転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか 作:柚子檸檬
これからもよろしくお願いします。
&月〇日
苦節一か月と少しくらい。
とうとう担当のティフィさんとラウルさんから6階層挑戦への許可が下りた。
上層はここから難易度がぐっと上がるらしいし、同時に駆け出しの死亡率も跳ね上がるそうだ。
実際行ってみた感想だが、何というかウォーシャドウがキモい。
強いとか恐いとかじゃなくてキモい。
人型をしているくせに全身真っ黒で、
爪(正確には指が刃のようになってる)による攻撃を警戒すればいいと思ってたら思いの外腕が長くてそこそこリーチがある。
腕を切り落とせばやり易くなるけど、人型をしているせいで人間の腕を切り落としてる気分になって凄く嫌だ。
しかし、こいつのドロップアイテムである『ウォーシャドウの指刃』は鋭いだけに良い武器の素材になるからという理由で割と高い値がつく。
せっかく新しい階層に行ったんだから稼げるだけ稼いでおきたい。
ラウルさんには遠征に行く前と比べて動きが良くなったと褒められた。
ラウルさんは褒めて伸ばすタイプとみた。
短い期間とはいえシャリアさんにも面倒見て貰ったし、良くなってるんなら嬉しい。
&月×日
今日も今日とてウォーシャドウを斬る。
やっぱりキモい。
ドラクエみたいにモンスターに系統をつけるとしたらこいつは悪魔系かゾンビ系だろ。
ラウルさんにさっさと7階層行きませんかと尋ねてみたら怒られた。
7階層はもっとハードだろうし、ウォーシャドウは6階層にしかいないってわけじゃあないからよくよく考えたら7階層に急ぐ意味はないや。
強さだってこの前のダンジョン・リザードの強化種ほどじゃあないし気をつければ問題ない。
そういえば7階層にはウォーシャドウと同じく『新米殺し』と呼ばれてるキラーアントがいるそうだ。
硬い甲殻に仲間を呼ぶ能力と非常に厄介そうな性質をしてる。
下から迷い込んでくるかもしれんし、注意しておくか。
&月+日
今日からとうとう7階層へ。
一週間もかからなかったし、今までと比べるとスパンが短いようにも思える。
しかし、駆け出しの多くは7~9階層辺りでしばらく足を取られるそうだ。
硬い甲殻を持って仲間を呼ぶキラーアントに、毒の鱗粉を撒き散らすパープル・モス、それに今まで戦ってたウォーシャドウが加われば間違いなく今までにない難易度だ。
ここから先に進めない冒険者も多いとか多くないとか。
ちなみにキラーアントについてだが、ラウルさんから為になる話を聞いた。
キラーアントの、半死半生状態になると特殊なフェロモンを出して仲間を呼ぶという習性を利用して、態とキラーアントを半殺しにして寄ってきた仲間を倒す、という狩り方があるそうだ。
しかし、キラーアントが仲間を呼ぶ量まではコントロール出来ないので、それが原因で死んだケースも多い。
つまり地道にコツコツが一番だそうだ。
&月*日
パープル・モスに混じってなんか青いのがいた。
綺麗だなと思いながら眺めてたら、ラウルさんが慌てて「あれ、レアモンスターっスよ」と教えてくれて死ぬ気で倒しに行った。
あの青いのはブルー・パピリオというレアモンスターでパープル・モスと同じく状態異常を引き起こす鱗粉を撒き散らす。
ただ、『ブルー・パピリオの翅』は非常に美しくて高価なドレスの装飾にも使われる事から高値で取引されるのだ。
まあ、ドロップしなかったんだけどね。
『パープル・モスの翅』はドロップしたのに不思議だね。
レアモンスターなんだからそれくらい確定ドロップにしておくれよ。
次こそは、次こそは必ず。
&月¥日
今日は何とも後味の悪い一日だった。
名も知らぬ冒険者がキラーアント半殺し狩りを行った結果キラーアントの群れに群がられて死亡。
それだけならまだそいつの自業自得で済んだけど、そのしわ寄せがこっちに来た。
仕方なく、ラウルさんと一緒に必死でキラーアントの群れを片付けた。
死体を食い荒らされた名も知らない冒険者の無事だった所持品はギルドに預けた。
身元が分かるものがあるかどうかは不明だが、そこは俺が決める事じゃあ無いだろう。
ポーションの類は割れてダメになってたし、遺留品をネコババするのは縁起が悪い気がするし、顛末を見ちまっただけにそのままにしておくのも気が引けたからだ。
ティフィさんは複雑そうな顔で遺留品を見ていた。
ダンジョンで死ねば魔物に喰われるか、ダンジョンそのものにそのまま融けてしまうかのどちらかで、全滅した場合、遺体が残る事はまず無いらしい。
良い稼ぎにはなったが、なんとも後味の悪いものが残った気分だった。
明日は我が身と思うとゾッとする。
/月@日
時折、俺は強くなっているんだろうかと疑問に思う時がある。
少なくともオラリオに来る前よりスタンドは強力になったし、身体能力も格段に上がったと思う。
けど、それで強くなったと本当の意味で胸が張れるだろうか。
ラウルさんに「強くなるってなんなんでしょうか?」と聞いたら困った顔をされた。
悩んだ末に「強さの『基準』や『在り方』は人それぞれだから『これだ』って答えはだせないっス」と苦笑いしていた。
そして「ただ、自分が『これだ』ってものを見つけても、それだけに固執しないで欲しいっス」と付け加えた。
物事には自分が知らない答えがいくつもある。
視野を広く持つ事を忘れないでいて欲しいということだろうか。
俺が今出せる答えは、『答えを出すにはまだ色々なものが足りない』だった。
:月%日
最近、クロエ・ロロさん(リオンさんの同僚の猫人)からの視線が恐い。
なんと形容すればいいのか。
鼠を狙う猫? 鳥の卵を狙う蛇? 金髪美女を狙うサメ?
どっちにしろ捕食者と被食者の関係だった。
俺、あの人になんかしたっけ?
少なくともあんまり話した記憶はないんだけどなぁ。
そもそも俺の肉体年齢はまだ12歳だぞ。
普通に非合法だぞ。
まさかそういう趣味の人ですか?
なんかの間違いで『セト神』のスタンドとか手に入れたらどうなってしまう事やら。
絶対にそんな事ならないけどな。
時折スッと背後を取ろうとしたりするのが恐い。
年上は好きだけどあんまりアグレッシブ過ぎるのもちょっとなぁ。
:月?日
ロロさんが半ズボン持って「これ履いてみて!」と若干興奮気味の顔で迫ってきた。
どうやら俺の膝小僧が見えないのが不満らしい。
あの人ガチのショタコンだったよ
ほんの少し、ほんの少しだけだけど『キラークイーン』で爆殺するか本気で迷った。
:月〇日
とうとう恐れていた事が起きた。
ロロさんにケツを触られた。
訴えたら勝てそう。
思わず某相手を眼鏡好きにさせるヒロインの如く『変態だーー!!』と叫んでしまった。
そういえばオラリオに裁判所ってあったかな?
ロリコンで捕まる男はよく聞くのにショタコンで捕まる女はあんまり聞かない不思議。
男女平等とは何だったのか。
そしてロロさんは俺の悲鳴を聞いて駆け付けたリオンさんに木刀(アルヴス・ルミナって名前らしい。
「お尻がちょっと硬かった」と言い残して気絶――――『再起可能』。
黙っていればクールビューティなだけに色々と残念な人だった。
=月◆日
そういえばラウルさんっていつまでついててくれるんだろうか?
ふと気になって聞いてみたら、特に具体的な期間とかは言われていないと返された。
遠征の時のような用事があるときはそっちを優先しているとはいえ、冒険者になってからもう半年以上経ってるけど、こういう時ってどうすればいいんだ?
バイトだと新人教育とかは基本的な作業工程とか習ったら大抵終わりだけど、俺がやっているのはバイトじゃあ無くて冒険者。
仮に駆け出しを抜け出すまでと期間を定めたとしても、何をもって駆け出しを抜け出したと認定されるのかが分からない。
レベル2になれば駆け出しでは無くなるのか、それとも一定年数冒険者を続ければ駆け出しでは無くなるのか。
とりあえずティフィさんに聞いてみたら、解釈は人によるけど、大抵はレベル1は駆け出し扱いされるそうだ。
つまりまだ9階層でレベル上げしてる俺は駆け出しか。
ううむ、まだまだ先は長そうだ。
しばらくは好意に甘えさせて貰おう。
最速は『剣姫』の一年だそうだが、俺は一体いつになったらレベルが上がるんだろう。
=月□日
まさかシルバーバックと戦う事になるとは思わなかった。
本当なら11階層から出てくる筈の魔物なのに。
下から上がってきたんだろうか。
圧倒的な体格差に恐怖はあったけど、今の自分が何処まで出来るのか試したくもあった。
ラウルさんはそんな俺の心を見透かしたように「やってみるっスか?」と言った。
俺は迷わずシルバーバックの前に出た。
結果は辛勝。
的は大きくてもその分タフで苦戦させられた。
『
最後の最後で回避が間に合わなくて『キングクリムゾン』で時を飛ばした。
現時点で飛ばせる時間はせいぜい4秒(因みにボスは十数秒)が限度だけど、シルバーバックの攻撃を避けて態勢を立て直すには十分な時間だった。
最終的には胸を魔石ごとブッ貫いて倒すことは出来たものの、下層の魔物のヤバさを思い知った。
そしてやっぱりというかなんというか、シルバーバックでは偉業認定はされなかったようでアビリティは上がってもランクアップにはならなかった。
お姉さん曰く「試練は自ずと訪れるべき者のところへ訪れる」だそうだ。
つまり自分で探すようなものじゃあないと、そういう事なんだろうか。
偉業って割とフワッフワしてる。
―月―日
各アビリティの伸びがだんだん緩やかになっているきがする。
9階層じゃあこれくらいが限界か?
前のシルバーバックのように下層からモンスターが迷い込むなんて偶然を狙う訳にもいかない。
力:D563
耐久:D542
器用:C678
敏捷:C633
魔力:I0
今の俺の『ステイタス』を考慮すると微妙だ。
ティフィさんやラウルさんもちょっと微妙な所だと言った。
10階層以降は魔力を除く各アビリティがC以上、出来ればBくらいは欲しい所なんだけどな。
この数値だとギリギリ行けるとも取れるし、ギリギリ行けないとも取れる。
お姉さんは神妙な顔でしばらく様子を見るようにと俺に釘を刺してきた。
ギルド職員が皆、合言葉のように口にする『冒険者は冒険してはいけない』という言葉に則るならまだ行くべきじゃあ無いのかもしれないけど、どうしたものか。
―月[日
ラウルさんに遠征に来ないかと誘われた。
遠征と言っても階層記録更新のための大規模なものじゃあなくてレベル1や2のような低レベルの冒険者達を中心に強化するための小規模のものになるそうだ。
シルバーバックをソロ討伐したのをロキさんが聞いて「じゃあどうや?」って話になったらしい。
別に強要はしないそうだ。
正直行ってみたいとは思う。
ただ、お姉さんは迷っているようだ。
小規模の遠征とはいえレベル2も参加するため、場合によっては中層にも行く可能性も高いからだ。
そうなると装備も色々と見直す必要が出てくる。
俺の装備は『
波紋を通しやすい素材となると必然的に火に弱い、スト様の服やマフラーも手榴弾で吹っ飛んだしね。
―月*日
お姉さんにプレゼントを貰うまで今日が俺の誕生日だった事を忘れてた。
精神年齢で換算したらもうプレゼントをねだるような年齢でも無いし。
でも『誕生日おめでとう』の言葉が有るか無いかでも違うと思う。
プレゼントは『
おまけに俺のマフラーにも『
『アストレア・ファミリア』が健在だったころはよく編み物をやってたそうで、本気出したと言っていた。
やばい、泣きそう。
というかもう泣く。
ダンメモのエピソード0がすっごく気になる。
PVめっちゃ良かった。