道中(博麗神社)
回りに木々が生い茂る林の道を歩く
「はぁ・・何か歩いてばかりな気がする」
休憩もあったが、夜から歩いてばかりでため息もつきたくなる
「しょうがないよお姉さん飛べないんだから」
「飛べるってのが私からしたら異常だよ」
「その異常もすぐに日常に変わると思うよ」
この世界は私の常識は通用しないということがよくわかった
歩いているとルーミアが何か思い出したかのような顔をして話しかけてきた。
「あ、聞き忘れてたけど名前なんていうの? 」
「言ってなかったか、私の名前は木崎在処、人間だよ」
少々異常な人間ではあるけど
「ふーん、それじゃあお姉さんじゃなくて ありか だね」
「好きに呼んでくれ・・」
ここで話は途切れ、ただ歩く
「この辺りかな」
一緒に歩いていたルーミアが急に歩むのを止め、立ち止まった。
「ん? この辺なのか? 」
「うん、大体この辺り」
「何がいいか分からんが、この辺なのか」
「そうだよ、それじゃさよなら
楽しかったよ ありか 」
「まぁこれが最後って訳じゃないんだ、いつか会えるだろ」
そう言うとルーミアは笑顔で両手を広げて言った。
「それなら、また弾幕ごっこしようね」
そう言って道を外れ、林の中に入って行く小さな背中に
「弾幕は撃てないが、暇ならな」
私は振り返らず手を振り、神社に続く道を歩いた。
少女?移動中・・・
「はぁ・・」
何故私がため息をついているかというと
目の前にある地味に長そうな石造りの階段を前にしたからだ。
「歩く次は上るか・・・・」
あぁ・・面倒だ・・
飛べたらどれほど楽なことか
「まぁ上らないことには何も始まらないか」
自分に言い聞かせるように言って
ながったるい階段を上り始めた。
博麗神社
「はぁ・・はぁ・・歩いてばかりで中々に疲労が溜まってるな・・」
鍛えてる身としてはだらしない
また鍛えなおす必要がありそうだ・・。
そう言いながらも階段を上りきり
上りきった時には、お天道様は真上にあった。
「はぁー・・やっと着いたか・・あれ? 」
目の前にある神社はどこか見覚えのある神社だった。
「何で・・・・似てるだけなのか・・? 」
その神社は外の世界で憩いの場にしていた寂れた神社によく似ていた
似ているだけで、よく見てみると外の神社よりも傷が少なく、新しく見える
「まぁ、似た神社を見つけただけでも収穫かな・・」
そう言って神社にある賽銭箱の前に行った。
「この神社のお近づきにと、喫煙所としての使用代ってことで・・」
ポケットから財布を取り出し
今まで使い道のあまり無かった札を取り出した。
「幻想郷でも野口は有効だよな・・」
少し不安だったが手に持つ4枚の野口を賽銭箱に入れた。
「よし、ちゃんと払ったし、いいかな」
そう言ってポケットから煙草を取り出し縁側に座り吸い始めた。
「はぁー・・一仕事終えた後の一服はいいねぇ・・」
自分の中で悦に浸っていると
―――ここは禁煙よ―――
何だこのデジャヴ・・
ゆっくり後ろを振り向くと・・そこには
「全く、ここは喫煙所じゃないわよ、
あら? 変わった服装ね」
そこには巫女服にしては少々派手な格好をした少女が立っていた。
「人がいたのか・・驚いた」
「驚いたのはこっちよ、表に出てみれば煙草吹かしてる人がいるんだもの」
不満そうな顔をして私を見下ろしている
「ふぅ、喫煙所としての使用料は払ったよ」
そう言って煙草の火を消す
「あら、気が利くのね、でもしけた額なんでしょ
まぁ入れてくれるだけありがたいけど・・・・」
そう言って紅白巫女は賽銭箱の方に行き、蓋を開けて、中を確認すると、その蓋を手から落とした。
「よ、よよよよよ四千円っ!? 」
蓋を落としたかと思ったら手をワナワナとしだして叫んでいた
なんというオーバーリアクションだ・・見ていて面白いが
まぁあのリアクションを見る限り外の金は使えそうだな
「オーバーだな・・ずっと休憩所にするわけだから
お近づきにと、喫煙代と考えてくれ」
そう言うと紅白巫女はメシアを見るかのような目でこっちに振り向いた
「貴方は救世主だわ・・」
「そんなオーバーな」
「これだけあればどれだけ楽ができることか・・」
なんという欲望まみれの顔なんだ・・口元が緩みきってる
「ま、まぁ役に立てたならよかった。
あと教えて欲しいことがあるんだが、いいか? 」
「貴方は救世主よ、何でも聞いて頂戴
お茶を出したいから、中で話をしましょう」
そういうと襖を開け手招きをしている
「そうさせてもらうよ」
そう言って中に入った。
神社の中は基本的な生活スペースになっていた。
私の入った部屋は、基本的な生活用品、座布団、ちゃぶ台と言った典型的なものだった。
紅白巫女が湯飲みと茶添えの菓子を持ち奥の部屋から出てきた
「はい」
湯飲みを差し出されて受け取る
そして一口
「ずず・・はぁ、美味い」
「それはよかったわ
それと自己紹介がまだだったわね
私の名前は 博麗霊夢 この博麗神社の巫女よ」
「私は 木崎在処 言っておくが私は女だ。」
「あら、そうだったの? 女なのが勿体無いわね
それで何が聞きたいの? 」
「ああ、その前に事情説明だな」
そう言って幻想郷に来てからのことを話した。
「そう、ここで暮らし続ける外来人って訳ね」
「まぁそうなるな」
饅頭を食べ終え、答える
「戦闘は得意? 」
「それなりに自信はあるつもり」
人外と言われると少し不安ではあるけど
「まぁ、ルーミアに勝ってる時点でその辺は注意すれば大丈夫ね」
「それで聞きたかったのが、弾幕ごっこと、住む場所と、仕事口なんだけど・・」
弾幕ごっこはいいとしよう、一番の問題がこれだ、ここに住むなら、衣食住揃った環境じゃないと長くは生きていけない
「うーん・・まぁ、弾幕ごっこに関しては私が見るとして
住む場所と仕事は、慧音に聞いてみればたぶん解決するわ」
随分あっさり解決しそうだ
「そうなのか、それでその慧音という人はどこにいるんだ? 」
「人里の寺小屋よ」
人里かー・・また戻る羽目になるわけだ・・
「またあの道を歩くのかって顔してるわよ」
「実際今日は疲れたからな・・」
落とされたら、夜になってて、ルーミアに襲われて、文の質問攻め
そしてここまでの道のり・・気が滅入るな・・
「それなら、今日はここで泊まっていきなさい」
「・・いいのか? 」
「ええ、うるさい奴が夜来るかもしれないけど気にしなくていいから」
うるさい奴ってのが気になったが、それ以上に泊まらせて貰えるのがありがたかった。
「すまないな、手伝えることがあったら手伝うよ」
「そう? なら早速お風呂の薪を持ってきてくれないかしら」
早速力仕事・・容赦ないな・・・・
「分かったよ・・どこにあるんだ? 」
「いい心がけね、薪は神社の裏に置いてあるわ」
「はいはい、働かざるもの食うべからずだからな」
「よく分かってるわね、そういうことよ」
そう言われて神社の裏に向かった
神社裏
そこには山積みになった薪が置いてあった。
「どれぐらい運べばいいか聞いてなかったな・・
まぁ多ければ問題ないか」
そう思い持てるだけの薪を紐で縛り持ち上げようとした時・・
ある物が目に入った
「なんだ・・あれ」
そこには藁人形が打ち付けられた木
「・・・・見なかったことにするべきなのか・・」
まぁ聞かないほうがいいよな・・
そういうアイテムだし・・
「私の打った物じゃないわよ」
「うわっ」
振り返り歩こうとしたら正面に霊夢がいた
「ビビらせるなよ・・」
「悪かったわね
説明させてもらうと、その藁人形は自称旧友の妖怪の打ったやつよ
私は関係ないわ」
「成る程、そうだったのか
それで何しに来たんだ。
今から戻ろうと思っていたんだが」
「持っていかせる量を言い忘れていたから言おうと思ったのだけど・・
それぐらいでいいわね」
「へいへい、なら持って行くぞ」
そう言って縛った薪を持ち上げた
その様子を霊夢が疑わしい目で見ていた
「・・本当に惜しいわね」
「おい、どういう意味だ? 」
怪訝そうな顔をしやがって
「別に、生まれる性別を間違えてると思って」
「そうかい・・」
ため息をつきながらも
風呂屋の横まで持っていった。
神社内(居間)
その後、神社の掃除をしたり、布団を干したりと雑用をこなす
一通り終わった頃には日も傾き夕焼けの空になっていた
座布団に座り一息つくと
「一仕事終わったことだし食事にしましょ」
「早いな、もう用意したのか? 」
さっきまで一緒に作業をしていてもう用意をしたのか
博麗の巫女恐るべし!
「まぁ昼の残りと魚を焼くだけだし、そんなに難しくないわ」
「そうか、なら良かった」
そう言うと立ち上がり
「なら早速持ってくるわね」
台所に向かった
湯飲みを持ち一口
「ずず・・はぁ」
「何おっさんくさい事してるのよ」
そういうと大皿に何匹もの魚の塩焼きが並べられていた。
「多いな、食いきれるのか? 」
「大丈夫よ、たぶんもうすぐ来るから」
そんな言葉に首をかしげていると、外の庭のほうで風を切る音の後、何か着地するような音が聞こえた。
「ほらやっぱり」
霊夢がそういうと襖を豪快に開き
典型的なとんがり帽子を被った金髪の少女が入ってきた。
「霊夢ー邪魔するぜー・・って男がいる!? 」
「・・・・」
「落ち着きなさい魔理沙、客の前よ。あとこの人は女性」
「なんだ、そうならそうと早く言ってくれ・・って霊夢が客をおもてなし!?
こりゃ明日は槍が降るぜ」
「あーもう、うるさいわね、黙って座りなさい」
「あーはいはい、霊夢はうるさいなぁ・・」
「うるさいのはあんたよ、全く・・」
あー話しかけるタイミングを完全に逃した。
「それでそこの色男は誰なんだ? 」
白黒魔法使いがこっちを向き話しかけた。
「だから男じゃないと・・
まぁ今はいい、私は木崎在処、人間だ。あんたは? 」
「私は普通の魔法使い、霧雨魔理沙だぜ」
「変な妖怪に天狗、それに魔法使いか、幻想郷は何でもありだな」
「それが幻想郷のいいところだぜ」
軽い自己紹介を終えると
「はい、お待たせ」
またも大皿に茸や野菜、肉の炒め物が出てきた
「おぉー霊夢奮発したな
いいことでもあったか? 」
「まぁね、どこぞに救世主が現れたからかしら」
「そりゃいい、そんな救世主には一度会ってみたいぜ」
そういうと魔理沙は私の方を向き、にやりと笑った。
「なぁなぁ在処、なにやったんだ? 」
私の肩を小突いてくる
「なんにも、ただ賽銭入れただけだよ」
「賽銭入れただけであんなに機嫌よくなるわけ無いだろ
いくら入れたんだ? 」
「4千円」
そういうと魔理沙は目を丸くしてぽかんと口を開けていた。
「4千円!? えらくでかく出たな」
「魔理沙にも見習ってもらいたいものね」
みんなの分のご飯をよそい終えた霊夢がいた。
「どういうことだ? 」
「ここを自分の憩いの場にするから使用料の前渡みたいな感じで入れてくれたのよ」
「そりゃ律儀なことで」
「もうその話はいいだろ、腹が減った」
「そうねここの話も食べながらしましょうか」
「賛成だぜ」
「それじゃ」
「「「いただきます」」」
こうして何気ない雑談をしながら食事を終えた。
食事を食い終わると魔理沙は帰ってしまい
後片付けは二人でやった。
そして用意した風呂に入り
少々事件があったが・・・・まぁ多くは語るまい
思い出さなくていい記憶ってのは思い出さない方がいいからな
後は寝るだけという時に霊夢に誘われ縁側に出た。
博麗神社(縁側)
「風呂では酷い目にあった・・。
それで、どうしたんだ? 」
縁側に出ると霊夢が一升瓶を横に置いて座っていた。
「はい」
杯を渡され、霊夢の横に座る
「晩酌に付き合いなさい」
「あまり酒は飲めないぞ」
酒はあまり強いほうではないと思う
まぁ家においてあった酒だから知らないが
「いいのよ、晩酌はそんな宴会みたいにがぶがぶ飲むもんじゃないから」
「そうかい」
そう言って夜空を見上げる。今日は満月か・・
「夜の酒は月を、相手がいるなら会話を肴に」
そう言って一升瓶を持ち杯に酒を入れ
「出しなさい」
いわれるがままに杯を出す
「こうやって飲み交わすのも立派なコミュニケーションよ」
そういうと私の杯に酒を入れていく
夜の神社は鈴虫の音と風にそよぐ木の音がするだけ
「へぇ、なんだか静かでいいな、こういう雰囲気は嫌いじゃない」
注ぎ終えると正面を向き杯を見ていた。
「酒に映る月を見る。風情があっていいと思わない? 」
「そうだな、霊夢が相当の酒好きってことはよく分かった」
そう言って酒を一口飲んだ。
「ん、以外に飲みやすいな」
「飲みやすいのが日本酒よ、後が怖いけど・・」
「飲みすぎなければいい話だ」
そう言ってもう一口飲む、美味い酒だな
「そうそう、気になったんだけど、在処の話を聞かせてくれない? 」
「またどうして」
「酒の肴よ」
「気持ちのいい話ではないぞ」
そう言ってここに来る前のことを話した。
「そう・・紫に・・」
「紫を知ってるのか? 」
「幻想郷を創った張本人だしね」
「へぇ・・」
その後二人して沈黙が続く、夜風が軽く吹き二人をそよぐ
静かに飲み交わしていると霊夢がポツリとつぶやいた
「貴女は外の世界を捨ててここに来たってことよね」
「そうだな」
あんな正常な世界いまでは耐えられない
「・・そう、まぁ安心して、この幻想郷は貴女が思う以上に飽きない場所だから」
「はは、そりゃ楽しみだ」
そう言って笑い、酒を一口飲んだ。
「話を聞くとその眼鏡で力を封じているのよね」
「そうだな、これをかけると綺麗さっぱり見えなくなる」
「取っても大丈夫? 」
「別にいいが・・」
そう言うと霊夢は私の眼鏡を取り私の眼を見た
黒だった目の色が青に変わっていく
相変わらず私の視る世界は線だらけだ・・
霊夢も例外じゃない
「綺麗な目ね」
「え? 」
「悲しい青、でも、深くて鮮やか、そんな綺麗さがあるわ
でもあなたの視る世界は悲惨なものなんでしょ? 」
「そうだな、死が視えているのなら、正気でなんかいられない
死が視えるのなら・・とても、立っていられない
そんな世界を何年も見てきたよ、ある意味人格破綻しているのかもな」
私がそういうと霊夢が優しい顔をして話した。
「そう・・でも、きっと自分の居場所はできるわよ
それに、もうここは貴女の居場所、でしょ? 」
そう言われて自然に笑みがこぼれた
「幻想郷の住民は図太いな・・」
「どういう意味よ」
さっきまでのやさしそうな顔からむすっとした顔になった。
そんな霊夢から眼鏡を取り上げて掛ける
「私なりの褒め言葉だよ」
そう言って眼鏡を人差し指で上げ酒を煽った
そのまま夜は更けて在処の長い一日が過ぎた
おまけ
風呂が沸いたとのことで先にお湯を貰うことになった。
体をお湯で流し、浴槽に入る
「はぁー・・生き返るわぁー・・」
今日は歩いてばかりで疲れていたから
この風呂はヤバイ・・
「ふぅ・・さて少し浸かったことだし体を洗うか」
そう言って浴槽から出て体を洗い始めようとした時、風呂屋のドアが開いた。
「お背中流しましょうか」
そこにはニヤニヤとした顔で霊夢がタオル姿で立っていた。
「いらんぞ、恥ずかしい」
「拒否するのなら強行突破ね」
私の言葉を無視するとタオルをもって私ににじり寄って来た。
「おいおい勘弁してくれ・・」
「ふっふっふっ、まだ在処が女性か確認してなかったわ・・」
手をワキワキするな!
「おい、ほんとに勘弁してくれ! 」
「拒否権は無いわ! 」
「うわぁぁぁぁぁぁ! ・・・・」
その後のことはよく覚えていない
だが酷い目にあったのは事実だ。
ただ霊夢の顔がツヤツヤしていたのは関係ないよな・・