アカメが斬る!帝都の繁栄と腐敗   作:色々し隊

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第12話 皇帝の日常

 Dr.スタイリッシュは科学者だ。幾多の実験を繰り返す彼にとって材料は必須だった。なければ何も見つける事ができないから、加えて非人道的な実験をするには裏ルートから集める必要がある。この時代は彼にはうってつけだった。

 賄賂、権力が蔓延る今の世で正義を貫く文官は数少なく容易に取引する事ができた。

 それからだ、目覚ましい結果の数々を収め帝国にすら名を轟かせた彼が行き着いた先は地獄だった。

 

 苦しみを受け、自我を奪われて、肉体もボロボロの彼に生きるという選択肢はない。用済みになったからには捨てられるのが道理、かつての自分が実験材料にして来た行為がそのまま返ってくる。

 その日、スタイリッシュは死んだ。解剖によれば、肉体の中から掻き回されて臓器や血管がミックスされていたと言う。

 

 

 

 

更衣室で庶民の格好をさせた後、タナトス自身も擬態し普通の人間になった。帝都へ行くとそこは民達が騒ぐ豊かに見える光景が広がっている。その光景を見るなり皇帝はほっと胸を撫で下ろす。

 

皇帝

「よかった。帝国内部の不遜分子がよからぬ事をしていると思ったが…心配は無用であったな。

 

タナトス

「………ん、まぁそうだな。」

 

 やっぱり、教えられないか………無常に現実を突きつけるのは流石にダメージが凄そうだしな。黙っているのが正解か?違うだろ!このまま黙ってたらそれこそ『あいつら』と変わらないだろ!

 

 街を歩く変装した皇帝の横で頭を抱えての高速思考、どうするべきか、何が正解か考えまくって答えを得た。ヨシっ言うぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝

「ウ〜ン!タナトス!ここの菓子は凄く美味しい〜!」

 

タナトス

「そうか!気に入ってくれて何よりだよ!お兄ちゃん嬉しい!」

 

 久しぶりだなーそんな無垢に笑う姿を見るのは…そうだよな、皇帝なんかよりそうやってただ笑っていていた方が似合う。なんてったって子供はそれが仕事だからな。ん?何か忘れてる様な…

 

「二人ともすごい食べっぷりだね!コッチとしても嬉しい限りだよ。てか、まさか旦那が人を連れて来るたァねー」

 

皇帝

「?

 菓子職人よ、此奴はいつも此処へ?」

 

「ん、知らねェのかい?旦那はウチにしょっちゅう来てる一番のお得意様よォ!今食ってる団子だってサービスだよ!普段一人の旦那が人を連れて来るんだから、珍しいこともあるもんだな!ガッハハハ!!」

 

 皇帝はタナトスを見上げる。業務を果たしていると思っていた外出がまさか娯楽の為だとは、国を預かる者として見過ごせないのは事実だが、彼は知っている。何を言っても無駄だと

 故に目で語る。冷め切った目で旨そうに団子を頬張るタナトスに語る。気にも止めずに茶を啜るタナトスに皇帝は深いため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甘味処を後にしたあと、二人は街を歩いていた。目的があるわけではない。食べた後の運動ついでに見渡しているだけだ。ずっと城の中で生活していた皇帝は目新しいものがいっぱいあるこの場所に興味津々だ。

 

タナトス

「あー美味かった!次どこ行きたい?」

 

皇帝

「ん?そうだな、喉が渇いた気がする。」

 

タナトス

「じゃ、飲みに行くか!」

 

 続いてやってきたのはダンディーな感じのバー。ドアを開けると全身を覆い隠したウェイトレスがお辞儀をしカウンターへ案内する。古来よりタナトスの席は決まっている。L字になったカウンターの端っこだ。真前には丁度従業員が作業をする為の設備がある。

 皇帝は横に座り様子を伺う。何せ初めての街巡り、右も左も分からない。今まで彼は城の中で何不自由なく日常を繰り返していた。故に知らない。一般の暮らしを、帝都の日常を、最初の甘味処も戸惑ったがそうそうにタナトスが注文したおかげで事なきを得た。次もそうするのだろうと静観を決めたが

 

タナトス

「何がいい?」

 

皇帝

「!?

 そ、そうだな……余は…このカルーアと言うやつを」

 

「悪いね。子供にはまだ早い。他のにしな。」

 

皇帝

「うぅ…すまない。」

 

 生まれて初めて公衆の面前で赤っ恥をかいた。子供には無理なことは常識だろう。現に此処には自分と同じぐらいの子供は来ていない。

 

 はかったな!タナトス!

 

タナトス

「ハハ、ごめんなマスター。こいつこう言うの初めてでさー」

 

「なら、もう少しハードルの低い店選んで下さい。酒飲むなら子供お断りしたいんですがねぇ。で、何にします?うちで出せるのって言ったらあなた直伝の飲料系しか出せませんよ?」

 

皇帝

「それでよい!一番美味しいのを頼む。」

 

タナトス

「んじゃ100%オレンジで」

 

 カウンターに置かれた二つのコップ、一つは何処にでもあるオレンジジュース、もう一つは黒い水だった。

 

皇帝

「……マスターよ。これは本当に飲めるのか?」

 

「見た目は少し酷いですが、味は保証しますよ。タナトス様が持って来たのを先祖が複製したものです。たまにしか来ない子供達へのうちの人気商品……名前は確か…コーラだっけ?」

 

タナトス

「そうそう、味は保証するぜ。」

 

 胸の鼓動が速くなる。目の前に出された物を口にしないのは皇族としてはしてはいけない行為。が目の前の“コーラ”は初めて見る飲料、

 覚悟を決め、コップを口に運んだ。喉を通るしゅわしゅわに目を見開いた。

 

皇帝

「美味しい…」

 

タナトス

「だろ。やっぱ最高!」

 

 一瞬で飲み干した光景を見てタナトスは笑う。久しぶりだな、と。

 責務から解放された姿はもう皇帝ではない。ただ一人、どこにでもいる子供となった。

 その後も店を転々とし、1日はあっという間に過ぎて夜になっていた。城へ向かって足を進める二人、

 

皇帝

「なぁタナトスよ。お前が職務を放棄していることには目を瞑ろう。だが、一つだけ聞きたいことがある。帝都は本当に栄えているのか?」

 

 突然何を言い出すのかと思えば、そっか……いつまでも子供だと思ってたけど、もう立派な王なんだな。そう言う所はやっぱり親子だな。

 

タナトス

「フッ、なんでそう思う?」

 

皇帝

「街は確かに賑わってはいる。だが見れば見るほど民たちは心の底から何かを恐れている。

 余は…怖いのだ……幼き頃に父と母が亡くなったその日から、国を担い民を導ける良き王であろうとしている!

 でも、どうすれば良いのか分からない……」

 

タナトス

「…成る程な、まぁしゃーない。

 その年でそこまで考えられるなら問題はないよ。」

 

 あるとすれば大臣ぐらいだが

 

タナトス

「何事もうまく行くことなんて稀だよ。人に頼るのもいいが、まずは自分でチャレンジしてみることが大事さ。手探りでも確実に進め、優秀な人材に頼ってたらいつまで経っても成長することなんてできやしない。」

 

皇帝

「…………」

 

タナトス

「最低限サポートはしてやるよ。何のための騎士だと思ってる。困った事があるのなら相談しに来いよ!いつでも俺は暇だからさ!」

 

皇帝

「仕事しろ!」

 

 何気もない会話を続けながら、二人は城へと戻り、明日からそれぞれの職務をまた繰り返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数ヶ月、帝都の情勢は前に比べて著しく安定し平和の一言だった。貴族への過度な徴収は無くなり、暴虐を繰り返した一部の幹部達は死ぬまで牢屋の中へと移された。

 

 大臣とエスデスを除いては……

 

 その日、鳴りを潜めていた反乱軍が行動を開始した。任務はイェーガーズのメンバーの抹殺、及び帝具の回収だった。

 皇帝が自主的に始めた政策は市民達には好評だったが、オネスト大臣は裏で可能な限りの悪事を働いていた。悟られぬ様に、慎重に、殺人は出来なかったが、辺境の村々から多額の税を奪うことは容易い。

 帝国内部の人間は大臣を暗殺しようと試みるも壊滅、イェーガーズとエスデスによって守られている。

 馬を走らせ、入手した経路へと先回りし様子を伺う。

 

 しばらくすると集団が目視できた。イェーガーズ総出だ。新たな指導者を得て会心の活躍を見せる北の残党の排除、生半可な戦力では勝てない。だからこそイェーガーズが抜擢されている。好都合だ。此処で殺す事ができれば、大臣を守る者もいなくなる。

 

 タツミをはじめとしたメンバーが跳躍する。狙いは勿論『特殊警察イェーガーズ』


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