登場人物
☆セイバー第七陣営
藤戸なずな(一六) 高校生 アーサーのマスター
アーサー・ペンドラゴン セイバークラスのサーヴァント ルイスに召喚された
ルイス・フォン・シュネー(三二) なずなの担任教師 魔術使い
☆セイバー第五陣営
リュカ・バリュエレータ・アトロフスカ(一〇) 義姫のマスター
義姫(甲冑)[よしひめ] セイバークラスのサーヴァント 甲冑を纏った女武者 切能、鬼姫と呼ばれている
義姫(打掛)[よしひめ] セイバークラスのサーヴァント 打掛を纏った貴人 鬼母と呼ばれている
☆セイバー第四陣営
セオドア・バリュエレータ・アトロフスカ(三九) 魔術師 時計塔所属
ヴェルンド セイバークラスのサーヴァント 義足をつけた鍛冶師
ヴェルンド(二二) フィンランドの王女
ニーズズ王(三四) スウェーデンの王
☆伊達家
義姫(四三) 政宗、政道の母
伊達政宗[まさむね](二四) 伊達家一七代目当主
伊達政道[まさみち](二三) 政宗の弟 小次郎と呼ばれている
梵天丸[ぼんてんまる](七) 政宗の幼名
竺丸[じくまる](六) 政道の幼名
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〇(回想)宮殿 謁見の間 屋内
宝飾品の山が乗せられた盆。
宝飾品を掴み上げ、笑うニーズズ王(三四)。
王を睨んでいる傷だらけのヴェルンド(二二)。手足に枷がはめられている。
王は玉座から立ち上がり、兵士らに向け手を挙げる。
兵士の一人が携えていた剣を構え、もう一人はヴェルンドを押さえる。
振り下ろされた剣がヴェルンドの膝を斬り裂き、血飛沫が舞う。
悲鳴を上げるヴェルンド。
(回想終わり)
〇グレアムホテル付近 道路 夜
道路に倒れているヴェルンドの目が勢いよく開かれる。
暗転。
○タイトル
黒み
T「鬼、二人」
〇インサート
会津黒川城内、広間。
倒れているリュカ・バリュエレータ・アトロフスカ(一〇)を背にして居合いの構えを取る義姫(甲冑)と、数人の家臣を侍らせた義姫(打掛)が相対している。
義姫(打掛)が口元を袖で隠し、
義姫(打掛)「……戯れが過ぎたか」
呟くと、家臣たちが義姫(甲冑)へと斬りかかっていく。
義姫(甲冑)は刀を鞘から抜き放ち、家臣たちを瞬く間に斬り伏せると、
義姫(甲冑)「力を寄越せ、
素早く義姫(打掛)こと鬼母の間合いに入り込み、斬り払う。
鬼母は鞘に納めた刀で受け止める。
鍔迫り合いする二人。義姫(甲冑)は鬼母を後ろに押しやる。
鬼母の視界に上段から刀を振り下ろす義姫(甲冑)の姿が映る。
鬼母は自ら泥になって躱し、畳の中に姿を隠す。
周囲に目を配る義姫(甲冑)。笑い声が広間に響き渡る。
鬼母「力を寄越せときたか!? 傲慢! 傲慢! 傲慢! さすがは
畳から泥が湧き上がり姿を現す鬼母。
義姫(甲冑)こと、鬼姫は居合の構えを取る。
鬼母「(笑い混じりに)そう猛るでない。人の話に耳を貸すこともまた、大局を有利に進める上では必要なことであろう?」
鬼姫は無言のまま鬼母を見やる。
鬼母「(笑みを消し)益体もない」
鬼姫の四方から泥が湧き上がり、数人の武士が現れる。
鬼姫は柄に手をかける瞬間、武士の一人を見て目を大きく開く。
瞳に刀を構えた伊達政道(二三)の姿が映る。
鬼姫は眉間に皺を寄せ、政道を斬り伏せ、残りの武士たちも斬り伏せる。
歯を食いしばる鬼姫。
鬼母「たわけが」
鬼姫の背後から現れた鬼母が、鬼姫の脇腹に手刀を突き刺す。
鬼母「どこまでいっても虫がいいのだ、汝は」
鬼母は脇腹をかき回す。
顔を歪める鬼姫。咆哮を上げ、鬼母に斬りかかるが、躱されてしまう。
片膝を畳につけ、息を整える鬼姫。
鬼母は手についた血を払う。右手は紫色に筋張り、爪が鋭く尖っている。
鬼母「のう鬼姫。この腕を見よ」
鬼姫は鬼母の露わになった右腕に目を向ける。
鬼母「醜かろう。……今や
鬼姫「それは――」
鬼母「それは身から出た錆である以上、受け入れる覚悟がある、か?」
目が合う鬼姫と鬼母。哀愁を帯びた表情の鬼母。
鬼母「……それは本当に妾、妾たちの責任と呼べるものなのか? そもそも政宗への謀反を企てたのも小次郎とその一派であろう? それを止めようとしたのは他ならぬ妾ではないか」
視線を下げる鬼姫。
〇(回想)会津黒川城 城内
義姫の声「……ならぬ」
伊達政道(二三)は立ち上がり、
政道「では、母上はこのままで良いと申されるのか!? 家を守るといいながら、一族に容赦なく牙を剝く。……私には兄上が何を考えているのかわかりませぬ!」
義姫「ならぬと言っている!!! 兄弟で争うなど妾は認めぬ!!!」
激しい剣幕の義姫(四三)。
〇(回想)同 廊下
女中が膳を運んでいる。膳の上には漆塗りの椀が載っている。
義姫の声「そこの。足を止めよ」
女中は足を止め、振り返ると義姫が姿を見せる。
(回想終わり)
〇インサート
鬼母の声「……確かに妾の不徳の致すところはあった。されど鬼母義姫という悪名に関し、その責の全てが妾にあったと思うならそれは自惚れだ。妾にはどうすることもできなかった」
鬼姫と鬼母を遠くから見ているリュカ。
鬼母「それでも汝は、妾を受け入れるのか?」
表情のない鬼姫。ゆっくりと立ち上がり、居合の構えを取る。
鬼姫「力を寄越せ。……妾には汝の力が必要だ」
眉間に皺を寄せる鬼母。
鬼母「……ほんと、つまらない女」
鬼母が駆け出すと打掛は粒子となって消え去り、レザースーツの出立ちに変わる。
鬼姫は刀を抜き放つが、鬼母に懐へ入り込まれ、蹴り飛ばされる。小さく呻き、崩れ落ちる鬼姫。
鬼母は鬼姫から自分の服に視線を移す。
鬼母「現代のよそ……ファッションというのは興味深い。見栄や用途に応じたものであるが、人の世の流れというもののが顕著に表れる。実に面白い」
鬼母はリュカに視線を移す。
鬼母「そうは思わないか?」
リュカは目を見開く。足元から湧き上がった泥が武士に変わりリュカを羽交い締めにする。
リュカ「……てめえ」
鬼母はくすりと笑う。
鬼母の纏っていたレザースーツが粒子となり、洋装に変わる。
リュカは眉をひそめる。
鬼母「私もそう捨てたものではないだろ?」
鬼母の装いが様々な流行の衣装に変わっていく。
鬼母「――現世はかくも私の琴線を震わせる」
恍惚の笑みを浮かべる鬼母。
リュカ「(小声で)……何をしている?」
鬼母「何を?」
鬼母は首を傾げる。
鬼母「よく見られたいというのはいつの世も当たり前の感情ではないか」
口角が上がる鬼母。
鬼母「それに……美しい女にはあらゆる男が群がる」
リュカは鼻で笑う。
リュカ「みっともねえな、お前」
鬼母「そうは言うが、何かと便利だぞ」
洋装がボンテージスーツに変わり、外着に紫の打掛を羽織っている鬼母。
鬼母「……お前よりもな」
鬼母はくすくすと笑いながらリュカのもとに向かい、人差し指を向ける。
額に向けられた爪を見つめるリュカ。
口元が歪む鬼母。
鬼母「今までありがとう、さようなら」
リュカの瞳孔が開く。
暗転。