「お前、ゴブゴブリン!また襲いにきたのか!?」
オレは目の前にいるリグルと名乗るゴブゴブリンに言った。
「そのような恐れ多い気持ちは滅相もございません!先程は大変申し訳ない事を致しました!お許し頂けないことは承知の上で、お願いがございます!私の仲間たちを助けてください!どうかこの通り!」
リグルは頭を地面に押し付けて頼んだ。よく見ると額からだろうか、地面に血が濡れている。
「上条当麻。貴様の知り合いであっても僕の邪魔をするのではあれば容赦はしない。どかないなら殺すまでだ」
ステイルは手から出た炎を操りリグルへ放った。
リグルに当たる直前、右手を使い炎を消した。
「待ってくれ」
「なんだい?邪魔するなら君も殺す」
「オレは建物の中でコイツの言う仲間に襲われた」
「だったら」
「だったら利用価値がある。こいつから情報を引き出し先に進んだ方がオレたちの勝機が上がる」
「ふうん。一理ある。だがこいつが嘘の情報を言うかもしれない。それで死んだら元も子もない」
「ああ、だからリグル。オレたちがお前を信頼できる証を証明してくれないか」
オレはリグルに向かっていった!
「はっ!では神父殿先程の炎をもう一度出して頂きませんか?」
ステイルは言われた通り炎を出す。
リグルは何のためらいもなく両手を炎に入れた。
「何やってんだ!?」
慌ててオレは止めようとした。
「止めないでください!私の仲間の命がかかっているんだ!!」
リグルの目は本気だった。
ステイルは目の前光景に対して驚いた表情をしなかった。
「・・・炎よ、もっと燃えろ」
炎はさらに燃えた。
リグルの皮膚が焼ける匂いがした。
でもリグルは表情を変えない。
リグルの両手がただれ始めた時、炎は消えた。
「言え」
ステイルはリグルに尋問をするかのように言った。
「ボブゴブリンとテンペストフルフは影移動をします。移動範囲は自分の影が届くまで可能です。ただし影移動はボブゴブリンとテンペストウルフの間で十分な絆があってこそ出来ます。そこに勝機があります」
「勝機とは?」
「不思議な右手を持つ貴方様です」
リグルはオレに顔を向けて言った。
「オレ?」
「はい。まず最初になぜ私だけ自由に動けているか説明しなければなりません。時間がないので簡単に言うと、私は何かの能力で操られていました。意識はあるのに体が勝手に動くのです。ですが、あなた様の拳が私に当たった際、術が解けたのです」
「と言うことはオレの右手であいつら全員を触れば解けるっていうわけか」
「君の右手は個に特化し全に弱いだろ。集中攻撃されたら終わる」
「そ、そうか。ならどうすれば?」
「テンペストウルフを1匹でいいので触ってください。そうすればテンペストウルフの性質である《全にして個》が発動し全てのテンペストウルフに掛けられた術は解けるでしょう。そしてそれぞれボブゴブリンとテンペストウルフはパートナー同士なので彼らが主人を止めてくれるはずです」
ゲームの中に出るようなキャラクターの話だから疑いたくなる。
でもリグルの両手はもう使えないだろう。それ程までの覚悟を持っている彼を信じるのが情というものだ。
「分かった。では作戦を練ろうか」
「よろしく頼むぜ、リグル」
「はっ、この命に代えて」
☆☆☆☆☆
三沢塾、アウレオルス・イザードがいる部屋の近くの階層にて。ホブゴブリンとテンペストウルフ達が警備をしている。
そこへ赤髪の神父が現れた。
「ふうん。これがホブゴブリンにテンペストウルフか。いったい今までどこで生きていたのか。ま、今はどうでもいいか」
「侵入者発見。排除します」
「やってみろ」
ステイルは大量のルーンカードをばら撒いた。それぞれが彼の魔術の起点となる。
「巨人に苦痛の贈り物!」
大量の炎がホブゴブリンとテンペストウルフに向かう。
「
しかしテンペストウルフ達から竜巻が放出された。
このままでは炎は消される。
しかし1人の少年が右手を構えて走り出す。
「うおおおおおおおおおお!!!!」
炎と竜巻のぶつかる瞬間、ある場所だけが不自然に炎と竜巻が消えた。
そこから飛び出した少年は近くのテンペストウルフに触れた。
瞬間、一斉にテンペストウルフはゴブゴブリンを取り押さえた。
「カミジョウ殿!ゴブリンキングに触れてください!」
「おう!」
右手で触る。するとゴブリンキングからの殺気は消えた。
「よくやった、リグル。お二人ともここはもう大丈夫ですので先に行ってください」
ゴブゴブリン達は脳内で意思疎通を図ることが出来る種族であったため、意識の中の彼らは作戦を把握していた。体だけが操られていたので術さえ解ければ問題なかった。
「分かった!」
敵はアウレオルス・イザードのみ。二人の少年は少女達を救うため走り出す。
☆☆☆☆☆
姫神秋沙。彼女には生まれた時から
故郷は人里離れた集落。そこには大切な人たちがいた。
彼らは姫神秋沙を大切に育てた。そこには確かな絆があった。
しかし彼らは吸血鬼だった。姿形は人間なのに性質は吸血鬼、本当は人の血なんて吸いたくないのに吸ってしまったら死んでしまうのに彼らは姫神の肌に牙を立て吸ってしまった。
死んでいく吸血鬼たち。そんな光景を何度も姫神は見て自分の能力を憎んだ。
学園都市の能力開発で自分の能力に を消すことが出来るかもしれない。
そう期待してこの街に入ったが、学園都市さえ手に余る能力で測定不能の結果だった。
「もう死のう」
ビルから落ちようとした時、ある男が彼女の手を取り止めた。
「何で止めるの。私は生きてはいけない」
しかしある男、アウレオルス・イザードはこう言った。
「君の力で人を救うことが出来る」
「本当に。本当に私の力で誰も傷つけないで人を救うことができるの?」
その微笑みに嘘は無かった。あるのはたった一つの願い、愛する人を救いたいという思いだけ。
だから私は。
☆☆☆☆☆
アウレオルス・イザードの居場所はステイルが1度目の潜入の時に暴いていた。
それよりもオレは最後の決戦前にアウレオルス・イザードへの対抗策を振り絞って考えていた。
「くそ!言葉通りに何でも思い通りになるなんて反則じゃねえか!しかも姫神だけでなくインデックスまで捕まってるかもしれないのに」
「仮にあの子が迷い込んで捕まったとしても危害は加えられないだろうさ。なぜなら彼は・・・!?そうか!そういうことか!チッ、三年も潜伏していれば世情にも疎くなるわけだ」
ステイルは何かに気がついてイラついたようにタバコを捨てた。
何の事だ?
この後ステイルから語られたアウレオルス・イザードの目的に驚愕した。
☆☆☆☆☆
三沢塾、最上階にて。上条当麻とステイルはアウレオルスイザードと対峙する。
アウレオルス・イザードの側には姫神、その近くの長い机の上でインデックスが眠っている。
「姫神!インデックス !」
今すぐにでも助けに行こうと走り出すのをステイルが止める。
「アウレオルス・イザード。君の目的は残念ながら果たすことは出来ない」
「ふん、今更我が真意に気がついたのか。ならば己が無力に身を焦がすが良い」
「うまくいくなら焦がしあいもあるんだけどね、彼女を救うことは出来ない。インデックスを救うことはね」
「貴様は出来なかった。だが私は、私はこの子を。10万3,000冊の魔道書を背負いその呪縛から解けることが出来ない少女にも関わらずその運命を受けてもなお、他人の幸福のために祈りを捧げる少女」
三年前、アウレオルス・イザードはインデックスのパートだった。去年はステイル。そして今のオレが彼女のとなりにいるように。
「彼女は一年ごとに記憶を消さなければならない。そうしなければ彼女は生きてはいけない。そういう人には抗えぬ運命だった。しかし」
「逆に言えば人ならざるものを使えば解決するということだ」
「吸血鬼は無限の命を持つもの、無限の記憶を人と同じ脳に蓄え続けるもの。あるんだよ吸血鬼には、無限の記憶を蓄えたとしても自我が崩壊しない術が!」
「手に入らなかった場合は?」
「ふん、ならば彼女を吸血鬼にするまで」
なんだと!?生徒たちに魔術を使わせて姫神を利用して更にインデックスを吸血鬼にしようとしてるのか!!
「ふざけんじゃねぇ!!」
「必然。この子が救われることより大事なことはない。あの子が記憶を消される直前、あの子は言ったのだ!忘れたくないと。もう指一本動かせない状況で!笑顔で告げたのだ!分かるか!?あの子の悲劇を止めるためには手段など選んでいる場合ではない!!」
ステイルはタバコに火をつけて吹かしながら聞いていた。
「なるほどね、けどその計画には致命的な欠陥がある。上条当麻行ってやれよ」
「てめえ、いったいいつの話をしているんだ」
「何?」
「インデックスはもう既に救われているっていうことだ。彼の右手に宿る人のならざる能力イマジンブレイカーによってね」
「そんなまさか!」
「良かったな、君の望む通り彼女は幸せそうだよ。彼の隣で寝でね」
「くっ」
そうなのだ。アウレオルス・イザードの目的はインデックスの一年周期で記憶を消される呪いを解くこと。それは前のオレが解決した。
だからそもそも争う必要なんてなかったのだ。
「う〜ん、とうま」
インデックスが寝言を言った。
「とうま、お腹すいた〜。りんごが食べたいんだよ〜。むにゃむにゃ」
戦場の空気が一変して和んだ。
「はははは」
ステイルはバカらしくて笑った。
「はは」
オレも力が抜けて笑ってしまった。
「フハハハハ」
アウレオルスも笑い声を上げた。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!倒れ伏せ侵入者共!」
狂った笑い声をあげ言った。
瞬間オレたちは倒れ臥す。
「ぐっ」
「我を嘲笑い、苔にしよって!よかろう、貴様らの死によって償ってもらおう!!!」
「待って!」
姫神が庇うように立ち塞がる。
「やめろ!姫神!」
オレはどうにか右手に噛み付いた。
「死ね」
だが遅かった。姫神が倒れる。
「姫神ーーーーーーー!!!!」
オレは全力で走り姫神を抱きかかえた。右手が触れた瞬間、姫神の息が戻った。
「あ。私」
「もう大丈夫だ、姫神。後は任せろ」
姫神は糸が切れたかのように気を失った。そっと抱きかかえ安全な位置に寝かせる。
「アウレオルス・イザード!!てめえが、自分の目的のために何の罪もない女の子が死んでもいいっていうんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」
最終決戦、今まで背負ってきた負けられない理由を背負い少年は拳を握る。