Fate/Go Astray   作:泥江青花

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EP10.三日月の夜【3/3】

○教会 室内 夜

黒味。

 

アーサーの声「民の命より優先されるべきことなどないでしょうに……」

 

× × ×

(フラッシュ)

武士は中指を立て、にたにたと笑う。

 

武士「(鼻で笑う)儂は、一人で十分や」

 

× × ×

 

アーサーはチャーチチェアから勢いよく立ち上がり、

 

アーサー「ーーいいでしょう。……そのやっすい挑発にのっかてやりますわ!! 私か貴方、どちらが先に十字の騎士を倒すのかーー」

 

腕を組むアーサー。

 

アーサー「ーー勝負ですわ!」

ざくろの声「盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、それってアーサーちゃんは一人で戦うってこと?」

 

アーサーは左隣のチャーチチェアに座っているざくろを見る。

 

アーサー「え? べ、別にそういうつもりで言ったのではなくて……」

ざくろ「あ~あ、せっかくあたしたちが血眼になって調べた6thの情報を共有してあげようと思ったのに……いいのかな~?」

 

ざくろはチャーチチェアから少し身を乗り出してなずなを見る。

 

ざくろ「ね、なずなちゃんはどう思う?」

アーサー「で、ですからーー」

なずな「アーサーさん。私は、向坂さんの協力したほうがいいと思います。あの大きな人が【サーヴァント】と言うならいずれは戦う相手ですよね? 情報は少しでも多く欲しい」

 

アーサーは少し眉尻を下げ、首肯する。

 

アーサー「(ざくろに右手を差し出す)ざくろ、共に戦いましょう」

ざくろ「(アーサーと握手を交わす)期待してるよ、騎士王様」

 

アーサーはパーシヴァルに向けて微笑み、

 

アーサー「パーシヴァル卿。また、貴方と共に剣を握る日が来ようとは。世の中、何が起きるかわかりませんわね。改めてよろしくお願いいたしますわ」

 

パーシヴァルは一礼し、

 

パーシヴァル「光栄に存じます。王の助力が戴けるならば、6th討伐など児戯に等い。我が槍と王の聖剣があれば敵わうものはいません!」

ざくろ「2nd、あなたそんなキャラだっけ? 何? 大好きな王様との再会に浮かれてるのかな?」

 

ざくろはふふっと笑いパーシヴァルを小突く。

 

パーシヴァル「(頬を赤らめ)止めてください、【マスター】」

 

なずなとアーサーはくすりと笑う。

 

ざくろ「まあ、それはいいとして。(スマホを見ながら)共闘することも決まったし、今日はお開きにしない? 時間も時間だし、本格的な調査と情報共有は明日からってことーーで」

 

ざくろは一同に視線を送る中、なずなを見て止まる。

バツの悪そうな顔のなずな。その隣にはダグマルが立っている。

 

ざくろ「ーーあぁ、そうだった」

 

ざくろは立ち上がり、ダグマルに傍に寄ると笑顔を向ける。

 

ざくろ「少しお話しても?」

 

○向坂邸 外観 夜

広大な瓦屋根の日本家屋。

中庭には石や植物、中央には小さな池が配置されている。

小さい池の水面には三日月が映っている。

 

○同 柘榴の間 室内 夜

頬を膨らませ、惚けた顔するアーサー。

テーブルの上にいくつもの空になったバニラアイスの容器とコーヒーやフルーツのリキュールの瓶が置かれている。

 

アーサー「極上の甘味の中にほのかな苦味がクセになる少し大人な味わい……。し・ふ・くですわ~!!」

 

呆れ顔のなずなをちらりと見るアーサー。

 

アーサー「おほん。私、同盟者との交友をおろそかにするのはいかがなものかと思いまして。ーーつまり」

 

頬を赤くしたアーサーはスプーン片手に、

 

アーサー「アイスの食べ比べもまた、王として、淑女として、恥ずかしくないふるまいなのですわ」

 

アーサーはぷいっと顔を横に逸らす。

 

ざくろの声「ほらほらぁ、なずなちゃんもそんな顔してないで飲んで食べなぁ?」

 

缶ビールを一飲みして、笑むざくろ。

なずなはテーブルに置かれたお菓子の袋や、お惣菜の容器の数々を見て、

 

なずな「えっと、その、ジュースをいただいていますので……」

ざくろ「むー。遠慮しちゃってぇ。あ、お金? お金のことなら心配しなくてもいいよ。ちゃあんと後で、善知鳥神父に請求するし」

アーサー「その善知鳥神父は信用にたる人物なんですの?」

ざくろ「と言うと?」

アーサー「善知鳥神父はーー」

 

× × ×

(フラッシュ)

 

善知鳥の声「ーー全員揃いましたので始めさせていただきます」

 

祭壇前に立つ善知鳥。

× × ×

 

アーサー「などと言っていましたがあの場にはーー」

ざくろ「ーーはは、目敏いね、アーサーちゃん。善知鳥神父は嘘はついてないよ。あの場には全陣営が揃っていた」

 

アイスをスプーンで口に運ぶアーサー。

ぽかんとしているなずな。

 

ざくろ「正確には第一陣営を除いた全陣営だけど」

 

アーサーは座った目をしたままざくろを見る。

 

ざくろ「これは参ったね。隠す気はないよ。第一陣営にも6th討伐の招集はかけたんだけどノーリアクションでさ。貴女たちには伝えるまでもないと思っただけでーー」

アーサー「事情を知れればそれでいいですわ」

 

アーサーは空になったデザートカップをテーブルに置く。

 

ざくろ「でもほら結果的にだけど、6th討伐に対して三組の陣営が参加する。彼らには早々と【聖杯戦争】からお暇願おうじゃない?」

 

ざくろは缶ビール片手に、

 

ざくろ「さ、物騒な話はおしまい! 今は女子会を楽しも~! かんぱ~い!」

 

○インサート

夜空に三日月が浮かんでいる。

 

○向坂邸 廊下 夜

廊下を歩いている浴衣姿のなずな。巾着とバスタオルを持っている。

なずなは横目で中庭を眺める。

手入れの行き届いた植栽、景観にあった石灯籠や敷石。

中央にある水面に三日月を映した池。

なずなの足が止まる。

池の奥底が青白く光る。それに伴い中庭に無数の淡い光が現れては消えていく。

淡い光に目を奪われるなずな。

 

ざくろの声「何してるの、こんなところで」

 

なずなが振り向くと、瓶ビール数本と菓子袋を持ったざくろがいる。

 

なずな「……向坂さん」

ざくろ「も~ざくろちゃん。でしょ?」

なずな「(苦笑して)すみません、ざくろさん」

 

なずなの視線は中庭に移る。なずなの視線を追うざくろ。

 

ざくろ「ああ」

 

ざくろは微笑み、なずなの傍に寄る。

 

ざくろ「この中庭はあたしの曾曾祖父さまの魔術の集大成つーか、その副産物? でさ。池の底には人工の鉱石が埋め込まれていて、時間が来るとそれが発光する仕組みなんだ。それが大気中の魔力(マナ)と結びついて中庭全体に淡い光を生む。我が曾曾祖父さまながら雅なことで」

 

池の奥底で青白い光がゆっくりと点滅を繰り返す。

 

なずな「魔術ってこういうこともできるんですね……」

 

中庭をじっと見つめるなずな。

 

ざくろはなずなの横顔を見て、廊下から中庭に足を踏み入れる。

 

ざくろ「魔術はさ、人殺しの技術じゃないよ。【魔術師】なら【根源】に至る手段とかいうんだろうけど、あたしは便利だから使ってる。より充実した生活を送るためにねーー」

 

ざくろは池の近くで立ち止まって、振り向く。

 

ざくろ「ーーだからあたし、曾曾祖父さまが道楽で作ったこの中庭はわりかし好きかな」

 

なずなは淡い光の中にいるざくろを見て、

 

なずな「私も、わりかし好きです」

T「EP10.三日月の夜」

 

 

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