転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか   作:柚子檸檬

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元旦の朝どころか三が日にすら間に合わなかった私はド低脳


十五頁目

 @月 #日

 

 最近になってクロエさんが俺に付き纏わなくなった気がする。

 その代わりに時折俺のことを『処分する傷んだ食材』を見る時と同じような目で見られてるような気がする。

 俺の身長がグングン伸びたからか、声が低くなり始めたからか、それともリューさんの折檻がやっと効いたのかは分からないが、これはいいことなんだよな?

 あの人のせいで黒髪の猫人見たら身構えるようになっちまったよ。

 

 それはさておき、先日新たに仲間になったシャーロットに関してだが、もしもあれが俺が知っている『ツェペリ一族が用いた黄金長方形による鉄球の回転』、もしくはそれに近しいものであった場合、それはスタンドの進化にも関わるし是非知りたい。

 とはいえジャイロだって最初の頃は一族に代々伝わる技術を教えることは消極的でジョニィがSBRレースに参加してまで追いかけてジャイロに本気だってことを認めさせ初めて教えようとなったんだから「教えてー」からの「いいよー」で済むとは到底思えない。

 無理矢理聞き出そうとして不和を起こしてもつまらないしとりあえずは見て盗む方向でやってみようか。

 

 そしてシャーロットの実力だがレベル1とはいえダンジョンで俺たち3人に着いて行ける辺り中々に強い。

 シャーロットが思ってたよりもデキるから慣らした後にいつもの流れで最初の死線(ファーストライン)周辺で暴れてたら出現したインファント・ドラゴンの通常種(というか通常のインファント・ドラゴン初めて見たかもしれん)の目に素早く正確に鉄球を当ててスタンさせてくれたお陰で総攻撃で押し切ることが出来た。

 獣人は身体能力や感覚器官が人間のそれと比べて遥かに上らしいし冒険者歴も俺と比べて長いそうだから経験で差を埋められるのかもしれないし、もしかしたらホル・ホースのように仲間がいる事で真価を発揮するタイプなのかもしれない。

 しかもありがたいことに基本脳筋戦法だった俺たちに今までいなかった司令塔とか支援が出来る器用なタイプ、今まで指示は俺が出してたから俺の負担が減って助かる、

 そして武器はジャイロと違って鉄球だけでなく何かの糸やナイフっぽい武器も持ってるようで状況に応じて使い分けてるようだ。

糸といえば『ゾンビ馬』を想起させるが、あれってどうやって作ってるんだろうな。

 

 この調子ならそろそろ18階層目指してもいいんじゃあないか?

 でもその手前には強力なボスモンスターのゴライアスがいる。

 倒したらレベル上がるかもしれんけど流石にレベル2とレベル1しかいない現状の戦力で未知数であるゴライアスとのガチバトルは出来れば避けたい。

 その辺はファミリア内で話し合って計画を立てて行こう。

 

 @月 %日

 

 聞いた話じゃあゴライアスは倒しても大体10日〜2週間くらいで再出現(リポップ)するらしい。

 そして4日前に剣姫が己のレベルを上げるための過程で倒した。

 もはや剣姫にとってはゴライアスすらもただの通過点に成り下がってしまい涙を禁じ得ないがこれはチャンスかもしれない。

 ロキさんにも許可は取ったが意外とあっさり許可貰えたな。

 その際にラウルさんやフィンさんから話を聞けたが、階層主のゴライアスはその巨大さ故に弱点である首や額を狙うのが難しいらしい。

 首が弱点だなんてまるで進撃の巨人に出てくる巨人だな。

 

 万全に備えるためにもまずは装備や物資の準備だ。

 

 まずはポーション、『ミアハ・ファミリア』系列の店で俺の華麗な値段交渉によって半額にまでまけてやったぞ。

 ざまーみろ、モーケタモーケタ。

 

 そしてあのブロマイド屋の前を通ったから何となく入ってみた。

 俺のブロマイドが500ヴァリスで売られててちょっと嬉しい。

 一方で剣姫のブロマイドが5万ヴァリスに値上がりしてた。

 その高騰したブロマイドを財布と交互に睨めっこしているグラサンとマスクで顔を隠した不審者(レフィーヤ)がいた。 

 何故この剣姫オタクのエルフとはこうも縁があるのか、これがプッチ神父の言う人と人との間に生じる引力だとでもいうのか?

 「お前もう持ってるじゃん」と声をかければ「ポーズが違うから別物」とのたまう始末。

 推しキャラの別verって思えば俺も欲しいなと不覚にもちょっと共感してしまった。

 

 迷いに迷ってたが結局買ってご機嫌の様子だ。

 

 

 @月 ¥日

 

 気分転換に掃除してたら何やら隠してあった球体のブツを発掘。

 リューさんに見せたら爆弾だと判明した。

 先代たちのうちの一人にこういった小道具を作るのが上手い人がいたらしく、おそらくはその人が忘れていった遺物らしいが、リューさんは特に欲しがらなかった。 

 

 しかし何故危険物を忘れていくのか、俺だって火炎瓶とか作ってるけど部屋に放置はしてないぜ。

 リューさん曰く結構威力あるから使うにしても扱いには注意するようにと物凄く念押しされたので他の小道具みたく『エニグマ』で紙にしまうとしようか、念押しするくらいだし威力は相当なものかもしれないから火炎瓶以上に使い所には注意が必要だろう。

 もしインファント・ドラゴンみたいなデカい敵でも出現したら使ってみるか。

 まっ、インファント・ドラゴンだってそこまで頻繁に出現するわけでもないし、魔石食った強化種だってそう、おまけにゴライアスの復活はしばらく先だしで精々18階層まででデカいモンスターといえばミノタウロスかライガーファング程度だろう。

 

 それにしても『エニグマ』が便利過ぎる。

 ダンジョン遠征における物資運搬のための労力や食糧や飲料水の問題が一気に解決しちまうんだもんな

 宮本輝之輔は仗助たち狙わないでスタンドで一儲けする方向でいけば本人間にならずに済んだろうに。

 

 

 @月 &日

 

 明日はいよいよ18階層を目指す遠征(18階層が目標でも遠征でいいんだよな?)だ

 持っていく物資は全部用意して足りないものがないか5回くらい目視で確認した。

 コンディションもしっから整えて明日は万全の状態で挑めるだろう。

 

 当たり前だが明日はリューさんは同行しない。

 あくまでも新メンバーの4名で踏破するのが目的になっている。

 

 

 

 

 

 『このジョシュア・ジョースターに緊張による不眠は決してない!』と思いたかったが明日の遠征の緊張で眠れないから日記の続きを書くことにするとしようか。

 

 ポーションは念の為俺を含めた各メンバーに10本持たせるように40本買っておいたし、装備の手入れは全部『クレイジー・ダイヤモンド』で触ってしてあるし、食料は『エニグマ』で5日分紙にしてあるし、念の為『ハーミット・パープル』で18階層までの地図は作っておいた。

 

 さっき外見てきたら伊織さんも眠れないのか刀振ってるし、ソーは大人しいけど壁にもたれ掛かってるだけで呼んだら返事したから起きてるみたいだし、シャーロットはジャイロみたくナイフで器用に鉄塊を削って鉄球を作っている。

 

 緊張してる(ソーに関しては不明だが)のは俺だけじゃないのね。

 なんかのび太君みたいにパッと寝られるみたいな技術欲しいなァ。

 精神統一でもしてみようか。

 

 

 月 日

 

 18階層到達。

 疲れた。

 もう寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョン17階層

 『迷宮の楽園(アンダー・リゾート)』と呼ばれる18階層の手前であり、中層の階層主『ゴライアス』が出現する階層。

 

 そこを()()のファミリアが活歩していた。

 

「……貴様ら、いつまでついてくる気だ?」

 

「道のり何同じだけでついてきてるってのはちょっと自意識過剰過ぎじゃあねぇか?」

 

 各ファミリアのトップが睨み合いながらもその歩みが止まることはない。

 片方は『新生アストレア・ファミリア』、そしてもう片方は昨今で勢力を拡大しつつある『アポロン・ファミリア』、その二つがかち合わせた途端、(主にリーダー二人に)ピリピリとした空気が周囲に満ちていく。

 

「えっ、なに? この伊達男と何かあったの?」」

 

「あー、ヒルナンデスとはちょっとした因縁がですね……」

 

「ヒュアキントスだ!!」

 

 伊織がひっそりと聞き、ジョジョが答え、ヒュアキントスが名前の間違いに激怒。

 あわや一触即発の空気ッ、『新生アストレア・ファミリア』が4名に対して『アポロン・ファミリア』はその10倍以上もの人数を擁していた。

 しかしダンジョン内、しかも18階層手前ということもあって今のところは無駄に体力を消耗したくないのもあってギリギリ冷戦状態が続いている。

 ジョジョもここで事を構える気はなかったが、かと言ってへーこらする気にもなれずに警戒を続けていざとなったらの準備もしていた。

 

「ようやくここまできたか」

 

「あれが嘆きの大壁…」

 

 ジョジョが見たのは他の部分とは質感の違う壁。

 ここからあのゴライアスが生まれてくるのだと思えば身構えもしてしまうが、ヒュアキントスはその姿を鼻で笑った。

 

「フッ、ゴライアスは一度倒されれば再出現まで約2週間の期間がある。そんな事も知らないのか?」

 

「質問に質問を返すようで悪いが、ダンジョンってのは一々冒険者の都合に合わせてくれるもんなのか?

 

「詭弁だな、例外というのはそうそう起こらないからこそ例外というのだ。不測の事態に備えるのも大事だがそれに遭遇しないように調べ、計算して行動するのも…」

 

 その瞬間、嘆きの大壁かパキッと何かが割れるような音がした。

 

「ファミリア団長としての役割…」

 

 音は次第に大きくなっていき、そして──。

 

「来るぞッ、構えろーッ!!」

 

 奴は再度産声をあげたッ!!

 

「──グオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 ほんの一瞬、しかしその一瞬が永遠に感じられる。

 まさに時間が止まったような感覚。

 

 だが、時は動き出す!!

 

「ゴライアスだぁぁぁぁぁーッ!!!」

 

 誰が上げた声だろうか? 否、そんなことは問題では無い。

 目の前で起きた異常事態(イレギュラー)に『アポロン・ファミリア』の団員たちの多くは総崩れになった。

 

「そんな、ゴライアス復活はまだの先の筈だろ!?」

 

「ヤダヤダヤダこんなところで死にたく無い! 死にたくないよーッ!!」

 

「ああ、やっぱり巨人が……ゴライアスが……」

 

「何やってんの! 放心なんてしてたら死ぬわよ!?」

 

「落ち着けお前たち!! 聞いているのか!!?」

 

 ヒュアキントスが統率をとろうにもそれを聞ける状態にあるのはヒュアキントスと同じレベル2のごく僅かな団員たちだけ、それ以外はその場から逃げようとする者、放心する者ばかりでまるで聞いていない。

 

(クソッ! 何だこの有様は!?)

 

 人数が多いのは確かに利点だが、それは連携が取れていればの話。

 『アポロン・ファミリア』の多くは神であるアポロンに忠誠を誓っていても、ヒュアキントスにはそこまで忠誠があるわけではないこともあって、こういった事態には烏合の衆と化してしまう。

 

「どうするヒュアキントス! 戦うのか!」

 

「この状態じゃ無理に決まっているだろう! 仕方ない、言うことを聞けない連中を置いて逃げ……」

 

 そういえば『新生アストレア・ファミリア』の奴らはどうしただろうかとあのヘラついた顔を思い出しながら周囲を見渡して──見つけた。

 

 連中は警戒体制こそ解いていないが4人とも平常心でゴライアスを見つめている。

 

「予定外にゴライアスが出てきちまったけど……どーする?」

 

「どうするって、戦うんじゃないの?」

 

「俺は団長の指示に従おう」

 

「逃げるにしてもあちこちにいる『アポロン・ファミリア』の団員たちが邪魔になりそうだね。余力もある事だし、一旦様子見での戦闘を視野に入れるのもアリじゃあないかな?」

 

 あろうことか、あの4人は戦闘すら視野に入れて動き出していた。

 

(だというのに私たちは逃げる? ……ありえない、そんな無様な報告はアポロン様には出来ない!)

 

 『アストレア・ファミリア』はかつて壊滅したファミリア、そんなファミリアに遅れを取るのはヒュアキントスのプライドが許さなかった。

 

「動ける連中は私について来い! ゴライアスを仕留めるぞ!」

 

「ヒュアキントス正気か!? 階層主だぞ!?」

 

「ならお前はアポロン様に『女神アストレアの眷属が戦う中、我々は大量の犠牲者を出した上に尻尾を撒いて逃げました』と報告出来るのか? 逃げたいなら勝手にしろ、私はアポロン様に失望されるくらいならここで死ぬ方を選ぶぞ」

 

 そう吠えたヒュアキントスについて行くのは付き合いの長いリッソスだけであった。

 たった一人、しかし一人で戦うよりは遥かにいい。

 

「行くぞお前ら! ヤバいと思ったら逃げるからな! それと絶対に死ぬんじゃあねぇぞ!!」

 

 ジョジョの号令を皮切りにゴライアスとの戦いは始まった。

 

「喰らえッ、シャボンカッター!」

 

 回転を加えることで切り裂く刃となったシャボン玉、今やハードアーマードの鱗すらも切り裂く技だが、ゴライアスの外皮はそれすらも弾いてしまった。

 

「ゲェーッ! 思ってたより硬えぞ!」

 

「うわっ、斬り甲斐ありそうね!」

 

 ゴライアスの外皮の硬さを目の当たりにしても伊織は全くたじろぐ事もなしに笑顔で斬りかかり、その硬い外皮を薄皮一枚とはいえ斬って出血させてみせた。

 

「うーん、もうちょいかかりそう」

 

「ゴアアァァァァァァァッ!!」

 

 先程のシャボン玉と違い、己を斬った伊織を危険視したのか、ゴライアスは彼女へと巨大な拳を振り下ろした。

 

 ──しかし、その拳が彼女へと振り下ろされることはなかった。

 

「何をしている」

 

「ごめんごめんちょっと考え事してた」

 

 もしもゴライアスに感情があったのだとしたら、たった一人の男にその拳を止められたことに戦慄し、恐怖したであろう。

 それほどにソーの怪力と使う槌は異質であった。

 

 さらにゴライアスの目に一つの鉄球が『回転』を伴って飛来、それを受けるのではなく回避を選んだのは階層主が故の本能で何かを察知してのものだろうか。

 鉄球は空を切って後ろの壁へと激突してめり込んだ。

 

「おや、鈍足かと思ってたが意外と反応が速いね。それにこうも高低差があると避けられてしまうか」

 

 鉄球を投げたシャーロットは少々悔しそうに眉を顰めながらもゴライアスを分析している。

 動く的は当てられないわけではないが、ゴライアスほどの相手になるとそう簡単にはいかない様子。

 

「足元がお留守だぜ?」

 

 隙ありと言わんばかりに足元の裏に回っていたジョジョが銀色の波紋疾走(メタルシルバー オーバードライブ)を流した剣でゴライアスのアキレス腱を狙う。

 

「グゥ……!?」

 

 硬い外皮を持つゴライアスの中でもよく動かすこともあってか、アキレス腱は他の部位よりも比較的に柔な分斬りやすい、完全な断裂とまではいかなくとも片足の機能を落とすには充分だった。

 

(何だ……こいつらの息のあった連携は!?)

 

 ヒュアキントスは既に魔法の詠唱を終えて戦いの経過を眺めながら隙を見て撃ち出すつもりだったのだが、中々そのタイミングが見出せず戦いを傍観する形になってしまっていた。

 

(だが今なら!)

 

 ゴライアスは片足の機能低下によって動きが鈍っている。

 今なら魔法が当たる可能性が高い。

 何よりこれ以上傍観し続けるのはヒュアキントスのプライドが許さない

 

「アロ・ゼフュロス!」

 

 ヒュアキントスから放たれた魔法は回転する光の円盤、それが一直線にゴライアスに炸裂──したが、ゴライアスもアキレス腱を斬られて学んだのか、どうせ避け切れないのならと外皮の硬い腕の部分で受けてダメージを軽減してしまった。

 

「そんな、何故だ……」

 

「おい! ボサっとすんな!」

 

 ジョジョの声にハッと意識を取り戻したヒュアキントスはゴライアスがこちらを睨んでいることに気がつく。

 そしてさっきまで足元にいた筈のジョジョがいつの間にか隣にいた。

 

「おい、さっきの魔法はまだ撃てるのか?」

 

「撃てる……が、それが何だと──」

 

「じゃあ魔力の限界ギリギリまで込めて撃ってくれ。狙いに関しては俺がどうにかするから考えなくていい」

 

「……私に指図するつもりか?」

 

「はーっ、手を貸す気がねぇんならいいや」

 

 ジョジョはヒュアキントスに見切りをつけたのか、すぐさま前線へと戻っていった。

 

(ちぇーいいことおもいついたのによーッ)

 

 向こうに連携する意思がないのであれば仕方ないとばかりに切り替えた。

 

 ゴライアスには着実にダメージを与えているが未だに決定打には至っていない。

 それに先程の出来事でゴライアスは学習していることが判明した。

 

(嫌な予感がする……こういう時の嫌な予感ってやつは当たりやすいんだよなァ〜)

 

 そしてジョジョの嫌な予感は当たってしまった。

 

「オオオオオオオオオオオ─────ッ!!!」

 

 ただ巨大な咆哮、しかしそれはレベル1〜2の冒険者たちの動きを鈍らせるのには充分でだった。

 耳をつんざくような轟音を聞き続ければ目眩で行動を封じられる危険性がある、かといって耳を塞ごうものなら両手が使用不可能になって攻撃手段が封じられてしまう。

 そうなれば移動速度が低下していても巨大故のリーチの長さを活かして潰していけばいい。

 まさしく自力の差による暴力。

 

「ぐっ、うるさっ……」

 

 まずは伊織がその痛恨の一撃を喰らった。

 咄嗟に後ろに跳んで幾分かダメージを軽減出来たが、そのまま壁に叩きつけられた。

 さらに悪いことに片脚が変な方向に曲がっている。

 

(うっわぁ……感覚ないけどこれ絶対に折れてるわよね……)

 

 その様を見たソーはすぐに動けなくなっているシャーロットを抱えてゴライアスから距離をとった。

 レベル2の伊織でこの有様ならレベル1のシャーロットでは一発でもまともにくらえば即死しかねないと判断した結果だ。

 

 しかしゴライアスはその二人を追うよりも己の足を奪った男(ジョジョ)を優先した。

 

(やべぇ、足が……なら!)

 

「オオオオオオオ!」

 

「『ザ・ワールド』、時よ止まれ!!」

 

 ほんの一瞬時が止まる、ジョジョだけの世界となった。

 その一瞬は逃げることは出来なかったが、ジョジョは防御の姿勢を取りゴライアスの薙ぎ払いに備えた。

 

 果たしてこの選択は最善だったのか否か、しかしダメージの軽減には成功、そして吹き飛ばされたジョジョはそのまま地面に叩きつけられた。

 

(は、波紋使えなかったら全身バラバラになってただろこれ……)

 

 いっそ身体が動くうちに伊織を回収してそのまま逃げることを視野に入れたジョジョの顔をヒュアキントスが恐る恐ると言った風に覗く。

 

「おい、生きているか?」

 

「なんとかな。というか逃げてなかったのか」

 

「あの状況で逃げられるか。それで勝てるのか?」

 

「少なくとも今の俺たち4人じゃ多分無理」

 

 全員で決めたこととはいえ流石に浅慮だったと後悔した。

 

「さっき私の魔法を必要としていたな。私が力を貸せば勝てるのか?」

 

「どういう心境の変化?」

 

「力を貸すと言ったんだ、グチグチ言うな!」

 

 アポロンに失望されて見捨てられるくらいなら死んだ方がマシとはいえヒュアキントスも進んで死にたいわけではない。

 もし手を貸することでゴライアスに勝てるのなら、死ぬことよりもそれを選択したいと思っただけだ。

 

「それで勝てるのか?」

 

「上手く行けば咆哮潰せる」

 

「くっ、失敗したら怨むぞ! 【──我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ!我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ。放つ火輪の一投! 来たれ、西方の風!】」

 

 ヒュアキントスはすぐさま詠唱を始めた。

 そして己の残りの魔力を精神疲弊(マインド・ダウン)ギリギリまで込める。

 

 ゴライアスはジョジョが生きているのを確認するや否や距離を詰めるために動き出した。

 まるでこの戦いでほんの少しでも感情が芽生えたのか、ゴライアスは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。

 

 “所詮てめーらなんざその程度さ!”

 “精々軽傷を負わせるのが限界なんだよォ!”

 “圧倒的な力の差の前にはどーすることもできねーだろう!!”

 

 ……そう言っている!

 この巨人はそう言っている!!

 

「おい、本当に狙いは定めなくていいんだな!? ここまで魔力を込めるとコントロール効かないからな!?」

 

「いいから! ゴライアス来てるゴライアス来てる!!」

 

「アロ・ゼフュロス!!」

 

 放たれしは先程よりも巨大な光の円盤。

 

「頼むぜ『ピストルズ』!」

 

『チクショーッ! オレタチノ専門ハ『弾丸操作』ナノニ無茶ナ注文シヤガッテェーッ!』

『アチチチチチ、スタンドハ精神エネルギーノ具現化ダ! 同ジ精神エネルギーノ魔法ガ掴メナイナンテ道理ハネーッ!』

『帰ッタラジョジョガミア母サンノ店デタラフク食ワセテクレルッテヨ!』

『ヤル気出テキターッ!! ヨッシャアイクゼェーーーーーッ!!

 

 ジョジョから出てきた4体(・・)の小人が光の円盤を掴む。

 小人たちの名は『ピストルズ』という群像型のスタンドである。

 本人たちが言うように弾丸専門なこともあってかかなり無理をしているようだった。

 

 光の円盤はそのままゴライアスの横を通り過ぎていく、あわや外してしまったのかとヒュアキントスは隣にいるジョジョを恨めしそうに睨み、ゴライアスは拍子抜けしたかのように魔法から意識を逸らす。

 

 それこそがジョジョの狙いだ。

 

『ブチ当テロ!! イィーーーーッハァーーーーッ!!』

 

 『ピストルズ』が光の円盤を蹴る。

 

 4体が狙うは──首の真後ろ。

 

「そこ、弱点だったよな?」

 

「ゴァッ!!?」

 

 全くの無警戒だったゴライアスは弱点である首の後ろに『ピストルズ』が勢いをつけた魔法を喰らった。

 ゴライアスといえど頸椎の損傷は無視出来ないものであり、ほんの少し動きが固まる。

 

 魔法を放ったヒュアキントスは明らかに奇妙な軌道を描いた様に一瞬困惑。 

 

(今のは一体、奴の魔法かスキルによるものなのか……って何だこの輝きはッ!!?)

 

 隣にいたジョジョは太陽のようにとまではいかずとも光り輝いていた。

 格上の相手であり、大きなダメージを受けて追い込まれている今の状況はスキルである『幻影の血(ファントム・ブラッド)』が発動するには充分。

 

「もいっばあああああつッ!!」

 

 ゴライアスの動きが止まったのをジョジョは見逃さないッ、全力を込めて投げるは今は亡き小人族(ライラ)置き土産(爆弾)

 ジョジョは自慢出来るほどコントロールがいいというわけではないが、それでもこの爆弾をゴライアスの開いた口に放り込んでやる自信があった。

 

『ダカラ何デ弾丸以外ノモンバッカリ持タサレルンダヨーッ!』

『ツベコベ言ウナ! コッチハ実物ナダケマダマシダッ!』

 

 無論、それは残った2体の『ピストルズ』のお陰によるものなのだが。

 投擲された爆弾は吸い込まれるかのようは軌跡を描いてゴライアスの口の中へと放り込まれた。

 

 ──そして爆ぜた。

 

「ゴ…カ…ァ…」

 

 盛大に血を吐き出して膝をつくゴライアスには先程までにあった余裕は消し飛んでいた。

 頸椎が損傷して上手く動けない上に喉を潰されて咆哮まで封じられてしまったこの巨人にそんなものあるわけがない。

 

「ちょっと借りるわねー!」

 

「わ、私の杖ェーーーッ!!?」

 

 声の先にはつい先程壁に叩きつけられていた筈の伊織が壁伝いに走っていた。

 折れた方の足は叫んでいる黒髪の少女から奪っ……借りた杖らしきものを添え木にして無理矢理動かしている。

 その先にいるのは膝をついたゴライアス。

 

 頂点まで駆け上がった彼女は折れてない方の足で壁を強く蹴り、ゴライアス目掛けて跳んだ。

 

「秘剣──倶利伽羅一閃」

 

 それはまるで天から降ってきたかの如き斬撃。

 硬いゴライアスの外皮を斬り裂き、その先にあった核の魔石をも真っ二つにしてみせた。

 

 ゴライアスは断末魔すら上げることなく灰となって消滅。

 残ったのは2つに割れた魔石とドロップアイテムの硬皮のみ。

 

 唐突に生み出された巨人は今ここで討伐された。




しばらく執筆から離れてたらリューさんがダブルランクアップしたりチート魔法覚えてる…
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