転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか   作:柚子檸檬

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平成が終わる前に投稿できて良かった。


五頁目

☆月ε日

 

 今日からリオンさんが俺の事を鍛えてくれることになった。

 先日のお姉さんに相応しい眷属云々はこの意味を込めての発言だったようだ。

 自主鍛錬もそろそろ限界だったし、鍛えてくれることに関してはこちらとしては嬉しい限りだ。

 何せ上級クラスの冒険者から直々に指導して貰えるんだから願ったりかなったりだ。

 リオンさんにも都合があるからとおいそれと頼めそうになかったのだけど、向こうから言い出してくれたのは本当にありがたい。

 リオンさんとしても自分に万が一の事があった時のために俺には強くなって貰いたいんだそうだ。

 そんな万が一は起こって欲しくないけどね。

 ジョナサンにとってのツェぺリさん、ダイにとってのアバン先生、剣心にとっての比古清十郎、ナルトにとっての自来也みたいに自分の事を導いてくれる人物ってのは人生において貴重な宝だと思う。

 例え初撃でいきなり俺の意識を刈り取ってくるような人だとしてもだ。

 

 いい感じに書いといてなんだけど前言撤回。

 やっぱりいきなりノックアウトさせるのは何かおかしいわ。

 覚えてるのは気づいたらリオンさんの射程範囲に入ってて腹だったか頭だったかに強い衝撃が走った所まで。

 そして目が覚めたら俺は店の中で横になっていた。

 その様子を眺めてた茶髪な猫人曰く「ふげえ」と悲鳴を上げて水平に吹っ飛んでそのまま壁に激突したそうだ。

 ディオっ跳びしてたのかよ、ちょっと見てみたかったぞ。

 リオンさんはランクアップしたばかりでまだ力の加減が難しいのと、元々やり過ぎてしまう性分もあってかこんな結果になってしまったと謝られた。

 もしかしたら初見で『グーグー・ドールズ』くらって捕まったのを無意識に警戒してたのもあるかもしれないな。

 つまり半分は俺のせい?

 まあいいや、死ななきゃ安い。

 ちなみに手当てしてくれたのは店主のおばさんだった。

 何故か他の店員からはミア母さんと呼ばれている。

 理由は不明だし、別にどうでもいいや。

 迷惑かけちゃってすいませんねと謝ったら何だか苦笑いして「坊主を見てると隙あらばちょっかいかけてくるじゃじゃ馬娘を思い出すねぇ」と言い出した。

 どうやら母さんと知り合いらしい。

 こういうのを『世間は狭い』っていうんだろうなぁ。

 母親になってちょっとは大人しくなったかと聞いてきたが、まあそんな事は無い。

 アラフォーだってのにまだまだ現役よ。

 素手で岩を砕いたりするし、夫婦喧嘩で親父が勝ったところなんて見た事無いし。

 親父も元冒険者だって言ってたし、あの母さんと喧嘩してケロっとしてるから弱いわけじゃあ無いんだろうけど。

 店員さんたちは『現役時代のミア母さんにちょっかい出すとかこの子のお母さん何者?』といった視線をこちらへと向けてくる。

 知らんがな、こちとら二人が所属してたファミリアは教えて貰えなかったんだよ。

 ブロマイド屋探しても二人の名前は無かったし。

 十年以上も前に引退した冒険者になると知名度も下がるんだろうな。

 というかミアおばさんそんなにやばいの?

 母さんのちょっかいって文字通りの意味じゃあないだろ?

 最低でも延髄切りくらいするイメージがあるんだけど。

 

 そんで休憩も挟んだし特訓再開。

 他の店員さんたちから『まだやるのかよ』という視線を受けながらも棍棒のように長い木刀を構えるリオンさんと相対する。

 木刀でリューというとあのリーゼントシャーマンが真っ先に思い浮かんだけど別に関係ないな。

 あくまで俺の基礎戦闘力向上が目的だからスタンドは無し。

 今度は身体は跳ぶけど意識は飛ばないようにそれなりに加減されているようだ。

 お返しにシャボンランチャー撃ってみたけど笑っちゃうくらい当たらない。

 頭で分かってたけどリオンさん強いね。

 おまけに俺が自主鍛錬してるの見てたし、この結果は当然といえば当然だ。

 剣を振るえばあっさりと躱されてカウンターで吹っ飛ばされ、波紋疾走(オーバードライブ)のパンチは上手い事姿勢を崩されて投げ飛ばされて、蹴りに至っては足を掴まれて同じく投げ飛ばされる。

 投げ飛ばされても吹っ飛ばされても全身強打にはならず、そのまま立ち上がれる。

 何故なら受け身は母さんに習った時に散々やらされたから。

 母さん曰く『死ななきゃ安い』と受け身やダメージ軽減の防御方法は物理的に叩き込まれてる。

 あれが無ければ痛くてしばらく動けなかったかも。

 1時間くらいしたら仕事があるからと今日の鍛錬は終了した。

 気づいたら波紋の呼吸も乱れてたし、俺もまだまだだな。

 

 ちなみに『ステイタス』を更新して貰ったらこんな感じになった。

 

 Lv.1

 力:I0→18

 耐久:I0→35

 器用:I0→22

 敏捷:I0→30

 魔力:I0→0

 

 お姉さんに聞いてみたら、駆け出し冒険者が1~3階層辺りで丸一日経験値稼ぎするよりも熟練度が上がってるそうだ。

 つまりダンジョンに潜るより、リオンさんにぶっ飛ばされてる方が強くなれると。

 何か解せぬ。

 午後はお姉さんと共に行動した。

 お姉さんは今日、このオラリオに来てから初めて外に出た。

 勿論素の表情じゃなくて俺が貸したスタンド『クヌム神』で変装してだ。

 どうせ『クヌム神』なんて使う機会滅多に無いだろうとお姉さんに貸し出した。

 神様でもスタンドDISC適合するのかという心配はあったけど、杞憂に済んで良かった。

 『クヌム神』はハズレスタンドと良く言われているが、どんなスタンドにも効果的な使い方がある。

 実際にオインゴが店員に化けて毒を盛ろうとした作戦は悪くなかったし、五感を惑わす『ティナー・サックス』さえ破ったイギーの嗅覚を誤魔化したのは称賛に値する。

 現在のお姉さんの姿は桃色のショートヘアにパッチリしたツリ目と完全に別人状態、服装も藍色のエプロンドレスに変えてしまえば目の前にいるのが女神アストレアだと気づかれる事はどちらかがボロでも出さない限りまず無い。

 せっかく変身しているのだからとこの姿では『ティア』と呼称するようにと言われた。

 何か偽名で『ティア』と『バルゴ』で迷ってたみたいだけど、その二つなら断然『ティア』だと思います。

 何でそんなテイルズでヒロインやれる名前とモンスターみたいな名前で迷うんだ?

 最初にやってきたのはお姉さんが見ておきたかった『星屑の館』の跡地、つまりかつての『アストレア・ファミリア』の拠点。

 跡地と言っても行ってみたら建物自体は残ってたし、建物内も小奇麗だった。

 近隣住民に話を聞いてみると、「あの建物を拠点にしてた正義のファミリアにはいつも救われていました。壊滅したのは知っていますけど、ここを残しておけばもしかしたらあのファミリアの方々がひょっこり帰ってくるんじゃないか」と。

 その話を聞いてお姉さんは思わず涙して、俺は心を熱くした。

 ここまで想ってくれている人々に応えてあげたい。

 ならぬか喜びはさせたくないよなぁ。

 

 次にやってきたのはギルド。

 ギルドを統括している主神ウラノスと話をつけるとお姉さんは言っていた。

 成程、ギルドはある意味『ウラノス・ファミリア』でもあるわけだ。

 ギルドの責任者っぽい太ったオッサンとの話がついて俺はお姉さんと共にギルドの地下へ。

 そこで待っていたのは黒いローブに身を包んだ荘厳な老人、否老神ウラノス。

 元の姿に戻ったのを見て老神ウラノスは驚いていたが、深くは突っ込まずに話が進んだ。

 オラリオの現在の情勢について軽く聞いた後に本題に入った。

 小難しい話が多かったけど、お姉さんの要求は『アストレア・ファミリア』の再興、それに伴いリオンさんを冒険者として復帰させて欲しいの二つ。

 しかし老神ウラノス、ファミリア再興はともかく『疾風』の復帰までは認められないと苦言する。

 リオンさんは確かに闇派閥に止めを刺してオラリオ暗黒期を終わらせた人物であれど、彼女はやり過ぎてしまったと。

 お姉さんが色々言っても、今までの『アストレア・ファミリア』の活躍を加味しても情報の規制と黙認が精一杯だと断固として譲らない。

 何か援護射撃をしてやりたいけど、と考えてふと思いついた。

 『今までので駄目ならこれからの活躍を加味したらどうでしょう?』と。

 どうせ駄目元だ。これで情勢が動くのなら儲けもんでしょ。

 老神ウラノスは俺の言葉に対して否定はせずに腕を組んで唸り出した。

 散々唸った後に「ならやってみせろ」と、もしかつての『アストレア・ファミリア』のような功績を叩き出せるファミリアに伸し上がればリオンさんの復帰を認めるよう働きかけると約束した。

 おまけに俺の冒険者登録についてはギルドの方に話を通して『アストレア・ファミリア』に関する情報もしばらく規制をかけると言ってくれた。

 先行投資ってやつだろうか。

 そこまでやってくれると今後何らかの無茶振りとかありそうでちょっと怖い。

 これで二柱の交渉は終わった。

 最高ではないにしろまずまずの結果だったんじゃあないだろうか。

 お姉さんの方は俺がウラノスに目を付けられたんじゃあないかとちょっと心配そうだ。

 どうも、ファミリアによってはギルド側から指令が下る事があるらしい。

 勿論それには危険なものも多く、過去にそれが原因で大勢の死亡者を出した事件もあったらしい。

 いきなりそんな指令が出される事は無いにせよ、お姉さんはそれを考慮して交渉では俺を引き合いには出したくなかったみたいだ。

 ごめんなさい。

 

 ☆月♪日

 

 昨日で幾らか前進したような気はするけど、根本的な問題は結局解決していないというジレンマ。

 まず最大の問題は人員が足りない事。

 手が足りないんじゃなくて人員ね。

 手なら『ハーヴェスト』みたいな群像型のスタンドとかで何とかなるし。

 宣伝なんて出来る筈も無いし、勧誘しようにも何の実績も無いレベル1の駆け出し小僧がやっても効果があるとは思えない。

 ならダンジョンに潜ってランクアップするまで頑張ってみるかといえば俺はまだ一人だけで、ダンジョンに関してはモンスターの知識が少しあるだけの超絶初心者。

 万が一を考えればそれなりに慣れた冒険者が一人か二人いてくれた方が安全かつやり易いというのがお姉さんの言い分。

 俺だって死にたいわけじゃないし、リスクは背負わないに越した事は無いもんね。

 スタンドに頼るのはいいけど、頼り続けてたらいつになったらランクアップするのか分からん。

 というかどれだけ取得経験値が減るのかとかの検証とかもしといた方が良いのかな?

 ギルドに言えば似たような境遇の冒険者でも紹介して貰えるかとギルドに向かう途中にまさかの女神ロキに遭遇。

 今回は一人じゃなくて隣に深緑色の髪をしたエルフが付き添ってた。

 ブロマイドでも見たオラリオ最強の『九魔姫(ナインヘル)』ことリヴェリア・リヨス・アールヴ。

 本物を見れてなんか感動した。

 女神ロキは「なんや坊主、こんな美女はべらして隅におけへんな~」とニヤニヤしていて『九魔姫』に軽く頭を叩かれてた。

 何か神の扱いが雑。

 お姉さんの方は何かを思いついたのか女神ロキに何かを耳打ちすると主神ロキのニヤニヤ顔が変わって細目が開く。

 細目キャラの目が開くのは、昼行燈を気取ってるキャラが突然シリアスモードになるやつの一つだと思う。

 話をする流れになって、話し合いの場にはミアおばさんに頼んで『豊穣の女主人』を少し使わせて貰った。

 まだ昼まで客もいなかったからとお姉さんが変身を解くとその場に居合わせたリオンさんが驚きのあまりお盆をへし折ってた。

 そういやリオンさんには変身の事言ってなかった。

 二柱の女神は少し昔話をしたかと思えば、真面目にこっちの事情を話して俺に随伴してくれるいい感じの冒険者を紹介してくれないかって話になった。

 顔馴染みだって言ってたし、事情を話すって事はそれなりに『信用』してるし『信頼』もしてるって事でいいのかな。

 俺はといえば『九魔姫(ナインヘル)』が話しかけてくれたけど、緊張して碌にまともな会話をした記憶が無い。

 というか何を話したらいいか分からない。

 リオンさん相手だって向こうの質問に答えてただけでそんなに話した記憶無いぞ。

 まるでプロのスポーツ選手や有名女優でも相手にしている気分だ。

 素数を数えても落ち着かない。

 あれはプッチ神父が特殊なだけか。

 二柱の話し合いの結果、「なら人員揃うまでウチの傘下に入るってのはどうや?」って話になったみたい。

 情報規制云々はいいのかと聞けば、「別に他のファミリアを傘下に置くのに許可なんていらんやろ」と返された。

 こっちとしては二大派閥の内の一つがバックについてくれるのは有難いけど、何でそんなあっさり決まった?

 お姉さんに聞いてみたら女神ロキに俺の出生について話したら乗り気になったそうだ。

 「昨日はあんな事言ったのに、ダシに使ってしまってすいません」と謝られたけど別にいいですよ、ファミリア再興の足掛かりになりさえすれば。

 寧ろ何でダシになったのか知りたい。

 反対してたリオンさんも「『ロキ・ファミリア』がバックにいるからといって気を抜いてはいけませんからね」と遠回しに再興に関して反対するのを止めてくれたようだ。

 

 ☆月$日

 

 今日はリオンさんとの特訓を除けば、ギルドの手続きやらダンジョンの講義やらで潰れた。

 カウンターに行って名前を言ったら既に話は通っていたようで冒険者登録の手続き自体は恙無く終わったんだけど、問題は駆け出しがよく受けるダンジョンの講義だった。

 自分の知識の照らし合わせも兼ねて気軽にお願いしたけど、思っていた以上に徹底的だった。

 講義を担当してくれたのはにこやかだがどこか笑顔が恐い三つ編みのお姉さんだった。

 1~17階層までに出てくるモンスターの種類、特徴、主な対処法などなど。

 これ、一日でやる量じゃあないよなって感じ。

 でも覚えてみせる。

 最低でもメモする。

 幸いな事に前世で聞いたことあるような名前や特徴のモンスターも多かったし、思ってたより頭に入る。

 色んな人達の期待を背負ってるし、お姉さんだって骨を折ってくれたんだ。

 明日にはダンジョンアタック。

 『ロキ・ファミリア』からは誰が来てくれるんだろ。

 




リヴェリア「良かったのか? あんなにあっさりと決めて」
 
ロキ「その割にリヴェリアママ反対せんかったやん」
 
リヴェリア「誰がママだ。アストレア・ファミリアには色々恩もあるし、『疾風』の件で何もしてやれなかった負い目もある」
 
ロキ「にしてもあの色ボケがこの事知ったら腰抜かすかもしれへんな」
 
リヴェリア「言い触らすなよ? しばらくは無名のファミリアとして扱った方が良い」
 
ロキ「分かっとるわ。あ~出来る事なら直接ウチが欲しかったわ……でもアスたんの希望の芽を摘むわけにもいかんしなぁ~」
 
リヴェリア「ところで彼には誰を出す?」
 
ロキ「レベル2か3くらいの団員でええやろ。あんまりレベル高いの付けたら目立つ」
 
リヴェリア「ラウルやアキ辺りか……いや」
 
ロキ「どないしたん?」
 
リヴェリア「この際だから将来の事も考えてレフィーヤを付けるのもありかと思ってな」
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