで『密着!アメリカ警察24時』って番組見つけたんですけどめっちゃ面白いんですよね。アメリカの警察大好きです。

というわけで次回は指揮官がそれっぽく悪いっぽい人たちを懲らしめるっぽいです。

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