英雄の剣に憧れた私が剣に生きるのは間違っているだろうか   作:美久佐 秋

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episode.07:星の欠片

 鈍く締めつけるような痛みが腕から背筋を通して迸り、深く沈んでいた意識が浮上していく。

 ゆっくり、そっと優しく、そして軽やかに包み込まれるような感覚は残るものの、水面から顔を出し、息苦しかった肺から二酸化炭素を吐き出すかの如く、命は急激に意識を取り戻す。

 

 気がつけば足は地に着き体を支え、見覚えのある竹林の中で立っていた。

 

 そこはよく彼女が師と修行に明け暮れ、オラリオに来てからは一度も訪れていない思い出の地。

 

(……どうして自分はここに?)

 

 最後の記憶はかなり意識が朦朧としていたせいであまり思い出せないが、自分の左腕はモンスターに喰われたことで失い、血を出しすぎたおかげで道半ば倒れたところまでは憶えている。

 しかし、今の自分の体には腕の欠損もない。それどころか傷一つすらない。

 

 おかしいと思いながらも自分の体をペタペタと触れたり、周りに誰かいないかと周囲を確認していると、命はある違和感に気づく。

 まず目に止まったのは手、そして体全体が年齢を巻き戻したかのようにが縮んでいる。そしてLv.2の恩恵がLv,1の時のものに戻っている。さらに感覚も希薄で、自分の体を動かしている感じがしない。だが体自体は自分のものなので異物感などはない。

 

 そこまで考えた命は右手に持つ木刀に気づいた。傷だらけで、自分の得物を模して作られた思い出の品である。

 

 そうして、ふと気づく。

 

(あぁ……また(・・)ですか)

 

 過去の自分の視点を通して自分の過去を見るという、他の人が聞けば夢だろうと思われるだろうが、命にはこれが夢ではないと断言できる。

 不思議な感覚だが、人生の道に迷ったり、壁にぶつかったりするとこうして過去を振り返すことで己を見つめ直すことができるのだ。

 

 そして今回は彼と出会い、初めて剣を交わした時の記憶らしい。

 しばらくすると、()が目の前に現れた。

 

「構えろ、命」

「はい、師匠(・・)

 

 ハキハキとした返事だったが、これは自分の意思で発したものではない。

 口が勝手に動いた後に腰がスッと落とされ、水平に木刀を耳の横まで持っていく。視線は正面のままで、足はすり足。

 タケミカヅチの教えを受けていた頃の自分であれば最善で最も得意な構えだったかもしれないが、現在の命───師の教えを受けた命にとっては違う。

 切先を自分が師と呼んだ人に向けてはいるが、相対する彼はあくまでも自然体。ふらりと街でも歩きながら買い物でもしていそうで、目の前の人が剣士であることを忘れそうになる。

 脱力とはまた違う、自然体。

 常在戦場とは真逆の思想である、常在日常。

 そんな言葉はないけれど、命にはそうとしか表現できない、自然な剣であった。

 

 だから彼の剣には構えがなく、型もない。

 あるのは理のみで、それが理解できればどんな状況でも対応できるようになるらしいが、今の自分はまだ未熟で一端までしか覗けていない。

 だからこの夢のような時間では成長した自分として動けないことが、命にとって最も歯痒いことである。

 

 そのまま二人は衝突…………とはいかず、命がそのまま一直線に突きをなかなかの速さで繰り出したのだが、横に一歩ずれた彼がクルリと翻しただけで躱される。

 突きの体制のまま前に体重が乗ってしまった命はその場に留まらず、そのまま転がるように前へ進む。

 遅れて聞こえた空を斬り裂く音。

 彼の剣は音すら置き去りにするのだ。主神との試合を見ていなければそこで終わっていただろう、音速を超える太刀筋が後ろ髪を掠めた。

 

「クッ……!まだ!」

 

 枯れた木々の葉を踏み締め、反転した体の勢いに任せて反撃に出る。

 しかし円弧を描いた切っ先はその斬撃に合わせて木刀の側面を滑り、物の見事に流される。

 

「太刀筋はなかなかだが間合いを考えず闇雲に振るうな」

 

 そんな素っ気ない口調でダメだしを吐く師に、命の勝手に動く悔しそうな表情とは裏腹に内心では懐かしい気分に浸っていた。

 

 師と別れてからは課された課題や鍛錬を続けてきたものの、それから一度も会うことは出来ず、もしかしたらオラリオであれば……という気持ちもなかったといえば嘘になる。この非現実的な夢においても会えるのは数分間のみ。

 弟子としてはもっと教えを請いたかった気持ちはあったが、師にも目的があったが故に、その別れにも理解はあった。

 ただやはり会いたいのだ。

 

 この夢の時間が自分の記憶と願望から生み出された虚像だとしても、師の言葉一つで笑みが溢れそうになる。

 

 だが、そんな幸せな時間もそう長くは続かないこともわかっていた。

 

 後ろで束ねた煌めく銀髪が翻る度にふわりと舞い、彼が持つ紫紺の瞳に射抜かれた時だった。

 

 記憶の通りであれば、この一瞬こそが彼がその剣の中で業と言えるものを見せてくれた数少ない機会だったはず。

 

(来る………………!!!!)

 

 気持ちを一瞬で切り替えた命は、瞬き一つが惜しいと目前に集中し、されど体は勝手に動くためにただただ集中する。

 

 一片たりとも見逃すな。

 体が動かせずとも、意識だけは追いつかせろ──!!

 

 その一心で追っていた命の願いが聞き届けられたのか、突如景色が止まり、さらに世界は緩やかに動き始める。

 そうして視界に収めてあった師の動きを認識することができ……気づけば目の前には青く広い空が見えていた。

 

(なるほど…………!!そういうことだったのですか!!)

 

 ただ、命は投げ飛ばされたこともそのおかげで痛む体もそっちのけでかなり興奮し、歓喜で包まれていた。

 また一歩、師に近づくことができ、強くなることができる。

 そして彼の隣に立ち、一緒に戦いたい。

 だから、そうやって張り切っていた命はそれに気づくことは出来なかった。

 

 紫根の瞳から一瞬注がれる優しげな眼差しに。

 その視線がその命を挟む位置の竹に立て掛けられた、真紅の装飾を施された銀の美しい剣へと向けられたことに。

 

「準備は整った。あとは機が熟すのを待て」

(え……?)

 

 その聞き覚えのない言葉に耳を疑った命は師の表情を伺うために起き上がろうと必死にもがく。

 だがやはり体は自由に動かせない。

 ならばさっきのは幻聴か?

 

 命の胸中では疑問が渦巻き続ける中、彼はこう、呟いた。

 

「鍵は妖精にある」

(それは……どういう意味なのですか。師匠)

 

 問い掛けようにも、自分の意思では動かせない体が言葉を発せる筈もなく……───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───突如、神々しくも眩い閃光に命の視界を埋め尽くされる。

 そして体が動かない命はその光を直に脳髄へと差し込まれ、次第に意識を薄れさせていく。その最中、それに宿る誰かの願いを理解出来た気がした。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 時は流れ、場所は18階層(セーフティ・ポイント)の森の中にある小さな水源から溢れた湖。

 休息にその場所を選んだ理由はいろいろあったが、最大の要因はヤマト・命の探索を完了したシュヴェルトがその場で彼女の体を清めるためである。

 

 今現在自分ができること、やるべきことを頭の中で纏め終えたシュヴェルトが最初にやるべきことだと判断したのがそれであった。

 

 何と言っても、率直に言って命の体が血やら砂やらで汚れていて衛生面はあまり宜しいと言える状態ではなく、早急に解決して尚且つ他の問題、食料の確保などをシュヴェルトは解決したかった。

 水源であれば木ノ実などをある程度集めることができ、暖かい火を確保するために折れた木々も集めることができるだろう。

 そんなシュヴェルトの判断の下、森の中を歩いていた彼はすぐに水源を見つけることができ、その場にコートを敷いてからその上に命を優しく下ろす。

 

 そしてそこからの行動は迅速かつ的確に進められた。

 

 まず最初に手近の木を抜刀した刀で細切れにし、適当に組んだそれを魔剣の炎で点火する。

 まさに魔剣の無駄遣いではあるが、何度でも使える彼の魔剣である場合はその限りではなく、惜しみなく使ってみせた。

 

 次に彼女の着ている服をパパっと脱がし、ささっと濡らした手拭いで丁寧に彼女の肢体を拭いていく。

 晒しはもちろん外している。

 

 その間、シュヴェルトの脳内は剣のことで埋め尽くされていた。

 否、埋め尽くしていた。と言うより、煩悩やら誘惑やら色々と斬り裂いていた。

 

 怪我人に欲情する異常な性癖はないものの、シュヴェルトも一応は男なのだ。

 主神や団長の誘惑を躱していたとしても、生物学的にシュヴェルトは雄なのだ。

 

 幾ら怪我をしていて痛ましい姿であっても、目の前の少女の肢体はそれなりに美しく、華やかさがある。

 シュヴェルトも剣に一途な鋼の精神とこんな状況でなければ、命のことを口説いていたかもしれない。

 元々シュヴェルトの性質は女好きでフェミニストなのだ。

 

 だが、側から見ればこの状況は非常に宜しくない。

 何が宜しくないかというと、鬼気迫る表情で少女の体を拭き拭きとしている上半身裸の男の絵図らは色々と誤解されてしまう。

 なぜシュヴェルトが上半身の肌を晒しているかというと、それはただただ命の血で汚れた服のまま彼女の体を拭いても意味がないと判断してのことなのだが…………今、この場この時間帯でその判断はかなり悪手であった。

 

 ガサリ、と木々の葉を搔きわける音がその場を満たす。

 本来ならその場に近づいて来ている気配に気づくはずのシュヴェルトは、目の前の彼女に集中力を注ぎ込んでいるために音が聞こえるまで気付かなかった。

 それがシュヴェルトにとって今日最大の不幸だっただろう。

 

 振り向いたシュヴェルトの視線の先には二人の女性冒険者───【怒蛇(ヨルムンガンド)】ことティオネ・ヒリュテと【千の妖精(サウザンド・エルフ)】ことレフィーヤ・ウィリディス。

 どちらもオラリオ最強ファミリアの一角を担う【ロキ・ファミリア】の団員であり、片や第一級と一方は第二級の冒険者。

 アマゾネスとエルフという種族的な違いはあるものの、その視線に含まれている感情は警戒、そして侮蔑。

 

 思い出して欲しい。

 この状況は側から見れば宜しくないのだ。

 亜人の中では性に奔放と言われているアマゾネスだが、この人物とその妹に限っては違う。

 隣のエルフの瞳も絶対零度を孕み、今にも同族の魔法が飛んで来そうである。

 

 ほら。今もこうして魔力の高まりが……──

 

「──って、待って欲しい!!誤解だ!私はシュヴェルト・エル・ジークハイル !【ヘファイストス・ファミリア】所属の冒険者だ!彼女は冒険者依頼(クエスト)の捜索対象でこの状況は治療行為だ!だからひとまずその魔力を収めてくれ……!!」

 

 シュヴェルトもこの状況には焦り、必死の状況説明を敢行してみせる。

 

 この場には怪我人の命もいるのだ。こんな場で魔法を放たれたら自分自身は問題ないとしても、あたりを燃やされたりなどすれば一溜まりもない。

 命を守ることを優先するシュヴェルトは数少ない物資を失うことになるだろう。

 

 両の腕を上に上げ、武器の類を持っていないことを証明しつつも言葉を続ける。

 

「君達は『怒蛇(ヨルムンガンド)』と『千の妖精(サウザンド・エルフ)』だろう?状況から察するに遠征の帰還途中と見た。こちらは彼女の腕の傷を塞ぐのにポーションの類を切らしてしまっている。

 おとなしく付いて行くし、報酬も払うことを約束するから彼女の治療をお願いできないだろうか。

 ほら、男より女性に治療してもらった方が後腐れもないし」

 

 口速に全て言いたいことを言い切ったシュヴェルトの様子と命の状態に築いてくれたのか、ひとまずレフィーヤは魔力を抑え、隣にいるティオネと意見の交換をすることにした。

 

「ティオネさん、どうしますか?シュヴェルト・エル・ジークハイルって『剣霊(エル・スパーダ)』のことですよね。私は今まで一度も会ったことがないので信用できませんが彼女の怪我は本当みたいですし、心情的には治療してあげたいのですが……」

「まぁ私もそうなんだけど、そもそもあいつがあの『剣霊(エル・スパーダ)』だって言う証拠がないじゃない。もし偽物だったらどうするのよ。椿に確認してもらうにしても、引き返してまた戻ってくるのはかなり面倒よ?」

「そうですね……」

 

 何を思ったのか、レフィーヤはこそこそと内緒話をしていた体勢からチラリと視線だけを動かし、シュヴェルトの傍にある一つの剣を見つめる。

 

「……もしですけど、本当にあの人が『剣霊(エル・スパーダ)』であれば、あの剣は『聖剣』なんじゃないでしょうか」

「なるほど。『聖剣』は信頼できて悪用しない人にしか渡されないって団長も言っていたし、それがわかれば少なくとも悪人でないことは証明されるわね」

「はい。それに本当に『剣霊(エル・スパーダ)』であるのなら報酬も期待できますし、団長も喜んでくれるかもしれませんよ」

「そうね!なら早速確認するわよ!」

 

 扱いやすい性格ではある。

 そんなことを思うレフィーヤは確認のために剣を見せてもらい、証明して欲しいと説明するティオネに目を向けた。

 

「ってことで、その剣を見せて頂戴。あんたのその剣が『聖剣』だったら私達は団長の所に連れて行って口添えもしてあげるから。それでいいわよね?」

「あぁーー……『聖剣』じゃなくて私が『剣霊(エル・スパーダ)』であることを証明するのではダメなのかい?」

「何よ。まさか此の期に及んでそれが『聖剣』じゃないです、なんて言わないでしょうね。そうだったら私達は認められないわよ」

「…………まぁ、そのまさかなんだよね」

「…………はぁ?」

 

 まさかの、まさかであった。

 ならその剣はなんなのか。

 

 レフィーヤの、【剣霊(エル・スパーダ)】は『聖剣』を作れるから剣の精霊と呼ばれている、と言う知識は間違ってはいない。

 それはオラリオの共通認識でもあるのだから。

 だが、それはつい先日までのことである。おそらく、地上ではもう情報が行き渡っているだろう。

 

「君達が思い浮かべる『聖剣』ってどんなものか、聞いてもいいかな」

「それは……勿論、神秘を宿す剣じゃないの?」

「まぁそれも合っている。だけど、それはあまりにも普通過ぎるとは思わないかい?『聖剣』の名に負けているとは思わないかい? 

 なにせ神秘もいろいろある。寧ろこの世の全てが神秘で満ち溢れているし、今も君の体には神秘が宿っているよ。

 ……だから私はね。創ったんだ」

「……何を作ったって言うのよ」

 

 ゴクリ、と思わず唾を飲みこみ喉を鳴らす程の迫力が、目の前の男にはあった。

 少なくともレフィーヤはその威圧感に若干尻込みし、ティオネは負けじと圧力を掛ける。

 

 が、その威圧感は突如霧散した。

 

「……すまない。少々気が立ってしまったようだ。頼み事をする相手に取る態度ではなかったね。素直に謝るよ」

 

 その態度に、先程までの威圧感はなんだったのかと言わんばかりに拍子抜けしてしまったティオネは最早どうでも良くなってしまっていた。

 

「あっそ、どうでもいいけど。まぁその子の治療はしてあげるから、大人しく着いて来なさい」

「そうか。助かるよ」

「勘違いしないでよね。あんたじゃなく、その子のために仕方なくだから。団長のところまでは連れて言ってあげるけど、口添えはしないわよ」

「そうかい。なら、君の言う通り大人しく着いて行くことにしよう」

「ど、どうしたんですか?ティオネさんらしくもないですよ?あの団長大好きなティオネさんがツンデレさんになるわけがありません!!

 ……ハッ!!さてはが何かされたのですか!?」

 

 そう、とんとん話が進んで行く中、レフィーヤは急に意見を曲げたティオネの急変ぶりに戸惑い、かなり失言を溢してしまってはいるが、そう言ってしまうのも無理はなかった。

 むしろ団長大好きな彼女であれば「団長にテメェみたいな正体不明の奴を会わせるわけねぇだろ!!」くらいは言いそうである。断じてこんなツンデレ染みた言動をするような人ではないはずだ。

 

「ちょっとレフィーヤ。後でゆっくり話す必要があるようね」

 

 遠回しな死刑勧告にレフィーヤは頬を引き攣りそうになる。

 だが、やはり聞き出さなければならない。

 まるで臨戦態勢のように気を張り巡らせている彼女にあまり近づきたいとは思わないが、ファミリアのため、強いてはアイズさんのため!!と、気持ちを奮い立たせたレフィーヤは前を歩くティオネを追い、話しかける。

 

「待ってくださいティオネさん!本当にどうしたんですか。さっきのは冗談だとしても、やっぱりいつものティオネさんじゃありませんよ」

「……」

 

 言葉は返ってはこず、寧ろ無視するかのように足をさらに早く進めるティオネ。

 その様子を見て流石におかしいと感じたレフィーヤは彼女を追い越して顔を覗き込み……───

 

 

 

 

 

 ───そこにはティオネ・ヒリュテ(アマゾネス)獰猛な笑み(闘争本能)が剥き出しになっていた。

 

「……悪いわね、こんな顔見せたくなかったから、無視したみたいになっちゃったけど……大丈夫。これはいつも通りの私よ。寧ろ、アマゾネスの本性が出ている分、多少は地が出ているかもしれないわね」

「で、でも……どうして?」

「どうして?……まぁ魔法使いなら仕方ないかもしれないけど、あの剣気を感じ取れなかった?Lv.5の私が武者震いする程のものだったのよ」

 

 そう言った彼女は唾を飲み込み、カラカラになった喉を震わせる。

 長らく感じなかった強者に対しての歓喜はなかなかに心地よく、思わず剣を握りそうになる。

 

(早くどうにかして慰めないと)

 

 自分の体が昂ぶっていることを自覚しているティオネは、それを最も早く収めることができる方法を思い付いた。

 そしてあの人なら自分の様子に気づき、気を遣ってくれるだろう。

 そのような打算的な意図もあったが兎も角は行動に移そうと、後は後輩の妖精(エルフ)に任せようと視線を向ける。

 

「……あれはアイズ以上の剣士よ。アイズに聞いていた特徴と一致してるし、大丈夫でしょ。それに早くあいつから離れて団長の所に行かないと、抑えられなくなるから」

「え、ちょ、ティオネさん!?」

「てことで、私は団長にこのことを言いに行くわ。案内は任せたから」

 

 そう一方的に告げたティオネは早々に立ち去ってしまった。そして、二人の間に沈黙が流れる。

 少しおかしくなってしまった場の空気に申し訳ない気持ちになりながら、なんとかするためにもシュヴェルトは隣の彼女に話しかけた。

 

「……とりあえず、レフィーヤ・ウィリディスだったよね?」

「……はい」

「改めて、シュヴェルト・エル・ジークハイルだ。……けど、すまない。彼女のあれは、どうやら私が原因なようだ」

「…………いえ。いいんです」

 

 シュヴェルトの申し訳なさそうな謝罪を受け、責める気にもなれなかったレフィーヤは思わず溜息を吐いてしまうのだった。

 

 

 

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