問題児と最強のデビルハンターが異世界からやってくるそうですよ?   作:Neverleave

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DMC4SEをやるためだけにPS4を買い、遊びまくって早1年余り。

もうバージル鬼いちゃん以外操作できないよぉ……鬼いちゃん強すぎるよぉ……ふぇぇ……


Mission10 ~最強最悪の組み合わせ~

「……すまん。完全に我を忘れとった」

「おう。もう二度とやめてくれ」

 

 心の底から懇願するように呟くダンテの言葉に、苦々しく顔を歪めて舌打ちする白夜叉。彼女自身、ここまで自分が怒りを爆発させ我を忘れることとなるなど思ってもいなかったのだろう。この小一時間で聞かされたことを鑑みればそれも分からなくはないが、だからといってぶつける相手を間違えてもらっては困る。

 父親の尻拭いをするように悪魔を相手することもあったが、まさかこんな形でとばっちりを喰らうことになるとはつゆにも思わなかった。まぁ、相手も店に野次馬が殺到したことで店番の女性から説教を喰らったのだから相子だと思おう。 

やれやれというようにダンテは嘆息すると、話を元に戻す。

 

「……言い訳みたいでみっともないがな、わしはお前の父親にこれだけ振り回されとったんじゃ。おんしはスパーダではないし、おんしがこのツケをおっかぶることはないというのも理解してはおるが、なんせぶつける本人がどこにもいないときたもんじゃ。八つ当たりの一つや二つはしたくもなるわい」

「へーへー。わかったよ、俺は文句言わねぇって。ったく、親父の尻拭いは慣れたもんだと思ってたが、異世界へ来て女がらみとはな。もう真っ平ごめんだぜ」

 

 実際様々な悪魔たちと対峙し、その度にスパーダへの恨み節やら何やらを叩きつけられてきたダンテだが、痴情のもつれなんぞで不幸な目に遭うとは思ってもいなかった。奴等とやり合うより数段キツイ上に何も楽しくないときたものだ、こんなことはこれ以降一切あってほしくないものである。

 やれやれと青い吐息を吐いて頭を乱暴に掻くと、ダンテは再び白夜叉と向き直って彼女に問いかけた。

 

「――いい加減話戻すぞ。俺はあんたから魔の眷属がらみの情報をもらったり、その他の援助をする。その代わりとして、〝サウザンドアイズ〟やあんた個人に舞い込んだ仕事の一部を俺がやる、そういう条件でいいか?」

「ふむ、こちらとしても人手が増えるというのは助かる。この異変はおそらくほんの始まりにすぎん、一体何が起こるかなどわからんし、おんし程の実力者がおるならこれほど心強いものはない……が、情報や援助というのは、具体的には何じゃ?」

 

 こちらが提案した条件にこうした突っ込みを入れる辺り、さすが商業ギルドの幹部といったところか。お互いの妥協点を見つけ、衝突をするリスクを減らそうとしている。

 

「さっき言ったように、異世界から俺たちのように呼び込まれたヤツの有無、そしてこの世界で起こっている魔の眷属の事件、過去に起こった事件の詳細……何でもいい、あいつらが噛んでることならとにかく耳に入れたい。あとは……いくつかの武器と……『信頼』」

 

 ほう、と白夜叉はダンテが提示したことに相槌を打つ。

 様々な悪魔を屠ってきた魔剣『リベリオン』と、二丁拳銃『エボニー&アイボリー』を持つダンテだが、それらだけで全てをいなすことが出来たかと言われればそうではない。使えるものはとことん使い、戦う。そうしてダンテは今まで生きてきたのだ。

 さらにそれは道具だけに当てはあるわけでもなく、『味方』にも要因は少なからずあった。彼一人で全ての事件を解決できるなどという傲慢をダンテは持っていないし、むしろそうした助けがなければどうにもならないと考えている。しかもここはダンテの住む人界ではなく、修羅神仏たちが住まう〝箱庭の世界〟。彼の事を心強い味方と評する白夜叉だったが、この世界に存在する強者たちもダンテからしてみれば強力な仲間となり得る者達ばかりだ。

 

 が、彼らに助力を乞うために圧倒的に足りないものがダンテにはあった。

 それがすなわち、『信頼』である。

 いくら彼が強い力を持っているとしても、これだけは簡単に得ることは出来ない。信頼関係というものは、一から築き上げていくには凄まじい時間と労力を消費し、そして壊れる時は呆気なく壊れてしまう。いざとなればスパーダの息子であるということを明言するという手段もあるが、デメリットもいくつかあるしあまりダンテは乗り気にはなれないし、何より本当に信じてもらえるかすら怪しい……力とか強さとかではなく、主に普段の態度とか振る舞いとかの理由で、というのが悲しい理由だが。

 普通ならばこういった面での苦労が絶えないであろうが、そういった不安をすぐに払拭してもらう手段がダンテには一つだけある。それは――

 

「このわしに、おんしの後ろ盾になれと言うつもりか?」

 

 ――目の前にいる、この世界の東側で最強を誇る魔王を味方につけること。

 要は、この世界で信頼を受けているとびきり強いヤツを味方にしてしまえばいい。そいつが『こいつは信頼できる』と太鼓判を押してくれることが、必要不可欠な第一歩なのだ。

 

「ああ。あんたが俺のことを宣伝してくれるってんなら文句はねぇ。それが互いのためになると思うんだが……どうだ?」

 

 『いい提案だろ?』とでも言わんばかりに不敵な笑みを浮かべながら、ダンテは問いかける。

 ここに黒ウサギや他の箱庭の住人がいたならば、絶叫して腰を抜かすかもしれないような無謀な提案。彼は実力こそ本物であり、そしてそのことを白夜叉も熟知してくれているものの、所詮は〝ノーネーム〟の一員でしかないのだ。『名無し』どころか旗すらないコミュニティのメンバーなどという信頼も何もあったものではない存在が、白夜叉のような大物を前にして「俺を支援しろ」などと要求することは、あまりにも分不相応な物言いなのである。

 要求を受け入れてくれるどころか、即刻首をはねられてもおかしくないほどの所業……しかしこの神をも恐れぬ悪魔の所業を前にして、白夜叉は呵々と哄笑した。

 

「ククククク……後悔するなよ? お前は今日から私専属のパシリだ。私の言われたことにはとことん服従し、私から出す無理難題にも応えてもらうことになる。途中で嫌だと喚いたところで変えることはできんぞ。それでもいいな?」

「使いこなせる自信があるならやってみろよ、引きずりまわすつもりが振り回されてもしらねぇぜ? 神様」

 

 売り言葉に買い言葉、というような神と人間、いや神と悪魔のやりとり。

 上からの高圧的な物言いに対し、不遜な態度でほくそ笑みながら返答するその様は、彼女が知る悪魔よりもよっぽど悪魔らしく、しかし人間らしい態度だった。

 

「ク、クク……アッハッハッハッハッハ、ハァッハッハッハッハッハッハ!!」

 

 もはや我慢が出来ない、というばかりに白夜叉は声高に笑う。

抱腹絶倒、とはまさにこのことであり、そのまま前のめりに倒れ込んでしまうのではないかと思うほど腹を抱えて笑った。

 

「気に入った! 神を前にしたその傲慢なまでの謳い文句、貴様はまさしくあの馬鹿剣士の息子じゃ!! よかろう、馬車馬の如く働く限り、貴様があ奴らを狩る限り、人間としての誇りをその胸に抱き続ける限り、貴様は我が恩恵を受けることを約束しよう!!」

「あ、言い忘れてたけど俺勤務希望は週休七日制なんでよろしく頼む神様」

「舐めくさっとんのかこのボケェ!! ハッ倒すぞ貴様!!」

 

神を相手になめているにもほどがある態度を取るダンテに、いよいよ白夜叉はぶちキレた。お互いがある意味因縁深い相手であることを知り、二人は以前とは違う意味で容赦がなくなりつつあった。

 

「じゃ、さっそくなんだが欲しいもんがいくつかあんだけど」

「神の眼前で堂々とニート宣言した挙句カツアゲしようとするとはなかなか根性座っとるな貴様」

「そう固いこと言うなって。仕事で返してやるからよ」

「……ったく、ふざけたことを抜かすのも親父そっくりじゃの。それで? いったい何が欲しいんじゃ? 聞くだけ聞いてやる」

 

 苦々しく顔を顰めながらも、肯定の返事をする白夜叉。「さっすが神様、懐深いねぇ!!」と調子のいいことを言うダンテは、続けざまに自身の要求を口にする。

 

「―――――――――――――――――――――。――――――――――――――――――――。―――――――――――――――――――――。てな感じなんだが。そういうの、用意できるか?」

「…………ふむ?」

 

 彼の希望を聞いた白夜叉は、首を傾げた。

 

「……そりゃまあうちの店にも、あるにはあるぞ。だが、そんなものを得ていったい何をするつもりだ? それに取って代わるものなぞ貴様はすでに持っておるだろうに。まさか壊れた時用のスペア、というわけでもあるまい?」

「まぁな。俺はそいつらが壊れたからって使うつもりねぇよ。第一、そんなもん俺が本気で使ったら一瞬でスクラップになっちまう」

 

 「あぁ」と、そこまで聞いて、白夜叉は納得したように頷く。

 本人に必要ないものだというのに、なぜそんなものを要求するのかと思っていたが、『俺は使う気がない』という本人の発言を聞いて、その疑問は解決した。

 

「なるほどなぁ。しかしあ奴ら、わしに向かって『試されてやる』などと啖呵切るくらいじゃ、相当プライドが高い……上手くいくかのう?」

「んなこと言ってりゃ死んじまうのは今日、身を以て思い知ったはずだ。自分が強いからって、自分より強い奴なんざ魔界にゃゴロゴロいる。それに俺があのコミュニティにいる限り、あいつらが奴らと関わらないでいることなんざできねぇんだ。俺だってギフトゲームを通して、自分なりの成長ってのをしてもらいたかったが、初日でもうデケェ壁にぶち当たっちまった。次もまた同じか、それ以上の障害が来るのは目に見えてる。なら……」

「自分が、ギフトの使い方を教える……か」

 

続きの言葉を先読みし、補足する白夜叉に、ダンテは首を縦に振る。

 

「俺の思いついた使い方が正しいかどうかはわかんねぇ。これはあくまで、魔の眷属と戦う時に有効な方法ってだけで、他の使い方……ひょっとしたら、本来の使い方とでも言うべき、最善の成長の可能性を潰すことになるかもな。だから俺としてもやりたくはなかったが……ここまで来ると、な」

「…………」

 

 ギフトの指導。それは現時点で新生〝ノーネーム〟において、最優先すべき課題であった。

 確かに十六夜たちのギフトは抜きんでた力を誇り、文字通りありとあらゆる可能性を持つ。だが、彼らは戦いにおける使い方を熟知しているわけではない。そんなものとは無縁の平和な日常を送っていたから仕方がないのではあるが、この箱庭の世界へと来たのならばそんなことを理由にしたところで誰も手加減などしてくれない。ましてや、魔の眷属なぞ以ての他だ。これから起こり得るであろう魔の眷属との衝突を前に、彼らが力不足であるということは、否定できない現実である。

 そんな彼らが、ダンテという仲間と出会うことが出来たのは、僥倖だったのかもしれない。何せ彼は魔の眷属のスペシャリストであるとともに、あらゆる武器やスキルを用いた戦闘におけるプロフェッショナルなのである。様々な能力と武器を組み合わせた戦い方を誰よりも理解している彼は、十六夜達が直面している問題を解決しうる人物足りえるのだ。

 本人としては、この行為によって十六夜らのギフトの使い方を限定化してしまう可能性があるため、渋っていたことなのだが……現状を鑑みて、そのようなことを言っているような暇はないと判断したようだ。

 

「ふむぅ……わしとしても、あ奴らにはゆっくりと自分なりのギフトの使い方を見つけてもらい、のびのびと成長してもらいたかったもんなんじゃが……致し方なし。全く魔の眷属というのはいつもこう面白くない方向へと話を進めていきよる……それに、おんしの手ほどきを受けて、どこまで伸びるか見るのもまた一興じゃろう。あいわかった、すぐ手配する」

 

 白夜叉としてもなかなか賛同しかねるものだったが、渋々彼女は承諾した。指導、ということ自体には本人も賛成だが、どうやらその根本たる原因が魔の眷属であるということに不満があるようだ。彼女としても、奴らからこの世界を守ってきた自負がある。それでも足りなかった分のしわ寄せが新参者にくるというのが、嫌だったのだろう。

 

「で、他に必要なものは?」

「今のとこは特にねぇ。またこれから必要な時、必要なもんを言うから、それを可能な限り叶えてくれ」

「いいじゃろう。これからの活躍に期待させていただこうか、魔剣士の息子殿?」

「その言い方やめろって。俺はダンテ。魔剣士の息子とかそんなもんいらねぇよ」

 

 クックックッ、と悪役じみた笑みを零す白夜叉と、自身の呼称に苦言を漏らすダンテ。すまんすまんと軽い謝罪を述べながら、白夜叉はダンテに手を差し出した。

 何か文句の一つでも言いたげなダンテではあったが、相手に何を言っても無駄だと悟り、やれやれと嘆息するだけに留める。差し出された小さな手を見つめ、やがてダンテは握り返す。

 

「カカカ、箱庭の者どもも魔界の奴らも皆肝を抜かすことじゃろう。また一段と面白いことが起こるのう……フフフッ……!」

「いいねぇ、サプライズってのは嫌いじゃない……いっちょ派手にやってやろうぜ、神様?」

 

 数千年もの間、修羅神仏が集うこの世界をメチャクチャにしてきた不届きものどもよ。目を見開いて刮目するがいい。この世界から追放することなど生温い。その存在を、根源から破滅せしめてくれる。

 

 二人が浮かべる表情は、いつもと同じ軽薄な笑み。しかし、それは常日頃見せるものよりもさらに凶暴な、獲物を狩る捕食者を彷彿とさせる。

 この日を以て、修羅神仏は慄くこととなるだろう。太陽を司る神の加護を授かりし、魔剣士の血を受け継ぐ英雄の来訪を。

 この日を以て、闇の世界を生きる魔物たちは恐れることとなるだろう。この箱庭の世界に降誕した、新たなる守護者を。

 この日を以て、彼は未来永劫箱庭の世界で語り継がれることとなるだろう。この箱庭の世界で、魔の眷属との戦争に新たな歴史を刻むこととなるのだから。

 神と悪魔。相容れぬはずの両者が手を取り合い、ここに最強最悪のタッグが結成されることとなった。

 ――そんな凄まじい時間が過ぎた、ちょうどその時だった。

 

 

 

「失礼します」

 

 不意に、襖の向こうから呼びかけの声があがる。少しの間を置いて襖が開かれると、この支店で働いているのであろう着物姿の女性が正座していた。

 

「なんじゃ。機嫌がよくなっていたところだというのに」

「申し訳ありません。コミュニティ〝ペルセウス〟のルイオス様がお見えになっておりまして……」

 

 ルイオス、という名前を耳にした途端、白夜叉の表情が目に見えて不機嫌なものに変化した。眉を顰め、「あの若造がか……」と、これまた不快感丸出しで呟くその様子から、どうにもその人物は白夜叉から好ましく思われていないらしい。

 

「……まあいい。して、いったいどういった要件かの?」

「さあ……『あの人に僕が来たってことを伝えれば、それで来てくれると思うよ』と仰っておりまして……私にはさっぱり……」

「ふん。おおかたレティシアの件であろう……わかった。すぐそっちに向かおう。おんしも仕事に戻ってくれ」

「かしこまりました」

 

 一通りのやり取りを交わすと、女性は一礼してその場を後にした。

 白夜叉は重々しく息を吐き、ダンテに向き直ると頭を下げて詫びる。

 

「すまん。うちのコミュニティの仲間が来ておってな。そちらに出向かわねばならんことになった」

「いや、話してぇことは全部話したから別にいいけどよ……何があった? レティシアってのは?」

「……まだ黒ウサギ達からは聞いとらんのか……まぁいい、おんしがここにおったのも何かの縁じゃ。わしについて来い」

 

 ダンテの様子からして、まだレティシアのことを聞かされていないのだと察した白夜叉。これは本来自分たち〝サウザンドアイズ〟内で話し合うべきことであるが、〝ノーネーム〟にとっても無関係な話ではない。

 ダンテに呼びかけると白夜叉は立ち上がり、部屋から出る。ついてくるよう促されたダンテもそれに何を言うわけでもなく、彼女の言葉に従って部屋を後にした。

 屋敷の廊下を歩く二人。何があったか問いを投げかけようとしたダンテだったが、彼の行動を先読みしたように白夜叉が口を開く。

 

「おんしは、過去の〝ノーネーム〟にどんなメンバーがおったのか聞いておるか?」

「いんや、全然」

「だろうな。まぁ早い話が、今回の一件はその元〝ノーネーム〟のメンバーが景品となったギフトゲームのことで、ひと悶着が起こったってことなんじゃ」

 

 それからダンテは、白夜叉から事のあらましを聞かされることになる。

 〝サウザンドアイズ〟の傘下にあるコミュニティ〝ペルセウス〟が、その元メンバーを景品にギフトゲームを開催する予定であったこと。

 十六夜ら新メンバーを迎えた〝ノーネーム〟はこれを機に仲間を取り戻そうとしていたこと。

 そのギフトゲームが、『景品』が莫大な金で購入されたために、中止となってしまったこと。

 

 大筋を聞いたダンテは眉をひそめ、嫌悪感を露わにする。

 

「はぁ? それってつまりゲーム開催する気なくしたっていうテメェの都合で中止になったってことだろ? ふざけてんのか?」

「あぁ、わしもこれはいくらなんでも冗談が過ぎると談判したんじゃがなぁ……生憎とそのコミュニティを継ぐことになる次のリーダーが、虎の威を借る狐ならぬクソガキでの。箱庭の世界を舐めきっておるとしか思えん態度で振る舞いおるのよ」

「――やれやれ、甘やかされたガキってのはダメになっちまうらしい。男はやっぱ俺みてぇにタフに生きていかねぇとな」

「おんしも大概じゃろうが」

 

 顎に手をあててどや顔をさらすダンテ、それを白い目で見つめながらツッコむ白夜叉。

 漫才のようなやり取りをしながら廊下を歩いていると、どうやら目的の部屋に辿り着いたらしく、白夜叉が足を止めた。彼女の自室よりも奥にある離れの家屋で、どうやら客人をもてなすための貴賓室となっているらしい。

 にも関わらず、その部屋に招かれた人物と出会うのが億劫なのか、盛大にため息を吐いて肩を落とす白夜叉。

 肩越しに振り返りながら、横にいる赤いコートの大男に白夜叉は忠告の言葉を告げる。

 

「よいか。あくまでこれはわしと彼奴との談話じゃ。おそらくおんしが耳にしておいた方がいいこともあるから中に入れてやるが、何もするでないぞ?」

「OK。一発ぶん殴ったらそれで大人しくしとくわ」

「ぶち殺されたいか貴様」

「……あんたなんか親父のこと愚痴ってから口悪くね?」

 

 いつも通りの軽口を叩いたつもりなのだが、もうスパーダの息子であるとわかりきったためか、今の白夜叉は当たり前のように辛辣な暴言をぶちまけてくる。少なからず面影があるせいなのと、ダンテ自身嫌と言うほど思い知った父親の愚行の数々のせいで色々とストッパーがぶっ壊れているらしい。

 ある意味彼女との心理的な距離は縮まったのかもしれないが、これはこれでくるものがある。心の中で父親に悪態をつきながら、ダンテは首を縦に振って了承の意を示した。

 それを確認した白夜叉は大きく一呼吸すると、意を決したように表情を引き締めて扉を開く。

 

 

 

「――随分待たせてくれるね。コミュニティの同士をほっぽり出してまで接客する大事な客で?」

 

 中にいたのは、亜麻色の髪に蛇皮の上着を着た線の細い男。二十代ぐらいの遊び盛りな男性というか、本当にコミュニティの幹部なのかと疑いたくなるくらい、どこか浮ついている雰囲気のあるヤツだった。

 暇つぶしの一環として行っていたのか、傍には遊郭の花魁のような服を着崩して着用している女性が二人。明らかに羞恥の感情をその顔に浮かべているところから、無理やりやらせていたのだろう。

女性らに酌をさせながら、その男は白夜叉の方へ振り返ってニコリと微笑む。

 

「呵ッ、何が同士か戯け。成り上がり風情がウチの娘どもを侍らせるとはいい度胸だの、ルイオス殿!? ほれ、お前達。もうよいから閉店作業に戻るが良い」

「は、はい」

 

 幹部同士、あくまで敬語はつけるものの、その口調からは溢れんばかりの嫌悪が滲み出ている。

 着崩れしていた女性らは着物を正し、そそくさと退場しようとした。しかし、その場をすぐに離れたいと焦ったためか、女性の一人が着物を踏んで体勢を崩してしまう。

 

「あっ――」

 

 そのまま前のめりに倒れそうになった時、咄嗟にダンテが手を出して転倒を防いだ。

 

「Easy does it(おちつけよ)。慌てて顔に怪我でもしちまったらそれこそダメだろ。ほれ、次は気を付けな」

「あ、その……すいませんでした」

「申し訳ありませんでした、連れがご迷惑を……」

 

 女性が謝罪すると、もう一人が駆け寄ってダンテに頭を下げる。

 それを受けたダンテはニヤリと笑うと、続けざまに返答した。

 

「HAHA、なら是非ともお二人にデートでも申し込みたいねぇ。忘れられねぇ刺激的な一時ってやつを過ごしたいもんだな」

 

 色気のある声音で囁くように言い放ち、手を狐の形にして女性の額にコツンと当てる。途端に二人は羞恥とは違う理由で真っ赤に染まり、硬直してしまった。

続けて頬にそっと手をそえるダンテ。女性の身体が大きく跳ね、ますます顔の赤みが濃くなっていく。「あの、その……」と口をまごつかせるものの、口は言葉を上手く紡げず、ただ開閉するばかり。

 初心な反応を見てニヤニヤと笑みを浮かべるダンテだったが――ガッ!! と不意に白夜叉が彼のすねを思いっきり蹴り上げてきた。

 

「いってぇっ!? ンだよ白夜叉!?」

「何口説いとるんじゃボケが。おんしらもさっさと仕事に戻らんか! 三度目はないぞ!!」

 

 蹴られた足を思わず浮かせて抱えるダンテ。文句を言おうとしたものの、白夜叉は不機嫌そうに顔を歪ませて吐き捨て、二度目の指示を女性らに言い放った。

 白夜叉の一喝にハッとした女性らは、今度こそ離れを後にする。また倒れたりしないかと後姿を見守りながら、ダンテは不服を漏らした。

 

「ったく。まぁ俺も悪かったけどよ、何も思いっきり蹴らなくていいじゃねぇか」

「うるさいこの阿呆。軟派者。女の敵。バーカ」

「小学生の悪口かっつの」

 

 あまりに幼稚な悪態の数々に嘆息するダンテ。店員にちょっかいかけたことと、スパーダが女性を口説いているように見えたのでムカついたのだろうが、どうにも会った当初見せていた懐の大きさというものがまるでなくなっている。やれやれと首を振りながら、ダンテは家屋の中へと入った。

 

「いやー見せつけてくるねぇ。何、白夜叉さん。貴女こぉんな若造なんかと付き合い始めたわけ?」

「ほざけ。旧友の息子というだけで何もないわ」

「ホントかなぁ? 随分とご執心みたいだけどねぇ……ふーん、旧友の息子、かぁ。どこのコミュニティの子?」

 

 からかうように男――ルイオスと呼ばれたそいつは白夜叉に語り掛けると、じろじろと値踏みするようにダンテを観察し始めた。

 

「おいおい、いくらハンサムだからってそんなじっくり見つめんなって。俺にそんな趣味はねぇよ」

「おおっとごめんごめん。でも意外でさ。白夜叉さんがまさか君みたいな貧相で、しかも見境なく女性に手をだすようなガキに惚れるってのが」

 

 アハハ、と無邪気そうに、しかし悪意を込めた言葉をルイオスは放つ。

彼自身、少し前まで自分が侍らせていた女性にちょっかいを出されたのが気に食わないのだろう。しかも自分と相手をしている時と違って、好意的な反応を示すときたものだ。面白いはずがない。

 ルイオスに毒をぶちまけられたダンテだったが、本人は顔をしかめるどころか、涼しい表情で流しながら返答した。

 

「そうかい? ま、ああやって権力振りかざさなきゃ振り向いてすらもらえない誰かさんと違って、これでもモテるんでね」

「……はぁ? 何それ、僕の事言ってんの?」

 

 意趣返しと言わんばかりに罵倒され、苛立つルイオス。低い声音で脅すように問いかけるも、ダンテは余裕の顔をしたまま応える。

 

「一つアドバイスだ。『弱いものいじめ』はカッコ悪いぜ? 自分に自信がないって公言してるようなもんだしな」

 

 侮辱の言葉をぶつけられたルイオスは、大きく舌打ちすると白夜叉に声をかける。

 

「白夜叉さん、ホントにこいつなんなの? わざわざ足を運んだ僕に嫌がらせするために呼んだわけじゃないよね?」

「……おんしがここへ来たわけと、無関係というわけではないからな。こやつは〝ノーネーム〟の新しいメンバーじゃ」

 

 呆れたように溜息を吐き、白髪を掻きながら返答する白夜叉。すると、不愉快げに眉根を寄せていたルイオスの表情が一転して驚愕のそれに代わる。

 目を点にしてしばし呆然としていたルイオスだったが、やがて大うけしたように高笑いし始めた。

 

「アハハハハハハハハッ、君〝ノーネーム〟の一員なの!? へぇ、そうかいそうかいなるほどねぇ。ク、クククッ、クハハハハハハハハッ!!」

 

 何が可笑しくてそんなに笑うのかわからず、白夜叉とダンテは困惑する。ひとしきり笑い終えた後で、白夜叉はルイオスに問いを投げかけた。

 

「おんし、何がそんなに可笑しい。こやつが〝ノーネーム〟なのが、そんなにも滑稽だとでも言うつもりか?」

「い、いやいやいや。僕は別にとやかく言うつもりはないんだけどさ……随分可哀想だなぁって思って、つい……ク、ククッ……!」

 

 ますます意味がわからない。

ルイオスの言葉は、単にダンテの立場を侮蔑しているかのようなものにも受け取れるものの、それとはまた別の意味があるような気がした。

 首をかしげるダンテだったが、白夜叉が何かに気づいたようにハッとする。

 

「……おい、貴様。今日はいったい何のためにやってきた。まさかノコノコとレティシアを探しにここへ来たわけではあるまいな?」

「……あ? どういうこった白夜叉?」

 

 白夜叉の発言を耳にして、ダンテは彼女の方へと振り返る。彼女の言葉を文面通りに解釈するなら、レティシアは〝ペルセウス〟から消え失せたということになる。

 ゲームを取り下げ、取引することになったとはいえ、それはまだ執り行われていないはず。となれば、その『商品』は現在の所持者の下にあって然るべきである。

 白夜叉の問いかけに、俯いてくっくっとほくそ笑むルイオス。顔を上げると、彼は二人に向かって口を開いた。

 

「うちの商品が逃げたのは、さすがにもう知られてたってわけね。まぁその後どこぞの誰かさんが彼女に手引きしたらしくて、まだ捕まえられないんだよね……まぁ、逃げた先なんてだいたい予想ついてるんだけど、ここへ来たのは保険みたいなもんさ」

 

 ルイオスの発言に、思わずダンテは身体が固まってしまう。

 彼の言葉が嘘偽りでないならば、彼は逃げたレティシアを捕まえるためにここへ来たということである。

 名前は伏せているものの、口にする際しきりに白夜叉の方を見ていたことから、どうやら白夜叉がレティシアの逃走を援助したようだ。

 ――問題は、だ。この男が意味深に放った、『逃げた先』である。

 彼女は元〝ノーネーム〟のメンバー。ならば逃げ場として真っ先に予想されるのは、そのコミュニティの本拠地。

 そしてレティシアの現在の立場だが、その身を商品扱いされ、金銭で売買されていることからして、ハッキリ言ってしまえば『奴隷』となんら変わりない。

 それが逃げたならば何をするか。答えは決まっているようなものだった。

 ルイオスは見下すような視線をダンテに向け、彼にこう言い放つ。

 

 

 

「――ごめんねぇ。君のコミュニティなんだけど、僕の部下を送らせてもらったよ。商品が暴れてぶっ壊れちゃうかもしれないけど、別にいいよね?」

 




原作読んで思ったこと。

これ、ルイオス最悪ダンテにぶっ殺されるんじゃね?
うんまぁ、ゲームはやってもらうつもりだから死なれたら困るけど……(汗)
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