先日誕生日を迎えたのですが見事に誰からも祝われなかったので自分へのお祝いとして書きました。ハッピーバースデー、トゥーミー
この世に生を受けて22年……こんな…こんなはずでは…()
────誕生日
この言葉を耳にすれば多くの人がポップで賑やかなイメージを思い浮かべるだろう。
誕生日パーティーを開けば当日は一日主役になれる。みんなから祝福の言葉を贈られ、みんなから素晴らしいプレゼントを貰い、みんなで豪華なケーキを食す。主役だけでなく参加した人たち全員が充実した一日を送れるだろう。
だが幸せの象徴である結婚式が人生の墓場と揶揄されるように、誕生日パーティーも例外ではない。
他人の誕生日を忘れないよう気にかけて生活するのは窮屈で、さらに仲間が多ければ多いほど覚えるのが大変である。加えて仲間全員の誕生日パーティーを行うとすればプレゼント代やケーキ代など、費用もバカにならない。
誤って誰かの誕生日を忘れてしまった、あるいはお金を出し惜しんで参加しなかったり、安価なプレゼントで適当に済ませようものなら恐ろしい集団心理による同調圧力の捌け口となるだろう。
誕生日パーティーというのは決して賛美なものではなく、所属するコミュニティによっては仲間意識をより高めるための場であり、従わない者がいようものなら排他的な一面が垣間見える儀式だ。排斥の傾向はヒエラルキーによって比例するといっていい。この認識は社会全体に広まるべきである。
もっと言えば誰かが祝われてるとこを見て、俺もみんなから祝ってもらえるかなーなんて淡い期待を抱こうものなら華麗にスルーされて傷つくし、誰かからお祝いのメッセージが届いたと思ったらよく行くお店のメルマガだったり…。
「指揮官、この申請書類の認可をお願いします」
「ああ…はいはい……」
挙句の果てにいつも祝っている側ばかりで祝われたことは一度もないなんて話はザラだ。
「予算決裁の提出急いで下さい。本部から催促の通知が届いています」
「すぐにやります…」
その点ぼっちの俺はそんな心配をする必要はない。なぜなら最初から祝ってくれる相手がいないから。そもそも誰も俺の誕生日知らないんだけど。俺も他の人の誕生日知らないし。
誕生日に限った話ではないがその人にとって特別な日でも、それを知らない人間にとってはいつもと変わらない日常の1ページに過ぎない。その逆も然りだ。
ていうかみんなどうやってお互いの誕生日知り合ったの?ハッキング?
「(なんだってこんな書類が溜まってるんだよ…誰がこんなになるまで放っておいたんだ?俺か、俺だな)」
実を言うと今日は俺の誕生日である。めちゃめちゃ書類作業に追われてるけど。誕生日くらいゆっくり過ごしたかったのだが人手不足のグリフィンでは有給の申請が却下されることが稀によくあるのだ。やはり俺の労働環境は間違っている。
まあ誕生日だからといって誰かと一緒に特別な時間を過ごすわけでもないんだが。俺はひとりが好きなのだ。
「指揮官さまー、虚空を眺めてないで早く手を動かしてくださーい。本気で午前中に終わりませんよ」
「分かってる…てか手伝ってくれよ」
「私や主任ができる仕事はすべて片づけました!あとは指揮官さまの署名と決済が必要な書類だけです!」ドン!(書類の山が置かれる音)
「ヒエッ」
俺は誰かから祝ってもらうのを期待したりしない。そもそも俺は誰かの誕生日を祝う機会も祝ったこともなかった。
他人には無関心なのに自分の時だけ祝ってもらおうだなんて、それはただの醜い傲慢だ。
結論を言おう。
誕生日は1人で過ごすものである。
自分が生まれたせっかくの記念日、『あなたを祝ってあげるよ、だから私の時も祝ってね』なんて押しかけてくる愚か者に邪魔されるなんてもってのほかだ。
そのような悪しき慣習に巻き込まれないよう、俺は誰にも知られず1人でひっそりと誕生日を過ごす────
はずだったんだけどなぁ……。
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「…カリーナさん…これで…よろしいですかぁ……」
「えーっと…はい、これで大丈夫です!今日のタスクはひとまず完了です。次からは仕事を溜めないで計画的に片付けてくださいねー」
「善処します…」
よし、これで今日は自由の身だ。戦術人形たちは後方支援に派遣したり、戦術訓練の講習に参加させてある。基地には俺の隷下の人形はほとんどいないはずだ。
「……それはそうと指揮官さま」
「なんだ?」
カリーナは書類をファイルに綴じたあと、すぐに帰るわけでもなく俺の傍に寄ってきた。
なにか言いづらいことがあるのか、後ろで手を組みながらもじもじしている。
「…購買の在庫抱えてるから買ってくださいってのはダメだからな、この間買わされた快速修復契約無駄にたくさん残ってるし。いや使う予定のないもの買った俺も悪いんだけどさ」
「ち…ちがいますよっ!そういうんじゃないです!」
「…?じゃあなんだよ」
「その…」
「この後…時間ありますか…?」
「え…」
なにを躊躇ってるんだ?誕生日は1人で過ごすってさっき決めただろう。『ああすまん、この後用事あるからごめんね☆』って適当に断ればいいんだ。答えは最初から決まっている。
そう、適当に断って…。
「ん…指揮官さま…?」
くっ…!眩しい!
至近距離上目遣い、チラりと見える豊満な胸元!カリーナのことだから狙ってるわけじゃないんだろうけどあざとい…あざとかわいい…!
だが訓練されたぼっちはこんな分かりやすい誘惑には乗らない。
故人いわく、触らぬ神に祟りなし
カリーナの真意がどうであれ、俺は……。
「ああ…そうだな、悪いが…」
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「では私はいったん書類を届けてきます!すぐ戻りますから待っててくださいね!」
「ああ…お気をつけて」
「(なにしてるんだ…俺は…)」
結局俺はカリーナの誘いに乗ってしまった。過去の過ちは繰り返さないはずなのに…ぼっちの風上にも置けねえ…。べっ…別におっぱいに釣られたわけじゃないんだからねっ!?
まあ…かわいい部下からの誘いだし、ありがたく乗っておくのがオトナの余裕というヤツか…。それに今はまだ昼下がりだ。ひとりの時間を楽しむのは夜になってからでも遅くはない。やだ俺すごい成長してるわ。
「指揮官さまー!お待たせしました」
「お…早かったな」
「…やっと指揮官さまと一緒に過ごせますから」
「そ…そうか」
「では行きましょうか、指揮官さま」
カリーナはまるで遊園地にやってきた子供のように部屋を飛びだし、廊下を早足で駆けていった。途中で廊下を走ってはいけないことに気づいたのか、後ろでのそのそと歩くこちらに合わせてくれたのか。道を引き返して俺の隣でゆっくりと歩きだした。そんな彼女が歩きやすいよう俺はできるだけ歩幅を合わせる。
廊下の窓からは暖かい陽射しが差し込み、心地よい安らぎを与えてくれる。
「今日は指揮官さまのお誕生日ですね」
「知ってたのか」
「もちろん!後方幕僚として当然ですわ!」
「…去年は祝ってもらってないけどな」
「う…それは…。き…去年は作戦とかでバタバタしてて…」
「あーいい、いい。俺もお前の誕生日祝ってないしな。気にすんな」
もとより、俺は彼女の誕生日を知らない。
「その…それで今日は指揮官さまにお祝いがしたくて…」
「別にそんなことしなくてもいいぞ。上司の誕生日を祝う業務なんてないし」
「そっ…そんなんじゃないですよ!純粋に日頃の感謝も込めてお祝いしたいんです!」
「ほんとに?なんか裏とかない?うま〇棒をプレゼントして、『お返しとして私の誕生日にはブランドバッグを用意してくださいね!』みたいなオチじゃないよね?」
「違いますっ!もう!指揮官さまはひねくれすぎです!!」
「……というか、指揮官さまは私のことをそういう女だと思ってるんですか!?」
「冗談だ、冗談。悪かったよ」
俺は知っている。
彼女はとても素直な人間だ。人形だろうが人間だろうが誰とでも分け隔てなく接し、自分が騙されることはあっても決して誰かを騙すようなことはしない。まあ…たまに在庫の押し売りをすることはあるが…。それも彼女なりのコミュニケーションのひとつなのだろう。
金銭的な面はともかく、人間関係において損得勘定で動く性格ではない。バカみたいに人を信じ、バカみたいに人を気遣う。カリーナとはそういう人間だ。
「でも…私は指揮官さまのそういう
「…っ!」
そんな彼女の温かい優しさに俺はうっかり溺れて勘違いしそうになる。
「なんだかこうしてゆっくりお話しするの久しぶりですわねー」
「最近は掃討作戦の連続だったからな、楽だった昔に戻りたい…」
「正直ひとりが好きな指揮官さまのことだから、今日は適当な理由で断られると思ってました」
「…なぜ分かった…」
「ふふん、伊達に指揮官さまと長く付き合ってませんからね。指揮官さまが考えていることなんてお見通しです!人形の皆さんがほとんど不在なのも、つまりはそういうことですよね」
まったく…この後方幕僚には敵わない。
でも、だからだろうか。
この可愛げのある後方幕僚と誕生日を2人で過ごしたいと、実は内心どこかで感じていたのかもしれない。
「ねじ曲がった性格とその眼は相変わらずですけど、昔と比べると指揮官さまはだいぶ成長しましたね」
「お前はヘリアンさんかよ…そんなこと言ってると彼氏できずに婚期逃すぞ」
「なななななに言ってるんですか指揮官さま!あんな人と一緒にしないでください!!」
「(あんな人…?)」
「私は…今はいいんです!大変ですけど仕事は楽しいですし、同僚や人形の皆さんもよくしてくれますし…」
「多分ヘリアンさんもそうやって仕事を優先したからあんな末路になっt痛いいたい分かった悪かったって!」
「ばか…」
「…でもお前モテるだろ。この前も休憩所でエンジニアたちが話してたぞ。通りがかりで聞こえただけだけど」
「へーそうなんですか」
「…無関心だな…」
「私が欲しいのはひとつだけですから」
「それに…今はこうしてあなたと一緒に過ごすのが…とても幸せなんです」
2人で話しているうちにいつの間にかエレベーターに辿り着いた。
「え?なんて?」
「なんでもありませんっ。ほら、エレベーター来ましたよ」
扉が開くと誰も乗っておらず、俺たちは気兼ねなく会話を続ける。
「ところでどこに行くんだ?」
「スプリングフィールドさんのカフェです。キッチンをお借りしてるんですよ」
「…2人きりじゃないのか」
「え〜?もしかして私と2人で過ごしたかったんですかぁ〜?指揮官さまも可愛いとこありますね〜♪」
「ちげえよ…ツンツンすんなやめろ」
「…私も本当はそうしたいんですけど…」
エレベーターがカフェのある2階に到着し、カリーナは颯爽と飛び出した。
「…指揮官さまをひとり占めするのは、今日はここまでにしておきます♪」
「…カリーナ……」
「エレベーターから出る時は上司が先だ。社会人として当然のビジネスマナーだぞ、覚えとけ」
「今言うセリフそれですか!?」
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「スプリングフィールドさん!お待たせしましたー!」
「ようこそいらっしゃいました!指揮官、お誕生日おめでとうございます♪」
「おう…ありがとさん」
「それで」
「これはいったいどういう状況で…?」
「あー…あはは…」
いつもはキレイに整理整頓されているキッチン。しかし今はたくさんの調味料がこぼれていたり、辺り一面に調理器具が散乱したりとめちゃくちゃに散らかっていた。
「空き巣でも遭ったのか…?それとも地震?ていうかそこ明らかになにか爆発した跡だよな?」
「いやぁぁぁぁぁっ!」
「「「!?」」」
突然奥からなにかが倒れた物音と聞き覚えのある悲鳴が響いた。スプリングフィールドは『あちゃー…』と苦笑いをしており、俺は物音の原因を探るべく食品庫の方へ向かった。
「なにしてるんだお前…」
「し…指揮官!?…なんでもないわよ!」
そこにいたのは頭から小麦粉を被って白くなったWA2000だった。なにかに驚いたのだろうか、腰が抜けてへたり込んでいる。
「いや、なんでもなかったら悲鳴あげないだろ。なにがあった?」
「…ゴ……虫が急に出てきたからびっくりしただけよ!なんともないわ!」
「あー、まあキッチンとかこういうとこだと仕方ないわな」
ていうかこの子、殺しのためだけに生まれたんじゃありませんでしたっけ?
「ほら!指揮官の後ろ!!」
「?…うわ、ほんとだ。けっこう大きいな」
「指揮官、わーちゃん?大丈夫ですか?」
「あっ、スプリングフィールド!そこにデカい虫がいるから気をつけろ」
「あら?本当ですね…」
スプリングフィールドがやってきた途端、外敵の接近に気づいた虫は俊敏な動きで彼女に襲い掛かった。
だがスプリングフィールドはまったく躊躇うことなく、素早く地を這う虫を両手で包み込み
「自然へおかえりっ」
プロ野球選手もびっくりのレーザービームで窓の外へ放り投げた。
虫の存在に気づいて捕獲し投げるまで、この間わずか4秒である。
「すげぇな…」
「あんた只者じゃないわ…」
「うふふっ♪こういうのには慣れてますから。もう大丈夫ですよ」
「だってさ。ほら、立てるか?」
地べたにへたり込んだままのWA2000に手を差し伸べる。
「あっ……うん…」
WA2000は拍子抜けした表情で俺の手を掴んで立ち上がった。彼女が動く度に小麦粉が宙を舞い、思わず笑ってしまいそうになる。
「…ありがと」
「それにしてもわーちゃんが料理だなんて珍しいな」
「それは…そのっ…なんていうか…」
「指揮官にお菓子をプレゼントしたいって一緒に作ってたんですよ♪」
「ちょっ…!スプリングフィールド…!!」
「なるほどな、そんな気を遣わなくてもいいのに…」
「なに言ってるんですかー、私たちの大事な指揮官さまのお誕生日なんですから!あ、WAさんタオルどうぞ!」
「カリーナ…お前もしかして他の人形にも俺の誕生日言いふらしたのか…?」
「え?もちろん。だって皆さんでお祝いしたいですもの!」
「はあ…」
「ま、どっかのこじらせ者のせいで今日は無理そうだけど?みんな残念がってたわよ。特にSOP ⅡとかFive-sevenとか」
「……」
「まあまあ。みんな遅くとも今夜には戻ってきますし、大丈夫ですよ」
「スプリングフィールドさーん!少しキッチンお借りしますね!」
「ええどうぞ♪指揮官はカフェでゆっくりしてくださいね」
「ああ…」
俺が自分の誕生日を人形たちに言わなかったり、遠ざけたりしたのはただぼっちの時間を楽しみたかっただけではない。
彼女たち人形には誕生日という概念がない。製造された日、俺の所属になった日、初めて出会った日など、記念日と言えるものはある。だがそんなものは人間の誕生日と比べれば些細なものだ。
人形にとっても誕生日の重みを理解するのは難しいだろう。故に、彼女たちから誕生日について聞かれることは今まで一度もなかった。にもかかわらず人間の誕生日を祝えなんて酷だろう。それに祝ってもらったお礼に俺ができることは何もない。
現にさっきスプリングフィールドから祝いの言葉をかけられた時も、なんて顔をすればいいのか分からなかった。
冒頭で持論を述べていたが誕生日を1人で過ごしたい理由の半分はこれである。とはいえ皆に教えたカリーナを憎んだりはしない。彼女も悪意があってしたわけではないだろう。
「WAさん!ボウルごとレンジで加熱したらダメですよ!!」
「え?…きゃああ!!」
キッチンがやたら騒がしいのが気になるが。
「(大丈夫なのか…)」
俺は彼女たちになにができるのだろう。
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「指揮官さまー!お待たせしました!」
「料理って最初は結構大変だったけど慣れれば案外簡単なのね」
「ふっ…ふふふっ…ふふ……」
「おいなんか1人病んでるぞ」
カリーナたちが運んできたのはたくさんのフルーツが盛られたバースデーケーキだ。他にもチョコレートやさまざまな形を型どったクッキーもある。
「おお…すごいな、思ったより本格的だ」
「へへん!私もけっこう料理できる方なんです!……まあスプリングフィールドさんにほとんど手伝ってもらったんですけど…」
「あら、カリーナさんこそとても筋がよかったですよ。お陰でいい焼き加減に仕上がりましたし。わーちゃんも…あの…頑張ってくれました」
「ちょっと、なにその苦笑い。私だって結構活躍したんだから!」
「ほう、たとえば?」
「えっ?えーと…チョコ溶かして生地をこねて生クリームかけて…後はまな板とかお皿洗ったり?調理器具を戻したり?」
最後ら辺はただの後片付けじゃねえか。
「ほんじゃ、いただきm」
「ちょっと待ったぁ!」
「なんだよ…」
「指揮官さま、これはバースデーケーキですよ?となると食べる前に必要なことがあるじゃないですか〜」
カリーナはニヤニヤしながらケーキにロウソクを立てた。
「え、いや普通に食べたいんだけど。恥ずかしいし…」
「ダメです!さあ火をつけますね、スプリングフィールドさん照明お願いします」
カリーナの合図で部屋の照明が落とされ、ロウソクに灯された火がゆらゆらと煌めいていた。
「さあ!どうぞ!」
全く気乗りしないがここまでくると”本日の主役”の運命だと割り切るしかないのだろう。ロウソクへ顔を近づけ軽く息を吹きかけた。
「指揮官、お誕生日おめでとうございます♪」
「お…おめ…おめでと…」
「おめでとーございまーす!!」
「はっず…」
歳の割に気はずかしいことをさせられたが、3人から盛大な祝福を受けてつい頬が緩んでしまう。
「さあさあ!ケーキどうぞ!」
「…いただきます」
おお、めちゃめちゃ美味い。スポンジと生クリームの間にペースト状のイチゴが練り込まれており、なおかつ甘すぎない仕上がりとなっている。実に俺好みの味だ。見た目も然ることながらお店に出せるレベルである。まあ実際にお店をしてるスプリングフィールドも作っているから当然ではあるのだが。
クッキーもバターの香りが口に広がり、軽い食感も相まっていくらでも食べられる気がするくらいおいしい。
「そのクッキー、焼き加減や味のバランスは全部わーちゃんがやってくれたんですよ」
「ほんと苦労したんだから。感謝して食べなさいよ!」
「そうなのか…」
「?…指揮官さま?」
こんなにも美味しくて、笑顔で祝福されて、嬉しくて幸せなはずなのに。
どうしても素直に喜べない自分がいる。
「あんまりこういうことは言いたくないんだけど…」
「その…2人は人形で誕生日がないだろ。なのに俺の誕生日を祝わせて…」
「それに俺にはお返しを用意することもできない。俺が感じた幸せをお前たちに返すことができない…」
思いの丈を述べると真っ先にWA2000が呆れた顔でため息をついた。
「まったく…そんなくだらないこと気にしてたの?アンタって本当にバカね」
「だいたい私たちだって人間の誕生日がどれだけ大切かくらい分かってるわよ」
「わーちゃんの言うとおりです。確かに私たちには誕生日なんてありません」
「ですが私たちの大切な指揮官が…かけがえのない大切なあなたが生まれてきてくれた特別な記念日ということは理解しています」
「それは私たちだけでなく、あなたの部隊全員です。だからみんなあなたの誕生日を一緒に祝いたいんです」
「お返しは…そうですね…。これからも指揮官と一緒にいさせていただければ、私たちを頼っていただければ十分ですよ♪」
「そういうこと。だから…まあ…これからもせいぜい長生きしなさいよ」
「はは…まさか人形に諭されるとはな…」
「ほんと指揮官さまの悪いとこですよ…まあそこがイイんですけど」
すると騒がしい声と共にカフェのドアが開き、後方支援から帰投した人形たちがやってきた。
「たっだいまー!指揮官ー!誕生日おめでとう!!」
「こらSOP Ⅱ!ちゃんと身体の汚れを落としてから…」
「おう、おかえrぐへっ!…SOP Ⅱ…食事してる時に抱きつくのはヤメテネ…」
「はいコレ!誕生日プレゼント!」
差し出されたのは恐らく鉄血人形から剥ぎ取ったであろう生体部品だった。あえて具体的な部位名は出さないが。SOP Ⅱ、食事してる時にそういうの見せるのはヤメテネ。
「指揮官おめでとう!この間話してた新作のゲーム買ってきたから後で一緒に遊ぼ!」
「センス抜群の私が指揮官にピッタリの紅茶を用意したわよ。ケーキと一緒に楽しみましょう」
「あら、指揮官って紅茶が苦手なの知らないの?それにケーキには紅茶よりコーヒーでしょ。指揮官ー、コーヒー豆買ってきたから一緒にブレンドしよ?」
「なっ…ただの紅茶じゃなくて飲みやすくてケーキにも合う紅茶だけど?少なくともあなたが作るニガいコーヒーよりかはねぇ?」
「そうですよFive-seven!紅茶を冒涜するのは許せません!いいですか?紅茶とは発祥こそ中国ですが英国によってより味に磨きをかけられた由緒あるお茶で…」
「昔の私なら誕生日なんて理解できないし、こんなの用意しなかったけど。…指揮官ならあたしみたいな人形からのプレゼントでも、受け取ってくれるよね」
───この世に産まれた者ならば誰しも平等にやってくる生誕祭。
それらを祝うのに人間も人形も関係ない。
いつもはひとりで過ごすのが好きでも”人生”という長い目で見れば、たまにはこんな記念日も悪くないのかもしれない。
【特別編】たとえばこんなバースデー
カリーナは由比ヶ浜と一色を足して2で割って素敵ななにかを加えた感じのあざとかわいい感じで行こうと思います(暴露)
本編の続きはもう少し…もう少しでできますから……。