アカメが斬る!帝都の繁栄と腐敗   作:色々し隊

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久しぶりです、最近プラモデル熱が再熱しました


第25話 頼みを斬る

「さて、今から顔出しに行ってみるか…」

 

 

 部屋を出たタナトスは上を眺めながらそんな事を呟いた。とても軽く、帝国の命運がかかっているこの状況で晩御飯を決めるように軽く考え事をしていた。

 虚空に呟く、誰が聞いているかわからない状況でとても懐かしそうに

 

 

「アイツら、元気にしてるかな〜

“最近顔見せないって言ってたからな〜”

アッ!?あの予定も忘れてたわ!?やっべ……どうしよォ…」

 

 

 肩を落とす鎧は何もない空中を斬り出来た裂け目に消えていく。向かう場所は沢山の“友達”がいる場所。

 一箇所一箇所を回るのだった。

 

 

ーーーーーー

 砂漠の中にあるピラミッドへと足を運ぶ。

 かつてそこは『一族』と呼ばれた戦闘部族が跋扈し侵入するモノ全てを殺していた凄惨な場所

 

 

 

 

「やっほー

元気してるドルオタの諸君。マネージャーが来たよー?」

 

 

 砂漠の中にポツリと存在する巨大な石の建物の中、僅かながらに人が住み村と呼べる程のコミュニティを築く場所があった。

 

 タナトスはお気に入りの店に入る様に裂け目からひょこっと顔を出すと、眼前に何かが振り落とされる。

 いつものような雑な扱い、それが逆に安心する。

 

 

「お呼びじゃねぇーんだよ!!コスミナちゃんを連れてこい この野郎」

 

 

 民族衣装を身に纏い、覗かせる肌に奇妙なタトゥーを入れた巨漢の男がタナトスのヘルムに顔を近づける。

 濃い顔に鋭い目つき、その人相は側から見れば完全に極悪人の彼も今では立派なアイドルの親衛隊

『救世の歌姫 コスミナ』公認専族応援団体……かつては恐れられた民族も、タナトスの気まぐれによる偶然によってアイドルオタクの集団(推しの為に命を賭ける漢達)になってしまった。

 

 

「どうどう、落ち着けって

お前らの推しメンなら今帝都にいるって聞いたぞ」

 

 

 

 

 

 

「何、それは真か小童」

 

「おっ、誰かと思えばまだ生きてたー?

ラオグェイ」

 

 

 目の前の老人に手を振る。腰は曲がり髪の毛は伸びきって顔が隠れ今にも死にそうなヨボヨボの彼こそ、この場を治める部族の長[ラオグェイ]

 部族の長にして、コスミナ応援団の名誉会長でもあるこの男は帝具なしで国を相手取る事ができる凄い人なのだ……凄い人なのだが……

 

 

「それより…あの子(コスミナちゃん)は元気にしとるのか!?

教えろバカマネ!最近あの子からの手紙が途切れてワシは夜も眠れんわい!」

 

 

 (血縁関係も何もないが)親バカである。タナトスを異空間から引きずり出し、両肩を抑えてぐわんぐわんと揺らす。そのか細い躯体の何処から出てるかわからないほどの力、タナトスが前後に激しく揺れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

部屋に通されたタナトスはそのまま、ラオグェイが座る反対のソファにダイブする。

 『二級危険種 サンドラーゲル』の皮を使って作られたこの土地の特産品のようなものだ。

 肌触りが細かい砂のようにサラサラで、体を優しく受け止める低反発性、うっかり座ったり寝転がったりすればあまりの心地よさに眠りに誘われるだろう。

 事実タナトスは意識を手放して寝ていた。“昔の感覚”でついつい寝てしまった。そこにラオグェイの手刀がヘルムに命中する。

 

「これ、寝るでないわい。

貴様が来たという事はコスミナちゃんの事以外となるとおよそ限られてくる。やるのじゃな…?」

 

 

「………ッヘ、話が早くて助かるねぇ

大正解さ

叩き潰す相手は“楯突く全て”

ジジイの大好きな殲滅だ!」

 

 

 両手を広げて子供のようにワクワクとした声色で話す。短いようで長い屈辱を晴らすことが叶うのだ。

 それに……旧知の仲の者と肩を並べて闘えるのだ。

 昂らずにはいられない。だが、ラオグェイは簡単に首を縦に振らない。命をかけるのならば対価が必要になる。命をかけるに相応しい『対価』が…

 

「全く…それでワシらに何の得がある?

《命を賭ける》のであればそれ相応の条件を提示するのが『取引』というものじゃぞ?」

 

 

 見開かれた目はとても鋭く、まさに全てを見渡すといっても過言ではないほどの眼力を纏っていた。年老いたといえど、幾つもの死地を潜り抜けた老兵が部族の未来を賭けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コスミナちゃん握手券と限定ブロマイドセット」

 

「「「「「乗った!」」」」」

 

 

 ラオグェイだけではない。周りにいた全員が前のめりで了承してしまった。

 あまりの声量に“ない筈”の鼓膜を抑える。

 

 全く……このバカ達は…と心の中で愉快な気持ちになるタナトスだった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

帝都で名物の酒場であるソコは混乱の最中客など来るはずもないのに明かりがつき中では一人の男と店主が酒を酌み交わしていた。

店主は温和そうな顔つきでカウンターから多種多様な酒を取り出しもう一人の男のグラスに注ぐ。

 

 

「ここも静かになりましたな。」

 

 

 グラスと酒の音だけの中、店主は口を開いた。

 数週間前までは昼夜問わず人で賑わっていた帝都の繁華街はすっかり人の気配が消えてしまった。

 今は荒らされ、汚され、一瞬にして廃墟のような有様になってしまった。

 悲しい気持ちはある。“今はどうあれ”ここ(帝都)で育ち店と共に生きたのだから

 

 だから、たとえ客が少なかろうと飲みに来る者がいるのなら店の扉は開けておきたい、そんな思いから彼は、この治安が終わっている今の帝都で店を続けていた。

 同じ思いでいくつかの店や家は明かりが灯っていた。危険も顧みず

 そんな店主の正面で注がれた酒を思いっきり口に放り込む男

 

 

「………いいじゃねぇか。人がいねぇおかげでこうやってゆっくり出来るんだ。アンタも俺も」

 

 

 椅子に座っていてもその者の出す雰囲気は肌をピリつかせる。長い髪を雑多に纏め、伸びる四肢は細くも逞しく頑丈。

 

 

「全く、こんな所で飲んだくれているとまた“お子さん達”にどやされますよ?」

 

「うるせぇ…久しぶりの休みなんだよ。邪魔されてたまるか、やっと仕事から解放されたのにここの酒が飲めねぇのは耐えらんねぇよ」

 

 

 グイッとグラスの中の酒を飲み干す。顔はほのかに赤く酔っていて口数もいつもより多くなっていた。

 

 店のドアが開く、金属音を鳴らしながら男の席へ近づく

 酒でハイになり上機嫌になっているこの男もまた、タナトスによって運命が狂った一人。その腕は何ら劣る事はなく、むしろ強大になり磨きがかかっていた。酒で酔っていても奇妙な気配を感じれば手が出てしまう。

 横凪の手刀は空を斬り、指先が新客の眼前を通る。

 

 

「……人が気持ちよく飲んでる時に邪魔すんじゃねぇよ」

 

 

 鋭い視線と低い声で相手を見据える。顔は赤いままだが判断力は残っていた。

 かつての気配を見せるなか、新客はただ何事もなかったように男の席の隣に座る

 

 

「ったく……何の用だ? タナトス」

 

 

 笑うそぶりを見せると、新客の姿が黒い風に包まれる。現れた姿はお馴染みの鎧だった。

 ニシシと笑いながら男を揶揄う。

 

 

「久しぶりにお前の顔を見てみたくなった……とか言ったら信じる?」

 

「バカ言え、そんな言葉信じるわけねぇだろ。

大体…こんな状態で宴会なんてつまんねぇだろ?」

 

「ごもっともで…」

 

  

 何の用かと聞くと、タナトスは両手を合わせて懇願する。

 もの凄く軽いノリで

 

 

「力貸して?」

 

「……………大将、酒一杯だけ追加で、こいつの分だ。」

 

 

 店主はこの後起こる事に頭を抱えながら瓶を出す。

 出された酒瓶はこの店で一番安い物だった。

 男は酒瓶を掴むとタナトスの勢いよく脳天に向けて振り下ろす。

 

 

「ちょちょちょっ!? いきなり……ッ!バカ!」

 

「バカはテメェだ! 人が気持ちよく飲んでる時に割り込んでくるんじゃねぇ!!」

 

 

 酒瓶は残像を残し、何十もの振り下ろしをタナトスは全て交わしながら言葉を上げる。

 

 たった二人だけだと言うのに店はかつての活気を取り戻したように騒がしくなる。

 グラスを拭きながら目を閉じて感傷にに耽る。かつては毎日の風景だったソレは今失われようとしていた。

 

 怯えと静寂、虚しいだけの毎日など御免なのだ。

 グラスを置く。その音を聞いたのかタナトスが瓶を避けながら顔を店主に向ける。

 

 

「………ゴズキ様、私からもお願いします。」

 

 

 仲良く喧嘩している空気ではなくなった二人は大人しく席に着くと酒が入ったグラスを手に取る。

 

 

「…話ぐらいは聞いてやる。まぁ概ね見当はつくけどな。

帝都でドンパチするのに頭数がいるんだろ?」

 

 

 ゴズキ……店主にそう呼ばれた男は少し昔、帝国にその名を刻んだ強者の一人。

 

 帝国がオネストに支配されて少し、反抗する勢力が生まれた。

 当たり前だ。悪政を拒む者、利用する者、正義を秘めた者、理由はどうあれオネスト大臣が実権を握る前より敵は増えた。

 

増えすぎたのだ。

 

 対策は講じた。エスデスの投入にブドーの守り、だが圧倒的に手数が足りない。半ば無限に湧いてくる敵対勢力をプチプチと潰すだけではいずれ限界がくる。

 罪をでっち上げる情報部隊、自身に不利な情報を隠蔽する為の焼却部隊、税をむしり取り私欲を肥やす為に多種多様な部隊が作られ、ゴズキはその中のある部隊に隊長としていた。

 隊員は選りすぐりの精鋭達、何かと理由を付け叛乱する勢力を潰していった。

裏切られないように擬似家族の様なモノを作り、心を縛る関係を作り帝都の戦力としていた。

 一個大隊に匹敵する実力を持つ者達がゴズキの元には“集まった”のだ。

 

 

「力は貸してやってもいいぜ? だが謝礼は弾めよ?」

 

「じゃ、交渉成立って事で」

 

 

 ニヤリと笑い、グラスを差し出すゴズキに笑い返し酒瓶を交わすタナトス

 カランと、硝子の軽い音が店内に響く。

 

 交渉成立、着実に戦力は集まっている……そういえば……

 

 と、タナトスは気になっていたことをゴズキに聞いてみた。

 

 

「ナハシュ達は元気か? てか、今日ってツクシの誕生日な気が……」

 

「………ッ!?」

 

「……まさか…?」

 

 

 酒を飲む手が震えている。よくよくみてみれば顔が青ざめ冷や汗をかいていた。

 

 『あーあ』とこの後どうなるか察したタナトスは察知した近づいてくる小さな気配に目を瞑り静かに気配を消した。

 

 瞬間、酒場のドアが吹き飛んだ。小さな影がゴズキに向かって飛来する。

 

 

「こんの…へっぽこ親父ィ!」

 

 

 タナトスの眼前を通り過ぎてゴズキが勢いよく店内のテーブルを押し倒し吹き飛ぶ。

 頭を抑えながら顔を青ざめるゴズキの前には一人の少女が鬼の形相で立っていた。

 

 コレは関わると碌な事にならないと本能的に感じたタナトスは、念には念を入れて変化し店と一体化してコヒューと吹けない口笛を吹き関係ないですよと主張する。

 

 

「っ痛ッ!?」

 

「……昼間から呑んだくれていいご身分ね?

 

お・と・う・さ・ん?」

 

 

 ギクっと擬音が聞こえてくるようにゴズキの肩が震え上がる。恐る恐る振り返り顔をあげるとそこに一人の女子がいた。

 

 先程までの余裕は何処へやら、心当たりがあるせいで冷や汗が頬を伝って止まらない。

 反射的に腕で身体を守りながら後退しようとしても遅かった。ガシッと腕を掴まれてそのまま背負い投げ、綺麗に外まで投げ飛ばされる。

 

 

「ちょちょちょっと待てッ⁉︎ 父親を背負い投げる娘が何処にいや……フゴッ⁉︎」

 

 

 話そうとした口に空のワインボトルを数本突っ込まれ塞がれる。

 ジタバタするゴズキを無視して長く伸びきった髪を乱雑に掴みその小さい体からは想像できない力で無理矢理引き摺りながら運ぶ。

 家族の誕生日に昼間から酒屋で呑んだくれるだらしない父を連れ戻しに来た女の子の名は……

 

 

「やめろツクシ!

髪を引っ張るな!?な!お父さん怒らないから痛………ッ抜けるゥ!この歳で禿げるのは嫌だァーーー!!」

 

「うっさい!

娘の誕生日忘れて飲酒してるバカにはコレぐらいでいいのよ!!!」

 

 

 ズルズルと小さい女の子に引きずられて連行される中年の絵面はタナトスから見て中々にキツいものだった。擬態して隠れてるとは言え状況がどうなるかワクワクしているので目は釘付けになっていた。

 事実、ツクシも異様な視線には気がついているが敵意がないので無視して目の前の『まるでダメなお父さん 略してマダオ』の方に意識を割いていた。

 

 『ーーーータナトス』

 髪を引っ張られ情けない姿のゴズキが隠れているタナトスに向かって口を開く。ツクシの動きは止まり気配のする店内に目を向けた。

 

 

「アカメは………元気にしているか?」

 

「…………」

 

 

 今口を開くととばっちりで何をされるかわかったもんじゃない!

 

 タナトスは懐から“この世界には存在しない筈の写真”をゴズキめがけて投げた。そこには幸せそうに仲間(ナイトレイド)のご飯を横取りしありえない量の食事を一人で食らい尽くす黒髪の少女が綺麗に写っていた。

 

 

「あれ、アカメじゃん……って太った?

……あ“パパ”なんで破るのさ!?」

 

「悪りぃな。コレはトップシークレットだ。お前らには見せねぇよ……フゴッ」

 

 

 格好をつけたつもりだったがツクシの全力のボディーブローにダウンするゴズキ。ツクシはこちらに一礼すると帰っていく。そのまま引きずられて小さくなっていく二人の背中をタナトスは黙祷をしながら見送る。

 

 頑張れビッ○ダディ!

 義理の家族だけど心は繋がっている!皆んなの為に家に帰って家族サービスだ!絶対責められるだろうけど、頑張れ




新しいことにジャンジャン挑戦したいので、便利な機能とかあれば教えてください!
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