偽ブロリー《新》となって異世界に渡りました 作:ゴールデン
平成が終わって数百年がたった現在。
DMMO‐RPGという仮想現実にダイブする体感型RPGゲームが流行していた。
簡単に説明するとゲームの世界に実際に入り込んだかのように遊べるゲームの事だ。
数多開発されたゲームの中で良くも悪くも非常に知名度の高い、一つのタイトルがある。
《ドラゴンボールクラフト・ザ・ワールドウォーズ》
百年以上前ファミコンゲームから始まり、現代まで愛されるドラゴンボールシリーズの最新作である。
タイトルの発表から現在まで人気が持続しているのは、プレイヤー達に与えられた《自由度》だ。
自身のワールドで建造物や芸術作品を作るクリエイティブモード
アバターに付与できる種族、数千を超えるスキルにLVという概念が追加された体力と空腹ゲージが存在する、ドラゴンボールを探す冒険を主体としたサバイバルモード
他プレイヤーが制作したワールドを冒険し、PVPを行う為のアドベンチャーモード
そして、今回実装された自分のワールドと相手のワールドをワープゲートで繋げて戦争を行うウォーモード
自身が育てたアバターとアイテムを与える事で成長するNPCを使った世界VS世界の総力戦。
科学兵器・超人となんでもありの大乱闘。
ゲームシステムだけでも子供から大人まで熱くさせるこのゲームだったが、特に大人たちの心を掴んで離さないのがキャラクターの外見や種族が関係する《スキン》と《ボディ》だ。
種族はスタンダードである人間をはじめとする人種や魔族に動物型の姿をした亜人種、さらにはサイヤ人にフロスト一族が含まれる宇宙人種族。
大人も子供も関係なく、世界の人々の心に火を付けた。
しかし、負の面も確実に存在していた。
戦争に敗北したプレイヤーに対して行われる必要以上のワールド破壊。
PVPを利用した虐めや、世界の小・中・高の学校で多発する課金アイテムのカツアゲ。
そんな、様々な問題も孕みつつ、《ドラゴンボール・ザ・ワールドウォーズ》は世界で最も人気のあるゲームとして評価を得ていた。
★
キングキャッスルと城門に書かれた城の前で、二人のプレイヤーが談笑していた。
一人は黒を基準とした戦闘服と緑の毛皮の腰巻に紫のズボンをした、筋肉質の男。
スカウターと呼ばれるアイテムを右耳に取り付け、黒い髪と黒い瞳にサルを彷彿とさせる茶色い毛の尻尾を生やしている。
もう一人は、特にこれと言った装備をしておらず、頭部と肩の紫色と白い肌が目立つ爬虫類の様な尻尾が生えている不気味な姿をしていた。
前者は宇宙の戦闘民族サイヤ人、瀕死の状態で敵を倒す事で多くの経験値を取得できる事が特徴の《サイヤ人》。
その中でも課金ガチャでしか入手出来ない、上位種である《エリートのサイヤ人》を超えて伝説の超サイヤ人に変身する事の出来る《伝説のサイヤ人》だ。
後者は53万の戦闘力で有名な《フロスト一族》。
彼も、課金ガチャによって入手したゴールデンに至る事の出来る《修行するフロスト一族》である。
二人は自分たちのアバターの出典である《ドラゴンボール》の愛好家。
その熱は凄まじく、幾千の課金アイテムを買い漁り、どうしても欲しいLR種族の出るガチャを引きまくる。
生粋の廃課金プレイヤーである。
そんな二人の内、《伝説のサイヤ人》が口を開く。
「フリーザさん。俺達もそろそろドラゴンボールごっこの為のPVPをするだけでなく、アドベンチャーモードで冒険に出かけませんか?
このままだと、俺達はずっとレベル1の戦闘力1500のままですよ」
「あー、そうですね。私もそろそろ頃合いだと思ってました。
では、ラディッツを超える為に初心者用のマップに行きますか?ブロリーさん」
最上位種の二人だが、種族が変更したことにより新しい《ボディ》となった二人の経験値はゼロ。
レベルも最低であり、ドラゴンボールごっこしかしてこなかった二人はステータスも初期スペックのまま。
ちなみに戦闘力はレベルとステータスの数値を課金アイテムであるスカウターが計測してくれるのだが、出てくる数値は大まかなものであり、課金アイテムの存在を考慮すると数値の高さ
レベル上げをする事に決めた二人はコンソール画面を呼び出し、アドベンチャーモードのマップに行くためのゲートを目の前に出現させる。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうですね」
こうして二人は仲良く初心者用のマップへと移動をしたのだが……。
「あれ?ブロリーさん??」
初心者マップにはフリーザが一人だけで立っており、彼と一緒にいたはずのブロリーの姿は何処にもなかった。
★
フリーザーが初心者マップでブロリーを探している頃。
ブロリーは誰も居ない丘の上に立っていた。
「ん?フリーザさん?」
彼もまた、フリーザが居ないことに気が付いて辺りを見渡していた。
「もしかして……移動するマップの座標を間違えたか?」
戦闘力を計測するだけでなく通信機としての機能を持つスカウターを操作して、フリーザと連絡を取ろうとするブロリー。
しかし、彼のスカウターから聞こえるのはテレビで流れる砂嵐の様な雑音のみ。
「通じないな……。とりあえず、ログアウトしてみよう」
ログアウトしてからスマホなどを利用してフリーザに連絡をしようと考えたブロリーはコンソール画面を開く為に腕を動かすが……。
「出ない……」
彼の腕は空を切っただけで、目の前には何も表示されない。
「おいおい、ふざけんなよ!!」
コンソールを呼び出す為に設定した腕の動きを何度やっても、彼が知っているコンソール画面が表示される事はなかった。
「ちくしょう!!どうしてこうなった!?」
無数の疑問が浮かび、不安と焦りがにじり寄って来る。
「とりあえず、プレイヤーだ!!俺以外のプレイヤーを探すぞ!!」
この状況は、自分一人では耐えられない。
そう思ったブロリーはいつもの感覚で数メートルほど上空へと浮かんでスカウターを起動させる。
「何処だ!?どこに居る!?」
ピピピピピッと電子音を響かせながら、自分以外のプレイヤーを探す。
「くそっ!表示されても戦闘力が低すぎるっ!!」
プレイヤーでは絶対にあり得ないレベルの低い数字に、苛立ちを覚えるブロリー。
だが、ここで彼には一つの疑問があった。
「何故……まばらではなく集団で居るんだ?」
アドベンチャーモード用のマップならNPCなどが集団で存在する場合はプレイヤーが、街や国を制作していなければあり得ない現象だ。
つまり、この戦闘力の持ち主であるNPC達を管理しているプレイヤーが居るが、今は離れているのではないか?と、想像できる。
「よしっ!!」
彼は一番多く戦闘力のある場所へと向かって、空を高速で駆け抜ける。
★
野を超え山を越え、小さな集落をの様な物を無視して一番、多くの戦闘力が集まる大きな都市にやって来たブロリーだったが……。
「なんだよ……これ?」
彼は上空から唖然とした表情で、巨大な都市を見ていた。
街並みは酷く汚く、道を歩いている人間や亜人種も小汚い。
路地裏には死体が転がっている始末だ。
死体が無造作に放り捨てられている状況に険悪感を抱くブロリー。
「……死体を街に置くなんて、ここを制作した奴は何を考えて居るんだ?
こんな事が運営にばれたら、警告なしでアカウントを削除されるぞ」
犯罪都市と言わんばかりの光景に頭を痛めていたブロリーだが、ふと視線の端に二人の男女が揉めている光景が目に入る。
「今度はなんだよ……」
げんなりとした表情で見ていると、次の瞬間には背中に翼の生えた色っぽい服を着た女性が男に押し倒された。
「おいおいおいっ!!マジかよ!?」
彼女の服が剥かれ、背中の翼から羽が舞上がると同時に豊満な胸がこぼれる。
まさかの展開にショックを受けて、頭を抱えるブロリー。
この街を見た時から彼の奥底に芽生えた荒唐無稽の考えが、浮上する。
これは現実である。
現実だからプレイヤーは居ない。
現実だからR18に触れる死体や犯罪が目の前で行われている。
「クソがっ!!」
ストレスがピークに達したブロリーは悪態をつきながら、ズボンを下ろして大きく反りあがった逸物を晒す男の元へと急降下した。
勿論、ブロリーのこの行動は男から女性を救う為や物陰から女性の痴態を見る為ではなく、正当な理由でストレスを発散できる
「この……ボケがっ!!」
今まで心にたまった物を発散するような大きな罵声に合わせ、男の顔面にブロリーの蹴りが突き刺さる。
襲う者から嬲られる者へと反転。
ブロリーの八つ当たりによる懇親の一撃を受けた街のチンピラであるビルはブロリーの蹴りが触れた瞬間に鼻が折れ、勢いをそのままに前頭骨を粉砕。
最終的には顔面にブロリー足が埋没、地面に勢いよく投げ捨てられた果実の様に顔面をパァン!!と大きな音を立てて破裂させ、頭を失った体は後方にあった石造りの壁に激突し、グシャ!!と音を立て、ただの肉塊へと成り果てた。
人間同士のケンカではあり得ないような現象だったが、これは当然の事だった。
ブロリーのレベルは1ではあるが初期ステータスの戦闘力は1500。
戦闘力が低い者が集まる、この都市の住民では彼の攻撃を避けるどころか目で捉える事も出来ない。
蹴られた男はズボンを下ろした状態で、何も理解する事無く死んだのだ。
「っち、靴が汚れちまった」
人を殺した気持ち悪さと、靴に着いた血液の汚れにイライラするブロリー。
だが、これで彼は確信した。
頭が無くなり、血を今も流し続ける男だったモノ。
ここはゲームマップではなく、現実であるのだと。
しかし、彼は気づかなかった。
人を殺した事で若干の険悪感を抱くが、それ以上の感情が薄くなっている事に……。