この度、Fateの二次創作を執筆させていただきました。
拙著ではありますが、皆様が少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
また、感想をいただけますと今後のモチベーションにも繋がりますので、是非ともよろしくお願いいたします。
※注意
1.無断転載・インターネット上への掲載(SNSを含む)は禁止です。ご質問等あればこちらまでご連絡ください→[email protected]
2.Fateの世界観、設定をお借りしていますが、登場人物はオリジナルがメインです。原作キャラクターはほぼ登場しませんので、そうした作品をお探しの方はご了承のうえ、本編を読んでいただければ幸いです。
3.台本形式を採用しています。
登場人物
☆■■■■■■陣営
藤戸なずな(一六)高校生
騎士王 ■■■■クラスのサーヴァント。ルイスに召喚された
ルイス・フォン・シュネー(三二)なずなの担任教師。魔術使い
ダグマル・クリューガー(六一)シュネー家の執事。Bar赤の店主
藤戸茅子(三七)なずなの母親
☆セイバー■■陣営
巨躯の騎士 セイバークラスのサーヴァント。
男性客A・B・C
女性客
サラリーマン風の男
教師
生徒A・B・C
女性店員
茅子が連れてきた男
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○東京 外観 明朝
T「東京」
○ホテル 五一九号室 明朝
薄暗い室内。
ドライヤー音が微かに響く。
ベッドで藤戸なずな(十六)は目を覚ます。サイドテーブルに手を伸ばし、スマホを取る。スマホの画面には【二〇一八年五月十九日五時九分】と表示されている。
ガチャという音とともにルイス・フォン・シュネー(三二)がシャツとスラックス姿で現れる。
ルイスはスタンドライトをつける。右手の甲には痣のような痕が見える。
なずな「先生……手どうしたの?」
ルイスは声のするほうに目を向ける。
ベッドで上体を起こしたなずなは不思議そうな顔をしている。
ルイス「……あぁ、起こしてしまったみたいだね」
なずな「手」
ルイスは右手の甲を見て、
ルイス「ああ、これ? どこかでぶつけたのかな」
微かに笑いながらルイスはジャケットを羽織る。
なずな「もう行くの?」
ルイス「うん、小テストの準備がまだ終わってないからね」
なずな「……そう」
ルイスはベッドに腰をかけ、なずなの額に軽く口づけをする。
ルイス「なずなはもう少し休んでるといい」
なずなはルイスの胸元に軽く顔を埋める。微笑むルイス。
ルイス「じゃあ、僕は行くから……」
ルイスは軽く手を振り、部屋から出ていく。左薬指には銀色のリングが煌めている。
なずな、ベッドに仰向けになる。ふと備え付けのデスクに置いてある古びた本が目に入る。
本の背表紙にはドイツ語で【アーサー王伝説】と書かれている。
○小木屋谷学園 全景 朝
三階建ての比較的新しい校舎。
校門には【小木屋谷学園】の文字。
登校する学生たち。
○同 二年二組 教室内 朝
生徒が疎らにいる教室内。
座席でなずなは【アーサー王伝説】をぺらぺら捲っている。
がらがらと音を立てて、ルイスが教室に入ってくる。
ルイス「おはようございます。みなさん朝礼を始めますよ、席に座って」
生徒たちは各々の席に座っていく。
なずなとルイスは目が合う。
○電車 車内 夜
車窓の景観は移り変わっていく。
なずなはドア付近に立ってスマホをいじっている。子どもの笑い声が聞こえ、座席のほうをちらりと見る。
小さな男の子とその父親と思わしき男性が楽しそうに話をしている。
なずなはスマホに視線を落す。
○新宿駅前 夜
新宿駅前では大勢の人で溢れて返っている。
○レストラン(チェーン店) 店内 夜
大勢の客で賑わっている店内。
なずなの声「では、ご注文を確認させていただきます。ラザニアとドリンクバーのセットお一つ。和風おろしハンバーグのBセットお一つ。以上でよろしいでしょうか?」
男性客Aの声「うん、大丈夫」
男性客Bの声「俺、ビールも頼もうかなぁ」
ガヤガヤする店内。
三十代半ばくらいの女性と小さな女の子が食事を取っている。
なずな「よろしければお使い下さい」
女の子の前に小皿を置くウェイトレス姿のなずな。
女性「ありがとうございます」
男性客Cの声「お姉さん、注文いい?」
なずな「はい、ただいま」
なずなは女性と女の子に頭を下げて、立ち去る。
○路地裏 夜
人通りの少ない路地裏。明滅を繰り返す古びた電工看板。看板には【Bar赤】と表示されている。
○Bar赤 店内 夜
赤と黒を基調にした店内。木製の調度品が並ぶ。
微かに聞こえるジャズ。
ガクガク震えながら後ずさるサラリーマン風の男。苦虫を噛み潰したような顔。
フロアには数人の男が白目を剥いて倒れている。
カウンター席に座るルイスはウィスキーを一口呷る。
ルイス「穏便に済ませたかったのですが、本当に残念です」
カウンターの奥でタキシード服姿のダグマル・クリューガー(六一)がグラスを拭っている。
ルイスは立ち上がり、ジャケットの懐に手を入れる。
ルイス「対価はすでにお支払いしています。契約は守っていただかないと困るのですが……」
男を見つめるルイス。手には液体の入った試験管が一本。
男「そ、そう! 契約です。これは審査だと思っていただきたい。あなたが聖杯戦争を勝ち抜ける人材なのか。私どもが助勢するに値する人間なのか。……おめでとうございます! あなたは合格です!」
ルイスは男が話終わる前に試験管に入った液体を床に垂らす。液体は見る見るうちに質量を増やし、二メートルを優に超える一つ目の白い巨人に変貌を遂げる。
ルイス「カリバーンの破片を譲るのか否か。お答えいただけますでしょうか?」
顔の歪んだ男はルイスに背を向けて逃げ出そうとする。振り向くとホムンク
ルスが白い腕を振り上げている。
男「ぎゃああああああああああああああ」
重い響きとともに煙が巻き上がる。
壁にホムンクルスの腕が突き刺さり、その下で男が白目を剥いて気を失っている。
ルイスはため息を一つして、男の内ポケットから小さな箱を取り出す。
箱を開けると中には小さな金属の破片が入っている。
○リバームハイム 三◯四号室 夜
なずなの声「先生は今、何をしていますか?」
スマホの画面にはメッセンジャーアプリが起動している。タイムライン上には【先生は今、何をしていますか?】と載ってある。画面上部には【KingArthur】の文字。
女性ものの派手な服が部屋の至る所に散らばっている。居間の片隅でなずなはスマホをいじっている。
がちゃという音が鳴り、藤戸茅子(三七)が居間に入ってくる。スマホを耳に当てている。
茅子「あーうんうん。渋谷っしょ? 七時? わかったわかった。で、今回どうよ? 年収一千万? うっそー」
茅子はなずなの目の前を素通りして寝室に向かう。
なずなはスマホの画面をずっと見つめている。
○小木屋谷学園 全景 朝
○同 二年二組 教室内 朝
なずなは前の席に座る女子生徒と談笑している。
がらがらと音を立てて初老の男性教師が教室に入ってくる。
なずなは横目で教師を追う。
教師「朝礼始めるぞ、席に着け」
生徒たちが各々席に座る。
生徒A「あれ? ルイス先生は?」
教師「あールイス先生か? 今日は家庭事情で休みだそうだ」
生徒B「へえー」
なずなは机に中にそっと手を入れ、スマホを触る。
教師の声「朝礼始めるぞ、ほれ日直」
生徒Cの声「きりーつ」
○渋谷109前 夕方
渋谷109前は大勢の人で賑わっている。
○カフェ 店内 夕方
がっしゃんという音が店内に響き渡る。
なずなの声「失礼致しました」
なずなは屈んで割れた皿の破片を片付けている。帚とちりとりを持って女性店員が駆け寄ってくる。
女性店員「藤戸さん、大丈夫?」
なずなは見上げる。
なずな「すいません。今片付けてしまいます」
女性店員は心配そうになずなを見つめている。
○歩道 夜
なずなは街路樹が植えられた歩道を歩いている。手にはスマホ。立ち止まり、スマホを見る。
タイムライン上のメッセージは【先生は今、何をしていますか?】、【先生、今日はどうされたんですか?】と載っている。
なずな「……既読なし」
なずなは顔を上げる。
目の前に五階建ての新しくも古くもないアパートが建っている。
○リバームハイム 三◯四号室 夜
掛け時計は【一時三十二分】を指している。
居間の片隅で座りスマホをいじっているなずな。
男の声「ここでいいのか?」
茅子の声「ここー」
がちゃという音が鳴り、酔っぱらった茅子は男に付き添われながら居間に入ってくる。
なずなと男は目が合う。
男「ん? 誰こいつ?」
茅子「どうでもいいっしょ?」
茅子はなずなの目の前で男と激しく口づけをする。
なずなは無表情で二人を一瞥し、スマホに視線を落す。
男は茅子と口づけしながらなずなを横目で見ている。
○小木屋谷学園 二年二組 教室内 朝
なずなはノートに板書を写している。
女性の教師が板書している。
なずなのシャープペンの動きが止まる。
なずなは席から立ち、
なずな「先生、体調が悪いので保健室に行ってもいいですか?」
○同 保健室 朝
ベッドで横になっているなずな。スマホを見ている。
○電車 車内 夕方
混雑している車内。
座席に座っているなずな。目を伏せている。
○新宿駅前 夕方
新宿駅前は人の行き来が多い。
俯きながらなずなは人の流れに沿って歩く。
○公園 夜
街灯の明かりが閑散とした小さな公園を照らしている。誰一人いない。
革靴が砂利を踏みならす。
なずなは豚を形取った遊具に座り、バックからスマホを取り出す。スマホを一瞥して、目を閉じる。
○路地裏 夜
夜空に月が浮かんでいる。
ルイスは壁に沿ってよたよたと歩く。呼吸は荒く、左の二の腕を右手で押さえて
いる。唇は切れ、血が流れている。
真っ正面をしっかり見据えて一歩、また一歩と歩を進める。
後方で爆発音が響き、ルイスは振り向く。辺りを爆風が駆け抜ける。
ルイスは懐から二つの試験管を取り出し、路地裏の奥に投げつける。
アスファルトに触れる瞬間、試験管に魔法陣が浮かび上がる。アスファルトで粉々に砕けた試験管から白い巨人が二体現れる。白い煙の立ち込める路地裏の奥に巨人たちは進んでいく。
ルイスは巨人たちに背を向け、走り出す。
×××
路地裏の奥から白銀の甲冑に身を包んだ大男が姿を現す。右手には十字を象った剣を持ち、左手には大盾を携えている。
大男、巨躯の騎士の足下にはホムンクルスが倒れている。
○リバームハイム 外観 夜
○同 三◯四号室 夜
がちゃという音が微かに響く。
少し開かれたドアの隙間からなずなが覗き込んでいる。
玄関には赤いハイヒールなどの女性ものの靴が無造作に置かれている。
なずなは玄関に足を踏み入れる。ふと、風呂場に目を向ける。
蛇口から水がちょろちょろ流れる音が聞こえる。
○同 バスルーム 夜
脱衣室に入るなずな。
水がちょろちょろ流れる音が聞こえる。
なずなはガラス張りでできた浴室のドアに目をやる。ドアノブを回す。
目を見開くなずな。
浴槽に寄り添う形で茅子は体を預けている。右手は浴槽に浸かっている。
浴槽に張った水は微かに赤く濁っている。
茅子の足下には刃先に血が付着したカッターナイフが落ちている。
なずなはバスルームに入り、茅子を覗き込む。
虚ろな目、青白い肌の茅子。
なずなは静かに右手を伸ばす。
水がちょろちょろ流れる音が聞こえる。
×××
(フラッシュ)
なずなはぎゅっと自らの体を抱きしめる。
目の前には全裸の男が立っており、舐めるような視線をなずなに向けている。男はゆっくりとなずなに手を伸ばす。
×××
なずなは必死に抵抗し、男から距離を取る。ふと、視線を横に向ける。
×××
寝室のドアが半分ほど開いており、茅子が無表情でなずなを見つめている。
×××
きゅっと蛇口を締める音が聞こえる。
○歩道 夜
なずなは疾走する。額から汗が流れる。
なずな(M)「先生」
○路地裏 夜
ルイスは苦悶の表情を浮かべる。対峙する巨躯の騎士は剣を構える。
ルイスは試験管を四本投げ、白い巨人四体を出現させる。
巨人たちは巨躯の騎士に襲いかかるが、僅かの間に返り討ちにされる。
ルイスは舌打ちをして、巨躯の騎士から距離を取る。
ルイスは姿勢を正し、懐から二本の試験管を取り出す。その場で液体をアスファルトに垂らし、詠唱を始める。ルイスの首回りから赤い線のようなものが現れる。赤い線は樹木が枝割れするように首を伝い、頬に幾何学的な紋様を刻む。
アスファルトに垂れた液体は膨張し、体積を増やしていく。体長四メートルは優に超える白い巨人が姿を現す。
ルイス「(ドイツ語)冒涜者よ。敵を屠れ!!!」
白い巨人は巨躯の騎士に襲いかかる。
甲高い音が路地裏に響く。
白い巨人の左肩から右脇腹にかけて亀裂が入り、崩れ落ちるように体が二つに引き裂かれる。引き裂かれた体は白い煙を吹き出しながら消滅していく。
路地裏に煙が立ちこめる。
巨躯の騎士は右手を大きく振りかぶり剣を振り下ろす。充満していた煙が剣圧で霧散する。
巨躯の騎士は左右を見渡す。路地裏には巨躯の騎士しかいない。
○廃ビル 外観 夜
夜空には月が浮かんでいる。
月明かりに照らされる六階建ての廃ビル。
なずなは廃ビルを見上げている。
○同 廊下
アナウンス「おかけになった電話は、電波の届かない場所にある、または電源が入っていないためかかりません」
なずなはスマホを耳から離す。廊下を渡り、階段を上り始める。
×××
なずなは階段を上っている。目の前にドアが現れる。
○(回想)廃ビル 屋上 夜
ドアが開く音。
ルイスの声「暗いから気をつけてくださいね?」
なずな「……はい」
月明かりに照らされる屋上。
なずなは目を見張る。
優しく微笑むルイス。
なずなは屋上の中心に引き寄せられるように歩く。
なずな「ここは……なんなんですか?」
ルイス「ふふ、僕の秘密の隠れ家なんですよ、ここ」
なずな「……隠れ家?」
ルイス「例えば朝、犬のうんちを踏んでしまってとてもじゃないけど学校に行く気分じゃないとき」
なずなは首を傾げている。
ルイス「例えばテストで赤点取ってとてもじゃないけど親に見せられないとき。……そんなとき僕はここに逃げてくるんです」
なずなはルイスを見つめる。
ルイス「……藤戸さん。人はね、悩みを抱えて生きていけるほど強くはないんですよ。どこかで吐き出さないととてもじゃないけど生きてなんていけない」
ルイスは悲しそうな顔をする。
ルイス「友達に相談したり、理想をいえば家族に聞いてもらえるのが一番いいのかもしれない。でも……それが一番難しい人だっていると思うんです」
なずなは俯く。
ルイス「僕は何かあったときここに来ます。いろいろ考えたり、ときには言葉にして溜まっているものを吐き出すようにしています。ここには誰もいませんから。すっきりしますし、冷静にもなれる気がするんです」
なずな「……どうしてその話を私に?」
ルイス「余計なお世話だと重々承知しています。それでも藤戸さんには、そういう場所の一つも知っておいて欲しかったんです」
なずなは月を見上げている。
なずな「先生、それだと私が可哀想な子だってことになりませんか?」
なずなの後ろ姿を寂しそうな表情で見つめるルイス。
なずな「……本当に何もありませんから大丈夫です。……でも、その、この場所はとても素敵だと思います」
ルイスは微かに笑みをこぼす。
ルイス「……はい」
夜空に浮かぶ月。
なずなの声「……先生はその、私のこと好きなんですか?」
ルイスの声「え!?」
なずなの声「……私によくちょっかい出すし、こんな暗がりに連れ込むし……」
ルイス「ち、違います! ぼ、僕はその教師として!」
なずなの笑い声が微かに聞こえる。
(回想終わり)
○路地裏 夜
壁に寄りかかるルイス。息切れしている。
右手を空にかざす。手首にはきらきらした赤や黄色、ピンクなどのビーズで作られたブレスレットがつけられている。
ルイスはぼんやりブレスレットを眺める。
ルイス「……ラウラ」
ダグマルの声「坊ちゃん……坊ちゃん……坊ちゃん」
ルイスに直接語りかけるように(念話)。
ルイス「……聞こえてるよ……ダグマル」
ダグマルの声「坊ちゃん!!坊ちゃんご無事でしたか!?」
ルイス「……あぁ、命からがらなんとかね。……でも、やられたよ」
×××
(フラッシュ)
剣を振り下ろす巨躯の騎士。
×××
ルイス舌打ち。
ルイス「セイバーを、セイバークラスを盗られた」
ルイスはよたよたと歩き出す。
ルイス「……流石はセイバークラスと言ったらいいのかな。手持ちのホムンクルスをほとんど持ってかれたよ」
ダグマルの声「坊ちゃん……」
ルイス「でもね、ダグマル。僕は負けないよ……」
ルイスの視線の先には廃ビルがある。
ルイス「……負けられない。僕はもう奇跡に縋るしかないんだ」
○黒み
ルイス(M)「……素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を……」
○廃ビル 屋上 夜
ベンチで横になっているなずな。
身をよじり、頬を赤らめる。胸元に置かれた右手。左手はスカートの中で蠢いている。
ルイス(M)「……四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ……」
○路地裏 夜
ルイス(M)「……閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する……」
爆風。
煙の中から巨躯の騎士が現れ、ルイスに斬りかかる。ルイスはホムンクルスを呼
び出し、巨躯の騎士を迎撃する。
巨躯の騎士、ホムンクルスたちを斬り伏せていく。
ルイス(M)「――――告げる」
○廃ビル 外観 夜
○同 屋上 夜
夜空に月が浮かんでいる。
うっとりとした顔でなずなは月を見ている。
ゆっくりと上体を起こす。
ルイス(M)「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に……」
○同 正面玄関前 夜
正面玄関前にルイスは投げ出される。よろよろと立ち上がる。
巨躯の騎士はルイスの目の前に立つ。
ルイスは横目で背後に建つ廃ビルを見て、後ずさる。
○同 屋上 夜
なずなはベンチから立ち上がり屋上の端に向かってふらふらと歩き出す。
ルイス(M)「……我は常世総ての善と成る者……」
無表情のなずな。覚束ない足取り。
ルイス(M)「……我は常世総ての悪を敷く者……」
○同 正面玄関前 夜
ルイスは無言で巨躯の騎士を睨む。
巨躯の騎士、剣を構える。
ルイスは意を決したかのように握り拳にそっと左手を添える。
ルイス「……汝三大の言霊を纏う七天……」
○同 屋上 夜
ルイスの声「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
なずなは屋上から飛び降りる。
○同 正面玄関前 夜
唐突に巨躯の騎士はビルの頂上付近に目を向ける。
ルイスも無意識に巨躯の騎士の目を追い、見上げるが暗くて何も見えない。
ルイスの瞳に淡い光が灯る。
屋上から落ちてくるなずなを視界にはっきりと捉える。
ルイス「!? ……なずな!?」
咄嗟に体が動きだすが、ルイスはもつれてその場に倒れ込む。
巨躯の騎士は上空を見上げ、駆け出す。
○空中 夜
意識のないなずなは落下している。
周囲に光子が舞い始める。
○廃ビル 正面玄関前 夜
巨躯の騎士は腰をひねり剣を構える。
姿勢を低くした瞬間、なずなを目がけて跳躍する。
○廃ビル 教室 夜
荒れた教室内。
薄暗い教室の一区画から青白い光が漏れる。
机の下で青白く発光している魔法陣。
○空中 夜
落ちてくるなずな。周囲に漂う光子は爆発的にその数を増やしていく。
巨躯の騎士は斬り上げる。
○廃ビル 正面玄関前 夜
ルイスは唖然と上空を見上げている。
右手に握られた金属の破片は青白く発光している。
○空中 夜
甲高い金属音が響く。
○廃ビル 正面玄関前 夜
巨躯の騎士は鮮やかに着地し、一方を見る。
なずなを抱きかかえた少女は緩やかに着地する。
少女は青を基調とした衣服に銀白色の鎧を身に付けている。金髪碧眼。凛々しい顔立ち。
少女、騎士王はルイスの元に向かう。
ルイスは呆然と騎士王を見つめている。
騎士王はゆっくりとなずなをルイスに預け、巨躯の騎士に視線を送る。
右手に光子が集まり、剣身が細身の両刃直剣が姿を現す。
騎士王「伺いましょう。貴方が私の敵ですか?」
騎士王は剣先を巨躯の騎士に向ける。
自信に満ちた表情。ニッと笑う。
○タイトル
黒み
T「不貞の女」
了