8月21日 午後8時28分 第七学区 操車場にて。
ミサカ10032号は昨日御坂美琴に言われたことを考えていた。
『やめてよ、やめてよ!もうその声で、その姿で、私の前に現れないで!』
御坂美琴は頭を抑えてとても苦しそうに訴えていた。
自分は御坂美琴の体細胞から作り出された軍用クローンであり、実験で殺されるためだけに生まれてきた単なるモルモット。
だから何を言われようと何をされようと例え1万回以上殺されようと何も感じないはずだ。
「ですが、なぜこんなにも胸が苦しいのでしょうか、とミサカは胸に手を当てて考えます」
実験開始まで残り1分、第10032次実験がアクセラレータの登場により開始された。
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上条当麻は全力で実験場まで走っていた。
「がっ!!」
だが足が追いつかず転んでしまう。さっきの美琴の電撃が思っている以上に体に響いていた。
「くそっ!時間がねぇのに!」
携帯を開くと午後8時14分、ギリギリ間に合うか。
と思ったところで近くのデパートの電光掲示板をふと見ると
「8時34分だって!?・・・そうかさっきの電撃で携帯がフリーズして!」
くそっ!!自分の足を叩いて気合いを入れる。頼むから動いてくれ!!
己を鼓舞して前に進む。
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同時刻 第七学区 銭湯にて。
インデックス、小萌、姫神の一行はのんびりと先頭で過ごしていた。
「RSPK症候群。俗に言うポルターガイストは心的外傷や過度のストレスにより正しく現実を見ることが出来なくなった子供達が引き起こすものですしー、実験の中には様々な方法を使って現実を切り離すものもあります」
湯船に浸かりリラックスする一行。
「まともな現実から切り離された超能力者は私たちとは異なる自分だけの現実を手に入れます。異なる法則でミクロの現象を起こし手を使わずに物を動かしたり一年後の未来が読めたり出来る能力を手に入れることができるのです」
お風呂上がりの牛乳を飲んでスッキリする一行。
「学園都市で行われている能力開発とは自分だけの現実を作ることを指します。簡単に言えば薬物や暗示などを使い能力を発動するお手伝いをしているのです」
マッサージ機に順番で座って気持ちよくなる一行。
「だからカリキュラムを消化すれば誰にでも能力は発現するばずなのです。それにもかかわらず」
「あの少年みたいに発動しない人もいて」
「ん〜いや〜、むしろ上条ちゃんのような人の方が重要なんですけどねー」
「え!とうまの力を知ってるの?」
「あ、まー上条ちゃんは入学してきた時からやんちゃでしたかねー。色々あったのですよ色々。うふうふふふ」
「またか」
「あの野郎」
「レベル0が存在するってことはまだ発見されていない法則があるってことですから。それこそがsystemに繋がる鍵かもしれないのです。
「ふーん、神様の答えかー」
☆☆☆☆☆
午後8時50分 アクセラレータとミサカ妹が戦闘中。
「オイオイ、これじゃ退屈しのぎにもなんねェぞ!オラッ!」
「ぐっ!!」
その光景はもはや勝負にもなっていなかった。アクセラレータによる一方的なリンチだった。
「お前ら全員ネットワークで繋がってんだろ、前回の実験で俺の能力のネタバレをしたのに関わらず、こんなもんかよ。くだらねー、そんなんだからお前らは死ぬことでしか価値がが無ェんだよ」
「ぐはっ」
アクセラレータはミサカ妹の腹を蹴っている。見た目は力を入れていないように見えるが彼の能力でミサカ妹が受けているダメージは深刻なほど負っている。
「あーあ、つまんねェ。死ねよ」
死ぬ、そう思った瞬間、一瞬御坂美琴の顔が脳裏に浮かんだ。
だがその時はやっては来なかった。
「オイ、あの野郎昨日の奴だろ」
アクセラレータはある一点を見ていた。
そこには一昨日会ったばかりのあの少年、上条当麻が立っていた。
「なんで」
「チッ、ちゃんと殺しておけよ!メンドォクセェことになってんじゃねぇか!!アアン!」
「ぐっ」
アクセラレータは上条を気にせずミサカ妹を痛ぶった。
「離れろよ」
上条はアクセラレータに向かって言う。
「アア?今なんつった?離れろだァ?お前何様?」
アクセラレータは鋭い目つきを上条に向けて言った。
「ごちゃごちゃ言ってねぇで今すぐミサカ妹から離れろっつってんだろ!!三下ァ!!!」
上条はアクセラレータの気を跳ね返すほどの剣幕だった。
「ほォ、テメェは俺様が学園都市第1位のレベル5と知ってそんなこと言ってやがんのか。いいぜ、ちゃんとキャッチしろよ」
そう言ってアクセラレータはミサカ妹を蹴り上げた。
上条は転がるようにギリギリのところでミサカ妹をキャッチする。
「ぐはっ、危ねえ」
転がった衝撃で咳き込む。ミサカ妹の様子を見ると既に血まみれの状態だった。
「あなたの行動は、理解しかねます。ミサカたちは薬品と機材があればボタン一つで生産できる実験動物なのに。作り物の体に借り物の心、在庫にして9968体も余りあるそんなもののためにあなたは」
「関係ねえ」
「え?」
「そんなちっせえ事情なんかどうでもいい。俺は世界で1人しかいないお前を助けるためにここに立っているんだよ。お前には文句が沢山あるんだ、勝手に死ぬんじゃねえぞ」
意識が遠のく中で目の前に立つボロボロの少年は一歩一歩アクセラレータの元へ向かっていった。
☆☆☆☆☆
第七学区、操車場には貨物用コンテナやそれを運ぶためのレールやコンテナを運ぶための大型クレーンがある。
その中で上条当麻とアクセラレータは戦っていた。
一方は学園都市で1位の能力を持つ最強。
一方はレベル0の最弱。
誰が見ても戦力の差は歴然としていた。
「オラァ!!逃げてんじゃねェぞ三下ァ!!!」
「くそ!」
アクセラレータの追撃に手も足も出ない上条は必死に逃げてコンテナの陰に隠れた。
「チッ、手間かけさせやがって!三下!これで終わらせてやる!!」
アクセラレータは複数のコンテナを能力で操作して上条に放り投げた。
コンテナが落ちる地響きと砂埃は操車場の外からでも見えるくらい大きなものだった。
上条当麻はコンテナの下に埋まった。
☆☆☆☆☆
「うっ、あれ?」
俺はコンテナをかわしきれずに押しつぶされたはずだったが、かすり傷一つしていない。
それに自分の周りはぽっかりとコンテナが切り取られている。
「大丈夫か?当麻っち」
「リムル!」
俺の目の前にはスライムの姿をしたリムルがいた。
「リムル回復したんだな!」
「ああ、少し時間がかかったけどオレはもう大丈夫だ。それよりもアクセラレータの能力が解析出来たから言うぞ」
「おい、いつの間に?」
「あいつにバラバラにされた時だよ、とっさに《大賢者》に解析してもらってな。ってそんな事どうでもいいんだ、アクセラレータにオレが生きてることが知れたらまずい。時間もないし簡単に言うとアイツの能力はベクトル変換。文字通り全てのベクトルを操る力を持っている。簡単に言うと何か攻撃を受けても跳ね返せるし、むしろその跳ね返したエネルギーで攻撃も可能であるわけだ」
「それじゃあ触れられたら終わりなのか」
「そういうことだ。しかも今回の戦いはオレは参加できない、理由は当麻っちが一番知ってるよな?」
「無能力者の俺が超能力者のアクセラレータをぶちのめさないと実験は止められない」
「そうだ。・・・信じてるからな」
「任せろ」
そこまで話すとリムルは影に消えてしまった。
その瞬間 グシャ コンテナを潰すような音が聞こえた。
「中にいんのは分かってんだよ、三下!キヒヒ!早く出てこないとペシャンコになっちまうぜ」
その言葉を聞いたと同時に俺はとっさにコンテナの外に飛び出した。
ゴシャゴシャゴシャ 俺がさっきまでいたコンテナはゴミクズのようにぐちゃぐちゃになっていた。
「このアクセラレータを前にして息をしてるのは誇って良いぜ。だがなそろそろ楽になれ」
アクセラレータは夜空を抱えるように両手を広げる。
「選べ。右手か左手か、選んだ方の手でてめえの生体電気を逆流させて身体中から血の花を咲かせてやる。それとも両方か!!」
アクセラレータは真っ直ぐに俺に向かって走ってくる。
俺はそれに逆らわず真っ直ぐに右の拳をアクセラレータの顔面に打ち込む。
アクセラレータの手は俺に触れる前にアクセラレータは何メートルも吹っ飛んだ。
アクセラレータはしばらく倒れた後、突然騒ぎ出し再び突っ込んでくる。
でも俺はまた同じように顔面に拳を入れる。
「何なんだよ!その右手はァ!?」
「最強だって?一度も負けたことがないだって?なら喧嘩のやり方だって知らねえよな!三下!!」
「クソが!」
アクセラレータは地面を踏んで土砂を巻き上げシールドを張るが俺は下に回り込みその勢いでアッパーを入れた。
「シスターズだって精一杯生きてんだぞ!なのになんでお前みたいなのに食い物にされなくちゃならねえんだ!!」
アクセラレータは吹っ飛んで倒れた。
いける、勝てる
☆☆☆☆☆
御坂美琴は上条よりも遅れて操車場についた。
来る途中に大きな物が落ちる音がして心配だったが戦況を見て驚きに変わった。
上条の方が押している。彼は約束を守るために戦っている。
上条がアクセラレータを地面に拳で叩きつけアクセラレータは動かなくたった。
しかしアクセラレータが片手を上げると強風の嵐が起こった。
そして突然意味不明な叫び声を上げた時、風は周りのものを全て吹き飛ばした。
「うわっ!!」
美琴は近くの柵に捕まりどうにか吹っ飛ばされずに済んだ。
だが、上条は上空に上げられそのままクレーンに激突し地面に叩きつけられた。
「いや!」
美琴は上条の元に駆け寄った。
しかし上条はすでに身体中から出血がひどく体が少しもうごいていなかった