女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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14話

料理研究部の入部が決定して数日が経った日。世間はGWへと突入し、多くの生徒達は実家や小旅行をしに出掛けており、IS学園には自主練をする生徒や授業に何とか喰らい付けている生徒達が余裕を持てる様にと予習に明け暮れる。

そんな中、一夏は空っぽなのかぺターンと萎んだリュックサックを背負いながら校門前で立っていた。

 

「そろそろ来る頃かな?」

 

そう零しながら腕時計を見つめる一夏。するとガシャンガシャンと忙しなく聞こえる機械音に顔を上げると

 

【ぼっちゃまぁぁぁああぁぁぁ!アーッヒャヒャヒャーΨ(゚∀゚ )Ψ(゚∀゚)Ψ( ゚∀゚)Ψアーッヒャヒャヒャー】

 

と滅茶苦茶喜んでいるか、プラカードの内容が荒ぶっていた。

 

「お久しぶり、です。メサさん」

 

【はい! お久しぶりございます、坊ちゃまぁ! ささ、お家に帰りましょう!】

 

そう言い一夏の隣に立ち手を差し出すメサ。一夏はその手を掴んで歩きだした。

モノレールを乗り継ぎ、最後にバスに乗って家の近くまで行き、残りは歩いて行く一夏達。

そして歩く事数分、一夏は懐かしき家へと到着した。

 

【ささ、坊ちゃま。懐かしきお家にお上がり下さい。メサが直ぐに冷たいジュースをお入れいたしますので(*´∇`*)】

 

そう言われ一夏はうん。と頷き家の鍵を開け中へと入る。中は綺麗にされており、埃などは舞っていなかった。

 

「メサさん、何時も掃除しておいてくれたんですか?」

 

【はい。何時坊ちゃまが帰って来られてもいい様にと綺麗にしておりました。( ̄∇+ ̄)vキラーン】

 

「そう、なんですか。ありがとうございます」

 

メサにお礼を述べた後一夏は居間へと向かいリュックサックを降ろし椅子に座り一息つく。メサは直ぐに冷蔵庫から冷やされたジュースを氷の入ったグラスへと注ぎ、一夏の前に差し出す。

暫し休憩を入れた後、一夏は自身の部屋へと行き夏用の服や娯楽用のWalkmanやゲーム機、それと部活に使えるかもしれないと自身が書いてきた料理ノートをカバンへと仕舞っていく。

すると一夏は本棚に仕舞っている漫画の空いている部分に気付き首を傾げる。

 

「あれ? 此処の巻、どうして無いんだろう?」

 

暫し考え込んだ後、思い出したのか顔を上げる一夏。

 

「そうだ、弾君に貸してたんだ」

 

思い出した一夏は少し困惑した表情を浮かべていると、部屋をノックする音が鳴り響く。

 

「どうぞぉ」

 

【坊ちゃま。本日のご昼食なんですが】

クルッ【どうかされましたか?(・◇・ )】

 

プラカードを見せながら入ってくるメサ。一夏の困惑し表情を見せ、即座に自身の用事を聞くのを止めるメサ。

 

「じ、実は漫画を一つ、友達に貸してるんだけど。その家が、その…」

 

言い淀む一夏にメサは暫し固まった後、プラカードを見せる。

 

【なるほど。そのお友達の家にメサもご一緒しましょう】

 

そう書かれたプラカードを見せられ一夏は少し安心した表情を浮かべ頷く。

 

 

 

 

とある街にある食堂、その名は五反田食堂と言われている。

食堂内にあるキッチンでは一人の厳つい男性が新聞を読んでいた。

すると扉をノックする音が鳴り響き、ジト目で扉の方に目をやる。

 

「まだ開店前だ」

 

そう怒鳴りまた新聞を読み始める男性。すると扉がガラガラと開けられ、男性はギロリと扉を開けた人物を睨みつける。

 

「おい、まだ開店前だ…と…。お、お前さんは…」

 

【お久しぶりですね、五反田厳さん。それと、開けてきた者に対して睨むってどうなんですかねぇ。(▼⊿▼) ケッ!】

 

そう書かれたプラカードを見せられぐうの音も出ない厳。

 

「あ、あのお、お邪魔します厳さん」

 

そう言いながらメサの後ろに隠れながら挨拶をする一夏。一夏の姿を見て少しだけホッとなる厳。厳はある理由からメサの事が苦手になっていたのだ。

 

「お、おう一坊か。どうかしたのか?」

 

「えっと、弾君いますか?」

 

「弾? あぁ、2階で寝てる。勝手に上がっていや、儂が行くわ。ちょっと待ってろ」

 

メサの【あぁ?(`д´ ╬ )】と書かれたプラカードを見せられ厳は足早に二階へと上がって行く。そして

 

『何時まで寝てんだ、この馬鹿孫‼』

 

『いってぇぇ!!??!』

 

と二階から叫ぶ声が響く。暫くして頭を抑えながら降りてくる赤髪でバンダナをした少年が降りてきた。

 

「痛えぇ。えっと、お久しぶりです、メサさん。それと一夏」

 

降りた先に居た2人にそう挨拶をする少年。

 

「う、うん。久しぶり弾君」

 

【漸く降りてきたか。┐( -"-)┌ヤレヤレ...】

 

メサが見せてきたプラカードに何とも言えない弾。

 

「えっと、それで今日来た理由は何だ?」

 

「あの、貸してた漫画を、返して欲しくて」

 

「漫画? あぁ、済まん。借りてたままだったな。ちょっと待っててくれ」

 

そう言い弾は急いで二階へと上がって行く。暫くして一冊の漫画本を手に降りてきた。

 

「わりぃわりぃ。返しに行こうと思ってたんだが、お前IS学園に行っちまっただろ? それで返しに行こうにも行けなくってな」

 

「そう、だったんだ」

 

そう言い一夏は受け取った漫画本を肩から下げていたカバンへと仕舞う。

 

「そうだ、お昼はどうするんだ?」

 

「お家で食べる予定だけど、何?」

 

「あぁ~、いや。もしよかったらウチで食べていかないかって誘おうと思ったんだが」

 

チラッと弾はメサの方へと見ながら理由を述べる。

 

「そう、なんだ。ごめんね、家の用事が済んだらすぐに学園に帰る予定でいるんだ」

 

「そうか。また、時間があったら食いに来てくれ。腕によりをかけて作ってやるからよ」

 

「うん。楽しみにしてるよ」

 

そう言い一夏はメサと共に五反田食堂から去って行った。

 

2人が去って行った後、弾ははぁ。とため息を吐いた後厨房へと立つ。そして厳も降りて来て何時も座っている席へと着き、新聞をまた読み始めた。

 

「一坊は帰ったのか?」

 

「あぁ。家の用事がまだあるらしくて、それが済んだらすぐに学園に帰るんだってよ」

 

「そうか」

 

それだけ言うと厳は黙り、弾も何も言わず昼の営業の準備をする。

するとバタバタと階段から下りてくる一人の少女。

 

「お兄、この前一夏さんから借りてた漫画あるでしょ。あれまだある?」

 

「……あれだったらさっき一夏とメサさんが来て、返したぞ」

 

弾は淡々と言った口調で準備をしながら答える。

 

「ウソ、一夏さん来てたの!? 何で教えてくれなかったのさぁ!」

 

「……居た所で、お前とは面と話せない事くらい分かるだろ?」

 

「……」

 

弾の棘のある言い方に少女は顔をしかめ、口をつぐむ。

食堂内の空気が若干重くなり誰もが口を開かなくなっていると、一人の女性がガラガラと扉を開け入って来た。

 

「ただいまぁ。ごめんなさい、お父さん。頼まれてた食材が隣町まで行かないと無かったもんですから。……どうかしたの弾、それに蘭?」

 

そう女性が問うと、弾はから笑いで返す。

 

「いや、何でもねぇよ母ちゃん」

 

弾の説明に何処か引っ掛かりを憶える弾と蘭の母、五反田光莉はそう?と答えキッチンの冷蔵庫の中へと買ってきた食材などを入れていく。

すると

 

「ねぇ、お兄。さっき一夏さんが来てたって言ったよね?」

 

「あぁ、言った。それがなんだ?」

 

「私今から追いかけて「行って何をする気だよ?」た、ただお昼を一緒に食べませんかって言いに…」

 

「一夏は今日、家で飯を食うって言ってた。それに用事が済んだらさっさと学園に戻るって言ってたぞ」

 

「そ、そんなぁ。「……アイツは今色々大変な状態なんだ。そっとしておいてやれ」で、でも話したいことが一杯――」

 

《バァン!》

 

蘭の言葉を遮る様に厨房に居た弾は拳を握りまな板を叩く。

 

「そっとしておいてやれって言ってるだろうが! それにな、アイツが此処で飯を食いたがらないのはお前に原因があるのを忘れたのか!」

 

そう強く怒鳴ると、蘭は茫然と言った表情を浮かべた後トボトボと二階へと上がって行った。

肩で息をする弾に光莉と厳は何も言わず、ただ俯くのみであった。

 

「……わりぃ、ちょっとイラッときちまって」

 

「…いいのよ。それと、あの子も悪気があって言ったわけじゃないから、許してあげて」

 

光莉にそう言われるも、弾は少し暗い表情を浮かべつつも準備を再開した。

 

(はぁ~、こればっかりは儂の手でも無理だな)

 

厳はそう心の中で思いながら、ある事を思い返した。

それは今から1年ほど前、一夏はメサと共に五反田食堂へと訪れた。厳は何時もと変わらないぶっきらぼうな言い方で挨拶をするが、普段とは違う一夏の様子に怪訝そうな顔を浮かべ光莉と弾も心配そうな表情を浮かべていた。

其処で一夏と一緒に来ていたメサから一夏が女性恐怖症という精神病を患っている事を教えられ驚いたり悲しい表情を浮かべる3人。

そして一夏は久々に会った弾と遊ぼうと部屋でゲームをしていた時、事件は起きた。

 

「ねぇ、弾君。またそのキャラクターでやるの?」

 

「あったりまえだぁ! 俺はこいつを極めると決めてるんだ!」

 

そう叫びながら格闘ゲームのキャラを決める弾。すると

 

「ちょっとお兄、五月蠅い!」

 

と扉を勢いよく開け、怒鳴ったのは蘭であった。だがその格好はタンクトップに短パンと言った女子にはラフすぎる格好だった。

 

「ヒッ!?」

 

突然真横から叫ばれた事に驚いた上に、蘭の格好を見た一夏は発作が起きた事に気付き急ぎ注射を打とうとする。

一方弾は突然乱入してきた蘭に一瞬驚くも、メサから言われた一夏の症状を思い出し直ぐに蘭を追い出そうとする。

 

「おい馬鹿! そんな格好で部屋に入ってくるな! 部屋にすぐに戻れ!」

 

「も、戻るけど、一夏さんの様子が可笑しいじゃない! だ、大丈夫ですか、一夏さん?」

 

そう言い何も知らない蘭は一夏の肩に触れた瞬間

 

「ひ、ひやぁああぁあっぁぁあああ!!???!」

 

と、叫び倒れてしまう。

 

「い、一夏さん!?」

 

「ば、馬鹿! だから部屋に帰れって言ってるだろ!」

 

「そんな事言ってる場合じゃないじゃん! 早く一夏さんを病院に――」

 

蘭が一夏を起き上がらせようとした瞬間、部屋の扉が蹴破られた。

 

【坊ちゃまぁ! どうしたのですか!? (´□`;)】

クルッ【……(#´O`)は??】

とプラカードを掲げながら入ってくるメサ。そして目の前の光景にプラカードの内容を変え固まるメサ。

 

「め、メサさん」

 

【おい、これはどう言う事だ? ( ̄へ  ̄ 凸】

 

「す、すいません。妹は一夏の症状の事は知らなかったんです。あの、直ぐに病院に―」

 

【いや、結構。こちらで自宅へと送る。千冬氏のご友人に医者が居る。その人に診て貰う】

 

そうプラカードを見せた後、気絶した一夏を抱き上げようとすると

 

「だ、誰かは知りませんけど一夏さん気絶したんですよ! 病院に見て貰った方がいいですよ!」

 

そう言い一夏に近付こうとする蘭。

 

【坊ちゃまに近付くな、小娘(#`皿´)】

 

と威圧を放ちながらプラカードを見せるメサ。メサの威圧に負け尻もちをつく蘭。

 

【知らなかったとはいえ、坊ちゃまにこんな目に遭わせたんだ。絶対に許さんからなヽ(#`Д´)ノ】

 

そうプラカードを見せた後一夏を抱き上げ、メサは五反田食堂から出て行った。

 

(--あの日以降、一坊はこの店に来る頻度は減って、用があっても千冬ちゃんか、さっきのメサって言うロボットが一緒に付いてくるようになったからな。しかもこころなしか警戒している様な様子を見せて)

 

そう思いながら新聞を畳む厳。

 

 

 

その頃、IS学園に居る千冬はと言うと

 

「納得できません!」

 

と目の前に居る初老の男性に向かって怒鳴っていた。

 

「しかし、向こうの頼みですし「それでも、私は拒否します!」そ、其処を何とか頼めませんか?」

 

千冬は怒り顔を浮かべながら男性から手渡された紙を机へと叩きつける。そして鋭い眼光で叩きつけた紙の一枚を睨む。

其処には『転入生資料』と書かれており、写真と詳細が書かれていた。

写真には銀髪で眼帯をした少女が写っており、名前の欄には『ラウラ・ボーデヴィッヒ』と書かれていた。




次回予告
GWで生徒が居ない中、千冬は料理研究部の顧問に一夏に関する注意事項などを伝えていると、学園長室に呼び出される。呼び出された理由が転入生に関する事だったが、その内の一人に千冬は嫌悪感を露にする。

次回
千冬、心配事がまた増える




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