指揮官には友達がいない   作:狂乱のポテト

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しばらく更新してなくてすみません。今回はいつもより長めとなっております。
ウサギの巣のスコアが150,000しか取れねえ…。




#7 いつでも、彼女は完璧を貫く

 

 

「今日もいい天気だな……」

 

 賞味期限切れ間近の配給を手に、俺は窓から覗く雲一つない晴れ渡った蒼空を見上げてつぶやいた。

 

 午前の仕事が思いのほか長引いてしまい、やっとの思いで作業を終えて食事にありつけると思ったのだが、時計をみると食堂が清掃のために閉鎖されてる時間帯だった。コンビニ弁当でも買いに行こうと思ったが、この寒い中外へ出るのは気が進まない。なんかないかなー、と戸棚を漁っていると、備蓄していた野戦糧食(レーション)を見つけた。ちょうどいいや、賞味期限近いし捨てるのはもったいないから食べてしまおう。

 

 ……うん。相変わらずうまくもまずくもない味だ。クルーガーさんに品質改善の申し立てしようかな…。無理かな……。

 

 思い詰めた表情で食べていると、コンコンとドアをノックする音が響く。俺は食事の手を止め、訪問者へ顔を向けた。

 

「HK416です、作戦から帰投しました」

 

「おう、おかえり。無事でなによりだ」

 

「損害報告と入手資源の詳細はこの書類を、ハイエンドモデルについての更なる情報はこちらに記載してあります」

 

「ありがとう、あとはやっとく」

 

 やっとひと区切りついたと思えばまた新たな仕事だ。もうため息しかでない。とはいえ最前線へ投入され、生死を賭けた戦いをする彼女たち(戦術人形)に比べれば、書類仕事なんて生ぬるいものである。

 

 彼女たちのお陰で今があるのだ。彼女たちの為にもへこたれてる場合ではない。

 

「……指揮官、なにを食べてるの…?」

 

「あ?ああ、レーションだよ。食堂は閉まってるし、賞味期限が近いからな。処理するにはちょうどいいと思って」

 

「そんなんじゃ、お腹は満たせても元気でないわよ…。まだ仕事残ってるんでしょ?」

 

 おっしゃる通り、おいしいモノを食べないとやる気スイッチが入らない。やっぱりファ〇マで弁当でも買ってくるべきだったか。

 でも残業明けとか食堂に行けない時は大抵コンビニ弁当で済ませてるんだよな。けっこうな頻度で食べてるからちょっと飽きてきた。ちなみにセブン〇レブンとファ〇マの弁当はすべて制覇したぜ。

 

 なんてドヤ顔で言ってたら、『もっと身体にいいもの食べなさい!』とけっこうキツめに注意された。416から漂うお母さん感。

 

「はぁ……忙しいのは分かるけども…」

 

「ははは…たまに食堂で食べられるだけマシだがな」

 

「……今日は一日中この部屋で仕事するの?」

 

「ああ、そのつもりだよ」

 

「…そう。あまり無理はしないでよ、指揮官」

 

 そう言って部屋から去っていく416に手を振り、食べ終わったレーションを片づけて再度仕事に取りかかる。今日中に終わればいいけど……。

 

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「指揮官さま…、本当にいいんですか?」

 

「ああ、あとは俺の決裁が必要な書類と処理だけだから。こんな時間だし、カリーナはもう休んでくれ。ありがとな」

 

 時刻は夜の0時。昼から休憩なしのぶっ続けで必死に仕事をしてきたが、結局日付が変わるまでに終わらせることはできなかった。夜遅くまで残業に付き合ってくれたカリーナを退勤させ、最後の仕上げに取りかかる。集中してやれば2、30分程度で終わるだろう……。多分…。

 

 いや、正直キツい……。お腹は減ったし超眠いし…、温かいオフトゥンで寝たい…。でも朝まで終わらせないと……。あれ、眠気覚ましのガムどこだっけ。あ…昼に食べたので最後か。もうこのまま寝ようかな……。ダメだ仕事を終わらせ…寝たい……。お腹空いた…。

 

 脳内で理性と欲望が死闘を繰り広げている矢先、深夜を回った時間にも関わらず訪問者が現れた。

 

「指揮官、入るわよ」

 

「ん…、416か。どうしたこんな時間に」

 

「目の焦点が合ってないわよ、どこ見てるの……」

 

 そういって彼女は俺のもとへ近づいてデスクに散乱している書類をかき集めてペラペラとめくり、仕事の進捗具合をみる。

 

「なによ、指揮官の決裁が必要な書類なんてないじゃない」

 

「あー…?なんでそれを……?」

 

「さっきカリーナに会ったのよ。あなた、彼女に気を遣ってあげたんでしょう」

 

 はは…バレたか。こんな時間まで部下に手伝わせるのは気が引けるからな。カリーナは若い女の子だから尚更だ。ここまでスムーズに進んだのも彼女の尽力あってこそなのに、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。

 

「無理しないでって言ったのに……。そんなふうになるまで自分を追い込むのはかえって効率が悪いわよ」

 

「ぐうの音も出ねえ……」

 

「仕方ないわね…、あとは私がするわ。幸いそこまで大変なものでもなさそうだし」

 

「いやそういうわけには……」

 

「……あれからなにも食べてないのよね?」

 

「あ?ああ、そうだな。ガムぐらいしか食べてない」

 

「…はいこれ、私が仕事を片づけている間に食べて」

 

 すると、416は可愛らしいネコのデザインがあしらわれた小さめのトートバッグを差し出した。中身を見ると入っていたのは弁当箱。

 

「指揮官のお口に合うかは分からないけれど。…たまには栄養のことを考えなさい」

 

「416……」

 

 まさか416の手作り弁当を食べられる機会があるとは思いもしなかった。というか、誰かの手料理を食べるなんて何年ぶりだろう。ヤバい泣きそうだ…。めちゃめちゃ温かい…。

 

 弁当箱のフタを開けると、お弁当には欠かせないウインナーや玉子焼きなどの定番から、小さいナポリタンやベーコン巻きなどのひと手間加わったものまでバラエティーに富んだものとなっていた。

 もちろんトマトやブロッコリーなど色とりどりの新鮮な野菜も入っており、栄養バランスがきちんと整ったものとなっている。

 極めつけは様々な具材を駆使してネコのキャラクターを描いたご飯だった。いわゆる"キャラ弁"ってやつだな。食べるのがもったいないくらい上手くできてる。

 

 けれども部下に自分の仕事を任せてのうのうと食事をするのはさすがに躊躇する。こんな俺でも指揮官としての威厳ってものがあるのだ。しかしこんな美味しそうなものを目の前に置かれては、どうしても俺の腹の虫が鳴ってしまう。携帯の着信音かな?ってくらい鳴り続けている。誰かから着信や通知が来ることなんてめったにないけど。

 

「……いいのか?」

 

「このまま睡眠不足と空腹で倒れる方が困るわよ」

 

「…いただきます」

 

 デスクにいる416が小さな声で「召しあがれ」とつぶやくと同時に、俺は半日ぶりの食事を口にした。質で考えるとこのようなまともな料理は1週間ぶりである。 空腹は最大の調味料とよく言うが、それを抜きにしても416の手作り弁当は絶品だった。あまりのおいしさに箸が止まらない。おそろしく速い箸さばき、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

「お味はどう?」

 

「…めちゃくちゃうまいです……!」

 

「!…そう、ならよかったわ」

 

「いやー、さすがというか416はすごいな」

 

「当然よ、私は完璧だもの」

 

 心なしか416の声がいつもより明るい気がする。ともあれ仕事を手伝ってくれるだけでなく、わざわざ手の込んだお弁当を作ってくれるとは、416には感謝してもしきれない。俺はものの数分で彼女の手作り弁当をたいらげた。

 

「ふう…、ごちそうさま。美味しいものでお腹いっぱいになるなんて久しぶりだなぁ」

 

「お粗末さまでした。私ももう少しで終わるからシャワー浴びてきたら?」

 

「えっ、いやお腹も膨れたことだし、後の仕事は俺がやるよ」

 

 そういって書類とペンを手に取ろうと伸ばした俺の腕を、416が掴んで制止した。

 

「本当にあと少しで終わるから。指揮官はお風呂に入ってリフレッシュしてきなさい。疲れがちゃんと取れないわよ」

 

「でも……」

 

「いいから」

 

 昼間の時のような有無を言わさない(お母さんモード)416の指示には逆らえず、結局彼女へ労いと謝罪、感謝の旨を伝えて、俺は自室に備え付けられた風呂場へと向かった。

 

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「いやあ…こんなに心に余裕を持ってシャワーを浴びたのは久しぶりな気がする」

 

 心身ともに清らかになり血行もよくなった俺は、先程とは見違えるほど清々しい顔で風呂場からデスクへ戻った。

 

「普段どれだけ過酷な日々を過ごしてるのよ……」

 

「最前線に駆り出される中間管理職ってのはそういうもんさ、ほんとイヤになる」

 

「はい、全部終わったわよ。確認する?」

 

「ありがとう、416のことだからミスはないだろうし大丈夫だろ」

 

 俺は416のことを信頼している。どれだけ厳しい作戦でも難なくこなすし、俺が管轄する部隊のなかでは比較的古株であるということもあるが、ただそれだけが理由というわけではない。

 

 404小隊……特に416と45は心を開いてくれるまでかなりの時間がかかった。作戦中の指示や情報伝達など、仕事に関してはごく普通に接してくれるのだが、それ以外の場面で会話することや触れ合う場は皆無と言っていい。

 

 当時の416はかつてのVectorのようにどこか壁を隔てて、"指揮官(上司)"と"戦術人形(部下)"の関係に徹していた。45は表面上は気さくに接してくれるものの、人間に対して心の奥に深い闇を持っているのか本心を見せてはくれなかった。まあ戦術人形を人間のように接する俺が不審というか奇妙というかなにか裏があると感じたのかもしれないが……。

 

 ではどうやってここまで親密な関係になれたのか、と答えたいところだが今回は割愛させていただく。とどのつまり、長い時間と多大な労力を費やして得た人間関係というものは、それに見合う信頼関係へと成り立つのだ。

 

「こら、ちゃんとタオルで髪を乾かさないと駄目でしょう」

 

 ぼーっとしてたら416にタオルで頭を撫でられていた。彼女の優しい手つきが、幼少期に同じことをしてくれた母親を思い出させる。

 

「……おかん」

 

「な ん で す っ て ?」

 

「すいません…」

 

「まったく……はい。あとは自分で乾かしなさい、私は部屋の片付けをするから。朝から仕事あるんだし、はやく寝なさいよ」

 

「ああ、ありがとう……」

 

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 ……。

 

 ………。

 

 ………………。

 

 眠れない。なぜだ。先程まで睡魔と戦っていたのに…。隣で416がゴソゴソと散らかった部屋の片付けをしているが、物音はとても静かで安眠を妨害するほどのものではない。だがなぜか、どうしても寝つくことができないのだ。

 

「416」

 

「あら、起こしちゃった?」

 

「いや、そうじゃない。さっきまで眠かったのになぜか寝れないんだ」

 

 こうなったら睡眠薬を飲むしかない。20代で薬がないと眠れないってどうなのよ。

 416に引き出しから睡眠薬を取ってくれと頼んだが、ため息混じりに拒否された。

 

「まさか薬に頼らないといけないレベルにまで追い込まれてるなんて…。仕方ないわね……」

 

 すると416は片付けのために動かしていた手を止め、なにを血迷ったのかベッドに入り込んできた。

 

「444416さん!?なななななにを……!」

 

「質のいい睡眠を得られないと困るでしょう。私が添い寝してあげるわ」

 

 いやいやいやいや!これ逆にドキドキして眠れねえよ!!あっ、なんか腕に柔らかいものが……

 わ…分かった!ドッキリだな!?カメラはどこだ!?どうせ45が、『ドッキリ大成功!』って書いた看板を持ってるんだろう!出てこい45!!

 

「そんなもんないわよ……。いいからはやく寝なさい」

 

 と、グイッと身体を引っ張られ、416に抱きつく感じになってしまった。あ…でもこれ落ち着くかも……。416自身の温かさと、彼女が寄り添ってくれている安心感が相まって心が安らいでいく。一気に瞼が重くなっていくのが分かる。

 

「……416」

 

「なに?」

 

「ありがとな……」

 

「ふふ…おやすみ、指揮官」

 

 彼女に頭を撫でられながら、俺は深い眠りについた。

 

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「……ん…」

 

 時刻は午前7時。こんなスッキリとした目覚めは久しぶりだと感心しながら隣を見たが、そこに416はいなかった。俺が寝ている間に自室へ戻ったのだろうか。とにかく恋愛漫画でよくある朝チュンの展開にはならなかった。

 

 が、なんか隣の部屋からすごいおいしそうな匂いが広がってくる。寝起きにもかかわらず食欲を刺激された。

 

「あら、起きたのね。朝食できてるわよ」

 

「わざわざ作ってくれたのか?」

 

 テーブルには芳醇な香りがするコーヒー、こんがりと焼けたトーストにスクランブルエッグやソーセージ。低い気温で冷えた身体を温めてくれるスープが用意されていた。

 

「416みたいなお嫁さんがいたら幸せだな…」

 

「なっ…!?」

 

 しまった。あまりの出来栄えに本音が漏れてしまった。

 

 途端に顔を赤面させた416の頭を笑いながら撫で、「ありがとう」と感謝の言葉を伝える。

 

 冷めないうちに食べないとな、これなら今日の仕事も頑張れそうだ。

 

「うん、うまい!やっぱ416の料理は完璧だな」

 

「ふふっ…、ええもちろん。私は完璧よ」

 

 

 

 

 

 

 #7 いつでも、彼女は完璧を貫く

 

 

 

 






ギャグとぼっち要素はどこ…?ここ…?おかしいな……書こうとしてたのと全然違うものになったぞ…。……まあそれは今度また書けばいいか(思考放棄)

とはいえ416の母性は異常。一生包まれてヒモになりたい()

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