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無事帝都まで帰還したボルス一行、途中様々な妨害があったがなんとか乗り越えこうして“比較的”安全な帝都へと帰ってくることができた。
しかし、目に写った光景は現実と信じたくないほどに悲惨なものだった。
メラメラと孤児院だった建物を燃やす炎、周りには誰もいない、広がる炎を鎮火しようと出来る状態ではなかったのだ。
この中で帝国の軍に所属するボルスだけが知っている、《秘密警察ワイルドハント》多数の危険種を引き連れ帝都や他の村を土足で踏み躙る皇帝特務と対をなす『大臣直轄』の私設部隊。
街を荒らし世紀末のような光景を生み出してなお、暴走は止まることはない。
再び大切なものを奪われて逆らうことは叶わず、指を加えてみているだけしか無かった。
子供達は家を失い悲しみにくれ、ボルスはただ妻子の無事を仲間に託す他ない。
龍焉ノ騎士団は動かず人々をワイルドハントの取り立てと言うなの《拷問》から守るだけでそれ以上の干渉はしない。時代は再びすこし前に戻ってしまう。普通に生き、搾取され、誰も何も言えない
民達は怯え暮らす生活に戻るのだろうかと不安が蔓延するのに時間は必要ない。
ボルスは一心に妻子の無事を確認しなければならないと思った。ウェイブやクロメがいたとしても“絶対的”な安全は保証されるわけではない。
もしも、もしも妻子の身に危機が迫れば……
不安で胸が張り裂けそうな時、上空から純白の羽で空を支配するイェーガーズのメンバーである ラン が降りてきた。
「ボルスさん、良いところに
今ウェイブ君たちがワイルドハントと遭遇し交戦中です。それも市民を守りながらなのですぐに来てください!」
突然の援護要請にボルスはルビガンテを構え向かおうとするが立ち止まる。
今自分がいなくなれば、誰がこの子達を守ってあげる事ができる?
誰もいない。
「ごめん、僕はここを離れることは出来ない。」
予想外の申し出にランは驚愕の表情を浮かべ論ずる。任務を差し置いて優先するものがあるのかと、質問に対して迷うことなくマスク越しに真っ直ぐな目で言った。
「あるよ。僕はこの子達を守るってウェイブ君たちを先に行かせた。なら約束は守らなきゃ」
後ろにいる守るべき存在を見返して微笑んだ。
「………わかりました。なら絶対その子達は守ると、重ねて僕とも“約束”してください。」
「わかった。」
そう言ったランの目はどこか哀しげな雰囲気を感じたが追求する気にはなれなかった。
ランは背の“帝具である羽”を広げ羽ばたく直前に思い出した様にボルスに振り向いた。
「ウェイブ君から伝言です。
娘さん達は無事確保した。そっちも頑張って、と」
言い終わると羽を広げ今度こそ空へ羽ばたき戦場のど真ん中に戻っていく、
三週間後、帝都は変わった。変わってしまった。
賑やかしかった繁華街は廃れ、汚れや凹みが目立ち商品だった食料が散乱し動物が食い荒らしている。
もうこの場所に人は数える程しかいない。龍焉ノ騎士団によって帝都の人々は何処かへ連れて行かれ残っているのはこの地を離れようとしない人と、汚職に手を染めた『大臣派』の人間だけだった。
そんな街をズカズカと歩く青年がいた。彼こそ一連の主犯格、名を『シュラ』
オネスト大臣の実の息子、白髪で顔に大きなバツの傷を持つ。父親譲りの性格で『大臣の息子』という立場を利用して暴虐の限りを尽くしている。
しかし、最近は
イキのいい獲物を求め今日も街を歩く、故郷を捨てたくないからと残った人々を探して、
「チッ! 何にもねぇな…帝都に帰ってきたらもっと暴れるかと思ったのに、つまんねぇな。」
道端に落ちていた瓦礫を蹴飛ばし不貞腐れながら帝都全域を調べている。
「ッたく! 龍焉ノ騎士団だかなんだか知らねぇが余計な真似しやがって………
親父も大したことねぇな、タナトスとか言う特級階級一つ御しきれないなんてな。」
一人でいることをいいことに言いたい事が口から漏れ続けている。大臣である父が聞けばいくら息子といえどタダでは済まないだろう。
大臣は巧妙な策を浪費し皇帝に嘘を教え隠し続けてきたが最近はタナトスの 気まぐれ によって自分で策を出す事が多くなり傀儡から抜け出している。
少し前まで現皇帝から絶大な信頼を勝ち取り、政策から何までもを大臣頼りにしていた時代とは違う。皇帝に現在の独裁体制が気づかれれば立場が危うい。大臣も身動きが制限されている。
しかし、そんな事は異国から帰ってきたばかりのシュラにわかるはずがない。
「っだぁ! 何もねぇ!! こんなんだったら旅してた方がまだマシだ!」
悪態を吐きながら歩いていると一軒の店が目に入る。帝都から人がいなくなったのにも関わらず店の看板は〔オープン〕と書かれていた。
シュラの口元がニィと歪む、ようやく見つかった
勢いよくドアを開けた。
店内は薄く電気が付いており柔らかな雰囲気を出している。ただ一部、異様な気配を振りまく存在を除いて
「な、何だよコレ」
ソコにいたのは文字通りの“化け物”、従業員様のスーツを着ていても足元からこぼれ落ちる物体が人であることを否定している。
スーツ全体の隙間という隙間から落ちている。アレは『蟻』だ。
ただの蟻とは違う潜在的恐怖を掻き立てる ソレ は旅で磨き築き上げだ実力が全く通じないほどに高いと直感的に感じた。
資料で見た事がある。帝都には昔、西の国から流れ着いた蟻の超級危険種がいたという。名を
人以上の知能を持ち、体長は有に10mを軽く超える。知能の高さ故“意思疎通”も可能であったと聞くが討伐された後での真偽は不明
目の前の“ソレ”は何食わぬ顔?で入ってきたシュラに向く、何気ない仕草をしたつもりでもシュラは戦慄を覚える。
けっして除いてはいけない深淵を見た様な気がした。全身から血の気が引き、久しく味わっていなかった感情が全身を支配する。
冷や汗が漏れ、本能が 逃げろ と警告を告げる。
すぐさまドアを閉め店から脱出する。
店内に残されたマスターとスーツをきた異形はただ静かに先程の客ならざる愚か者について会話するのだった。
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大臣の朝は早い、とてつもなく早い。寝る暇がない程に
タナトスの
バレないため工作を部下に命じるのが精一杯、心的余裕は徐々に無くなっていく。
一度に食べる食事の量も減り、健康状態はみるみる悪くなる。
元の生活に戻るために打てる手は全て打つ、息子のシュラを帝都へと戻したのもその為だ。
放浪で付けた腕力、スカウトした精鋭の帝具使い達、Dr.スタイリッシュの残した実験体を振るい国内を混乱させる事で大臣が今まで行ってきた悪政の露呈を遅らせ、証拠となる人や物を徹底的に隠蔽する。
机に並べられらた贅沢の限りの食事を素手で口に運ぶが満足感がない。いつもなら食欲を満たせたことに対する悦びが湧くはずなのに、額を冷や汗がつたるだけだった。
「………ッく!」
「おやおや、これまた随分と余裕のない顔をしておる。聞いていた話とちと違う様じゃなぁ。」
テーブルの先、入室用のドアから大臣に声をかけた少女。帝国の実質的なトップに対する物言いとは言えない。もし衛兵がいれば処刑では済まないであろうことでも彼女であれば許される。
秘密警察ワイルドハントのメンバーにしてオネスト大臣が最も重要と考える人物
名を『ドロテア』
錬金術を納めし東の地から襲来したシュラからの手土産
「何のようです? まだ貴女が出るには早すぎますが?」
「ちと気になってな。巷を騒がす龍焉ノ騎士団…じゃったか? 其奴らの血を欲しくなった。」
見た目にそぐわぬ老人の口調で嬉々として話すドロテアをオネストは食事を楽しみながら適当に止めた。
「辞めておきなさい。今は我慢の時、私の息子が盤面を荒らしている間に事態の隠蔽をする。その為に
「なんじゃなんじゃ、此処にこれば好きなだけ実験できると聞いてきてみれば! 窮屈で仕方ない。話の合いそうな輩は死んでいるし街には人が殆どいないときた。」
ドロテアは語る。元いた東の国で実験を繰り返し指名手配までされていた頃にシュラに勧誘され帝都でならどれだけ非道でも好きなだけ実験が出来ると、ドロテア自身の目的の為にシュラに同行することを決めたのだ。
だが実際は龍焉ノ騎士団という抑止力と思いの外対応の早かったら現皇帝によって市民は帝都から離れ残っている人間もわずかだけだ。
シュラの話に嘘は無かった。事実彼が出立するまでの状態なら、やりたい放題出来ていただろう。子供を痛ぶり、女を犯し、男を殺す。その中の項目に一つ増えるだけだ。大したことはない。しかし、皇帝が大臣の傀儡から抜け出し自分の目で世界を見渡すことになり、たとえ大臣の肉親であっても横暴が許されることがなくなっていた。
たとえエスデスを使い武力で押し通そうとしてもタナトスが許さず、政治面から押そうとも最高決定権を持つ皇帝陛下が正しい判断を下し止められる。
故に今は大人しくしている時期なのだ。悟られずに策を浪費し、逆転のチャンスを作るのだ。
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ほとんど人のいない街でただ一人、路地を歩くローブを被った存在。足跡は焦げ、周囲の温度が著しく上昇している。
彼は龍焉ノ騎士団の一人、彼を知る者からは『灼熱』という二つ名で呼ばれている。理由は簡単だ。
背後の物陰からバッと数台の危険種が襲いかかる。指に備えた爪を光らせ獲物を仕留めようと接近する。刹那、彼を中心に小規模な爆発が起こった。周りに被害が及ばず周囲だけで起こる爆発
空中故に逃げ場はなく火力に任せて上に吹っ飛び落下する。
地面に激突し四肢が焼け焦げ脆くなったことで分離しゴミのように転がった。メラメラと周囲を燃やす炎の残滓、発生源は彼だ。ローブが焼け全身が露わになるとそこに居たのは人ではない。
魔神のような躯体に恐竜のような頭部を持った超級危険種。
灼熱のレックス
怒りに燃える彼が去った後に残るのはただ一つ、焦げた燃え滓のみ
レックスに関してはダンボール戦機のイフリートのイメージで他作品の影響をモロに受ける作者をお許しください。
SAOの映画面白かった…