8月21日午後7時、第七学区とある路地裏にて。
「実験?クローン?」
俺は御坂妹に言われたことを完全に把握するまで時間がかかった。それくらいわけがわからない話だった。
「アイツは、御坂はこの事を知っているのか?」
そう思ったらいてもたってもいられなかった。駆け出そうとするが体が動かない。
「そうだ、リムル!」
先ほどの出来事で頭がいっぱいだったが、リムルの事を思い出した。
そうだ、リムルは奴にバラバラにされたんだ。
辺り一面にリムルのカケラが落ちている。
リムルはまだ生きている。死んでいたら俺は自由に動けるはずだ。
「リムル生きてるんだろ!?返事しろ!!」
「・・・と、ま、ち」
「リムル!!」
リムルの声がした。やっぱり生きている。
リムルのカケラを見てみると少しずつだが修復しているみたいだ。
「当麻っち・・・オレは、大丈夫だ。・・・ただ損傷が激しくてな、修復に時間がかかりそうだ。・・・クソ油断した。奴の能力を甘く見ていた」
「リムル喋るな!回復に専念しろ!」
「いや、そんな悠長な事言っている場合じゃあないぜ。・・・一刻も早く美琴っちを見つけてくれ・・・彼女が危ない」
そこでリムルの声が消えた。それでも少しずつだがリムルの体は元に戻っていた。
「リムル!!・・・くっ」
俺はリムルの体を近くのゴミ箱に入っていた袋に集めた。右手が作用すると危ないので左手で集めた。
「ランガ!起きてるか!?」
吹っ飛ばされたランガを見に行くと予想以上にやられていた。
「か、上条殿」
「お前はここで休んでいてくれ、お前の仲間に連絡して助けてもらえ。俺は先に行く」
「面目無い」
俺はランガの頭を撫でてやった。
主人を守れなくて相当悔しいだろう、その思いを右手に込めた。こいつの分まで俺はやらなくてはいけない。
この使命を果たさなくてはいけない。
☆☆☆☆☆
同時刻、第七学区、とあるオンボロアパートの月詠小萌の部屋にて。
月詠小萌とその部屋に居候している姫神は焼肉をしていたが、そこにお腹を空かしたインデックスが乱入して色々あった後インデックスが小萌にある質問をした。
「超能力とな何なのか、ですか?」
小萌が焼肉を食べるのを止めて言った。
「簡単に言えば、シュレディンガーの理論なんですけどー」
「シュレディンガー?」
「ここに箱があります。この箱の中には何が入っているでしょうか?」
小萌はよくあるチョコのお菓子の箱を見せて言う。
「むー、チョコの箱なんだからチョコが入っているに決まっているんだよ」
「残念でしたー!飴玉が入っているのです!」
「えー、なにそれ」
「この箱には何が入っているでしょうか?」
小萌はさっきと同じことを繰り返した。
「飴玉が入っているって自分で言ったじゃん」
「言いましたけど、先生が嘘を言っている可能性があります」
「むー」
「チョコ50%、飴玉50%開けてみないと分かりません。はいどうぞ」
小萌は箱を開けて中身を見せるとチョコが一つ入っていた。
そして閉めてもう一度聞く。
「はい、シスターちゃん。この箱の中には何が入っているでしょうか?」
「・・・チョコ入ってるの見たもん」
「確かにさっきチョコを見たことでチョコ100%だと普通の人は思うでしょう。・・・でも飴玉が入っていると思う人がいたら?それを信じてそれを手に入れたら?」
小萌は一拍おいて核心を言う。
「まともな現実から切り離され自分だけの現実を手に入れた人を私たちは超能力者と呼ぶのです」
☆☆☆☆☆
午後7時半、第七学区常盤台中学女子寮前にて。
俺は美琴と同室の白井黒子の協力のもと、美琴の部屋に入ることに成功した。しかし美琴は外出中だった。待っている間に白井から美琴と普段から諍いを起こしていているのかと聞かれたが何だったのだろうか。
そんな世間話をしていたら寮の見回りの時間になり俺は美琴のベッドの下に隠れることになった。白井は寮監と外に出て行った。
「いってー、ん何だこれ?」
ベッドの下には君の悪いクマのぬいぐるみがあって、それのファスナーの隙間からプリントがはみ出ていた。
そこにはシスターズの文字が書かれていた。
『
「
プリントの裏を見ると地図がありいくつもばつ印が付いている。
「なめやがって」
☆☆☆☆☆
御坂美琴、彼女は幼少期の頃から能力に目覚めていた。それは微々たる現象だったが学園都市の研究者は筋ジストロフィーの治療に役立つと言った。
自分の能力は人の役に立つんだ、そんな誰にでもある良心を持って学園都市に自分の能力を授けた。
それから順調に能力を上げてレベル5、学園都市第3位
常盤台では尊敬の眼差しを持たれいつも疎外感を持つようになった。
でも白井黒子という友人を介し初春飾利、佐天涙子という友人に恵まれた。
ある不思議な右手を持った少年と夜通し追いかけっこした。
そんなある日、自分のクローンが作られているという噂を聞いた。
最初は冗談だと思ったが、段々と興味が湧き調べてみた。
実際クローンは存在した。会った時は見た目はそっくりなのにぼけっとしていてなのになぜか強情でわがままで全然自分と似ていなかった。
しかしある資料を発見してしまった。
目の前で自分のクローンを殺された。殺したのは学園都市第1位
そこから彼女の孤独な戦いは始まった。
実験を止めるため研究所を破壊していった。レベル5の刺客と戦った時もあった。
そして全ての研究所を破壊し、実験を止めたと思っていた。8月20日にもう一度御坂妹と出会うまでは。
彼女は言った、まだ実験は続いていると。現在進行形で御坂妹は殺されていると。
美琴は絶望した、絶望しながらも実験をしている研究所を突き止めて破壊した。
でも無駄と分かって彼女の心はどん底に落ちた。
最後の手段を取るしかない。自分が死んで終わらせよう。
この悲劇を止めてくれる都合の良いヒーローなんていないんだから。
☆☆☆☆☆
「何してんだよ、お前」
午後8時、第七学区鉄橋で御坂美琴は死ぬ覚悟を決めた時、後ろから知っている少年の声が聞こえた。
こんなタイミングよくヒーローなんて来るはずない。でもアイツは、上条当麻は来た。
「いきなり説教?こんな時間にどこ歩いてよーが私の勝手でしょ。不良が来たって私の電撃でイチコロよ」
美琴は上条に自分の気持ちを勘付かれないように誤魔化した。アイツは来てはいけない。
「2万体の軍用クローンシスターズを使って2万通りの戦いを行いアクセラレータはレベル6に到達する」
上条は資料を取り出し言った。
「!?」
アイツはこの事を知ってしまっていた。ああ、アイツのことだから死んでも私のことを止めるだろう。
しかしそんな事はやらせない。アイツはこの実験に関係ない。
「昨日あの子に会ったばかりなのにそこまで調べるなんて。それ持ってるていう事は私の部屋に勝手に入ったってわけね。本来なら死刑よ死刑。でそれ見て私のことどう思った?」
「心配したに決まってんだろ」
は?心配?怒りとか呆れではなく?私が自分の細胞を学園都市に提供した事や研究所を破壊していたことを知ってそんなこと言えるの?
「・・・嘘でもそう言ってくれる人がいるなんてね」
「嘘なんかじゃねえよ」
「え?」
「嘘じゃねえって言ってるだろ!!」
美琴はそこで初めて上条と目を合わせた。彼の目は本物だ、本気で美琴の事を考えている目だった。
それを見てこれ以上上条と一緒にいてはいけないと思った。
「はいはい分かったわ。でも私はレベル5の超能力者よ、大丈夫アクセラレータは私が止めるから」
そう言って上条の隣を通り過ぎようとした。
「お前、死ぬ気だろ」
前を塞がれて上条に核心を突かれた。
「だったら何?私があまりにも無様に負ければ、御坂美琴は弱いから今のままでは実験を行ってもレベル6に上がるか分からなければ実験は中断する」
「再演算されたら」
「それはないわ。数週間前に
「それでも、また誰かが同じことを繰り返そうとするだろ」
「うるさい!!私1人死ねばこの実験は止まってあの子たちがこれ以上殺されなくて済むの!!だからどきなさい!!!」
「どかない」
「アンタ!!クローンだからって死んでいいと思ってんの!?」
「違う」
「だったら!!」
「どかない」
「くっ!!中途半端な気持ちで人の気持ち踏みにじってんじゃないわよ!!!力尽くでも通させてもらうから!!」
「お前とは戦わない」
その瞬間美琴は電撃を上条に当たるギリギリに放った。
「拳を握りなさい!!」
「嫌だ。お前とは戦う理由がない」
「ぐっ!!今度は手加減しないから」
美琴の電撃が上条にまともに当たる。上条は吹っ飛んだ。
「そんな半端な気持ちで私の前に立ちふさがるから・・・!?」
しかし上条はフラフラになりながら起き上がった。
「行かせ、ないぞ御坂」
「何で?1人の命で1万人が救われるならそれは素晴らしいことでしょう?」
「お前が救われないだろ」
そんな優しい言葉をかけないで。
もうこれ以上私を苦しめないで。
「やめて。・・・もうやめて。もうやめてええええええええええええええ!!!!!!!!」
美琴は特大の電撃を上条に放つ。鉄橋から大規模な放電が広がる。
あの少年はタダでは済まないだろう。不思議な右手があるのにそれを使わずに美琴を止めようとした。
「バカなやつ」
☆☆☆☆☆
「にゃー」
目を開けると黒猫が見えた。
「アンタ、バカでしょ」
見上げると美琴の顔があった。頭の下に柔らかい感触がある。どうやら膝枕されているみたいだ。
「アンタはこの実験とは関係ないじゃない。目をつぶって知らないふりをすればいつもと変わらない日常に戻れるのに、こんなボロボロになって。短い間だけど心臓も止まってたかもしれないのに」
「はは」
「何でそんな顔で笑ってられるのよ?」
美琴は涙声で言った。
「お前の味方で良かったって思ったからさ。だから泣くなよ」
泣いている美琴の頭を撫でた。もうこれ以上一人で苦しまなくて大丈夫だ、美琴。
「実験を止める方法は一つだけある。実験はアクセラレータが最強であることを前提として行われている。なら、実はアクセラレータはめちゃくちゃ弱かったら?レベル0の最弱に負けるほど弱かったら?実験は中止になるんじゃねぇか」
俺は身体中痛むのを感じながら立ち上がり言った。
「待ってよ。それって」
「俺が戦う」
「ダメよ!アイツは私とは比べられないくらい強いのよ!世界中の軍隊を敵に回してもケロリとしているやつなのよ!そんなのと戦ったら今度こそ本当に!・・・お願い、私のせいで始まったこの実験に誰も巻き込めない!これは私が一人で終わらせないといけないの!」
「なら協力してくれよ。何一つ失うことなくみんなで帰るっていうのが俺の夢だ。それが叶うように協力してくれよ」
美琴は泣き叫んだって駆けつけてくれるヒーローなんていないとずっと思っていた。でも今目の前には・・・。
「待っててくれ。御坂妹は絶対に救ってみせる。約束するよ」
ヒーローがいる。