指揮官には友達がいない   作:狂乱のポテト

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局地戦区核心8のミノタウロスを俺は許さない。




#18 ついに、AR-15は告白する

 

【全ターゲットを無力化、もう戦域内に敵はいない。オーバー】

 

「了解した、ヴァルチャー2。交戦終了。支援に感謝する」

 

【これが仕事だからな。ヴァルチャー2、アウト】

 

 精神を擦り減らされる状況からようやく解放され、銃のセレクターをセーフティに戻すと壁にもたれてひと息ついた。響きわたっていた無骨な銃声はピタリと鳴りやみ、かわりに無線機で指示を出す声や負傷者の救護に追われる足音で喧騒に包まれる。

 

【ご主人様、まもなく本部から救援と医療スタッフが到着します】

 

「分かった。負傷者を1ヶ所に集めてくれ。ヘリポートは空けておくように」

 

 あらかた人形たちに指示を出し終え、ぼーっと空を見上げていると、誰かの足音が近づいていることに気づく。

 

「驚いた、普段は安全な場所で命令してるだけの指揮官がここまでまともに戦えるなんて。ちょっと見直しちゃった」

 

「それはどうも。これでも電子戦と指揮能力が優れてる代わりに戦闘はからっきしな45さんの足元にも及びませんがね」

 

「あら、私なりに褒めたつもりなのに。傷つくなあ」

 

「俺も俺なりに褒めてたぞ」

 

「いくらなんでも伝え方が不器用すぎるわよ、却下。出直してきて」

 

 厳しいお言葉を投げつけられたものの、UMP45は安らかな表情をしていた。

 

 ああ…これだ。この顔を見るとひどく安心する。こうして彼女と過ごすのはいつぶりだろうか。

 

「で、私がいない間元気にしてた?大変なことになってるとは聞いてるけど」

 

「まあ……なんとか」

 

「ほんと〜?豆腐メンタルの指揮官のことだからすごい気にしてるんじゃないの?」

 

「ええいうるさいやめろ頬をつつくな」

 

 くっ…やはりバレたか…。なんなら毎日シャワーを浴びる時にぶつぶつとひとり反省会を開いているまである。

 

 すると45は俺の肩にもたれかかりスマホを取り出した。

 

「えーっと…殺す必要はなかったはずだと批判する声、あの発砲はやむを得なかったと擁護する声。賛否分かれてるわね」

 

「らしいな」

 

「なになに…、『適切な取り締まり手順を徹底させていなかったグリフィンの責任を追及し、市民団体が解体を求めている』…。誰のお陰で安全な暮らしを得られていると思っているのかしら」

 

「そういう奴らに限って自分たちの身に危険が及んだら真っ先に助けを求めるんだよな。直接現場を見たわけでもないのに好き放題言いやがって」

 

「ふ〜ん……指揮官の頼みならどうにかしてあげなくもないわよ?そのぶん”報酬”は高くつくけど♪」

 

「どうにかするって……例えば?」

 

 どちらかというと”報酬”の方が一体なんなのか気になるがここはあえてスルーする。

 

「そうね…まずはネットでデマ垂れ流してる奴や記事ライターを消そうかしら。物理的な意味で」

 

「ヒェッ」

 

 こわっ…。なにが怖いって冗談じゃなくガチの目をしてること。しかも404小隊なら痕跡を残すことなく本当にこなせそうだから笑えない。

 

「批判してる奴らが突然いなくなったらめちゃめちゃ怪しまれるだろ…グリフィンが裏工作したに違いないって余計に叩かれるぞ」

 

「それもそうね……じゃああいつらの身元や住所を特定してネットに拡散するしかないわ」

 

「手段の落差がすごい」

 

 どちらかといえば平和的だけどただの嫌がらせじゃねえか。あと手口が地味に陰湿。

 

「ていうかなんで方法が『批判してる奴らを消す』だけなんだよ。真実を世に広めて俺に落ち度はないことを証明するとかあるだろ」

 

 するとUMP45はため息をついてやれやれといった仕草をとる。ちょっとムカつくな。

 

「いい?注目集めやアクセス数稼ぎのために過激かつ極論的な見出しをつけるまとめサイト。事実とかけはなれたり偏向的な書き方で印象操作を狙うネット記事。こいつらは社会の悪よ、徹底的に叩く必要があるの」

 

「もちろんそれに騙されるネットリテラシーのない奴らも悪いけど、そいつらはやりようによっては上手く利用できるわ。つまりは誤った情報を流す根源を潰せば丸く収まるの。……あのアフィカスは絶対に許さないわ…」

 

「そ…そうですか」

 

 急に饒舌に喋りだしたな…なにか恨みでもあるんだろうか…。

 

 その辺り興味あるので深掘りしようとしたが、遠くから響きわたるヘリコプターの飛行音で遮られた。G36の言っていた、グリフィン本部からの救援だろう。2機ほど基地のヘリポートへ向かっていったが、1機だけ俺の目の前に着陸してきた。

 

 メインローターが巻き上げる強風に耐えていると片眼鏡(モノクル)を掛けた真面目そうな雰囲気の女性がドアを開けて降りてきた。

 

「指揮官、遅れてすまなかった」

 

「ヘリアンさん!多忙にもかかわらず本部から駆けつけてくださり、感謝します」

 

「色々と立て込んでいたがな…お陰ですべて片付いたよ。それよりも身体は無事か?」

 

「ええ、私は問題ありません。ですが人間と人形両方のスタッフに複数の負傷者が出ています」

 

「よろしい、被害報告は聞いている。ここからは負傷者の手当てや設備の補修は本部のスタッフが引き継ぐから安心してくれ」

 

「だが貴官を休ませている時間はない、一刻も早く今後の対策と方針を考える必要がある」

 

「分かりました、ほかの指揮官も招集します」

 

「いや、その必要はない。声をかけるのはAR小隊と…UMP45、君の小隊もだ」

 

 AR小隊と404小隊?人形たちを交えて話をするのか?

 

「指揮官たちではなく人形…ですか?」

 

「ん?なんだ、UMP45から聞いていなかったのか?404を派遣したのは基地の救援のためだけではない」

 

 はて、たしかナインが助けに来たと言っていたが…。おい、どういうことだ?と45にアイコンタクトを送るが、我関せずといった様子でペットボトルの水を飲んでいる。それ僕が飲んでたやつですよね?

 

「まあいい。司令室に来たまえ。詳しい説明をする」

 

 

 

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 ヘリアンさんの指示通り、装備を片付けていつもの制服に着替え、司令室へ向かった。時間まで少し余裕があるがすでにAR小隊と404の面々は揃っており、どうやら俺が最後に到着したようだ。

 

「全員集まったな、それでは始める」

 

「まずは被害報告の共有だが、負傷者の数と容態のみ端的に伝える。完全破壊された戦術人形は0。人間のスタッフは非戦闘員が1名、戦闘員は3名が負傷」

 

「うち1名は首を被弾したが医療チームによると命に別状はないとのこと。多量に出血したが、応急処置のお陰で回復する見込みがあるそうだ」

 

「…!」

 

「よかった〜!デイブさん無事だって!!」

 

「ええ、よかったわ…ほんと…。さすがAR-15ですね」

 

「上手くいくかかなり不安だったけどね…昔M16に教えてもらった救命措置が役に立ったわ」

 

 よかった……。少ない戦力で急な襲撃に対応したにもかかわらず、誰も命を落とさずに済んだのはかなり幸運だ。さっきまで重い表情をしていたAR-15も、SOP Ⅱと違って声には出していないがかなり安堵している。

 

「では今後の方針についてだが…指揮官、君の身柄を軍が保護することになった」

 

「えっ、軍…ですか?」

 

「そうだ。ついては明日の0900、サラトフ州のエンゲリス空軍基地に向かってもらう」

 

 ついに軍まで動きだしただと…。

 

 正規軍が民間軍事会社の職員を守るために力を貸してくれるなんて前代未聞だ。たしかに軍の元であれば安心できるが、彼らにそこまでよくしてくれる義理はないだろう。クルーガーさんのコネクションであるというなら話は別だが。このなかで一番驚いてるのはもちろん自分なんだが、AR小隊たちも同じように面食らった様子でいる。

 

「ヘリアンさん、それはもう決定事項ですか?」

 

「AR-15…なにか異論でも?」

 

「わざわざ軍に協力を仰がなくても、私たちだけで指揮官を守ることはできます。それが指揮官の部下である戦術人形の使命です」

 

「これまで私たちはずっと指揮官のもとで戦ってきました!特殊部隊であるAR小隊なら指揮官を…!」

 

「AR-15、落ち着いてください」

 

 ヒートアップするAR-15をROが諌める。

 

「っ…!」

 

「申し訳ありません…取り乱しました」

 

「ふむ…AR-15、たしかに君の言うとおり”指揮官を”守ることはできるかもしれない」

 

「だが世間からの批判の矛先は彼だけでなく、グリフィン全体に及んでいる。現に過激派勢力が現れ基地の襲撃まで許してしまった」

 

「それでどうなった?死者こそでなかったが人間のスタッフが負傷し、基地設備も損壊。この先また同じことがないとは言いきれないだろう。当然悪化することさえあり得る」

 

「それは…そうですが…」

 

「だからこそ奴らの注目を分散させる必要がある。ここに指揮官がいないことが分かれば基地の前で大規模なデモを始めたり、本腰入れて襲撃することもないだろう」

 

「これが最善だ。それに我々のバックに軍がついているという牽制にもなる」

 

 なるほど、理にかなっている。それにグリフィンにいるよりも軍の保護下にいた方が安全であるのは明白だ。AR-15や人形たちの気持ちはとても嬉しいが、俺がここにいることでスタッフが常に危険に晒されることは避けたい。

 

 そんなことはみんな理解している。だが納得ができないのだろう。パッと見たところ元々直属ではない45や416は冷静に話を聞いているが、AR-15をはじめAR小隊たちは苦渋の表情のまま拳を固く握り締めている。

 

 そんな葛藤のなかどう声をかけるべきか、俺には分からなかった。

 

 重い沈黙を裂くようにヘリアンさんが説明を続ける。

 

「空軍基地にはグリフィンのヘリで向かう。君たちもこれに同乗し指揮官の護衛をしてもらう。到着後は404小隊は空軍基地付近の住宅から監視。有事の際のバックアップを任せる」

 

「AR小隊は帰投して待機。おそらく他の人形たちも含めてここの防衛をしてもらうようになるだろう。場合によっては一時的に別の指揮官の指揮下に入ることもある」

 

 この説明に対し、しばらく沈黙を貫いていたM4とSOP Ⅱだが、この扱いには耐えかねたのかついに不満を露わにする。

 

「あの…なぜ私たちではなく、彼女たち(404)がバックアップを?」

 

「そうだよ!私たちも指揮官の役に立ちたい!!」

 

「…勘違いするな、我々は君たちを厄介者扱いするつもりなどない。戦力を消耗し脆弱状態の基地を守るためには強力な君たちが必要だ。今、基地の安全を任せられるのは指揮官の人形たちだけだからな」

 

 するとヘリアンさんはUMP45を一瞥する。

 

「それに404小隊はあくまで”部外者”だ。できる限り我々のフォローはしてもらうが、自分たちの家は自分たちで守らねばなるまい」

 

 45はなにも言わず、ただ片手をひらひらと振り返した。

 

「もう一度言うが出発は明朝9時だ。今日はみなご苦労だった。明日に備えて体調と装備を整えるように。では解散」

 

 それを最後にヘリアンさんは司令室を後にした。明日から軍の世話になるのか〜、嫌だなぁ…。

 

 安全なのはいいが軍の連中は俺たち民間軍事会社を見下している節がある。まあ、E.L.I.Dの駆除が仕事の彼らからしてみれば、鉄血が相手の俺たちなんておままごとみたいなもんではあるが。

 

 あれだ。例えるなら体育の授業であまり話したことのない野球部員(正規軍)と強制的にペアを組まされる帰宅部(オレ)だ。いや実話じゃねえか。

 

「じゃ、私たちもこの後やることがあるから失礼するわ。また明日ね、指揮官♪」

 

「またね〜!」

 

「失礼します。ほら行くわよ、なに寝てるのよ」

 

「うぇ…分かったよ、引っ張らないで…」

 

 ヘリアンさんに続き、404の面々も別れの挨拶を告げて部屋を後にしていった。

 

「私たちも行きましょうか」

 

「そうですね、今日は早めに準備して休みましょう」

 

 ほどなくしてAR小隊も明日の計画に備えて宿舎へと向かっていった。

 

 しかし、最後尾にいたAR-15がドアの手前でこちらへ振り返る。

 

「…指揮官」

 

「ん、なんだ?」

 

「その…ええと…」

 

 なにかを言いたげな様子だがなかなか言葉を言い出せないでいる。

 

「いえ…なんでもありません。失礼します」

 

「…?ああ、お疲れ」

 

「(あいつどうしたんだ…?)」

 

 まあいいか、風呂に入って寝る前に他の人形たちにも挨拶しておかないとな…。しばらく会えなくなるし、スプリングフィールドのカフェにも寄っていこう。

 

 

 

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 ―――チュンチュン…チュン…

 

 ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ……

 

「ん...」

 

 カーテンの隙間から朝日が差し込み、眩しさのあまり思わず手で目元を覆い隠す。耳元で甲高く鳴り響くアラームを手探りで止めて重い身体を起こした。

 

「(…もう朝かよ……)」

 

 寝起きでおぼつかない足取りで冷蔵庫へ向かい、冷えたオレンジジュースをグラスに注ぐ。甘く爽やかな果実の恵みが渇いた喉を潤し、次第に目が覚めてきた。

 

「ふう…」

 

 シワのない真っ白なシャツに袖を通し、ネクタイを締めていつもの葡萄酒色の制服に身を包む。軍の保護区域内では私服で過ごすようになるため、しばらくこいつを着ることはないだろう。

 

「しかし…冷静に考えても、軍に匿ってもらうなんて普通に生きてたらまずありえないよな…」

 

 まあ…ありえてしまうのが今の世の中。そしてこの仕事なんだが……。お陰でこの先俺はどうなるんだとか、人形たちは大丈夫なのか心配でまったく眠れなかった。

 

「(憂鬱だなあ…)」

 

 正直もう部屋から出たくないな、積みゲー消化したいんだけど有給使って休めないかな。ああそうだ部屋の片づけや人形たちのフィードバック会議の資料も作らないといけないんだった。なんかとてつもなく厄介で面倒なことが目の前にあると、普段は後回しにしていた小さなタスク(掃除とか)を無性にやりたくなるよね。あれなんなんだろうね。

 

 と、まるで月曜日の朝みたいなことを考えているとドアをノックする音が聞こえた。

 

 

 コンコン

 

 

「指揮官、お迎えにあがりました」

 

 ドア越しに聞こえてくる大人びた冷静な声。

 

 ちょうど身だしなみを整え終わったので、急いで訪問者の元へ向かう。

 

「おはようございます、指揮官」

 

 ドアを開けると銃をスリングで背中に携えたAR-15が佇んでおり、腰まで伸びた桃色の髪が爽やかな朝の風によってなびいていた。

 

「おう…おはよう…」

 

「大丈夫ですか?隈ができて…ひどい顔ですよ」

 

 AR-15が心配そうな面持ちでこちらの顔を覗きこみ、まるで水晶のような澄んだ瞳に至近距離で見つめられた俺は思わず目を逸らしてしまう。

 

「色々考えてたら不安で眠れなかったんだよ…。もう眠い、マジで眠い。なんならもう今日はどこにもいきたくない。だらだらゲームして過ごしたい。そうだ、一緒にスマ〇ラやらね?」

 

「やりません。もうすぐ時間ですから行きますよ」

 

「くっ!これがRFBならすんなり丸め込めたのに…」

 

「…そういえば前にそんなことがあって二人ともG36にこっぴどく叱られてたわね…。それよりもほら、荷物持ちますから貸してください」

 

 AR-15は白く細い腕を伸ばし、ボストンバッグとスーツケースを渡すよう促した。

 

「ああ…ありがとう…」

 

「…なんですか」

 

「いや、珍しいなと思って。お前が迎えに来てくれるなんて」

 

 AR-15が動きが一瞬だけ止まる。

 

「……別に…。ただ……」

 

「ただ?」

 

 言いかけた言葉の続きを求めるように一瞥すると、今度はAR-15が顔を逸らした。

 

「…っ!…朝に弱い指揮官のことですから、どうせ寝起きでだらけているんだろうと思ったんです」

 

「フッ…俺が弱いんじゃない、朝が強すぎるんだ」

 

「………ふふっ」

 

「!?」

 

 なん…だと……。

 

 優等生キャラでしっかり者、仕事は真面目に取り組むあのAR-15が…。いつもはしょうもない返しを適当に流しているAR-15が…笑っただと…!?

 

 AR-15が珍しい笑顔を見せたのもつかの間、自身にとっても“らしくない”振る舞いをしてしまったことに気づいたようですぐにいつもの気難しい表情に戻った。

 

「はあ…こんなことで笑ってしまうなんて…」

 

「そこまで落ち込まれるとこっちもちょっとヘコむんだけど」

 

「ほんと、あなたって人は…」

 

 隣で歩いていたAR-15はそうつぶやくと同時に足を止め、空を仰いだ。

 

「AR-15?」

 

「…指揮官だけでなくグリフィンまで危険にさらしてしまった身分で、こんなことを言うのは許されないけれど」

 

「今は少しでも長く指揮官と一緒にいたかった」

 

 なんだ、いきなりなにを言いだすかと思えば。

 

「何度も言っただろ、あれはお前のせいじゃない。いろんな不運が合わさってあんな結果になって」

 

「でも!」

 

「!」

 

「でも…今は軍が動いて…もはや私ではあなたを守れません…」

 

「私はM4のように指揮能力が高いわけでもなければ、M16のような実戦経験もない」

 

「ROのようにみんなをまとめられない、SOP Ⅱのように敵を屠れるわけでもない」

 

「私は指揮官たちに迷惑をかけているだけ…本当は指揮官やみんなに認めてもらって一緒にいたいのに」

 

「そんな資格はないのに…そう思っている身の程知らずの自分が嫌いで…」

 

 振り向いた彼女の瞳からは涙が零れていた。

 

「AR-15…」

 

 彼女は葛藤しているのだ。

 

 ここは自分がいていい場所なのか、相応しくないはずだと自問する一方で、本音ではAR小隊の一員としてグリフィンにいたいと望んでいる。しかし、自分程度がそんな望みを持つことすら烏滸がましいと苛まれているのだろう。

 

 なら、AR-15の指揮官である俺がすべきことはひとつ。

 

 彼女の価値を、彼女自身に認めさせることだ。

 

「お前が誰よりも努力していることは当然分かってるよ。それこそあの時だって自分の能力を高めるために市街地のパトロールに参加したんだろ」

 

「それにデイブの命を救ってくれたのは他の誰でもないお前だ。たしかあの場でAR-15以外に適切な救命措置を知っている人形はいなかったはずだし」

 

「…私は…」

 

「ちゃんとできるか不安だったけど、”自分がやらなきゃいけない”と強い意志を持って応急処置をしてくれたんだろ?」

 

「そんなに自分を卑下しないでくれ。お前が思っているよりも周りはAR-15を信頼しているよ。厄介者扱いする気はないってヘリアンさんも言ってただろ」

 

「それでも…しばらくあなたと会えないのはやっぱり辛いです」

 

「大丈夫だよ、すぐ帰ってくるから。まあグリフィンより待遇が悪ければだけど」

 

「……はあ…まさか指揮官に言いくるめられるなんて」

 

 AR-15は微笑みながら濡れた目元をぬぐった。普段と違ってどこか吹っ切れたように明るく、それでも凛とした表情で真っ直ぐ前を向くいつものAR-15だ。

 

「戻ったらまたシューティングレンジの勝負でもするか」

 

「ふふっ、次は私に勝てるといいですね」

 

「…やっぱスマ〇ラで」

 

「ダメです。指揮官はしばらく目を離すとすぐに腕がなまってしまいますから、私と一緒に特訓です」

 

「アッハイ」

 

 

 なにげない話をしながら二人でヘリポートまで歩く。つい先ほどまでは長く憂鬱に感じていた道のりだが、あっという間に時間が過ぎていった。

 

 

 

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 ベッドから起きた時は少し寒かったが、外に出てみると空は青く澄み渡り、ポカポカと暖かい日差しが降り注いでいた。状況が状況でなければ街へ買い物に行ったりどこかへ遊びに行くのにもってこいの心地良さだ。

 

 そういえばFALと一緒に服を買いに行く約束をしていたのに結局行きそびれたな。事が落ち着いたらきちんと埋め合わせをしなければ。

 

「おはようございます指揮官。AR-15も一緒だったのですね」

 

「おはようRO、もうみんな集まってるのか」

 

「ええ、いつでも出発できますよ」

 

 ヘリポートには俺たちを乗せるヘリが待機しており、すぐに飛び立てるようローター音が轟音を立てていた。

 

「コールサインはアトラス3-1と3-2。指揮官とAR小隊は3-1に、私たちは3-2に搭乗するわ。到着予定時刻は0940だから、みんな快適なフライトを楽しんでね♪」

 

 まるでこれからリゾート地に向かうかのようなUMP45を見て、AR-15は呆れるようにつぶやいた。

 

「なにが快適なフライトよ…なにごともないといいけど」

 

「あっ!私知ってるよ、AR-15!それ”フラグ”って言うんだよね!」

 

「やめなさいSOP Ⅱ縁起でもないから」

 

 SOP Ⅱのことだから悪気があって言ったわけじゃないんだろうが、命を狙われているこちらの身としては冗談じゃない。いやマジで。

 

「ほらほら俺たちも乗るぞ」

 

「私、指揮官の隣の席がいい!」

 

「あら、指揮官は私の隣ですよね?」

 

「エッ」

 

「どこでもいいから早く乗ってください…」

 

 全員が搭乗したことを確認するとヘリは出力を上げ、エンゲリス空軍基地へ向けて空高く羽ばたいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「”鳥”は飛び立ちました。まもなく我々の予測ルートへ到達します」

 

「ええ、すでに準備は整っています。落としたらすぐに回収チームが確保する手筈ですから。くれぐれも丁重に扱いますよ」

 

「……はっはっはっ!これで奴らも終いですな。ええ…はい…はい、では失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 #18 ついに、AR-15は告白する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






前回のあとがきで「ついにあの小隊が登場」といったな、あれは嘘だ(圧倒的無計画さ)
次は確実に出るから…いやほんとほんと。

416と同様、AR-15はタメ口+敬語で話すとこが好きです。MODになると「見ていてくれ」「認めてほしいだけだ」「優秀といえるのだろうか」って口調が変わるのが個人的にかなり残念なんですよね…。
ちなみにAR小隊の中で誰をパートナーにする?って聞かれたらAR-15かM4を選びます。それくらい好き。
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