偽ブロリー《新》となって異世界に渡りました 作:ゴールデン
街の真ん中で、手足があらぬ方向へと曲がった男達から情報を収集したブロリーは、貧民街とは似合わない豪華な屋敷の前にたどり着いた。
「ここがベッサーラの屋敷か……」
屋敷の前でスカウター使って、スキャンする範囲を屋敷とその周辺に設定して、実行ボタンを押すブロリー。
そして独自の機械音が終わり計測結果を表示するディスプレイを見てみると、屋敷に居るのは13人程であり少なかった。
(戦闘力の平均は5~6。
戦闘力もそうだが、悪所を代表する悪党の自宅にしては、やけに数が少ない。
もしかして、入れ違いにでもなったか?)
少し物足りないと感じたブロリーだったが、拠点にするつもりである屋敷の汚れが最小限になると思って自身を納得させる。
そして、彼は態と屋敷の門を大きな音を立てて粉砕し、中へと侵入する。
勿論、屋敷の中での戦闘を可能な限り少なくし、屋敷を無傷に近い状態で手に入れる為だ。
「さて、どれだけの人数が引っ張り出せるかな?」
屋敷にある中庭の中心で腕を組んで、中で怒鳴り声を上げて騒ぎ始めているチンピラ達が慌てて屋敷の玄関から飛び出してきた。
表に出てきたのは亜人を含む武装をした男達が9人。
4人以外のチンピラは全員表に出てきたようだ。
「てめぇ!!どこの縄張りのモンだ!!」
「俺ら、ベッサーラ家の人間だと知っての暴挙か!?」
「勿論、知っていたとしてもぶっ殺すがな!!」
「生きてここから帰れると思うなよっ!!」
「ぷっ、くくくっ!!」
剣や斧を片手に自身を凄んでくる男達に対して、笑いがこみ上げてくるブロリー。
話をしている最中に
戦闘民族であるサイヤ人の種族的な能力か?それとも、元々自身に備わっていた能力なのか?
おそらく前者だと思われるが、ほんの少しの戦いで自身の力を把握を成し遂げてしまった彼にとっては、目の前の男達は小さなアリにしか見えず、『殺すっ!!』と粋がっている姿はあまりにも滑稽で笑えて来てしまうのだ。
「何を笑っているんだクソボケぇ!!」
「殺す!!殺した後、全裸で晒してやるっ!!!」
「いや、手足を切り落として変態に売ってやらぁ!!!」
男達の中で最も若い3人が、瞳を血走らせて斧と剣を振り上げ、ブロリーに殺到する。
左右と正面から襲い掛かる3人の男達。
左は茶色い毛皮をモフモフさせ、剣を持った狼の獣人、正面は斧を持った筋肉質の人間、右は赤い肌で剛腕を震わせて、殴りかかって来る鬼人。
ここに来る前に相手をした男達よりかは連携を取れており、面白そうだ。
笑うのを止めたブロリーは上空に飛び、3人の男達による同時攻撃を避ける。
すると先ほどまでブロリーが居た場所では、獣人は鬼人に顔面を殴られ、鬼人は獣人に腹を剣で刺されていた。
最後の人種の男は振り下ろした斧を止めようとするもが、振り下ろされた力に逆らう事が出来ずにお互いに伸びている腕を肘から綺麗に切断した。
獣人と鬼人の腕は傷口から流れ出る血液と共に地面へと落ちた。
「ぎゃあ゛あ゛ぁあぁあああっ!!?」
「腕がっ!!俺様の腕がっ!?」
脈が動くたびに断面からピュッピュと血が流れ出る光景に、悲鳴を上げながら泣き崩れる。
仲間の腕を斬り落としてしまった男は、呆然とその光景を見ていた。
男達の隙だらけな姿に、ブロリーは戸惑いも、躊躇もなく、次の攻撃に移る為に右の
(わかるっ!わかるぞっ!!)
戦っていて感じ取れる自身の奥底にある大きなエネルギーの塊。
ブロリーはそれを右の手のひらにボールの形をした緑のエネルギー弾を生成する。
ゲームで言うなら《気弾》《エネルギー弾》と呼ばれる気を消費して使用される基本技だ。
自らが作ったエネルギー弾を、未だに隙を晒すチンピラ達3人へと躊躇する事なく投げつけた。
投げられたエネルギー弾は真っすぐ、男達に着弾すると大きな爆発が発生。
3人の男達を呆然と見ていたチンピラ達は爆発によって発生した爆風によって一斉に、尻もちを付くと、彼らの目の前でモクモクと黒煙が立ち上る。
「ハハハハハッ!アハハハハハハッ!!!」
(すごい!!すごすぎる!!こんなことが現実で出来るなんて夢のようだ!!!)
日本で生きる本当の自分ではありえない力に高揚するブロリー。
ある時代から日本は徹底された管理社会となり、そんな社会は様々な理不尽や不満を人々に抱かせていた。
当然、ブロリーもその中の一人であり、ゲームに没頭したのもドラゴンボールが好きと言うだけでなく唯一、仮想現実とはいえ、一定の自由が与えられる場所であったからかもしれない。
そんな彼が、管理社会から解き放たれた上に圧倒的な力を手にして、理不尽を他者に振りまいている強い立場の人間を蹂躙する。
ブロリーは感じた事のない解放感と、快感を同時に味わっていた。
(決めたっ!決めたぞっ!!俺は何物にも縛られない史上最強のサイヤ人になってやるっ!!)
高揚感に身を委ね、笑い続けるブロリー。
そんな彼を、下で尻もちを付いたままの状態のチンピラ達は震えながら見上げていた。
「ま、魔導士……なのか?」
「ば、化け物だ……」
「や、やってらんねぇ!!俺は逃げるぞっ!!」
男達は這いつくばるようにして屋敷を逃げ出した。
高揚感に浸っていたブロリーは逃げた男達の事は気にする事なく、ゆっくりと自身が粉砕して創り出したクレーターの中心に舞い降りた。
爆心地に居た男達が居た痕跡は何もなく、3人は塵となって消えたようだ。
「さて……本命のベッサーラは何処かな?」
スカウターを操作し、屋敷の中を再スキャンする。
しかし、戦闘力とその数は表示される事はなかった。
「逃げたのか?それとも地下室の様な物があって隠れているのか?」
ブロリーはスカウターを常時検索の自動モードに切り替え、屋敷の中へと探索に乗り出した。
しかし、肝心のベッサーラは、既に家族と共に逃亡。
帝都の外へと向かって、必死の形相で逃げていた。
★
ブロリーが屋敷の中でベッサーラ探しに勤しんでいる頃。
生き残った男達が騒ぎを聞きつけた周辺住民につかまり、日頃の恨みを晴らすついでに事の顛末を拷問と言う手段を用いて聞き出して、大きな騒ぎになっていた。
「おいおい、そんなバケモンが本当に居るのかよ?」
「確かに嘘みたいな話だけどよ、ベッサーラの屋敷から大きな音がしたのを聞いたろ。
それに、”変態拷問師”のディッキーが拷問したんだ、情報は間違いないと思うぜ」
「俺は逃げるぜ、得体の知らない野郎の縄張りになるかも知れない地区は離れるに限る」
「そうだな、ベッサーラみたいになりたくないからな……」
「そうなると、奴隷商人のザーブルは最悪だな。
商品である奴隷を置いて逃げるか、ここに残ってバケモノのご機嫌取りか……」
殺人等の犯罪が日常化している弱肉強食の悪所では、勘が悪い奴と情報に疎い奴は早々に死ぬ。
悪所においては確かな情報を見極める耳と生きる為に培ってきた勘が何よりも大事にされているのだ。
地区に住む住民達は正体不明の怪物から逃げる為に地区を離れる事を決断。
数時間後にはベッサーラの管理する地区からは住民の半数以上が大事な荷物を持って移動を開始した。