○新宿御苑 日本庭園 夜
ヴェルンド「よくもおおお!」
義姫に向かって、殴ろうとするヴェルンド。動きが止まる。
ヴェルンド「私の!」
蹴ろうとするヴェルンド。動きが止まる。
ヴェルンド「造った!」
飛び掛ろうとするが、義姫に届かない。
ヴェルンドは庭園に置かれていた大きな岩に駆け寄り、持ち上げる。
ヴェルンド「子供たちを!!!」
勢いよく岩を投げるヴェルンド。岩は義姫から少し離れた位置に落下する。
飛び散った石が義姫の方へ飛ぶ。
義姫は顔に当たりそうな石を手で掴む。
義姫「無駄な足掻きだ」
ヴェルンドは歯軋りをする。
○グレアムホテル 二三階 廊下
非常用階段の扉。その表面に術式の紋様が浮かび上がる。紋様が発光し、砂粒となって床に落ちる。
扉がゆっくりと開き、隙間からルイスの手が差し込まれる。
手に持った試験管の中から流体が零れ、白い巨人が現れる。巨人は扉の前で仁王立ちの体勢をとる。
扉からルイスとリュカが現れる。
リュカは周囲を見渡し、床の一点で視線を止める。
リュカはルイスに目配せすると、前進し、そっと床に手を着く。触れた部分が光り、床から壁、天井まで広がる紋様が浮かび、解けていく。
ルイス「(ドイツ語)防御っ!」
巨人の腕がリュカへと伸びると、飛来してきた矢が突き立てられる。
廊下の奥からオーガスタと二人の執事服姿の男が現れる。オーガスタはサーベルを、他の二人はそれぞれクロスボウとハルバードを持っている。
舌打ちするリュカ。
リュカ「オーガスタ……」
オーガスタ「家出をしただけでは飽き足らず敵を招き入れるとは」
リュカは立ち上がり、三人を睨む。
オーガスタ「躾が足りなかったようですね」
ルイスは懐から試験管を取り出す。
ルイス「(小声で)リュカ君。ここは――」
リュカ「殺してやるからかかってこい!」
リュカの【魔術回路】が発光する。
○新宿御苑 日本庭園 夜
義姫とヴェルンドが対峙している。
大名駕籠を見るヴェルンド。
ヴェルンド(M)「得物も持てない。攻撃も届かない。どういう能力だ?」
ヴェルンドは視線を義姫に移す。義姫はヴェルンドから視線を外さない。
ヴェルンド(M)「空間? それとも私の精神に作用する【宝具】か? なにか破る手立ては……」
×××
(フラッシュ)
岩が地面にぶつかり、石が飛び散る。
顔に当たりそうな石を手で掴む義姫。
×××
はっとするヴェルンド。にやりと笑う。
○グレアムホテル 屋上 夜
人のいないガーデンテラス。
息を荒げながら、縁に近寄るセオドア。手すりを掴み、新宿御苑の方角を見る。
セオドア「一体どうなっている……!」
ヴェルンドの声「セオドア」
セオドア「鍛冶師! どうだ? 終わったのか? であれば早く――」
ヴェルンドの声「令呪をよこせ」
セオドア「……は?」
○同 二三階 廊下 夜
ボロボロになった廊下。
リュカは鼻から血を流しながら、光弾を放つが、オーガスタの武器に弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。
オーガスタは距離を詰め、サーベルをリュカに振るう。それを庇った白い巨人の腕が切断される。
ルイス「下がって!」
ルイスが試験管を投げると、新たな白い巨人が出現し、リュカを抱いて後退する。
巨人は残った腕をオーガスタに振るうがハルバードを持った執事に受け止められる。
オーガスタはサーベルで巨人の足を切る。よろめく巨人に、ハルバード、サーベルが突き刺さる。倒れる巨人。
オーガスタたちがルイスたちの退いた方を見る。数体の白い巨人がぞろぞろと向かってくる。
○同 階段 夜
階段を駆け上がっているなずなとアーサー。なずなの手のひらにはハンカチが巻かれている。
なずなのスマホが振動しだす。
なずなはポケットからスマホを取り出す。
○同 二三階エレベーターホール 夜
丁字路の形をした待合所。
ルイスと、リュカを抱えた白い巨人が駆け込んでくる。
ルイスは手に持っていたスマホを上着のポケットに収める。
ルイス「(ドイツ語で)開け」
白い巨人はリュカを降ろし、エレベーターの扉をこじ開ける。カゴはなく、むき出しのシャフトが見える。
オーガスタ「袋のネズミですね」
各通路からオーガスタたちが現れる。
リュカ「あんま調子に乗るなよ」
鼻血を手で拭いながら、前に出ようとするリュカ。その肩を、ルイスが掴む。
オーガスタを見るルイス。
ルイス「いいえ。ここは窮鼠猫を噛む、でしょう」
と言ってルイスが微笑むと、シャフトが音を立て始める。音は下の方から聞こえ、次第に近づいてくる。
オーガスタたちは武器を構える。
ルイスたちが扉の前から退くと同時に、扉の奥からなずなを抱えたアーサーが飛び出してくる。
アーサーはなずなをルイスに向かって放ると、即座にクロスボウを持った執事目がけて駆け出す。
執事は狙いをつけようとするも、距離を詰めたアーサーに剣で斬られる。血しぶきが舞う。
オーガスタ「――【
アーサーはもう一人の執事へと駆け出す。執事はハルバードで突こうとするが、アーサーは体を捻って回避し、勢いのままに執事を横薙ぎに斬る。
オーガスタ「おのれ……!」
アーサーはオーガスタに向かって駆け出す。
オーガスタはサーベルで受け止めようとするが、アーサーはサーベルごとオーガスタを斬る。
なずなの瞳に崩れ落ちるオーガスタが映る。
一息つくルイス。
ルイス「助かりました。感謝します、キング・アーサー。藤戸さん――藤戸さん?」
強張った顔のなずな。
床に転がった死体と、返り血を浴びたアーサー。
○同 屋上 夜
新宿御苑の方を見ているセオドア。胸元を服の上から強く掴む。
セオドア「……そうか! 令呪による空間転移でこちらに――」
ヴェルンドの声「違う。魔力をよこせと言っている」
セオドア「し、しかしこのままでは……」
×××
(フラッシュ)
セオドアの使い魔視点の映像。エントランスにいるルイスたちが映っている。使い魔を睨むリュカ。
×××
セオドアは手すりを強く握る。
セオドア「……分かった。ただしそちらの片がつき次第、速やかにこちらに――」
ヴェルンドの声「無論だ」
セオドアはシャツのボタンを外し、肌を露わにする。胸元左上、鎖骨近くに令呪が三画刻まれている。
セオドア「セオドア・バリュエレータ・アトロフスカの名の下に、令呪を以って命ずる――炉に炎を!」
○新宿御苑 日本庭園 夜
対峙している義姫とヴェルンド。
目を血走らせたヴェルンド。
ヴェルンド「私の崇高な創造を侵した大罪、死をもって償え!」
ヴェルンドの周囲に炎がゆらめく。
義姫は柄には手をかけず居合いの構えをとる。
ヴェルンド「これより此処は、我が憎悪に塗れた幽閉の島」
地鳴りとともに、地面から何本もの柱状の石が突き出てくる。
ヴェルンド「拵えしは銀の
ヴェルンドの周囲の炎が大きくなり、渦を巻く。
ヴェルンド「
ヴェルンドの周囲の地面がひび割れ、溶けた鉄が噴き出す。
両腕を震わせながら、ヴェルンドは両手を鳩尾に突き刺す。
ヴェルンド「見るがいい!
ヴェルンドの鳩尾が橙色に強く閃く。
○グレアムホテル 二三階 エレベーターホール 夜
新宿御苑の方角へ勢いよく振り向くリュカ。
○タイトル
黒み
T「開戦の烽火」
了