Fate/Go Astray   作:泥江青花

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EP5.開戦の烽火【3/3】

○新宿御苑 日本庭園 夜

 

ヴェルンド「よくもおおお!」

 

義姫に向かって、殴ろうとするヴェルンド。動きが止まる。

 

ヴェルンド「私の!」

   

蹴ろうとするヴェルンド。動きが止まる。

 

ヴェルンド「造った!」 

 

飛び掛ろうとするが、義姫に届かない。

ヴェルンドは庭園に置かれていた大きな岩に駆け寄り、持ち上げる。

 

ヴェルンド「子供たちを!!!」

 

勢いよく岩を投げるヴェルンド。岩は義姫から少し離れた位置に落下する。

飛び散った石が義姫の方へ飛ぶ。

義姫は顔に当たりそうな石を手で掴む。

 

義姫「無駄な足掻きだ」

 

ヴェルンドは歯軋りをする。

 

○グレアムホテル 二三階 廊下

非常用階段の扉。その表面に術式の紋様が浮かび上がる。紋様が発光し、砂粒となって床に落ちる。

扉がゆっくりと開き、隙間からルイスの手が差し込まれる。

手に持った試験管の中から流体が零れ、白い巨人が現れる。巨人は扉の前で仁王立ちの体勢をとる。

扉からルイスとリュカが現れる。

リュカは周囲を見渡し、床の一点で視線を止める。

リュカはルイスに目配せすると、前進し、そっと床に手を着く。触れた部分が光り、床から壁、天井まで広がる紋様が浮かび、解けていく。

 

ルイス「(ドイツ語)防御っ!」

 

巨人の腕がリュカへと伸びると、飛来してきた矢が突き立てられる。

廊下の奥からオーガスタと二人の執事服姿の男が現れる。オーガスタはサーベルを、他の二人はそれぞれクロスボウとハルバードを持っている。

舌打ちするリュカ。

 

リュカ「オーガスタ……」

オーガスタ「家出をしただけでは飽き足らず敵を招き入れるとは」

 

リュカは立ち上がり、三人を睨む。

 

オーガスタ「躾が足りなかったようですね」

 

ルイスは懐から試験管を取り出す。

 

ルイス「(小声で)リュカ君。ここは――」

リュカ「殺してやるからかかってこい!」

 

リュカの【魔術回路】が発光する。

 

○新宿御苑 日本庭園 夜

義姫とヴェルンドが対峙している。

大名駕籠を見るヴェルンド。

 

ヴェルンド(M)「得物も持てない。攻撃も届かない。どういう能力だ?」

 

ヴェルンドは視線を義姫に移す。義姫はヴェルンドから視線を外さない。

 

ヴェルンド(M)「空間? それとも私の精神に作用する【宝具】か? なにか破る手立ては……」

 

×××

(フラッシュ)

岩が地面にぶつかり、石が飛び散る。

顔に当たりそうな石を手で掴む義姫。

×××

はっとするヴェルンド。にやりと笑う。

 

○グレアムホテル 屋上 夜

人のいないガーデンテラス。

息を荒げながら、縁に近寄るセオドア。手すりを掴み、新宿御苑の方角を見る。

 

セオドア「一体どうなっている……!」

ヴェルンドの声「セオドア」

セオドア「鍛冶師! どうだ? 終わったのか? であれば早く――」

ヴェルンドの声「令呪をよこせ」

セオドア「……は?」

 

○同 二三階 廊下 夜

ボロボロになった廊下。

リュカは鼻から血を流しながら、光弾を放つが、オーガスタの武器に弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。

オーガスタは距離を詰め、サーベルをリュカに振るう。それを庇った白い巨人の腕が切断される。

 

ルイス「下がって!」

 

ルイスが試験管を投げると、新たな白い巨人が出現し、リュカを抱いて後退する。

巨人は残った腕をオーガスタに振るうがハルバードを持った執事に受け止められる。

オーガスタはサーベルで巨人の足を切る。よろめく巨人に、ハルバード、サーベルが突き刺さる。倒れる巨人。

オーガスタたちがルイスたちの退いた方を見る。数体の白い巨人がぞろぞろと向かってくる。

 

○同 階段 夜

階段を駆け上がっているなずなとアーサー。なずなの手のひらにはハンカチが巻かれている。

なずなのスマホが振動しだす。

なずなはポケットからスマホを取り出す。

 

○同 二三階エレベーターホール 夜

丁字路の形をした待合所。

ルイスと、リュカを抱えた白い巨人が駆け込んでくる。

ルイスは手に持っていたスマホを上着のポケットに収める。

 

ルイス「(ドイツ語で)開け」

 

白い巨人はリュカを降ろし、エレベーターの扉をこじ開ける。カゴはなく、むき出しのシャフトが見える。

 

オーガスタ「袋のネズミですね」

 

各通路からオーガスタたちが現れる。

 

リュカ「あんま調子に乗るなよ」

 

鼻血を手で拭いながら、前に出ようとするリュカ。その肩を、ルイスが掴む。

オーガスタを見るルイス。

 

ルイス「いいえ。ここは窮鼠猫を噛む、でしょう」

 

と言ってルイスが微笑むと、シャフトが音を立て始める。音は下の方から聞こえ、次第に近づいてくる。

オーガスタたちは武器を構える。

ルイスたちが扉の前から退くと同時に、扉の奥からなずなを抱えたアーサーが飛び出してくる。

アーサーはなずなをルイスに向かって放ると、即座にクロスボウを持った執事目がけて駆け出す。

執事は狙いをつけようとするも、距離を詰めたアーサーに剣で斬られる。血しぶきが舞う。

 

オーガスタ「――【境界記録帯(ゴーストライナー)】!」

 

アーサーはもう一人の執事へと駆け出す。執事はハルバードで突こうとするが、アーサーは体を捻って回避し、勢いのままに執事を横薙ぎに斬る。

 

オーガスタ「おのれ……!」

 

アーサーはオーガスタに向かって駆け出す。

オーガスタはサーベルで受け止めようとするが、アーサーはサーベルごとオーガスタを斬る。

なずなの瞳に崩れ落ちるオーガスタが映る。

一息つくルイス。

 

ルイス「助かりました。感謝します、キング・アーサー。藤戸さん――藤戸さん?」

 

強張った顔のなずな。

床に転がった死体と、返り血を浴びたアーサー。

 

○同 屋上 夜

新宿御苑の方を見ているセオドア。胸元を服の上から強く掴む。

 

セオドア「……そうか! 令呪による空間転移でこちらに――」

ヴェルンドの声「違う。魔力をよこせと言っている」

セオドア「し、しかしこのままでは……」

 

×××

(フラッシュ)

セオドアの使い魔視点の映像。エントランスにいるルイスたちが映っている。使い魔を睨むリュカ。

×××

セオドアは手すりを強く握る。

 

セオドア「……分かった。ただしそちらの片がつき次第、速やかにこちらに――」

ヴェルンドの声「無論だ」

 

セオドアはシャツのボタンを外し、肌を露わにする。胸元左上、鎖骨近くに令呪が三画刻まれている。

 

セオドア「セオドア・バリュエレータ・アトロフスカの名の下に、令呪を以って命ずる――炉に炎を!」

 

○新宿御苑 日本庭園 夜

対峙している義姫とヴェルンド。

目を血走らせたヴェルンド。

 

ヴェルンド「私の崇高な創造を侵した大罪、死をもって償え!」

 

ヴェルンドの周囲に炎がゆらめく。

義姫は柄には手をかけず居合いの構えをとる。

 

ヴェルンド「これより此処は、我が憎悪に塗れた幽閉の島」

 

地鳴りとともに、地面から何本もの柱状の石が突き出てくる。

 

ヴェルンド「拵えしは銀の(さかずき)。虹の貴石。歯牙の宝飾(ほうしょく)

 

ヴェルンドの周囲の炎が大きくなり、渦を巻く。

 

ヴェルンド「鞴を踏みて、復讐を為す(バロウズ・セーヴァルスタズ)!」

 

ヴェルンドの周囲の地面がひび割れ、溶けた鉄が噴き出す。

両腕を震わせながら、ヴェルンドは両手を鳩尾に突き刺す。

 

ヴェルンド「見るがいい! 模造・太陽が如き炎の剣(レーヴァテイン・アブクラッチ)!」

 

ヴェルンドの鳩尾が橙色に強く閃く。

 

○グレアムホテル 二三階 エレベーターホール 夜

新宿御苑の方角へ勢いよく振り向くリュカ。

 

○タイトル

黒み

T「開戦の烽火」

 

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