Fate/Go Astray   作:泥江青花

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EP7.揺らぐ想い【1/3】

登場人物

 

☆セイバー第七陣営

藤戸なずな(一六) 高校生 アーサーのマスター

アーサー・ペンドラゴン セイバークラスのサーヴァント ルイスに召喚された

ルイス・フォン・シュネー(三二) なずなの担任教師 魔術使い

エミリア・フォン・シュネー(二八) ルイスの妻

ラウラ・フォン・シュネー(一〇) ルイスの子ども

 

☆セイバー第五陣営

リュカ・バリュエレータ・アトロフスカ(一〇) 義姫のマスター

義姫[よしひめ] セイバークラスのサーヴァント 甲冑を纏った女武者 切能と呼ばれている

 

■■[■■■■] ■■■■クラスのサーヴァント 打掛を纏った貴人

 

☆セイバー第四陣営

セオドア・バリュエレータ・アトロフスカ(三九) 魔術師 時計塔所属

ヴェルンド セイバークラスのサーヴァント 義足をつけた鍛冶師

 

☆伊達家

伊達政道[まさみち](二三) 政宗の弟 小次郎と呼ばれている

 

 

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○グレアムホテル 全景 夜

崩壊の最中、落下するヴェルンド。

 

○グレアムホテル 屋上 夜

ルイス・フォン・シュネー(三二)は藤戸なずな(一六)へと手を伸ばす。

ふと、視線がなずなの右手に刻まれている。【令呪】に移る。

 

○インサート

炎上するフロントがひしゃげた黒い車。

 

ルイスの声「ラウラ!」

 

後部座席のドアが乱暴に開けられ顔を出すルイス。顔が涙でくしゃくしゃになる。

後部座席に眠るように横たわるラウラ・フォン・シュネー(一○)。

高いビルから炎上する車を見ている二人の女性。ともに白いローブを身にまとい、瞳は赤い。二人は身を翻してその場から立ち去る。

黒み。

暗い場所でただ一人、肩を落とすルイス。背中に白い手が置かれる。振り向く。

エミリア・フォン・シュネー(二八)がいる。眉をひそめながらも微笑む。

エミリアはそっと首を左右に振る。

ルイスは顔を歪め、後ずさる。

エミリアは悲しげな表情を浮かべ、暗闇に消える。

 

ルイス「(消え入りそうな声で)僕は……最低だ…………」

 

ルイスの体が徐々に黒く染まっていく。

 

なずなの声「……せ、……せい」

 

微かに淡い光がルイスの視界に入る。

 

なずなの声「……せい。…………先生?」

 

淡い光はなずなの姿を形どる。ルイスは顔を上げ、

 

ルイス「藤戸さん?」

 

月明かりに照らされる屋上。

なずなは屋上の中心まで歩き、ルイスに目を向ける。首を傾げたなずな。

なずなを見つめたままのルイス。

 

○グレアムホテル 屋上 夜

なずなと目が合うルイス。目を見開く。

ルイスは歯を食いしばり、宙に投げ出されたなずなの手を掴み、抱き寄せる。

なずなを抱きしめたままルイスはホテルの崩壊に巻き込まれていく。

 

ルイス「……ごめん、ラウラ」

 

○空中 夜

落下する最中、アーサー・ペンドラゴンはホテルが倒壊していく様を見る。

剣先から光の奔流を放ち、グレアムホテルへと舵を取る。

 

○インサート

雲ひとつない青空。青々とした草原。

楽しそうに走り回るラウラ。

ルイスは微笑んでいる。

 

ラウラ「あっ」

 

ラウラは躓き、転んでしまう。

ルイスはラウラに近づき手を差し出す。

 

ルイス「大丈夫かい?」

 

転んだままのラウラは不思議そうな表情でルイスを見ている。

 

ルイス「ほら、手をとって」

 

ラウラは困った顔する。

 

ルイス「どうしたんだい?」

ラウラ「……その体でどうやって?」

 

目を剥くルイス。

 

○グレアムホテル 二一階 夜

徐々に視界が鮮明になっていき、抉られた外壁から月と夜空が見える。

倒れているルイス。呻きながら上体を起こす。体を見ると、ひしゃげた左足と血で染まった腹部が目にとまる。

途端にむせ返し、右手で口元を押さえるルイス。

手のひらには血がついている。

青白い顔のルイスは内ポケットから試験管を取り出し、中身を一気に飲み干す。

息を吐き、周囲を見渡すと傍になずなが倒れていることに気づく。

 

ルイス「うっ。……藤戸さん」

 

右手を差し伸ばすルイス。シャツの袖からビーズで作られたブレスレットが見える。

次の瞬間、ブレスレットが切れてビーズの粒が周囲に散らばる。

伸ばす手が止まる。

ルイスの頬を涙が伝う。

 

ルイス「……ラウラ」

 

甲高い音が聞こえ、ルイスは目を向ける。

コンクリートの瓦礫が崩れて、剣を持ったアーサーが姿を現す。

 

アーサー「そこにいましたのね?」

 

○同 夜

仰向けに寝ているなずなの傍でアーサーは容態を確認している。

 

アーサー「体に目立った外傷はありません。じきに目を覚ますと思いますわ」

ルイスの声「……そうですか。安心しました」

 

アーサーは壁に寄りかかり座っているルイスに目を向ける。

 

アーサー「ふう……。貴方は自身を労りなさい。会話ですら、やっとでしょうに」

 

視線を逸らすルイス。

 

ルイス「……ご心配なく。それより今後ですが」

アーサー「……意地を張るのもそこまでになさい。薬で痛みを和らげているのでしょ? 状況は好転してはいませんわよ」

 

ルイス、アーサーの話を遮り、

 

ルイス「一旦引いて態勢を立て直しましょう。……まずはリュカ君と合流しないと……」

 

怪訝な表情をするアーサー。

 

アーサー「貴方、まだ戦うつもりでいますの?」

 

ルイスはアーサーに目を向け、薄ら笑いを浮かべる。

 

ルイス「突然何を? 僕はこのような有様ですが貴女と藤戸さんは幸いにも軽傷で済みました。であれば、まだ戦いは終わっていません。それとも他に気がかりが?」

 

アーサーは寝ているなずなに視線を落とし、

 

アーサー「私となずなさえいれば問題ないと貴方はそうおっしゃりたいの?」

 

顔が引きつるルイス。

 

アーサー「傷を負った貴方を見たらなずなは何を思うのかしら。そんな彼女が剣を握ったらどうなるのか。貴方にわからないはずないでしょうに。……違うかしら?」

 

鋭い視線をルイスに向けるアーサー。

 

ルイス「ああーーそうですね。僕のために彼女は戦います。……それが何か?」

 

アーサーはルイスから視線を外さない。

ルイスは目を色を変えて、

 

ルイス「そもそも僕がこれまでどれだけ彼女に尽くしてきたか、貴女にわかるか? 母親との関係を取り持つため、学校や児相に何度も、何度も、何度もかけ合った、他にもできることは全てやった! ……そうだよ、今の彼女があるのは僕のお陰じゃないか。僅かな可能性だとしても、彼女の犠牲でラウラが救えるのなら僕は!」

 

咳き込むルイス。

アーサーは目を僅かに伏せる。

 

アーサー「それでも貴方はなずなを救いました。私はそれを尊いと思います」

 

目を大きく開くルイス。

アーサーは小さなため息をつき、

 

アーサー「今の話は聞かなかったことにします」

 

ルイスは嗚咽を漏らす。

アーサーはなずなを見つめ、

 

アーサー「……不器用ですのね、貴女たち」

 

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