問題児と最強のデビルハンターが異世界からやってくるそうですよ? 作:Neverleave
今年もよろしくお願いします!
……あと更新が約半年も空いてしまって申し訳ありませんでした(白目)
*今回は若干のキャラ崩壊がございます。予めご了承くださいませ。
西方の彼方に沈んでいく太陽が、街と空を赤く染める。
何やら付近でたむろする人々が騒めいている中、赤いコートを羽織った銀髪の男が〝サウザンドアイズ〟支店前に姿を現した。
店の前で清掃に勤しむ割烹着の女性を見つけると、その男は歩み寄って声をかける。
「Hey、また会ったな。ちょっと用があるんで入っていいかい?」
「本日の営業は終了しました。また明日にでもお越しください」
「そんなつれねぇこと言わないでくれって。ちょいと店主に用があるだけだ、いいだろ?」
「ダメです。入店は許可しません」
「頼むよ、こちとらちょいとマジな話し合いするために来たんだからよ」
「嫌です。絶対にお店にはいれません」
「照れ隠しもほどほどにしといてくれてもいいんじゃねえか? ま、嫌いじゃないけどよ」
「妄言もほどほどにしておいてくださってもいいのでは? 私は大嫌いなので」
男言及を、女性はピシャリと撥ねつける。
全く相手にされずつっけんどんに扱われてしまっているダンテなのだが、ヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべては再度話しかけている。一見すれば、まるで女性を口説いているかのようにも見える奇妙な光景だ。
明らかに無碍にされているというのに、男ことダンテはしつこく女性を説得――と言えるほど真面目な内容では全くないのだが、とにかく本人はそのつもりで――しようと試み、それを何度も何度も突っ返すことが繰り返される。
女性からすれば困ったものだ。最初から冷遇されていたというのに、ダンテは全く折れる様子がない。旗なしの〝ノーネーム〟と取引などしたくもないし相手もしたくないというのに、ここまで突っかかられると仕事がしづらくてかなわない。
「白夜叉にちょいと用事があるだけだ。そんなに時間も……かかんねぇはずだし、良いだろ別に?」
「なんで間が空いたんですか。しかも『はず』ってなんですか。店主は忙しいのでいちいちあなたの相手をしている暇もありません」
「前に来た時はすげぇ遊び回ってたイメージあるけどな」
「それは幻覚です。あなた達が出会ったオーナーは幻だったのです」
「自分で言ってて無茶あると思わねぇかその言い訳?」
苛立ちを隠すことなく大きくため息を吐くと、女性はダンテと向き合って口を開く。
「いい加減にしてくれませんか? 私はあなたの相手をしているほど暇でもないんです、あなたが何をしようとここを通すわけにはいきません。どうぞお帰りください」
「これこれ。そう無碍にすることもあるまい」
商売っ気を微塵も感じさせぬ物言いでダンテを立ち去らせようとしていたその時、店の方から幼い少女の声が聞こえてきた。それを耳にした店員は呆れるように嘆息し、一方でダンテは待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべる。
声が聞こえてきた方向へ振り向いてみれば、そこにいたのはダンテと店員の口論の種であったオーナーこと、白夜叉であった。
「やっと会えたなオーナー。ちょっと話したいことがあるんだが、店員から聞いてみりゃ忙しいから無理だって言われたんだ。また別の日がいいかね?」
「いんや、むしろ都合がよかったよ。わしもおんしと話がしたいとちょうど思っとったのだ。まぁここで立ち話をするのもなんだ、上がれ」
店員をからかうような調子でダンテが問いかけると、白夜叉は快諾して店内へと招く。が、店員はその判断に異議を唱えるように口を挟んできた。
「お言葉ですがオーナー。それは店の売り上げに……」
「はぁ~、おんしは本っっっっっっっ当に頭が固いのう。その物差しばかりで承諾と拒否を繰り返すばかりじゃ、お互いイライラするばかりだ。何よりつまらんぞ」
「つまるつまらないの話じゃありません。店が儲かるか、廃れるかの話です」
「半分間違いじゃな。儲かる廃れるでもない、面白いか面白くないか、そんな話じゃ」
丁寧だがかなり尖った口調で訴えてみるものの、白夜叉はダンテと同じく飄々とした態度でまるで耳を貸さない。不服そうに眉をひそめる店員だったが、これ以上上司の判断に口出しするわけにもいかない。渋々、といった様子で引き下がった。
それを見たダンテは嬉々として彼女のそばを横切り、白夜叉に続いて店の中へと入っていった。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」
二人がいなくなると、残された店員は苛立ちをぶつけるように地団駄を踏む。
召喚され、〝ノーネーム〟に所属するにも関わらず我が物顔で自分たちの店へと入ってく『
得体の知れぬ連中を相手に退去を命じることはおろか、嬉々として店へと案内し、当然とも言えるこちらの対応に苦言を漏らしていった『上司《しろやしゃ》』。
苛立ちと苦悩を抱えた女性店員は、一人空を仰いで、これからの店の未来を憂うのだった。
「すまんのう、あやつはどーも『規則は規則!』というようなヤツでな。客には寛大でも、時には退くべきということを知らん」
「そりゃ話が通らねぇわけだ。規則なんてのは破るから面白いんだろうに」
「気が合うな。わしも気に食わんルールがあるならそいつをぶち壊してもいいと思ってるところだ。ギフトゲーム以外でなら、だがな」
「同感だね。ゲームはルールがあるから面白い。抜け穴通って目をひん剥いたヤツの顔見るのってたまんねぇよな」
「クククッ、お互い変なところで捻くれたもんじゃな」
かたや、異世界から召喚された最強最悪の問題児にして、伝説の魔剣士の息子。
かたや、身内すら手を焼く問題児にして、この世界の一部を支配する強者。
退屈を嫌い娯楽を求める両者は、道中で楽しげに会話の花を咲かせて先へと進んでいった。
やがて二人は、以前十六夜達が招かれたところと同じ、白夜叉の私室へ入ると、対面するような形で部屋の中央へと座り込む。
「さて、いったい今日はどういった要件でここへと参られたのかな? ダンテ」
悪戯を企む子供のようにニヤリと笑い、第一声を白夜叉が放つ。それを聞いたダンテは同じように笑みを浮かべて、問いかけに応えた。
「当ててみろよ。ただ受け答えするだけじゃつまんねぇだろ?」
「おお、そうじゃな。口を動かして耳で聞くだけなんぞ退屈でしょうがない。ここは一丁、錆のついた頭でも久々に使ってみるとするかのう」
まるで芝居の演技でもしているかのような口ぶりと手振りで、ダンテと白夜叉は会話を展開させていく。わざとらしく白夜叉は首を捻って手を口元に運ぶと、独白するように推理を始めた。
「まず、おんしの置かれた状況。おんしは〝ノーネーム〟の一員として、〝フォレス・ガロ〟とのギフトゲームに参加し、熾烈な戦いを繰り広げておった。天を貫かんばかりにあがった火柱と、ここからも感じられた巨大な魔力からしてそれはハッキリわかる――そこに魔の眷属が関与しておったこともな」
「へぇ? そりゃまた大層なこったな。俺みてぇな鼻でも持ってんのか?」
「こっちは数千年前から嫌というほど魔の眷属を相手にしておるのだ。気配や魔力の質からして、あやつらが出たことくらいわかるわい……少し話が逸れたな。そこで、おんしは強敵とぶつかったわけじゃ。あんな規模の破壊、そしておんしの傷だらけになった衣服……あの時のようにわざと斬られたわけでもあるまい、さぞかし強かったのだろう?」
「さてね。それよか俺は、あんたの推理の続きとやらが聞きてぇな」
「これは失敬。さて、そこでおんしは疑問に感じたはず――『なぜこんなヤツが自分たちの前に現れたのか?』とな」
チラ、と白夜叉はダンテへと視線を移す。目と目を合わせたダンテは大した反応を見せることなく、ただ不敵な笑みを浮かべるだけだ。
そのことを特段気にすることもなく、白夜叉は含み笑いをする。随分と回りくどいやり方で、黒ウサギや飛鳥がその場に居ればぶった切っているような流れだが、二人は愉快気にそれを続けていく。
「あ奴らが力を取り戻し、再度攻め込んできたとは考えにくい。数千年前の死闘を経験したわしらは奴らを危惧して、二度と奴らがこちらへ来れぬよう次元を切り離した上で〝
「へぇ。俺が他にも目的あってここに来たってか? そりゃいったいなんだ?」
白夜叉が一息入れたところで、ヘラヘラと笑いながらダンテは訊ねかけた。
「さてそれじゃな。なんとか敵を退けることが出来たおんしは、敵の出現元の他にも気になることがあるはずじゃ……それはずばり、『この巡り合わせは偶然なのか?』」
「……hum」
白夜叉がそう言い切ると、ダンテの表情がほんの少しだけ変化する。白夜叉の推理が的中した故か、そうでないかはわからないが……それを見た白夜叉は、してやったりという顔で言葉を続ける。
「先日ここに呼ばれたばかりのおんしが、最初にすることとなったギフトゲーム。そこに魔の眷属の介入……今までこのような大事もなかったはずというのに、まるで示し合わせたように起きた今回の事件。おんしは感じたはずだ、〝自分のことを知り、そして故意にぶつかってきた者〟の存在をな。ギフトゲームも、修羅神仏も、この世界のことすら知らなかったおんしに、知り合いがここにおる可能性など皆無。おるとすれば、『同じ世界』から招かれた者ぐらいしか考えられない。それがおるかどうか……おんしはそれが知りたいのだろう?」
どうだ? と訊ねかけるように言い放つ白夜叉に、ダンテは参ったというように大手をあげて……しかし相変わらず頬が緩みきったその顔で、返答する。
「さすが神様のお仲間ってとこだな。なんでもお見通しってか?」
「これくらいの推理なんぞ誰にでも出来るわい。さて、その言葉は肯定と受け取ってもいいのだな」
「Jack Pot!! って叫びたいくらいさ。そんで、そのことについてなんか報せはあったりするのか?」
「……………………………………………………」
ダンテが問いかけると、途端に白夜叉は口を閉ざした。唐突な沈黙に首を傾げるダンテだったが、よく考えてみればそんな重大な情報を一個人……しかも〝ノーネーム〟の人間に無償で手渡すなど、期待する方がおかしいということに気付く。
「っとと、わりぃわりぃ。さすがにタダで教えてくれるわけじゃあないか。手元には何もねぇが……いや、一個あったな。メチャクチャ口うるせぇが使える魔双剣が一組。炎と風の力を持ってるし、そこいらにあるギフトなんざよりよっぽど強ぇぜ。どうだ?」
「………………」
「足りねぇか? 何なら依頼でも受けりゃあ情報を対価にやってやるぜ? パシリから魔物退治まで、なんでもござれってな。これでも何でも屋やってんだ、どうだ?」
「………………なぜだ?」
と、そのとき。突然、ダンテは白夜叉に問いかけられた。
その言葉の意味がわからず、再びダンテは小首を傾げる。すると白夜叉はその顔から笑みが消え、まっすぐに彼を見つめる。
「お前はなぜ、そんなものを知りたがる? 知ったところで、お前に任せる必要もなくこの件は終わるかもしれないのに。お前が関与する必要など、ないかもしれないのに」
その顔は、声は、目は、ダンテが今まで見たどの白夜叉のものとも違った。
快楽主義で、面白いものを常に探し求める無邪気な子供のようなものとも。先ほど見せた知的な一面とも違う。
ただ単純な理由ではない。それはまるで、彼の心に問おうとしているかのような言葉の響きがあった。
「……やられたらやり返すなどという、幼稚な理屈か? なったばかりでも、仲間を傷つけられたから、目にものをみせてやろうという憤怒の情からか? それとも……」
そこで、不意に白夜叉は口をまた閉ざした。それはさっきの沈黙とは違い、その表情には『言ってもいいのか』『どう言えばいいのか』と戸惑う色が見える。
やがて決意したのか、彼女は重い口を開いてダンテに言葉を投げかけた。
「……父親の意思と伝説を継ごうなどという、馬鹿げた理由か?」
その言葉が届いたとき。ダンテの表情が、消えた。
香の香りに包まれたその部屋は静寂に包まれ、ただ風だけが二人の頬を撫でて通り過ぎていく。そこにいる両者は、普段から想像も出来ぬような目つきで向かい合い、互いを見つめ合っていた。
世界から二人を除く全てが消え去ってしまったかのような錯覚すら覚える時間。やがてダンテは目を伏せ、ふっと笑った。
「やっぱり、あんたは気づいてたか」
「……その魔力と、おんしの剣でわかるわ。それはリベリオン……あいつが愛用しておった、三本のうちの一つだろう? それに……人間と交わろうなどと考える阿呆など、あいつ以外に知らぬ。あいつほど人間を愛し……人間の心と、可能性を信じた馬鹿もな」
「ハハッ。悪魔以外じゃ初めてだぜ、親父の悪口叩くヤツなんかよ。やっぱあんたは面白れぇな」
愉快気に、軽快に高笑いして見せるダンテだが、それとは対照的に白夜叉は笑わなかった。
「……あいつは……スパーダは、生きているのか?」
「俺にもわからねぇ。突然俺たち家族を置いて……俺にリベリオン残してどっか行っちまった」
「……そうか……」
白夜叉は落胆したように呟いて顔を伏せるが……同時にどこか納得したように、口角を吊り上げた。
「あいつらしい。来る時は唐突に。そして去る時も何も言わずにどこかへと行ってしまう。置いていかれた者のことが何を思うかなど知らずに……勝手なヤツだ……本当に……」
一人で独り言をこぼしながら、白夜叉は何度も頷くことを繰り返す。
それを終えると、再び彼女はダンテに向き直って、語り掛けた。
「ダンテ……近くに寄れ」
「あん?」
またいきなり何を言いだすのかと不審に思うダンテだったが、白夜叉の目は至って真面目なものだった。
その瞳には悲しみを宿し、声音は切なさで揺れる響きがあった。
「……顔を、見せてくれ……」
再び懇願されるダンテ。今度は彼は何も言わず、白夜叉の傍へと歩み寄る。
屈みこんで白夜叉と顔を合わせると、彼女は手を伸ばしてダンテの髪に触れた。夜空の星のように輝くその銀髪は、幼いその手で全て後ろの方へともっていかれる。
「あいつはいつも、こんな髪型だったよ。戦った後に髪が乱れたりすると、すぐ片手で撫でて、全部元に戻しおる。何かこだわりでもあるのかと問うたら、『戦う時邪魔にならん』とか抜かしおったわ……」
オールバックになったダンテを見ると、白夜叉は懐かしむようにフフッと笑った。ダンテは何も言わなかった。ただ黙ったまま、彼女がしたいようにさせていた。
今の彼女は、〝サウザンドアイズ〟の幹部などではない。この世界の東側にて並ぶ者がいない絶対的な強者でもない。
ただ一人の男を思う女性、白夜叉。そして今は……数千年の時を経た、再会の時なのだ。
「私を差し置いて子など作りおって……あの大馬鹿者め……鈍感め……阿呆め……」
悪態をつきながら、白夜叉は目から一筋の涙を流した。流れたのはたった一粒。しかしその一粒に、いったいどれほどの想いが込められているのだろうか。
恋した男は、別れの言葉を告げる間も、自分が思いを告げる間も与えずに去っていき。
恋した男の息子と、何の前触れもなく回合を果たし。
例えその時に直感していたとしても、やはり会えないのだと知り。
驚愕と、衝撃と、悲しみ……それらが去来した胸中で、彼女はいったいどれほどの苦しみを堪えているのか。
それだけを口にすると、白夜叉は何も言わずにダンテの顔を見つめ続けていた。
「……すまんかったな、唐突に」
「……いんや。別にいいさ」
涙のあとを拭うと、白夜叉は謝罪の言葉を告げる。それに対してダンテは気にしていないと言わんばかりに手を振って応えた。
「――さて、ダンテ。また回答を聞かせてもらおう。おんしはいったい何のために戦う? おんしはこの戦いに、何を求める? おんしがその剣とその身を血に染め上げること……もしかすれば命を落とすことになるやもしれぬ。その代償を払って、何を得ようというのだ?」
道理を問う彼女の目には、先ほどのような軽薄さと浅短さは感じられず、冗談まじりや上っ面だけなんかでダンテに理由を聞いているのではないのだとわかる。その瞳は魔剣士の息子を真っ直ぐに見つめ、彼の心の在り方を問うていた。
無論彼は、いつもの調子で冗談などを返すわけにはいかない。もちろん、はぐらかすことすら許されない。
彼は、答えなければならない。彼の生き様を。
彼の信じる正義を。
「……誇りだ」
己の心を問う修羅神仏から目を逸らすことなく。その瞳を揺らすことなく、ダンテはそう言い切った。
だが、そんな曖昧な返答で白夜叉が満足などするわけもない。そんなことはダンテだってわかっている。
「それはスパーダの息子であるという誇りか? コミュニティ〝ノーネーム〟の誇りか? それともこの世界の一員としての誇りか?」
続けざまに白夜叉はダンテに疑問を投げかけ、その答えを追及する。口から放つその言葉には威圧感があり、もはや脅迫に近い声音が混じっている。
だがその問いに、ダンテは動じることなく、間を置くことなく応えた。
「人間としての誇りだ」
その声に、迷いはない。そこに、怯えの響きはない。
青い瞳は信念に輝いている。それは父親の信じた正義だから自分も信じる、などという愚直な思考からくるものではない。己の目で見てきた全て、己の耳で聞いてきた全て、己の手で触れた全てを通して、自らが見出したものだった。
それは誰から何を言われようと、何をされようと、簡単に揺らぐものではない。
例え悪魔から罵られようとも。修羅神仏からその価値を問われようとも。自身よりも強い力でねじ伏せられようとも。
彼の正義は。彼の魂は屈服などしない。
「………………親子で揃いも揃って、阿呆ばかりじゃのう。いやはや、やはり血は争えんな。あいつは手に負えん大馬鹿の阿呆じゃったが、おんしも負けず劣らずじゃ」
「おいおい。こっちが真剣になって答えたってのに、返事は罵倒ってそりゃねーだろ。つーか今更だが、あんた俺の親父のこと散々コケにし過ぎじゃねぇか?」
ダンテは前々から気になっていたのだが……会ってからスパーダに何度も悪態をつく白夜叉の態度がどうにも気にかかった。
彼女のキャラは、一言で表現すれば『自由』。これに限る。
本当に商業ギルドの幹部なのかと問いたくなるほど仕事をしているような様子もなく、黒ウサギには同性であることをいいことにセクハラレベルのボディタッチと変態発言。直前で止まったが、十六夜達からギフトゲームの挑戦を受けた時には嬉々として受けようとしていた素振りも見えることから、自分や十六夜と同じくらい快楽主義であることは間違いない。
だがスパーダの話となると、どうもそれが違った。スパーダの実力などを認める発言こそあるものの、彼女がスパーダについて言及するときは悪態がついてくるものばかり。恋愛対象として思っていたのに突然消えたなどの行動を鑑みればそうなるかもしれないが、それにしたって辛辣な言葉がかなり目立つ。
興味半分、面白半分、というような感じで軽く問いかけてみたダンテだったが……
彼は身を以て思い知ることとなる。この時発したこの一言が、踏んではならない地雷だったということを。
「あ゛あ゛? なんじゃ。違うとでも言うつもりか小童?」
瞬間。青筋を浮かばせ殺意と憎悪が滲んだ鬼の表情へと、白夜叉の顔が豹変した。声はドスの効いた低く鋭いものに変わり、その全身からはどす黒い何かが噴出しているかのような錯覚を覚える。
…………ん?
「そうかそうか。幼きおんしにはあやつが聡明で剛健な父に見えておったようじゃな。よかろう。ならば教えてやる、紳士の皮を被った悪魔であるあやつの正体をな。ヤツは表面こそ寡黙で冷静の皮を張っとるが、実際のところ強いヤツが居れば敵味方問わず戦いたがる戦闘狂、加えて人間を侮蔑する輩がおれば味方であろうとも即座に私刑にかける大馬鹿野郎じゃった。修羅神仏との大喧嘩にわしが何度巻き込まれたかなんぞ両手じゃ数えることも出来んわい。しかも大概の被害者で
…………んん?
「まぁ惚れた方の負けとはよく言ったものじゃ。わしだってそれでも必死に振り向かせようとあれこれやったもんでなぁ、今思い出してみても顔から湯気が出そうなことしてヤツの気を引こうとしたわ。しかしデートに誘おうとすれば即刻拒否、理由を問うたら『時間の無駄だ』の一点張り。致し方なしと色仕掛けなどと慣れぬこともしたが、ヤツは悉く無視……全くの無視……!!」
「……いやそりゃ、あんたが服脱いで興奮すりゃただのロリコ」
「ある時あやつから『一緒に来てくれないか』と誘われた時は柄にもなく胸が躍ったもんじゃった。しかし辿りついた先にあったのは洒落た茶屋でもなんでもない、魔の眷属の巣窟に、いわくつきの武器を扱っとった店!! しかもぜーんぶ魔の眷属がらみでロマンのロの字も見当たらん!! ぶん殴ってやろうと迫ればヒョイヒョイ躱され一発も当たらん、終いには剣を突き付けられて『ふざけるのも大概にしろ』ときたものだ、そりゃこっちの台詞じゃこのボケがッ!!!」
あ、ダメだ。こいつ全く俺の声が聞こえてない。
ツッコミを入れては見たものの、そんなものなど耳に届かぬと言うように白夜叉は怒りを爆発させ、今まで誰も聞いたことがないようなレベルの怒声を張り上げて、天を睨む。
最初はスパーダの醜態とも言うべきものが聞けるということで面白がっていたダンテだったが、聞けば聞くほど謝りたくなってくる。
親父、相手がいくら幼児にしか見えなくてもあんまりだ。いったいどうしてこうなるまで放置していたんだ。
スパーダの知人に初めて出会えたかと思えば、相手は息子である自分に父親の悪行の数々を列挙する始末。自分は何にも悪くないのに、なぜか罪悪感に似た悪感情を抱いてしまう。なんだこれは、これもギフトゲームか? 受けた覚えなんて一切ないぞ。
「それだけじゃない、あやつの武勇と立ち振る舞いにわしと同じく惑わされた哀れな女子は山ほどいた!! 人間、女神、魔女、悪魔、果てには修羅神仏と種族問わずありとあらゆる女性が阿呆の周りに群がるのだ!! 彼女らもなけなしの勇気を振り絞り、ある者は矜持をかなぐり捨ててアタックしとった、中には涙を流し恥を忍んで愛を求める者もおった!! そんな勇ましき者達への魔剣士様の決まり文句はこうだ!!」
珍しく困惑させられ、自身の中で現状を整理する暇もないまま言葉のレインストームを浴びせられるダンテ。そんな彼の眼前に激昂した白夜叉の顔が肉薄し、まるでダンテを責め立てるかのように叫ぶ。
「『興味がない。他を当たれ』! その一言でどれほどの者達が憧れに輝かせた表情を曇らせ啜り泣く人を号泣させたかわからん! その娘らや同士たちがどんな心境であったかなど理解はできんよ、なんせわしは思いを告げる前に消えられたからな!? あやつと出会ってから去るまで散々な目に遭わされてきたわしは誓ったのだ、あの無表情冷酷非道下衆悪魔めが、次に会う時はこの命に代えてもぶち殺してくれる!! 情け無用、恨みも後悔もさせぬままにその生涯に幕を降ろしてくれるとなァァァァァァ!!」
襖も窓も通り抜けて、数千年に及んで積もり積もった憤怒を乗せた喚呼――いやもはや咆哮は轟く。目の前で座り込んでいたダンテは耳を押さえ、聞いた人々は皆驚愕して〝サウザンドアイズ〟へと振り返り、何事かと詰め寄る事態となるのだった。そのせいで店番の女性に更なる負担がかかることとなったのは、また別のお話。
ちなみに白夜叉がスパーダへと抱いていた不満や愚痴を吐き散らす時間は計一時間以上にものぼり、ダンテは二度と彼女の前でスパーダの名を出すまいと固く誓うのだった。
……やっぱり女運がないらしい……。
更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした!!
やはり12月から4月というのは期末やら年末やら正月やら新歓期やらがあってなかなか時間が作れません。しかもオリジナル作品なんかも書き始めちゃったものだからさらに時間がない。暇があっても一端離れてしまうと再開させるのがものすごく難しく、前回から半年もの時間が経ってしまってました……
これからも不定期の更新が続くことになると思いますが、気長にお待ちいただければと思います。どうかよろしくお願いします<m(__)m>
*
暇があればオリジナル作品『景美悲劇譚』もどうかご一読していただければ幸いです。感想なんかもらえたら泣いて喜びます。以上、どうでもいい宣伝でした。