「あー床冷てー」
ステイルが床に突っ伏しながら場違いなことを言う。
ここは戦場、オレはアウレオルス・イザードと対峙している。
「憮然。ゴブリンと獣が殺していればこんな面倒ごとにならなかった。当然。これが終わったらヤツを殺し、金を取り戻す」
「ヤツ?金で買ったって言うのか!?」
「自然。あんな代物、どこでもいるものではない。ヤツはたくさん持っていると言っていたが、ヤツを殺した後にでもそれで私が一儲けするのも悪くない」
「てめえ!!!リグル達は物なんかじゃあねえ!!オレたちと何も変わらない誰かを守りたいって心を持ってるんだ!!」
「理解出来ぬな。吸血鬼同様、私の駒として使い続けてやる」
「この野郎!!!」
オレはアウレオルスに向かって走り出した。
「窒息死」
アウレオルスはクビに針を刺し言った。
「ぐ!!」
息が出来ない!右手を自分の首に何とか持っていき打ち消す。
「感電死」
目の前から来る電撃を右手で打ち消す。
「圧殺」
頭上から落ちてくる自動車を右手で打ち消す。
「ハアハア」
右手が通用する。これならいける。
「なるほど、その右手は我が
アウレオルスがクビに針を刺す。
「我が手に弾丸を込めた銃を、弾丸は魔弾、用途は射出、人間の動体視力を超える速度にで発射!」
ピューン ゴシャア!!!顔をかすめ後方で破壊音が聞こえた。
反応出来なかった。今のが当たっていたら死んでいた。
「簡単には殺さん。痛ぶってから殺してやる。先の手順を量産、両の暗器銃にて同時射出!」
「ぐはっ!!」
もろに当たり後方に吹っ飛んだ。
「ぐ、あれ、傷がない?」
「フハハハハ!!言ったろう、簡単には殺さぬと。準備は万端、両の暗器銃を射出」
「ふん、それは本当に言葉一つで現実を歪めているみたいじゃあないか」
ステイルがアウレオルスの言葉を遮り言った。
「当然。
「だったらなぜ
またも遮りステイルは言った。
アウレオルスは意をつかれた表情をした。
なんだ?ステイルは何を言おうとしている?
「何で吸血鬼なんか必要としている。作ればいいだろ吸血鬼くらい、言葉で命じるままに」
アウレオルスの顔はみるみる青ざめる。
「なぜしない錬金術師。いやそれ以前にこんな遠まりをせず言えば良かっただろう、全てを言葉のままに歪められるなら」
「ロンドンの魔術師よ宙に舞え、そしてはじけろ!!」
ブシャァ ステイルは全てを剥がされ肉塊のみになった。
「小僧、遊びは終わりだ」
そうだ、最初から言えば良かったんだ。インデックスの救いを。
でも言うことは言わなかった。インデックスの救いを命じることは出来ないと思ったんだ。
思えなかった?だから口に出来なかった?
そうかコイツの力は言葉のままに現実を歪めることじゃない!
「貴様の右腕を切り落としてやる。暗器銃の銃撃を中止、銃口に剣を装填、対象者の右腕を切り落とすように射出!」
ズシャアアアアア!!
切り落とされた右肩から大量の血液が出た。
「フハハハハハ!!!」
アウレオルスは勝利の笑い声をあげる。
「ククク」
☆☆☆☆☆
アウレオルスは上条当麻の右腕を切り落として勝利を確信した。
「なぜ貴様は笑って立っているんだ!?」
アウレオルスは理解出来なかった。なぜ少年が不敵な笑みを浮かべて立っているのか。少年は不敵な笑みを浮かべてアウレオルスの方にに近づいてきた。
「ふう、やっと出られたぜ。やっぱりイマジンブレイカーのせいで出られなかったんだなー、カミジョウさんごめんよーショックで気絶してんのかな?全然反応ないけど」
少年は不敵な笑みを浮かべながら言った。
「よし手始めに《擬態》テンペストウルフ」
少年が体長6メートルにもなる狼のような獣に変化した。
「うっ、先の手順で対象者の首を跳ねるように剣を射出!」
「《擬態》ブラックスパイダー」
天井に届きそうなほど大きな黒い蜘蛛に変化し剣は行き先を見失ってあらぬ方向に向かう。
「なっ、先の手順を量産、両の銃から剣を射出!」
「《擬態》終了。真の姿へ」
シュンシュンシュン。しかし再び剣は空を切る。
「おい、錬金術師。まさか右腕を切っただけで勝てると思ったのか?」
巨大蜘蛛が消え声だけが聞こえた。
「オレはキレてんだ。容赦しないぜ」
足元にスライムがいた。
「ヒィ!!」
アウレオルスは驚いて尻餅をついた。
何故姿がころころ変わる!?奴は魔術師だったのか!?だったらまた集中し直さなければ!
そう思って懐から針を出そうとした瞬間、スライムから出た糸がアウレオルスの手を拘束する。
「それが無いと雑念を振り払えないもんな?どうした?言葉のままに歪めてみろよ」
「ひっ!!」
スライムの姿が変わった今度は銀髪の少年のようにも少女のようにも見える人間の姿になり、アウレオルスを見下ろした。
「言葉のままに歪めてみろよ」
姿とは裏腹にとてつもないオーラを感じた。
アウレオルスは絶対的に勝てないと考えてしまった。
「ぐはっ」
アウレオルスは自分の想像力で作ったイメージに押しつぶされ気絶した。
☆☆☆☆☆
ステイルはアウレオルスの術が解けた瞬間、インデックスを救出し、アウレオルスと突然現れた人物の戦いの結末を見ていた。
「君は誰だ?」
「オレの名前はリムル・テンペスト。味方だよ、ステイル少年」
「上条当麻はどこへ行った?」
「彼は今はオレの中で眠っている。出血は止めたけど、危険であるのは変わらない。早く病院に行かないとね」
「それはどういう」
「リムル様!!」
ステイルの質問を遮りゴブゴブリンとテンペストウルフ達が入ってきた。
「おー!みんな〜無事だったか!」
「はい!リムル様もご無事で何よりです!」
「そうだ、リグルの手を治さないとな。ほれ」
「ありがとうございます!」
リムルが出した塊がリグルの手の火傷を一瞬で治した。
「なんなんだ!それは!?」
ステイルは驚く。
「言っても分からないし時間の無駄だと思う。それよりもステイル少年、君にオレたちのことを話さないとね」
ステイルは改めて目の前にいるゴブリンと獣、それと先程から膨大な魔力を感じる人物を見た。
「君たちのこと?」
「そうさ、オレたちは元々こちら側の世界とは違う世界。異世界に住んでいたんだ」
「異世界?」
「だがある日突然オレたちの住む街が襲われた。黒い霧が目の前を覆い、気づいたら上条当麻の意識に入っていたんだ。どうやらその時上条当麻は大怪我をして入院をしていた。10日前のことだ」
10日前、と言うことは上条がインデックスを救って入院していた頃か。
「10日間、この世界を上条当麻の意識から観察した結果、異世界転生をした可能性があると思った。そしてオレの仲間であるリグル達と出会って確信した。オレの仲間たちも同様にこちらに転生していると」
「そんな事あり得るのか?」
異世界に転生する魔術など聞いたことがない。
「この世界は知らないけど、オレの世界には転生者という人が稀にいるんだ。だからありえない話じゃない。しかもアウレオルス・イザードが接触した人物はまだたくさん持っていると言っていた。ということはオレの仲間がそいつに捕まっている可能性が高い」
そう言うとリムルはアウレオルス・イザードに何か鱗粉のような物をふりかけた。
するとアウレオルスは目覚めた。
「はっ」
「よお、錬金術師。起きて早々なんだが答えてくれ、オレの仲間であるゴブリンたちを渡した奴について教えてくれ」
「・・・直接は会った事は無い。だから奴の場所は分からない、おそらくテレポート系の能力者を使いに出していた。そいつはいつもフードを被っていて顔は分からない」
「奴について何でもいい思い出してくれ」
「・・・奴は、世界を変えると言っていた。異世界の力を使い魔術サイドと科学サイドを壊しこの世界をを支配するつもりかもしれない。そう言えばフードのテレポーターは奴のことを《魔王様》と呼んでいたが。これ以上は知らない」
「魔王か」
アウレオルスはリムルを見て攻撃をする気がないのか、死んだような目をして質問に答えた。
「よし!リグルド、みんなを二手に分かれさせろ。片方は学園都市に潜伏、もう片方はステイル少年について魔術サイドに行って調査だ!」
「かしこまりました」
「待て待て待て僕がこいつらの面倒を見るのか?」
ステイルは慌てて言った。
「安心しろ!みんな強いし頼れる!みんな〜ステイル少年の言うことをよく聞くように!」
「はーい」
「おい!」
「細かいことを説明している時間はないんだ。早く病院に行かないとオレの中でカミジョウさんを死なせたくない!ランガ!」
「我が主人!」
「ステイル少年。事後処理任せたー!」
そう言うとリムルは狼のような角の生えた獣に乗って出て行ってしまった。
「何だったんだ」
ステイルは状況の展開に追いつけなかった。
☆☆☆☆☆
第七学区、病室にて。上条当麻はカエル顔の医者と話している。
「10日間に二度も入院とはよっぽどこの病室が気に入ったんだね。それともナースフェチ?」
「違いますよ!」
「そうなのか、残念だね。まあ何より君の右腕綺麗にくっついて良かったよ」
「はあ、ありがとうございます」
カエル顔の医者が出て行った。
「正直、右腕ぶった切れてそこから記憶ないんだけど、勝ったのか?」
「勝ったよ」
「うわっ!」
突然、ベッドの横に銀髪の少年のような少女のような人物が現れた。
「お前誰だ!?」
「色々事情があるから彼が説明するよ」
「元気そうだな上条当麻」
病室の入り口から現れたのはステイルだった。
「ステイル!コイツは誰だ?」
「彼の名前はリムル・テンペスト。異世界の住人だ」
☆☆☆☆☆
「やばい、頭が追いつかない」
大量の情報を一気に入れられて頭がショートしそうになる。
「とりあえず姫神もインデックスもみんな無事だっていうことだな!」
「そうだ、姫神秋沙は我々イギリス清教の保護下にし《歩く教会》と同等の十字架を渡した。それがあれば彼女の力を抑えることができる」
「アウレオルスは?」
「彼はこちらの都合で顔を変えさせて自由にさせたよ。目も当てられないほどになっていてね、同情による釈放だ。二度と魔術に関わらないだろうさ」
「で、そいつが異世界から来たって?」
「そうさ!」
ステイルの代わりにリムルが返事をした。
「信用できないけど?」
「ならこれを見よ!」
そう言うとリムルは姿を変えて俺のベッドに乗ってきた。
「スライム?」
「うん!オレの真の姿はスライム!これで信じたか?」
スライムなんか架空の生き物、この世界にいない。ステイルもリムルの事を信用しているようだし信じてみよう。
「分かった信用する」
「よろしく!上条ちゃん!これからオレたちマブダチだな!」
妙に馴れ馴れしいスライムだな。
「上条当麻、僕はこれからリムルの仲間を連れてイギリスに戻るよ」
「おう、ってリムルはどうするんだ?」
「あん?話聞いてなかったのか?」
「え?」
「リムルは何故か君から半径3メートルの位置から出ることができないんだ。これは君の右手でも打ち消せない、きっとどこかに力の核があるんだろうが、これが魔術なら僕には分かるけどどうやら魔術ではないみたいだし、しばらく君がこのスライムを預かれ」
「多分上条ちゃんの中にいた時の後遺症みたいなものだと思う。だからしばらくよろしくな!」
「そんな〜、不幸だ」
ステイルが病室から出て行った。俺とリムル2人っきりになった。
「リムルの仲間が捕まっているかもしれないんだな?」
「ああ。だから面倒かけるかもしれない」
「分かった。なら協力する、一緒にお前たちが元の世界に戻れるように頑張ろうぜ!」
「おう!」
俺とスライムは握手して誓った。俺は左手、リムルは体から伸びた腕のようなもの、触るとやはりスライムのようにプニプニしていた。
「とうま!!!」
突然病室にインデックスと姫神が入ってきて、少し、いやかなり騒がれたが、全部説明して納得してもらった。
これからまた戦いがあるかもしれない。でも彼女たちを守っていく。それが上条当麻の使命だから。