「僕は平和の守護神さ...平和天誅っ」
彼は今日を生きる。天に許されて。
二次創作ゆえ多少のオリジナル要素ご了承下さい。
「え」
気がつくと頭が落ちていた。リスポーン前に見えたのは先輩方の喜色満面な笑みと転がってゆく初期装備で、リスポーン後に再び刀が迫ってくるのが見えて、次のリスポーンではPK犯がPKされるのを目撃して、もう一回リスポーンしたらなんやら乱戦になって死んで、さらにリスポーンしたら今度は辺りが大爆発して乱戦してた人々もろとも吹っ飛んだ。
...?
平和はどこに.....?
時は遡り二日前、僕はある超有名なVRMMOのクエストを完了させ達成感に浸っていたところからこの物語は始まる。
クエスト内容はNPC商人の護衛任務だった。多くのモンスターが群れ、味方が放つ矢の嵐が舞う中で刀を振り回すのは今思い返しても肝が冷える。長時間のクエストでゲームで徹夜したのは初めてだったが、労力以上の報酬を得ることができたのだ、反省はあれど文句も後悔もない。
「でもしばらく人外の敵MOBは見たくないかな...」
いわゆる燃え尽き症候群と言うやつだろうか、とにかく体に力が入らないし、活力が湧いてこない。クエスト前はリビトーに溢れていたのに...。
それはそうと、お腹減ったな。ゲームばっかしててもお腹減るんだなぁ。脳みそ使うからかな。ああそうだこの間受け取ったお菓子があるな。あれ食べよう。バームクーヘンっぽいし、たぶん牛乳と合うんだろうな。ああもう口を動かすのも億劫だ。
...あ、お菓子を牛乳に浸せば、牛乳を飲むという動作を削れてしかもお菓子との会わせ技でデリシャスに、これは一粒で二度美味しい的なひらめきじゃないだろうか....僕は天才だった?
いやまてそれはおかしい。牛乳に浸したらべとねちょになって食感が死ぬんじゃ。きっと味も思ってたのと違う感じになると思われ、浸して置いておくとなんかくさそう...?
うん、やっぱやめた。普通に食べるのが一番ですよねそうですね。魔改造とかそういうのは試すべきじゃないようん。
うー...ん、連想ゲーム的に思考が逸れていく。これはだめだ。これはだめだ。超疲れている。
さっさと寝よう。
目が覚めたら、隣には美少女が...え?
......なんてこともなく、いつも通り7:00を表示しているデジタル時計がけたたましい音でアラームを響かせる。うるせぇ。せめて美少女ボイズでおはよう、今日も眠たそうね、なんて言ってくれればこんな不快な気分にならなくてもいいのに。
うんでもそれはそれでダメだわ。布団から離れられなくなる。
さー二度寝しよ。
そしてやってくる本日二度目のおはよう。時刻12:00ぴったり。ジャストタイムで目を覚ますのは立派な特技だと自負している。まあ二度寝したら時間ぴったりの起床もむげになりけるけど。
結局食べなかったバームクーヘンもどきをぼそぼそと頬張って牛乳で流し込み、歯を磨いたら完璧。洗面所の鏡の前でキラッとスマイル!...うん普及点。やっぱり徹夜したら若干隈ができる。これは早急に治さねば来週のバイトに差し支えるぞ。
顔を洗ったら再びベットヘ。柔らかな感触に包まれつつ、どうしてここに彼女がいないのだろう、と過去の自分に問う。いやまあゲームばっかしてるからなんだけど。
ゲームするだけで惚れてくれる女の子とかいないかなーマジで。今のご世代ゲームだって職業になるんだぜ、アマチュアだってそれなりに人気があってもいいはず。
何もしないでいると無性になにかをしたくなる。でももう今日はログインする気はないしなぁ....。
あっ、そうだ。
別のゲームをすればいいじゃないか。最近ずっとシャンフロばっかだったしなんか新しいゲーム始めよう。
思い立ったが吉日、すぐさまPCを起動し、ちょっと古風なイメージが付きつつあるキーボードをぽちぽちカチカチカタカタする。
「VR、対人、と」
がががっ、と機械仕掛けの箱が音を立てて情報を読み込み...はい検索完了。
ふむ。やっぱ一番ヒットするのはシャンフロだよねぇまあそうか。過去に類を見ない超神ゲーだからなぁ。シャンフロシステムは革命と云っていいほどの技術だと思う。だって背景という概念が存在しないんだぜ。
ああいかん、また逸れとる。道草食うのはいいけどそれでお腹いっぱいになってディナー食べれなくなるみたいなことになるんだよ毎回。
さー気を取り直してスクロールスクロール...
えー、ギャラクシア・ヒーローズ、VR剣道教室、擬人化フェスティーボオンライン、サバイバル・ガンマン....これヤバいやつじゃなかったっけ。なぜヒットしたし。ていうかVR剣道教室、おまいは対人ではない。
あーネフホロだ。新作出るんだっけ。よくゴーサイン出したよなぁ...シャンフロシステムで操作性が改善されるのを切に願う。
ちらほらと見覚えのあるタイトルを発見しつつ、どんどん画面をスクロールさせる。どれも見たことのあるシステムだし、個性的っていうか斬新なのはちょっとした息抜きには重すぎる...うーん以外と暇潰しゲーってないぞ。
なかなか見つからないもんだとさらにスクロールしていくと、ふとあるタイトルが目に留まった。
『辻斬・幻想曲:オンライン』
...ほー。
辻斬って、なんか通り魔みたいなものだったかな。たぶんそうだと思う。
うわこれ幻想曲と書いてカプリッチオと読むのか、クソ格好いいなそれ。最近こういう厨二っぽいタイトルは最近見ないしちょっと心踊る。某厨二タイトルが取り柄の体は子供頭脳は大人な探偵も終わってしまったからね。
興味が湧いたので公式サイトへの扉をカチカチっとダブルクリック。パソコンのファンが数秒ぐるぐると回った後にサイトが開かれる。
ふーん、ただひたすらに斬るだけ...NPCはちゃんと存在してるのか。このスクショいいなぁ、めっちゃいい笑顔。和気あいあいとしてていいね。女性プレイヤーいるのかな?居たらいいなあ。
うん。気に入った。これしよう。
斬れば斬るほどハイスコア、ルールがシンプルで分かりやすい。たぶんpvpを主体にしてるゲームだろうから、敵MOBを相手しなくてもいいかも。まさに求めていたゲームじゃないか。
えーと残りのポイントは...うん、十分あるね。チャージしにいく手間が省けた。
よっしゃ、じゃあ次はVRを起動してPCと接続して....
思った以上に時間が過ぎてしまった。なんと日を跨いだ。いやまさかインストールにここまで時間取られるとは思ってもみなかったんです。きっとシャンフロ要領食いすぎ問題のせいだよ。だって背景という概念が存在しないんだぜ(二回目)。
そろそろこのPCも骨董品扱いかなぁ...。
さて...名前は....『アァァァァァ↑ウッ』でいいよね。うわ半角だめなのか。ですよね。残念だなマンボな気分だったんだけど。
んー、じゃあ『IN 乱』で。戦いの中、というこのゲームにぴったりな名前でしょう?誤解が生じるから自己紹介するとき絶対音声で伝えないようにしよう。
キャラクター作成....顔イケメンだと面白見ないよなぁ...うんランダム作成っと。うわ鼻めっちゃ高い。高いっていうか長い。あれだ、我が祖国が鎖国していた頃の幕府から見たペリーの鼻の高さのような...平たく言うと天狗。めっちゃ面白い。これでいこう。ついでに眉毛をごんぶとにしとこう。
なんか絶対に背後を取らせない狙撃主みたくなってしまった。鼻が天狗じゃなかったらアウトだった...。
初期装備はボロい木刀とぺらっぺらな...和服?ぽいやつ。乞食みたいな格好だなこれ。こっちもボロいし。しかしそこが好きなんでです。渋みポイントなのです。
準備完了。というわけでさっそくログインする。
視界は自分のメニューから一転、穏やかで、どこか退廃的な雰囲気がするザ・和風な町に変わる。初期リスポはランダムなんだね。
まずやるべきことはなんだろうか。やっぱチュートリアルかな。
「戦闘指南とかどこだろうかー」
ひとまずチュートリアルのフラグを発見するため目線の向きをあっちへこっちへ変えながら町を歩く。
おっ複数の人影確認。あれはプレイヤーかNPCか、果たしてどっちだろう。できればさっさとチュートリアル終わらせたいからNPCがいいなぁ。
「すいませ...」
「ウェルカム!天誅だ!」
「えっ」
袋叩きにされた。
そこから冒頭の惨劇だよ。
えー...と、あれかな。運悪くファーストコンタクトがPK趣味の集団だったのかな。ネームが見えたのであれはNPCではない...と思いたい。ちょっと最初からクライマックスすぎる。
少なくとも公式のスクショは平和だったのでこのゲームの何処かには平和があるんだろう。そうに違いないっていうかそうじゃないと困る。
平穏な場所を求め命からがらリスキル地獄から抜け出し、追っ手を自前のプレイヤースキルで捌いて逃亡を目論んでも力及ばず、また囲んで殺された。
リスポ位置は更新出来なかったのであの地獄に舞い戻った。
ああ...。
それからも色々あって逃げるの諦めた。殺意高すぎないかこの人たち。
刀を合わせ殺し殺され稀に一掃され手持ちの獲物が壊れると落ちている武器を広いまた戦いへと飛び込んでいくを永遠と繰り返し。
もはや自分以外は信じられぬと刀を振るい続けた。
ていうかこのPK集団どんだけ居るの。同士討ちとかで結構死んでキルされまくってるのに全然減らんし。キャラが消滅してるから絶対リスポここじゃねえだろうあんたら。なのにどっから沸いて出るのです?どうなってるんです??
あぁまってまってやっとレベル上がったとこぶぇ
◇◇◇
「ふぅ...」
現在地はこの町で比較的静かな団子屋さん。戦場で疲弊した心身を癒し一息つける貴重な場所です。可愛い町娘もいるよ。すごくかわいいよ。ちなみにさっき町娘を襲っていた暴漢の武器はなかなかいい刀だったのでメインとして使っていこうと思う。
さて、さっきの乱戦だが、冷静になって考えてみたら攻撃力の強い武器を奪い取っ...手に入れた時点で強引に離脱すべきだった。最後の方はもう自分から戦いに行ってた。あの集団の熱気に当てられたのかな。怖い。
これからどうしようか...なんかイベント中なのか知らないけど合う人すべて刃を向けてくるし、ときたま人外じみた動きする人いるし、お金は全部落としたから団子も買えないし...プレイヤー経営だったらキルして奪えたのに...はっ、今僕は何を考えていた?
ちょっと思考回路が暴走してる。いやそれはいつも通りなんだけど、そのベクトルの向きが違うというなんというか。とにかくあのPK集団に引っ張られている気がする。
なんて、日和にヒヨっていると胸から刃が生えた。うわ油断してたくそう。この人達には騎士道的な精神を養ってほしいと思う。
あっ、あーっ!町娘ちゃんがーッッ!!
ゆ る さ ん 。
戻ってくると団子屋の娘をキルしたやつが既にキルされてた。南無。でもゆるさん。
さて、辻カプ、通称幕末と呼ばれるゲームを始めて一週間。このゲームへの理解も進み、今後の方針が定まってきた。
まず始めに、維新軍もしくは新撰組いずれかに入ること。これは公式HPでも見た。メリットはセーブポイントを確保できること。やったぜ。
他にも色々恩恵があるらしいので今のところ最優先事項だ。
次に、ランカーと呼ばれる方々に極力出会わないように用心すること。それは人外の領域に足を踏み入れた者共であり、ばったりと対峙してしまえば命はないと思えって親切なおっちゃんが教えてくれた。ちなみにそのおっちゃんは2秒後に天に召された。情けなぞ幕末に不要だという天啓なのかもしれない。
ちなみに例の団子屋を拠点とするランカーもいるらしい。あぶねぇ。
そして最後に、このゲームの平和な場所を見つけること。これは僕の目標だ。このゲームはどこもかしこも戦ばかりで心が落ち着かない。それはまあ、一部の人には刺さるだろうが僕はそうじゃない。もっと落ち着ける場所が欲しい。平和な場所があるかどうかわからんっていうかたぶんないだろうけど、まだ僕は諦めていないぞ。なんなら造るぞ平穏な町。公式にある詐欺スクショのような町を実現させて、プレイヤーとあの詐欺公式の度肝をブチ抜いてやるわ。
実現するには、汚染されたプレイヤーじゃ駄目だな。新入りのスポーンを把握してあの狂人どもに接触させないようにしないと。
...それは流石にきついかな?
そうそう、どうでもいい補足だけど、このゲームでは相手をキルすることを『天誅』というらしい。天がこのようなことを許すとは思えんが神なんて古今東西大抵とち狂ってるから不思議ではないかも。
おっ、あの光は、新入りだな。幕末の戦士たちが同じように察知しているだろうし、平和主義派を増やすためにも急がねば。
さて、そんなわけで、おそらくこのゲームで唯一平穏な場所を探し求めるプレイをしていくぜ!
「くらえ正義のラブアンドピース天誅ぁぁああああああああッ!!」
だが天誅は基本だ。だって天がやれって言ったんだもん。
2019,1,29 ネフホロのことをネオフロと呼んでいた部分を修正。教えてくれた読者様と某不死鳥の使い手には深い感謝と謝罪を...。
もう一人?どっかでモルドしてるんじゃないすかね