艦娘ぐらし、始めました-Welcome to Kan-Colle world-   作:嵐山之鬼子(KCA)

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 二次創作に自分の別のオリジナル作品の神(デウスエクスマキナ)をブッ込むという、鬼畜の所業。まさにコレが最低系(メアリースー)か。


-20-

 (うち)が浦風としてこの呉鎮守府に着任してから、おおよそ半年近い時間が流れた。

 着任したのが4月の末で、今は10月の頭。残暑も和らぎ、だいぶ過ごしやすい時季になっている。

 

 その間、(基地としての)呉鎮守府全体で見れば大きな変化はなかったが、私が所属する井上提督配下の鎮守府(ぶたい)としては、第三艦隊が組織されたことが一番大きな特記事項(トピック)だろう。

 これは、7番目の浦風(うち)に続き、浜風、陽炎、夕雲とさらに3人の駆逐艦娘が増え、加えて、軽巡娘・由良と軽空母娘・龍驤が着任したことで、6×3=18で、3艦隊フル構成できるようになったからだ。

 ──そして、その第三艦隊の旗艦には、なぜか今、私が割り当てられているのだ。Why?

 

 「いや、おかしいじゃろ!? 普通は水雷戦隊の旗艦は軽巡が務めるんが筋じゃろーが?」

 提督にはそう言って抗議したんだが、新たに加わった由良は、まだ着任したばかりで不慣れだからと隊長役(きかん)を辞退したらしい。

 練度の高い他のふたり、多摩と那珂は前線勤務となる第一、第二艦隊から外せないのだとか。

 

 「ほいなら、磯波は? あの子の方が私より先任じゃけん」

 磯波本人いわく「人を引っ張るのには向いてない」とのことで断られた。

 あーー、うん。確かに気弱で、元艦的にも2度も衝突歴がある隠れどじっこだし、そう言われるとそうか。

 

 「な、なら、我らが長姉・陽炎姉さんはどうじゃ?」

 ちなみに、この陽炎に関しては、実は予備役からの復帰という形(予想通り、その正体はコンビニの陽子さんだった)になる。

 なんでも、着任後しばらくして軽いPTSDを発症したので、養生を兼ねて軍属として鎮守府内設置のセブイレで店員として働いていた──というのが真相らしい。

 「うーん、私も結構ブランクがあるからねぇ。それに今の練度(レベル)は浦風の方が高いでしょ」

 クッ、それを言われると……。

 

 私は同じ駆逐艦娘で、磯波を除く先任5人(当然練度も高い)に目をやったが、全員明後日の方向に視線を逸らしやがった。

 最後の頼みとばかりに、夕雲型ネームシップたるダメ提督製造機2号の方を見たものの、きょとんとした顔で微笑み返されては、言葉は継げない。

 それ以前に、この夕雲はまだ練度10ちょっとだし、これで旗艦を任せるのは私が提督でも不安大だろう。

 

 「……(うち)がやるしかないんか」

 「うん、まぁ、そういうことだから」

 肩を落とす私の背中をポンポンと気楽に叩く提督の笑顔がニクい。

 

 とりあえず、第三艦隊の正式な発足は、私が改造処置を受けて「浦風改」になってからと決まった。

 ちなみに、私の練度は既に35に達しているから、本人の希望と提督の承認があればいつでも改造は可能。なので、善は急げとばかりに明日、改造を受けることになっている。

 

 「はぁ……急転直下過ぎるんじゃ」

 「そうですか? でも、浦風先輩なら、きっと上手くやれると思いますよ」

 浜風(こうはい)の無垢な信頼の目が眩しい。

 そりゃ、正直に言えば、旗艦(たいちょう)として一部隊を任されるということに、誇らしい気持ちがないわけじゃないけどさぁ。

 

 緊張と興奮、そして僅かな不安を感じたまま、眠りについた私は──久しぶりに、“あの”夢を見た。

 

  * * * 

 

 それは、浦風(となった湊)が以前に3度ばかり見た「元浦風(戸浦美波)」の過去の記憶ではなく、現在(より正確には“入れ替わって以降)の「三浦湊(おそらく中身は美波)」の姿だった。

 

 本来の三浦湊が主だった時とは見違えるように綺麗に整理整頓された部屋で寝起きし、真面目に大学の講義を受講し、熱心に就職活動の下準備にも励む。

 サークルやゼミの先輩からも積極的に話を聞き、卒業後は地方公務員になることを第一目標として頑張っているようだ。

 

 と言って、学業(ガリベン)一直線というわけではなく、友人との付き合いや(湊は実質幽霊部員だった)サークル活動にも、相応に精を出している。

 

 「はぁ~、目指す道もなりたい職業もハッキリわからなかった“俺”とはエラい違いだなぁ」

 

 『あの子は、この世界で生きていくために懸命に考えて、自分なりの答えを出したからのぅ』

 

 「! この声は、美波さん、じゃない……よな?」

 

 『うむ、その通り。我は……ま、ありていに言えば、神と呼ばれる存在じゃ。もっとも、耶蘇教の信徒なんぞが崇める唯一神ほどの絶対的な権能(ちから)を持っているわけではない。八百万の一柱、吹けば飛ぶような零細神じゃがな』

 

 そんなバカな! とは言い切れなかった。

 なにせ“彼”自身、艦娘と深海棲艦が実在する艦これ世界に実際、飛ばされたワケだから。

 

 「それで、そのかけまくもかしこき八百万の神の御一方が、俺と彼女の入れ替わりを引き起こしたという理解でよぅござんすか?」

 

 『皮肉を申すな。その問い掛けに対する回答は「是」じゃが、お主にとっては決して不本意な出来事ではなかったであろう』

 

 「……ノーコメントで」

 それ自体が答えになってることは、“彼”も認めざるを得なかった。

 

 「それにしたって、結果オーライだったから良かったようなものの、いくら戸浦美波(あのこ)が「どこか逃げ出したい」って願望を持ってたからって、なにも異世界(?)の三浦湊(おれ)と入れ換えなくても良かったんじゃないですかねぇ」

 

 『?? 何か勘違いしておるようじゃが、お主等ふたりが入れ替わったのは、あの子の願いによるものではないぞ』

 

 「へ? それはいったい……あ、もしかして、単なる「暇を持て余した神々の遊び」的な?」

 

 『たわけ! 確かに我は零細神じゃが、そこまで暇でも物好きでもないわ!

 よいか、よく聞け。此度(こたび)の換魂の儀は、お主の“願い”に沿った結果よ』

 

 「…………は?」

 

 その後、神様(自称)が語った話によれば、あの日──一週間ぶりに夜に『艦これ』を起動した日の昼間、三浦湊はフラリと通りがかった神社で、縁起担ぎにお詣りしていたのだと言う。

 

 「そう言われると、そんな事があったような気がしなくも……」

 もっとも、曖昧な記憶をたどっても、彼が詣でたのは、神社と言うにはかなり小さい、(ほこら)に毛が生えた程度の代物だった気がしたのだが。

 

 『零細神じゃと言っておるじゃろーが。それでも、お主の入れてくれた賽銭(五百円玉)に応じて、わざわざ願いを叶えてやったと言うのに』

 

 「信心より現金に対応かよ……ってか、俺、浦風になりたいなんてお願いをした記憶はないぞ」

 流石に、それだけは“彼”も断言できた。

 

 『じゃが、ゲームの世界に憧れておったのは事実じゃろう? それに、まだ見ぬ艦娘と会いたいという願望もあったし、そのことを我に願ったじゃろうが』

 

 「うぐっ、そりゃ、会いたいっつーか、ドロップなり建造なりで入手したいとは思ってたし、神頼みのひとつくらいはしたかもしれんけどさぁ」

 

 零細神様いわく、その“願い”を叶えるのにちょうど良い願いの持ち主の心の声が次元の彼方から聞こえたので、ちょっと気合を入れて2世界間での“換魂の儀”──いわゆる魂の入れ替えを実施したのだという。

 

 “彼”としては「フザケんな!」と言いたい気持ちがないわけではなかったが……。

 

 『真面目な話、どうする? 願い主であるお主が願い事を取り消すなら、この換魂の儀を“なかったこと”にするのは、“今”なら可能じゃ』

 

 艦これ世界で言う艦娘への改造処置は、艦娘の(こころ)と身体をより深く強く結びつける行為にほかならない(だからこそ“性能”が上がるのだ)。そのため、それを受ける前の今夜しか、元に戻る機会(チャンス)は無いのだとか。

 

 『改、さらに改二となる処置を受ければ、世界の壁越しには我の如き零細神の権能では、魂をその身体から引き剥がすことは不可能になるじゃろう』

 それはすなわち、現在のふたりの立場が永久的に固定されることを意味していた。

 

 「……俺さ、美波さんの記憶を覗いたから、知ってるんだ」

 彼女が、どれくらい艦娘になったことを悔い、平和な──少なくとも深海棲艦の脅威のない世界に生まれたかったと願っていたかを。

 

 「そんなあの子から、せっかく手に入れた希望を取り上げるのはしのびないよなぁ」

 確かにそれは嘘ではない──が、一番の理由でもない。

 

 『他人を理由に重大な決断を下すと、いつか後悔する日が来るやもしれぬぞ』

 神様は容赦なく“彼”の隠された本心を突いてくる。

 

 「ぐっ……そう、だな。うん、今のナシ」

 “彼”、いや彼女は覚悟をキメた。

 

 「俺、いや(うち)は、艦娘・浦風として生きる方が性に合ぅとる。じゃからこそ、私は“あの世界”で生きる、生きたいんじゃ!」

 

 『ならばよし。かくあれかし』

 

 ……

 …………

 ………………

 

 目が覚めると浦風は、見慣れた自室のベッド(ちなみに二段ベッドの下側だ)に布団もかぶらずに横たわっていた。

 時間は午前5時を数分ばかり回ったところ。朝練に行く気がないなら、まだ起きるには少し早い時間だったが、なんとなく“そんな気”になった彼女は、マイ洗面器に愛用のシャンプーとリンスを入れ、バスタオルに下着と制服をくるんで、そのまま通常入渠施設(おふろ)へと向かった。

 寝間着を脱いで、風呂場へと入り、きちんとかかり湯をしてから湯船に浸かる。

 

 「はふぅ~、気持ちええねぇ」

 朝寝する代りに朝湯、しかも一番風呂の愉しみを満喫しながら、なんとはなしに自らの身体に目をやる。

 駆逐艦娘としては発育の良い16歳前後の肢体と、同じ陽炎型の中でも比較的大きめの乳房が視界に入った。

 

 (まぁ、胸の大きさでは浜風や萩風にはちぃと負けとるけど、(うち)かて捨てたモンやないじゃろ♪)

 この身体になって半年ほどが経つ。ある意味、見慣れた代物(ブツ)だが、彼女の目には、どこか新鮮な印象をもって映っていた。

 昨日までは、どこか借り物に対する遠慮のようなものがあったが、今朝目覚めた時から、そんな罪悪感めいた感傷が完全に雲散霧消していることが、おそらく原因だろう。

 

 「私は──陽炎型11番艦・浦風じゃ」

 その言葉にも、自分に言い聞かせるような響きはなく、単に事実を事実として確認しているだけだという風な不思議な“軽さ”があった。

 

 「さ、そろそろ上がって、明石さんとこ行って、改造してもらおぅかのう!」

 昨日までの、どこか「仕方なく」第三艦隊旗艦を引き受けたという態度が一変し、改造に積極的になっているのは、あるいは昨夜“夢”で見た「もうひとりの自分」の姿に触発されたせいか。

 

 いずれにせよ、この時を境に、浦風(かのじょ)は井上提督配下でも有数の水雷屋として知られるようになるのだが……。

 その活躍については、また別の機会へと譲ろう。

 

-終わり-

 




 と言いつつ、もうちょっとだけ(具体的にはエピローグ分のみ)つづくんじゃよ。
 ちなみに、今回登場の神様は、自ブログの他こちらにも掲載しているオリジナル作品「けれど、輝く星空のように」https://syosetu.org/novel/194402/や「Nervous-Breakdown」https://syosetu.org/novel/194530/で主人公たちの願いを叶えてくれた名も無き神と同一人物(神物?)です。あいつ、いつも「交換」して問題解決してんなー。
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