偽ブロリー《新》となって異世界に渡りました   作:ゴールデン

2 / 6
地上げはサイヤ人の基本だよね!!

 

 帝都、南東門界隈。

 帝都の中で、一番低い場所にあるこの地区は貧民街となっており、帝都の一般市民は誰も近付かない。

 

 あまりの惨状に《悪所》と呼ばれ暴力と犯罪が日常的に起こる地獄に最も近い場所。

 

 そうブロリーは強姦魔のチンピラから間一髪の所で助けた翼人種の女性、ミザリィに教えてもらっていた。

 

 「なるほどな……」

 

 ミザリィとの会話で落ち着きを取り戻したブロリーは、娼婦である彼女が生活している部屋の真ん中にあるみすぼらしい机の前に置いてある椅子に腰を下ろして周りを観察する。

 壁に窓のようなものはあるが、窓ガラスはなく、木製の扉が設置されており、簡素な木製ベットの近くには部屋に明かりをともす為のランプがあるのみ。

 本もなければ、女性らしい趣味の装飾品もない。

 

 まさに貧乏という言葉が相応しい。

 

 「……ちょっと、女の部屋をジロジロと見るもんじゃないよ」

 

 「ああ、すまんな」

 

 まったく、言いながら胸を強調するように下乳と呼ばれる部分で腕を組むミザリィ

 

 「まぁ、いいさね。で?アンタは一体どこから流れて来たんだい?」

 

 「ほう……どうしてそう思う?」

 

 「アンタね……。帝都(・・)の事を知らないなんて田舎者か、訳アリの流れ者って相場は決まってるんだよ」

 

 呆れた表情を見せるミザリィ。

 彼女の話によるとこの帝国と呼ばれるこの国はブロリーの中の人が住む、日本の同盟国であるアメリカの様な立ち位置にあるのだと推測する。

 

 「なるほど……概ねは理解した」

 

 「そうかい……で?アンタはその腕っぷしで、何をするつもりなんだい?」

 

 帝国の事をそれなりに理解したブロリーに疑わしいと言わんばかりの視線を向けるミザリィ。

 彼女は数日前に娼婦の代表としての地位を先代の代表である娼婦から受け継いだ。

 故に彼女は娼婦仲間を守る為に、人間の頭部を蹴りで爆散させるとんでもない身体能力を持つブロリーの動向については、もしもの時の為にそれなりに知っておく必要があるのだ

 

 勿論、場合によってはブロリーの情報を悪所の顔役に売る事もするだろう。

 

 「予定は……宿探しかな?」

 

 「じゃあ、この街の顔役には気を付けな。

 特にベッサーラには不用意に近づかないこったね、私に襲い掛かった部下のアホたれを殺したんだ。

 もしかしたら狙われるかもしれないよ」

 

 ミザリィの忠告を受け取ったブロリーは彼女の借りている部屋を出た。

 

 ★

 

 ブロリーがフラりと街を歩き出した頃。

 件のベッサーラ家支配する土地の隅に存在するベッサーラの屋敷では大きな騒ぎが起こっていた。

 

 「おい、ビルのクソ野郎は何処に消えた!?」

 

 「すみません!!街中を捜索しているんですが、まだ見つかりませんっ!!」

 

 「あのポンチキ!!今月の上納金を持って、とんずらしやがってぇ!!」

 

 屋敷の中では部下の所業に怒りが収まらないベッサーラと、中間報告と金と共に消えたビルに悪態をつく部下達の姿があった。

 驚くべきことに、ブロリーに殺されたビルという男はベッサーラ家の部下でありながら、ベッサーラ家の縄張りで商売している商人たちから受け取った上納金を持って逃走したのだ。

 

 彼が逃走してから既に数時間が経過し、何時までも裏切り者を発見できないでいる無能な部下達に、ベッサーラの怒りが爆発する寸前まで到達した。

 ベッサーラは部下たちの気を引き締める為に、目の前に居る部下を見せしめに斬り殺そうと、腰に差している剣の柄に手を掛けようとした、まさにその時である。

 

 「ボス!!ビルと一緒に居た女の情報を手に入れました!!」 

 

 褐色の肌で四本の腕を持つ亜人の男が、ベッサーラの部屋へと転がり込むように入室し、ビルの行方に関係するであろう女の情報を報告した。

 

 「おおッ、でかした!」 

 

 「その女は、何処にいる!?」

 

 これでボスであるベッサーラの怒りも収まると、喜色満面の笑みで報告に来た亜人を囲う部下達。

 

 「へい!つい、最近に娼婦共の纏め役になった女で、名前は確か……」

 

 「ああ、そいつなら知ってるぜ!!ビルがお熱になっていた娼婦のミザリィだ!!」

 

 「よし!テメェ等、さっさとその女を俺の前に連れてこい!!」

 

 部下達の言葉に悪魔の様な笑みを浮かべるベッサーラ。

 その表情は情欲に塗れており、彼の頭の中では金のおまけで付いてくる女にどんな事をしてやろうかという妄想と共に股間を膨らませていた。

 

 ★

 

 ベッサーラの命令を受けたチンピラ達が、娼婦の集まる地区へと向かっている頃。

 ブロリーは今晩の宿を探しており、未だにミザリィの家の近所に居た。

 

 それもそのはず、日本人でありそれなりの生活をしていたブロリーにとってこの街は不潔すぎる上に貧しい。

 宿もそうだが、まともな食事がここで食べられるのかすら、彼には分からない。

 

 (って、そもそも俺は金を持っていないじゃん!!

 どうすればいいんだ!?)

 

 追いつめられたブロリーが頭を悩ませて居ると、街を歩く目の前の人々がモーゼの割った海の如く、左右に離れていく。

 

 何かあったのだろうか?

 

 状況を理解していないブロリーは、近くに居た街の住民に倣う様に道を空けた。

 すると、住民達が退いた道の真ん中を偉そうに闊歩する男達の姿が目に入った。

 

 この光景を見たブロリーは随分前に見た古い仁侠映画を思い出し、彼らがこの町のマフィア的な存在であると悟った。

 

 ブロリーはわざわざ火中の栗を拾う必要はないと考え、でかい図体を少しでも隠すように腰を低くしながら大人しく住民の後ろに隠れた。

 ゲームの中で人気の戦闘民族であるサイヤ人の最高位ランクとは思えない情けない姿である。

 友人であるフリーザが見たら爆笑物だな……と考えて居ると近くまでやって来た彼らの会話が聞こえてくる。

 

 「なぁ、ボスに渡す前に俺達で味見するのはダメなのかな?」

 

 「駄目に決まっているだろうが、つまみ食いなんてしたら殺されるぞ」

 

 「でも、兄貴……そのミザリィって女がビルの隠した金の場所を知らなかったらどうするんですかい?」

 

 「なぁに、そん時はもう一度、上納金を収めさせればいいのさ。

 ここらへんでベッサーラ家に逆らうバカは居ねぇよ」

 

 チンピラの一人である男の口から漏れた、ミザリィの名前を聞いた瞬間。

 ブロリーは金を手に入れる名案を思い付いた。

 

 (悪い奴等(ベッサーラ)から住んでいる場所ごと、募金をしてもらえばいいんじゃね?)

 

 法治国家に住んでいる人はその行為を強盗と言うのだが、幸いにしてここは世界の中でも一等に危険な不法地帯。

 この悪所では彼のサイヤ人的な弱肉強食の思考こそが、絶対の正義なのである。

 

 そうと決めたブロリーの行動が早かった。

 

 「なあ、お前たち…ちょっと話をしようじゃないか」

 

 「あん?」

 

 「何なんだ?てめぇは?」

 

 「俺達をベッサーラ家の身内だぞ、気安く声を掛けんじゃ……」

 

 ブロリーが声を掛けられた6人の内、3人の男が反応してブロリーに詰め寄った。

 そして、三人目の男がブロリー顔を睨み付けながら、ヤンキーが凄む為に自身の顔を近づけた瞬間。

 

 「臭ぇ!?」

 

 真正面に居た男のキツイ口臭に驚いたブロリーは、反射的に力の入ったビンタが男の左頬に炸裂。

 哀れ、男の顎は頬骨と共に首の骨ごと粉砕されて、勢いをそのままに民家の壁へと頭から突っ込んで、そのまま動かなくなった

 上半身は家の中で下半身は外にあるという、なんとも間抜けな格好で動かなくなった男を無言で見つめるチンピラと街の住民達。

 

 「あー……次は誰だ?」

 

 身体能力のコントロールに未だ不慣れなブロリーは何とも言えない表情で時が止まったかの様に動かない男達に声を掛けるのだった。

 

 「なんつー、馬鹿力してんだよお前……」

 

 「蛮族みたいな恰好をしているが……もしかして、トロールとの混血か?」

 

 「自分が何をしたか、分かっているのか?」

 

 「おいおい、これ以上の問題はヤバすぎるぞ」

 

 「……ダジョ」

 

 男達はブロリーの実力に驚いたり、正体を考察したりと反応は様々だ。

 そんな中で一人、プロレスラーの様な体格をした強面の男が、動かなくなった仲間の名前を呟いた後、助走をつけて拳を構えた。

 狙いはブロリーの顔面。

 

 「よくも、俺のハニーを殺したな!?」

 

 《俺のハニーっ!?》

 

 体格の良い男と口臭がキツイ男の知りたくもない関係が赤裸々となり、ブロリーのみならず男以外の全ての人間に激しい動揺が走る。

 もし、これが彼がブロリーの動きを一瞬でも封じる作戦であったのなら大したものだ。

 

 男の愛と体重が籠った熱い拳がブロリーの鼻に叩き込まれ、バキっという破砕音が鳴り響く。

 周囲の人間はこの破砕音で正気に戻り、音の感じからブロリーの鼻がへし折れたと思った。

 

 しかし、殴られてから痛がる様子を見せないブロリーに、チンピラや周囲の住民達が疑問に思っていると、殴られたブロリーではなく殴った方の体格の良いチンピラが殴った手を抱えてうずくまった。

 

 「お、おい、どうしたんだよ?」

 

 うずくまった男の顔を横から見れば、激痛に顔を歪ませて脂汗と涙で顔を汚していた。

 

 「お、折れた……」

 

 どうやら、彼がブロリーを殴った右手はへし折れてしまったらしい。

 これにはブロリーを含む、全員が驚いた。

 

 (まさか、何もしていなくても相手がケガをするとは思わなかった……。

 激しいパワーインフレのせいで、戦闘力1500は弱いイメージが強かったけど、意外と凄いんだな……原作では噛ませ犬だったけど、ラディッツさんは強かったんだ)

 

 ドラゴンボールZにあった【史上最強の戦士は悟空の兄だった】というタイトルは伊達や酔狂ではなかったのだと、ブロリーはラディッツを含む噛ませ犬となったキャラたちの評価を改めた。

 そして、殴られた事による動揺や、ダメージを一切見せないブロリーにどんな体の構造をしているんだと言わんばかりの目で見てくるチンピラ達に、彼はコキコキと指の骨を鳴らして近づいて行く。

 

 「ベッサーラの住む屋敷は何処にある?」

 

 元々薄かったチンピラ達の警戒が全くなくなったブロリーはニヤリと笑いながら、問いただした。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。