「死体だって!?」
「正確に言えば鎮圧部隊の騎士のの死体だ。ここは戦場なんだから当たり前だろ?」
「生徒達は気づいていないのか?」
オレは周囲を見渡しながら言った。生徒たちは普通に歩いている。
「コインの表と裏と同じだ。彼らのいる表の世界からは僕たちのいる裏の世界を干渉することが出来ない。そういう術式がこの建物全域にかかっている。君の右手で触れても無駄だよ。核の部分を破壊しなければ解けないからね」
そう言うとステイルは亡骸に祈りを捧げた。
「行くぞ」
オレたちが戦う理由が増えた瞬間だった。
☆☆☆☆☆
オレたちは階段を上がっていた。
「なあ、エレベーター使わないのか?」
「さっきも言ったろ。裏の世界の僕達はこの建物内で表の世界に干渉できない。だからエレベーターのボタンを押せない」
「ふーん、じゃあ電話は?」
「こんな時に何の連絡をするんだ君は?」
「いいから、いいから」
自宅に電話をかけた。
プルルルル ガチャ
『はい、インデックスじゃなくて、カミジョウです!」
「おー、インデックス俺だー」
『とうま!会って話した方が効率的なのにわざわざ電話なんていう非効率な手段を使って連絡してくるなんてどんな要件かな?」
トゲのある言い方に苦笑するしかない。
「なんでもねえよ、腹減ってるだろうから冷蔵庫に」
『冷蔵庫にあったラザニアなら全部食べたよ』
「確か2人分あったはずだが。はっ!?待てよ、奥にプリンがあったがまさか!?」
『・・・ごめんなさい。でも美味しかったから仕方ないんだよ』
とんでもない理屈だ。
「ま、別にいいや。いま出かけてて遅くなるから留守番よろしくな」
『とうま!』
ピッ また何か言われそうだったので切った。
まったく世話がかかる。
「君たちは仲が良いんだな」
「妬いてんの?」
「勘違いしているようだが僕は彼女に対して恋愛感情はない。僕にとって彼女は大切な存在で僕の命に代えても守るべき人とうことだ。彼女は僕を覚えてはいないけどね」
「そんなに硬い絆だったのか?」
「僕だけじゃない。一年周期で記憶が消える彼女の隣には様々な人がいて、彼らは等しく彼女のために行動していた。例え彼女が全てを忘れてしまってもね。そして今は君がその席にいて、更に彼女の呪いを解いたんだ。彼女は君を恩人と思っても当然だ」
そんな歴史があったのか。彼女の笑顔はオレの知らない誰かに向けられていた。
インデックスを救ったのは前のオレだ。インデックスは今のオレに感謝しているわけじゃない。
何となく嫌な気持ちになった。なんて言うのか分からないが、心を抉られる気持ちになった。
☆☆☆☆☆
沢山の生徒が食事を取っている。食堂にて。
「意外とカルト教団でも普通の様子だね。てっきり教祖の額縁でも飾ってあるかと思ったよ」
ステイルはタバコをふかしながら気怠く言う。
「そんなもんじゃねーのか。そういや、戦いになったら生徒たちはどうする?避難させる計画とかあんのか?」
「そんなこと僕の知ったことではない」
「お前!」
そんなことを話していると生徒たちがこちらを見てきた。
「「「警告、侵入者アリ。警告、侵入者アリ。警告、侵入者アリ」」」
!?
「警報が作動したぞ。気を引きしめろ」
すると生徒たちの額から光の玉が出てきた。
「くそ!生徒に既に細工済みか。魔術による攻撃、頼んだよイマジンブレイカー」
「は!?」
そう言うとステイルは走って逃げた。
ふざけんな!あの不良神父!
オレはステイルの背中を追って追いかけた。いくつもの光の玉も付いてくる。
「何で一緒に逃げる!異能の力を防ぐのは君の専売特許だろ?」
「こんだけ数あったら右手だけで対応できねえよ!」
「使えないな」
「なんだと!」
「とりあえず僕は先に行くからね」
「あっ!」
ステイルは1人魔術を使って逃走した。
オレは次あったら奴をぶん殴ることを決意した。
多数の光の玉から走って逃げるがどこまでも追ってくる。
右手を使うか、そう思った時光の玉が突然消えた。
何が起こった?
カツンカツン
階段から降りてくる足音。
「姫神!?」
「また。会ったね」
「お前が止めたのか?」
「うん。今のうちに。逃げて」
「お前も一緒に来るんだ!オレ達はお前の力を悪用する奴からお前を助けにきたんだ!」
「どうして?私はこの力が憎かった。それを彼は彼の大切な人のために使うと言ってる。知ってる?吸血鬼は私達人間と何も変わらない。なのに私はこの力のせいでたくさん殺した。学園都市に来れば何とか出来ると思ったけど無駄だった。彼が私にとって最後の救いなの。だから助けなんて望んでない」
「だからって!」
その時、背後から女子生徒が現れた。彼女は食堂の生徒と同様に額から光の玉を出そうとしたが、そこで彼女の体から血が噴き出した。
「どうなってんだ!?」
そこで彼女は倒れた。
血が吹き出して危険な状況の彼女に対して出来ることは俺にない。
「どうすれば?」
「任せて。血の流れに関することなら私は得意」
そう言うと彼女はテキパキと応急処置を始めた。
☆☆☆☆☆
三沢塾、ある一角にて。ステイルは多数の生徒との戦いをして三沢塾に掛かっている術式の角の部分に到達していた。
そこに1人の男が近づく。
「自然。大きな術式でおびき寄せることが出来た。当然。侵入者は2人だったはずだが。現然。貴様の使い魔は死んだか」
整った顔にオールバック、白いスーツの白人。
「ふん、奴はこの程度で死ぬ玉ではない。ここに僕をおびき寄せてどうするつもりだ?錬金術師アウレオルス・イザード」
絶対的に勝利を確信しているステイルは言い放つ。
「当然。処理だ」
☆☆☆☆☆
「すげーな、こんなことも出来るのか」
女子生徒の処置が終わってオレは姫神に感心していた。
「私。魔法使いだから」
「は?」
そんなアホな会話の途中、奥からコツコツといくつもの足音が響いてきた。
「なんだ。あいつら」
オレは困惑した。彼らはそれぞれ人の形をしていた。だが耳は縦に長く、肌は土色をしていた。さらにそれぞれに人の腰ほどの大きさをした狼のようなツノの生えた獣を引き連れている。
「彼らは
「くそ!女の子の前で逃げられるわけねえだろうが!」
オレは彼らの群れに飛び込んだ。
テンペストスターウルフが竜巻を発生させこちらに放った。
一か八か、右手を構える。
触れた瞬間竜巻は消えた。
いける!右手の力が通用する相手だ。
相手が驚いている隙に近くのボブゴブリンを殴った。
だがそこで追撃が出来なくなった。他のボブゴブリンたちが消えた。
「どこ行った?」
「後ろ!」
姫神の声も虚しく背後からの一撃で倒されてしまった。
その後地面に屈服させられた。
「くそ!」
カツカツカツ そこへオールバックに整った顔つきの白いスーツを着た白人の男が歩いてきた。
「必然。私の兵隊が勝利した。憮然。少年よ、その程度か」
「てめえがアウレオルス・イザードか!姫神を解放しやがれ!」
「当然。躾のなってないガキは嫌いだ。口を閉じろ」
「!?」
何かの力が働きオレの口が開かなくなった。
なんなんだ、この力?
「憮然。つまらんな。吹き飛べ」
「待って!この少年は今日会ったばかりの見知らぬ私を助けるために来ただけ。その行為は間違いだけど、一般人を殺すなんてあなたがやりたい事は何なの?もし一般人を巻き込んで私の力を使うのではあれば私はいま私の舌を噛んで死ぬ!」
姫神!馬鹿野郎!
「ふん、必然。こんな所で時間を割く余裕なし。少年、案ずるな。今回は殺しはしない。ここで起きた事全て忘れろ!」
グサッ アウレオルスは突然自分の首に針を刺した。
目の前が真っ暗になる。
☆☆☆☆☆
学生寮にて。インデックスは入浴中とうまとの電話を思い出していた。
勝手に冷蔵庫のものを食べて怒らないのは様子がおかしい。
何か別のことで気にしている暇がないのでは?何か嫌な予感がする。
いてもたってもいられず、着替えて部屋から出た。
「何これ?ルーンのカードがこんなに」
学生寮の至る所にルーンのカードが貼られていた。
「この魔術師の痕跡をたどっていけばとうまに会えるかも」
彼女の脳内には10万3,000冊の魔道書が記憶されている。魔術の解析などお手の物だ。
辿っていくと大きな建物に入った。
「何なのこの場所。至る所に魔術の結界が張られているんだよ」
とうまはこんな場所に来て何をしているのか?心配でさらに奥に進もうとした時、オールバックで白いスーツを着た男が奥から出てきた。
「久しいな。覚えていないか、必然。アウレオルス・イザートという名にも聞き覚えはないな、否。それでこそ行幸だ、眠れ!」
インデックスは突然倒れてしまった。
☆☆☆☆☆
ある公園にて。
「はっ!?」
突然目が覚めた。どうやらブランコに乗っているようだが。
「目が覚めたか。その様子だと今の状況を把握出来ていないね」
横にはステイルがいた。
「オレ達何でここに?」
「分からない、しかし君といるという事は何かしなければならないことがあったのは間違えない。まあ忘れるような些細なことだろうさ」
「ん、そうなのか?」
記憶に何かあったのか?オレは自然と右手で頭を触った。
瞬間、全てを思い出した。
「そういうことか。ステイル待て!オレたちは今すぐやらなきゃいけないことがある!」
「なんだい、いきなり?」
「うるせえ!オレのことよくも囮にしてくれたなこの野郎!」
ガツン オレのパンチがステイルにクリーンヒットした。
☆☆☆☆☆
三沢塾前にて。上条とステイルが走ってくる。
だが建物周辺には数人の騎士が立っていた。
「あいつら!」
「騎士団の生き残りのようだ」
「何をするつもりなんだ?」
「きっと直伝の大型魔術でも建物に打ち込むんだろうさ」
「なんだって!?」
そう言っている間に騎士の剣が光を空へ放った。そして空から雷にも似た稲妻が建物に直撃した。
崩れる壁、割れる窓ガラス。建物は倒れていく。中の状況は悲惨な結末に向かうに違いない。
「あそこには姫神や無関係な人たちが!」
しかし突然、時間が戻ったかのように建物は修復した。
「今何が?」
「あれが僕たちの相手アウレオルス・イザードの力、
それでも行かなてはならない。進もうとした時、見慣れた修道女の帽子が落ちていた。帽子の下から三毛猫が出てきた。
「スフィンクス!まさかインデックスもあの建物の中なのか!?」
圧倒的な力を知りさらに守るべき少女も危険な状況だと分かった。
「状況は最悪だ。急ぐぞ」
オレたちは建物に入ろうとした時目の前の陰から1人のボブゴブリンが現れた。
「お前!またか!」
オレ達は臨戦態勢に入った。
「私は敵ではありません!私はボブゴブリンのリグルと申します!どうか助けては頂きませんでしょうか?」
なんとリグルと名乗る見た目青年のボブゴブリンは土下座をしてきたのだった。