Fate/Go Astray   作:泥江青花

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EP3.剣雄集う【1/3】

登場人物

 

☆セイバー■■陣営

藤戸なずな(一六)高校生 アーサーのマスター

アーサー・ペンドラゴン セイバークラスのサーヴァント ルイスに召喚された

ルイス・フォン・シュネー(三二)なずなの担任教師 魔術使い

エミリア・フォン・シュネー(二八)ルイスの妻

ダグマル・クリューガー(六一)シュネー家の執事 Bar赤の店主

メイド

 

☆?

リュカ・バリュエレータ・アトロフスカ(一〇)ルイスの前に現れた少年

切能[きりのう] 甲冑を纏った女武者

 

☆?

セオドア・バリュエレータ・アトロフスカ(三九)魔術師 時計塔所属

鍛冶師 車椅子に乗った女性

メイドA・B

 

☆セイバー■■陣営

伊夫伎忠愛[いぶきただよし](三七)巨躯の騎士のマスター 元聖堂教会代行者 第八秘蹟会所属(東京支部)

巨躯の騎士 セイバークラスのサーヴァント

 

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○アトロフスカ邸 鍛冶場 全景 昼

林の中にある石造りの鍛冶場。煙が立ち上っている。

 

○同 鍛冶場 昼

竃の中で燃え上がる炎。火の粉が舞う。金属同士がぶつかる音が響く。

そこにセオドア・バリュエレータ・アトロフスカ(三九)が訪れる。

その後に左目に眼帯を着けたリュカ・バリュエレータ・アトロフスカ(一〇)と二人のメイドが追従する。メイド達は鞄を運んでいる。

セオドアが作業場の入り口で立ち止まり、他の三人は後ろに控える。

 

セオドア「ご所望の品を持ってきましたよ。鍛冶師(スミス)

鍛冶師の声「あぁ」

 

金属音が止み、作業場の奥から車椅子に乗った女性、鍛冶師が姿を現す。鍛冶師は荷物を持ったメイドたちをじろじろと睨め回す。

 

鍛冶師「感謝するぞ。セオドア」

 

セオドアの後ろに立っているリュカは鍛冶師を強張った表情で睨む。

鍛冶師はリュカに目を向けると、微笑む。

リュカは恐怖し体が硬直するが、視線は鍛冶師から外さない。

 

○シュネー家 玄関前 夜

薄暗い中で一人立つリュカ。扉が開き、ルイス・フォン・シュネー(三二)とアーサー・ペンドラゴンが現れる。

互いに見合う。

 

ルイス「……子供?」

アーサー「客人よ! 家人が出迎えに来たですから、名乗ってはいかが?」   

リュカ「……ルイス・フォン・シュネーとその【サーヴァント】だな」

ルイス「……ええ」

 

リュカはパーカーのフードを取り、顔を露わにする。

 

リュカ「はじめまして、だな。オレの名前はリュカ。そして――」

 

リュカの手前の空間が揺らめくと、その場に甲冑を身に纏った女武者が姿を現わす。

 

女武者「(わたし)はセイバーの【サーヴァント】。一先ずは切能と呼ぶがよい」

ルイス「セイバーの【サーヴァント】……」

 

ルイスは切能を観察する。腰元には太刀を佩いている。

ルイスは隣に立つアーサーに視線を移す。その手には光を放つ剣が握られている。

×××

(フラッシュ)

巨大な剣を振り回す巨躯の騎士。

×××

 

ルイス「これは、一体……」

 

ルイスは思わず眉を顰める。汗が頬を伝う。

アーサーはリュカたちに向かって一歩前に歩み出る。

 

アーサー「用向きを聞いて差し上げますわ。それとも、話すより一騎打ちがお望み?」

 

アーサーは剣の切っ先を切能に向ける。

切能は表情を変えずにアーサーに三歩近づく。

 

切能「では」

 

腰を落として居合の構えをとる切能。

 

切能「お手並み、拝見といこう」

 

剣を正面に構えて不敵に笑うアーサー。

 

アーサー「行きますわよ」

 

少しの間睨み合う二人。

アーサーは目にも止まらぬ速さで切能に斬りかかる。刹那、切能が抜き放った太刀がそれを弾く。

体勢を崩したアーサーに、返す刀の追撃が迫る。アーサーは弾かれた勢いを利用して身を翻し、追撃を躱す。

互いに距離を取り、構え直す。

アーサーから笑みが消え、真剣な表情に変わっている。

×××

(フラッシュ)

アーサーの視点。切能の居合抜きからの、二の太刀。隙のない連続攻撃。

×××

アーサーは一気に間合いを詰め、渾身の斬撃を繰り出す。

切能は再び居合抜きでそれを弾こうとするが、斬撃の重さに弾くことができず、鍔迫り合いになる。

しばし睨み合うと、今度は近い間合いでの剣戟が始まる。

互いに有効な一撃は入らず、再び距離を取る。

 

リュカ「もういい。切能」

 

切能は構えを解き、刀を鞘に納める。

 

ルイス「……どういうつもりですか」

リュカ「今のはそっちの力を試しただけだ」

切能「……妾たちは、話し合いをしに参ったのだ」

ルイス「話し合い?」

切能「取引と言い換えてもよい。詳しくは……耳目が届かぬ場所へ移ってから、だが」

 

○シュネー家付近 道路 夜

人通りのない住宅街。薄暗い中で対峙するルイスたちの方を樹にとまっているコウモリが見つめている。

 

○シュネー家 客間 夜

ルイスとリュカは対面でソファに座り、アーサーと切能は各々【マスター】の側に立ち、相手を見据えている。

 

切能「まずはこうして話し合いの席に着いてくれたこと、有難く思う」

 

軽くお辞儀をする切能。

 

ルイス「それで、取引とは?」

 

リュカは切能を一瞥してから、ルイスの方を向く。

 

リュカ「オレたちと同盟を結んでほしい」

 

ルイスは驚く。

 

切能「我が主には討ち果たさなければならない不倶戴天の仇がいる。そこで、そちらの聖剣使いの助力を願いたい」

アーサー「……なるほど。高みの見物とは、なかなか良い趣味をしていますわね」

切能「……緒戦での【宝具】の開帳には面食らったが、それが決め手となった」

リュカ「聖剣エクスカリバー。伝説の騎士王、アーサー・ペンドラゴンの力を借りたい」

ルイス「……そちらの要求はわかりました。では、私たちに提示できるメリットがあるのですか」

 

リュカは自身の左脇腹に手を当てる。

 

リュカ「まずはオレの持つ【令呪】を二画、あんたに譲る」

 

ルイスの表情に緊張が浮かぶ。

 

リュカ「それと、敵を倒した後になるが、切能をそちらの陣営に加わらせよう」

 

淡々と述べるリュカに、ルイスは戸惑いつつ、革手袋をはめた左手を一瞥する。

××× 

(フラッシュ)

なにもないルイスの左手の甲。手を下ろした向こうで、意識なく横たわるなずなを抱き起こすアーサー。

×××

 

リュカ「ありえない、という顔だな。無理もないが……」

ルイス「……説明してください」

リュカ「オレにはこの戦い、勝ち残る気はない」

 

リュカの表情が強い怒りで険しくなる。

 

リュカ「目的はただひとつ……ある男を殺すことだけだ」

 

〇グレアムホテル 外観 夜

繁華街から離れた立地にあるビル。

   

〇同 スイートルーム 夜

ソファに座り、窓を冷ややかに見つめるセオドア。窓には使い魔のコウモリを通してシュネー家の客間の窓が映し出されている。

しかし、窓は黒く塗り潰されたような状態で向こう側は観測できない。

 

リュカ(M)「セオドア・バリュエレータ・アトロフスカ。今回の【聖杯戦争】の【マスター】の一人だ」


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