Fate/Go Astray   作:泥江青花

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EP8.鬼、二人【3/3】

〇インサート

グレアムホテル一五階の通路に立っているなずな。

近くの瓦礫に寄りかかって座っている満身創痍のルイス・フォン・シュネー(三二)が現れる。

 

ルイス「リュカくんを連れてこの場から離れてください。私なら大丈夫……」

 

ルイスの姿が煙になる。

なずなの前に白髪に角を生やした義姫が現れる。

 

義姫「主を頼みます」

 

義姫の姿が煙になっていく。

空間が黒く染まり、喧騒が聞こえ出す。

景色がファミリーレストランへと変わり、なずなの服がウェイトレスの制服に変わる。

大きな物音がして振り向くなずな。倒れて泣いている男の子を見つける。

男の子の母親が駆け寄ってくると、体を起こしてあげて、あやしはじめる。

なずなは立ったまま親子を見つめる。

眉を八の字にしつつ微笑みかける母親と、次第に泣き止む男の子。

親子の姿に義姫とリュカの姿が重なる。

息を呑むなずな。

 

〇グレアムホテル一五階 通路 屋内

通路から戦っている義姫を呆然と見ているなずな。

 

アーサーの声「なずな!」

 

アーサーの呼びかけで我に返り、振り向くと心配そうなアーサーと目が合う。

 

アーサー「早く参りますわよ。……彼女の覚悟を無駄にしないためにも」

 

一歩踏み出そうとするアーサーのドレスの裾を掴むなずな。

 

アーサー「……なずな?」

 

なずなはアーサーに顔を向け、

 

なずな「アーサーさん……」

 

眉尻を下げたなずなは言い淀み、視線を逸らす。

アーサーは一呼吸して、

 

アーサー「なずな。今貴女がすべきこと、分かりまして?」

なずな「……はい」

 

なずなは裾から手を放す。

 

アーサー「急ぎますわよ」

 

振り向こうとするアーサー。瞬間、ドレスの裾をなずなに強く掴まれる。

 

なずな「だめ!!!」

 

目を大きく開くなずな。

 

なずな「……え?」

 

目を見張るアーサー。

なずな、首を左右に振り、

 

なずな「わかんない。……わかんないけど、このままじゃ嫌……」

 

頭を抱えるなずな。

 

なずな「……助けて、助けてよ……」

 

なずなの左手に刻まれた【令呪】が赤く光りだし、周囲を飲み込む。

光が収まると、頭を抱えたなずなと傍らに深紅の光の粒子を纏ったアーサーが姿を現す。

口を一文字に結んでいるアーサー。

光を帯びた瞳が義姫とヴェルンドの戦いに向く。

 

〇同 一五階 ラウンジ 夜

損壊したラウンジ。

眉をひそめ、義姫を見下ろすヴェルンド。傍らには長剣が浮かんでいる。

血溜まりに膝をつき、ヴェルンドを睨め上げる義姫。

漂っていた靄が義姫の周りに集まっていき、大きなうねりを生む。

うねりの内側から大きな刀が突き出てくると、そのまま靄をなぎ払う。

靄の中から刀を握った5メートルはある鎧武者が出現する。

険しい表情の義姫。歯を喰いしばる。

鎧武者は上段に刀を構える。

歯の根を鳴らすヴェルンド。

 

ヴェルンド「レーヴァ!!」

 

凄まじい風切り音とともに刀を振り下ろす鎧武者。

長剣は光の強さを増し、弾かれたように鎧武者に突撃する。

紫色と橙色の光がぶつかり、けたたましい音が轟くと、大爆発を起こす。

鎧武者は爆発に呑まれ、掻き消える。

床に手をつき、項垂れる義姫。肩で息をしている。

義姫の目前に降下してくるヴェルンド。傍らに傷一つない長剣が浮かんでいる。

顔を上げ、ヴェルンドを見る義姫。

ヴェルンドは義姫をじっと見下ろす。

長剣の切っ先が義姫に向く。

瞬間、深紅の光の刃がヴェルンドに襲いかかる。

吹き飛ぶヴェルンド。目を見張る。

深紅の光を纏う両刃直剣を握ったアーサーが立っている。

顔を上げた義姫はアーサーを見て、唖然とする。

真顔でヴェルンドを見据えるアーサー。

その背後でリュカを背負ったなずながアーサーを見つめている。

吼え猛るヴェルンド。長剣がアーサーに突撃していく。

顔色を変えず剣を振るうアーサー。長剣を弾き返す。

長剣は繰り返しアーサーに攻撃を仕掛け続けるがことごとく弾かれてしまう。

呆然とするヴェルンド。

アーサーは真顔でヴェルンドを見る。

ヴェルンドはアーサーの瞳を見て総毛立ち、とっさに空へと飛び上がる。

 

〇空中 夜

空を飛び、グレアムホテルから距離を取るヴェルンド。

アーサーは剣から放出される光で飛翔し、ヴェルンドに斬りかかるが、僅かに届かない。

高層ビル屋上に着地するアーサー。

ヴェルンドは自身の冷や汗に気づき、大声で喚きだす。

 

〇高層ビル 屋上 夜

上空のヴェルンドを見るアーサー。

深紅の光の粒子が周囲に舞う。

 

〇空中 夜

息を切らすヴェルンド。アーサーの握る剣と傍の長剣の双方を見て、歯軋りをする。

 

〇グレアムホテル一五階 ラウンジ 夜

壁や床などが損壊したラウンジ。

ふらつきながらも義姫はアーサーを見つめる。

なずなは遠巻きにアーサーを見ている。

ふと、上空からラウンジ全体に強い光が差し込む。

空を見上げ、唖然とするなずな。

 

〇同 一階 エントランス 屋内

壁面ガラスの外側が明るいのを見て、セオドア・バリュエレータ・アトロフスカ(三九)は表情を強張らせる。

 

〇高層ビル 屋上 夜

周囲は明るく照らされている。

上空を真っ直ぐに見つめるアーサー。

全長五〇〇メートルを越える巨大なプリズムの剣。

幾重もの大きな炎の輪。その中心で巨大な剣が燦然と輝いている。

 

〇空中 夜

巨大な剣を見上げるヴェルンド。全身に亀裂が走り、炎が噴出す。

 

〇高層ビル 屋上 夜

剣を構えるアーサー。

深紅の光の粒子が渦巻き、輝きを増す剣。

光の流れが嵐のように荒れ狂う。

 

〇空中 夜 

深紅に輝く剣を見るヴェルンド。不意に口の端が吊り上がり、犬歯が覗く。

 

ヴェルンド「太陽の如き巨人剣(ムスペル・レーヴァテイン)!!!」

 

巨大な剣が地上へ落下していく。

 

〇高層ビル 屋上 夜

 

アーサーの声「約束された勝利の剣(エクスカリバー)――!」

 

アーサーが斬り上げるとともに、剣から光の奔流が放たれる。

光が巨大な剣と衝突し、余波で空気が震え、空に深紅と橙の光が撒き散る。

甲高い音がし、巨大な剣に亀裂が走る。

巨大な剣が砕け、光が破片に乱反射し、虹色の光が煌めく。

砕けていく剣を見て唇を噛むヴェルンド。

瞼を閉じ、光に呑み込まれていく。

 




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